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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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名付けと未来



 名が決まった。

 ハイエルフのリアの子、リリウス。

 リゼの子、リグル。

 ラファの子、ラテ。

 鬼人族のアンの子、トライン。

 ハイエルフの子供達は、それぞれの母親が命名した。

 しきたりか法則でもあるのか、名前の頭文字には拘りを感じる。

 トラインに関しては、俺とアンにドース、魔王、それに始祖さんが加わった相談の結果だ。

 最初、アンが俺に提案した名前は、俺にとっては読み難いものだった。

 簡単に言えば濁音や小さいヤユヨが多用された名だ。

 俺の最初の感想は、アンには悪いがどこかの混沌とした地獄の悪魔の名前だと思った。

 子供を可愛がる覚悟はあるが、流石にそれではと思い止めてもらった。

 別に真の名を言われたら死ぬとか服従とかの制約がないなら、もう少し呼びやすい名前の方が良いだろう。

 しかし、代案が浮かばない。

 いや、浮かんだけどアンを満足させられなかった。

 俺の提案に少し寂しそうに微笑みながら「わかりました」とか言われたら、考え直すしかない。

 まあ、自分の命名センスに自信はないので強行なんかできない。

 困ったので、つい傍にいた魔王に相談してしまった。

 これが間違いだったのかもしれない。

「魔王に頼むのに、ワシに頼まないのか?」

「参加しても良いよね」

 ドースと始祖さんが参加し、数々の名前が上げられては名付けの法則だ、縁起だ、過去の偉人がどうとかの話になった。

 ある意味、俺とアンよりも熱心な三人だった。

 ドースと始祖さんはなんとなくわかるが、魔王が熱心なのは少し驚いた。

「お父様。
 これまで子供に名付けできなかったから……」

 ユーリの言葉で納得。

 最終的に各一つの三つにまで搾られ、最後は大樹の社の前でクジ引きとなった。

 光る創造主様の像が決めたのだから文句はないだろうとの事。

 一応、クジを引く前に俺とアンが三つの名前をチェック。

 どれでも問題無いとクジを引く事になった。

 クジを引いたのは俺。

 その結果が、トライン。

 魔王が天高くに両腕を伸ばし、歓喜を表現していた。



「今回は選ばれなかった名も悪くはないと思う。
 なので次の子に授けてもらえると嬉しい」

「私の方もそれで」

「ああ。
 悪い名じゃない。
 そうさせてもらうよ」

 ドースと始祖さんの考えた名は、母親が許してくれるなら次に生まれてくる男子の名にしよう。

 やる事はやっているから、多分、まだまだ生まれるだろうし。




「リア、リゼ、ラファ、悪かったな。
 トラインにばかり構って」

 俺はリア達に謝る。

 名付けで少しの間、アンとトラインに掛かりっきりになってしまった事をだ。

「いえ、ドース様達が関わっていますから」

 確かにそうだが、心苦しい。

「お気になさらず。
 それよりも、私達での名付けを許していただき、ありがとうございます」

 アンに比べれば、かなり馴染む名前だったからな。

「それと……」

 リアがリリウスを抱えながら姿勢を正す。

「これまで何度も言っていましたが、私の子はハイエルフのまとめ役として育てさせてください」

「ああ。
 リアの希望通りに」

「ありがとうございます」

「リゼ、ラファ。
 お前達の子も、お前達の希望通りに」

 二人が頭を下げる。


 男子が生まれた際、アルフレートの立場を脅かさないようにとの事だ。

 俺とすれば、まだまだ先の話だし、気にする必要は無いと思っていたのだが妊娠中のリア達がその辺りを思い悩んだ。

 女子であれば問題無いのだが、種族的には男子が欲しい。

 なので男子が生まれた場合に関しての予防線を張っていた。

 生まれた子は男女問わずに、大樹の村のハイエルフのまとめ役として育てると。

 リゼ、ラファの子も、同様にリアの子の補佐役として育てると。

 生まれる前から進路を決めてやる必要は無いと思うのだが、その辺りをリア達は一切譲らなかった。

 気にしない俺が変なのだろうか。

 子供は出来るだけ平等に育てたいのだが……

 この世界には合わない考えなのかもしれない。

 まあ、気にせずに俺は俺で平等に愛情を注げば良いか。

 ……

 出産直後で気が立っている可能性もある。

 もう少し落ち着いてから、改めて話し合おう。

 あと、ルーやティアと相談もしておこう。

 子育ては一人でするものではないしな。

 良い父親になりたいとは思うが、俺の思想を押し付けるのが良いとは限らない。

