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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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反省会


 俺は家のホールに大きなテーブルを用意し、席に着いた。

「第一回、大樹の村、武闘会。
 反省会を始めたいと思います」

 文官娘衆の一人が司会進行役として宣言する。

 今、テーブルを囲んで席に座っているのは、各種族の代表と、お祭り実行委員会に所属する文官娘衆。

 それと、お祭りの時に料理や裏方をしてくれた鬼人族メイド達。


「まず、最初に……武闘会、お疲れ様でした」

 お疲れ様でしたと各自が応える。

「お祭り自体は成功と言って良いでしょう。
 ですが、やはりトラブルはありました。
 その辺りを反省し、来年以降のお祭りに反映させれたらと思います」

 テキパキと進行していく。

 事前にある程度の打ち合わせはしているので、俺が初めて聞くトラブルは無い。

 知らない人達への報告みたいな感じだ。

「来賓を予想していなかったのは痛かったですね。
 考えるべきでした」

 身内だけでやるって考え方に拘ってしまった。

 これは俺の失敗だ。

「ハウリン村のガルフさん達や、ラミア族が飛び入りしてくれたのは良かったと思います」

 確かに。

 身内だけだと手の内や実力を知っている事が多いので、どうしても戦う前に格付けをしてしまう。

 微妙に実力がわからない相手が居たから、盛り上がった面もあっただろう。

 実力がわからないと言えば……

「そう言えばあの二人、狂宴のブルガ、黒槍のスティファノって呼ばれているんだな?」

 ドース達がそう言ってた。

「みたいですね。
 昔、侍女に読んでもらった童話に同じ名前がありましたから、それを参考に付けられたのかもしれません」

 文官娘衆の一人がそう言うと、他の文官娘衆も同意した。

「童話?」

「はい。
 魔王領では有名な童話です。
 大悪魔グッチの部下として大国の軍隊相手に戦ったり、お姫様を攫ったりする悪魔なんです」

 聞いた事のある名前が出てきたけど……

「童話はシリーズ物で、何冊も出ているんです。
 でも、ほとんどの本の終わりは大悪魔グッチと共にドラゴンに懲らしめられるっパターンになるんですよ」

 ドラゴンに懲らしめられる。

 童話って、事実を元にしたお話って場合があるよな。

 今度、会ったら聞いてみようと思うが……

「あの二人が、童話に出てきた本人とは思わないのか?」

「本人?
 まさか」

「否定する根拠があるのか?」

「根拠も何も、ブルガさんとスティファノさんは良い方ですから。
 童話に出てきたブルガやスティファノみたいな酷い事をするようには思えません」

「……確かにな。
 名前を貰ったと考える方が自然か」

「はい。
 それに、実際、物語とかから名前を貰う有名人って結構、居るんですよ。
 怖さとか強さとか判りやすいですから」

「なるほど」

 そうか。

 そうだよな。

 そっちの考え方が普通だ。

 どうして俺は童話の登場人物が、あの二人と思ったのか。

 ……

 思ったより強いと思ったからだ。

 そして、名前を付けるにしてもまるっきり正反対の名前とか付けないよな、普通。

 あ、でも、別のあの二人のどちらかが優勝したワケじゃないし、それほど強くないのか?

 やっぱり名前を貰っただけかな?


「話が脱線した。
 反省会だが……料理の方はどうだった?」

 俺の質問に、鬼人族メイドの一人が手を上げる。

「どれも好評でしたが、普段出している料理と大きな差がなく、お祭り感のある食べ物が少なかったかと」

 それは確かに。

 俺もなんとかお祭り感のある食べ物を用意しようと色々と考えた。

 お祭りと言えば、俺の中のイメージでは屋台。

 屋台で出す食べ物と言えば……リンゴ飴!

 リンゴの周囲に飴を纏わせた物だが……

 普通の甘いリンゴでは、イマイチだったので断念。

 酸っぱいリンゴを使わないと駄目だった。

 酸っぱいリンゴの木を育てようと、心に決めた。

 代わりにイチゴ飴と思ったが、これも甘いイチゴではイマイチだった。

 甘くなる前に収穫すれば良いかもしれないが、ちゃんと収穫すれば甘くなるのに早く収穫して砂糖で甘味を付けるのはなんだか違う気がした。

 色々迷っている間に、獣人族の女の子の一言。

「普通に飴で良いのでは?」

 まったくもってその通り。

 素直に飴を作りました。

 果実の汁を香り付けにして。

 大人気。

 しかし、なんだか悔しかったので、綿菓子にチャレンジ。

 綿菓子も砂糖が原料。

 作り方もTVでやってたので知っている。

 まず、缶に砂糖を……

 缶?