 大体、俺の中の父親像は一夫一妻が前提。

 現在の一夫多妻な関係では何の役にも立たないかもしれない。

 俺の考え方が毒の場合もあるしな。

 慌てずにのんびりやっていきたいが、子育ては油断できないから注意しよう。



 さて、子育て体制だが……

 俺のやる事は少ない。

 リリウス、リグル、ラテはハイエルフ達の家で育てられる。

 俺の屋敷でどうだと言ったが、子供が勘違いするからと遠慮された。

 俺としては、父親と一緒に暮らす事が大事だと説いたが駄目だった。

 まあ、子育てしやすい環境が大事なので無理はいわない。

 俺が通えば良いだけの話だ。

 トラインは鬼人族メイドの長であるアンの子なので、俺の屋敷で育てられる。

 俺の部屋の近くで……

 提案する前に鬼人族メイド達の部屋で育てられる事になった。

 うう、寂しい。

 会いに行けば良いだけの話だけど。

「子育てに関しては、出来るだけ母親の言う通りにしてやる方が良い」

 ドースの言葉だが、似たような事を始祖さんや魔王からも言われたので逆らわない。

 でも、何かあったら相談はして欲しいな。


 アルフレートやティゼルに生まれた子達を見せたが、どういった存在かはまだ理解していないようだ。

 母親は違えど兄弟。

 仲良くして欲しいものだ。




 俺がトラインを抱いて可愛がっていると、遠くからクロが寂しそうな顔でこっちを見ていた。

 トラインをアンに返し、床に座ってクロを呼ぶ。

 クロが嬉しそうに俺の傍にやってきて寝転がった。

「遠慮する事はないぞ。
 お前も家族だ」

 寝転がったクロを撫でながらそう言うと、ユキがやってきて同じように寝転んだ。

「ははは」

 俺はクロとユキを撫でてやる。

 ある意味、ルー達よりも長い付き合いだ。

 大事にしないわけがない。

 そう思っていたら、背中を突かれた。

 振り返ると、数え切れないクロの子達が待機していた。

 ……

「きょ、今日だけだからな」

 撫でるのも大変だった。







 十数年後

「リリウス。
 南方はこちらの勝利だ。
 トラインが蹴散らした」

「流石だな」

「なに、ダガ師匠とグルーワルド師匠が同行しているんだ。
 それぐらいやってもらわないと」

「偉そうに言うけど、お前は同じ事をやれるのか?」

「ははは。
 俺に軍を任せてくれるのか?」

「得意不得意があってこその個性だな。
 すまん。
 お前に軍を預けるほど無責任にはなれん」

「指揮は確かに苦手だけど、もう少し言い方があるんじゃないのか」

「お前は軍を率いるより、単独の方が輝く。
 森の奇襲王」

「その名、あんまり嬉しくない。
 なんだよ奇襲王って……もっとこう、あるだろ。
 漆黒の魔弓とか、混沌の波動とか」

「はいはい。
 親から貰ったラテって名で満足しような」

「むう」

「まあ、雑談はこの程度で。
 南方が片付いたんだ。
 西方を押す。
 リグルの手伝いに行ってくれ」

「ん?
 あっちにはグラッツ師匠がいるんだろ?
 俺、要らなくない?」

「そのグラッツ師匠からの指名。
 お前が出した戦術論をもう少し詳しく聞きたいんだってさ」

「最前線で余裕だなぁ」

「グラッツ師匠だからな。
 リグルが手伝いを求めているのも事実だし、単独で色々と動けるお前がいて損はないだろ」

「机の前で色々考えるのが好きなんだけど」

「好き嫌いできるほど、人手に余裕がないからな。
 初っ端で派手にやって領地を広げ過ぎた」

「ははは。
 マクラ師匠とウノ師匠が張り切ったからなぁ」

「あれは敵が可哀想だった」

「まったくだ。
 そして、俺は絶対にマクラ師匠とウノ師匠には逆らわないと誓った」

「俺もだが……逆らえない人が多いよなぁ」

「ははは。
 数えないようにしよう。
 心が折れる」

「そんな俺達だが……俺、お前、リグルの三人で、敵からどんな風に呼ばれているか知ってるか?」

「森の奇襲王以外でか?
 知らないな」

「深遠の死神兄弟だってさ」

「ははははは。
 ただの弱腰兄弟に贅沢な名だ」

「だな。
 よし、気をつけて行って来い。
 死ぬなよ」

「おう。
 そっちもな」



 ……

 変な夢をみた。

 子供達が戦争をしている夢。

 活躍しているようだが、親としては悪夢だな。

 現実にならないように、注意しよう。

 あと、外に稼ぎに行かなくてもいいように、畑を広げなければ。

 子供達には頑張って農家を……

 いや、無理強いはよくない。

 子供達の希望を聞きつつ……

「あの?
 村長?
 子供達はまだ喋れないので、進路相談はもう少し大きくなってからの方が……」

 夢のせいで、変な行動をしてしまった。



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