 ……

 …………

 し、試作だから竹筒で代用。

 まずは竹筒の側面に穴を無数にあける。

 次に竹筒の上部にハリガネ……そんなものはない。

 ザブトンから太い糸を貰ってそれをハリガネの代用にする。

 竹筒に糸を結び、上に……

 上かぁ。

 空が見える。

 すまない、子ザブトン。

 そこからそっちまでに糸を張ってだな、これを吊るして欲しいんだが、あ、そうそう、そんな感じ。

 ありがとう。

 吊るした竹筒に砂糖を投入。

 竹筒の下に焚き火をセット。

 熱する事で竹筒の中の砂糖を融かす!

 砂糖が融け始めたら、糸を捻って竹筒回転!

 融けた砂糖が遠心力によって竹筒の側面に移動、そしてあけておいた穴から飛び出す。

 穴から飛び出したので砂糖は糸状になり、さらに空気に触れて冷却される事で砂糖の糸が出来る。

 それを棒で絡め取り、わた状にして完成!

 なのだが、下からの加熱が焚き火なので火力調節が上手くいかずに飛び出した砂糖は冷却されずに直火に当たって燃えた。

 失敗。

 ルーに協力してもらい、魔法の火で再挑戦。

 なんとか上手くいったが……

 縁日とかで綿菓子を作る機械がそれなりにごつい理由がわかった。

 うん、周囲に砂糖の糸が飛び散るね。

 お昼だけどお風呂に入る事になった。

 そして、綿菓子は断念。

 唯一の完成品は、近くに居たので同じくお風呂に入る事になったルーが、完成直後に美味しく食べた。

「凄い!
 雲を食べてるみたい!」

 評判は良かったので、お祭りの後にで綿菓子機をちゃんと作ってみよう。

 とか思っていたら、ルーの評判を聞いたティア、ラスティ、ハクレン、フラウを含めた数人が集合。

 再度、砂糖にまみれながら、人数分の綿菓子を作る事になった。

 綿菓子機をちゃんと作った後にして欲しかった。

 その他、色々とやってみたが……

 新しくお祭りに出たのは飴だけだった。

 後は鬼人族メイド達と協力し、お祭り用にアレンジした料理を出したが……

 普段の食事の延長ぐらいにしかならず、お祭り感は確かにない。

 どちらかと言えば、炊き出し。


「マイケルさんの差し入れを使った料理を出す事ができましたが、味付けの研究がされていないので、どうしても一段落ちます」

 確かに。

 あれはあれで悪くはなかったが、普段の食事に比べると少し荒い味付けだった。

「普通、お祭りと言えば、美味しい物をお腹一杯食べられる日と捉えています。
 ですが、この村では普段の食事が美味しく十分な量を食べる事が出来ていますので……」

 その通りだ。

「その辺りは、俺の準備不足と認識不足だった。
 後、甘味系を意識し過ぎた」

「いえ、飴は美味しかったですし、お祭りには出ませんでしたが綿菓子も最高でした。
 あと、クレープでしたっけ?
 あの薄いパンに、クリームや果実を包んで食べる味は思い出すだけで……クリームの数が用意できず、お祭りに出せなかったのはとても残念でした」

「あ、うん、ありがとう。
 だけど、試食できなかった人が睨んでるから、その辺で」

「失礼しました。
 あと、私達の方で料理を考え、提案すべきでした。
 すみません」

 鬼人族メイドが頭を下げようとするが、俺はそれを止める。

「反省会だから反省するのは当然として、対策を考えよう」

「対策ですか?」

「ああ。
 お祭り感のある料理となると、どんなものだ?」

 俺は皆に質問する。

「やはり、普段は食べる事が出来ない料理でしょうか」

「大きければ良いんじゃないか?
 それだけで特別感がある」

「新年を祝うお祭りでは、旧年に作った保存食を食べますね」

「収穫を祝うお祭りでは、その時に取れた作物を使った料理が出ます」

「魚介系も悪くなかったのでは?
 ヘルケッチの姿焼きなんか、見た目も派手でお祭り感があったと思います」

 ヘルケッチ……イカだな。

「あー、それなら私はブブルのグツグツ焼きの方がお祭り感があったと思うぞ」

 ブブルのグツグツ焼きは、サザエの壷焼きだ。

「どちらも醤油味ですね。
 フローラさんの成果の凄さを改めて感じてしまいます」

「醤油味と言えば、焼きトウモロコシが良かった。
 普段の食事でも出るけど、一本丸々なんて珍しいから」

「やっぱり大きければ良いんじゃないか?
 ガッツリ食べた気になれるし」

 色々な意見が出てくる。

「お祭りらしいというのは違うかもしれませんが、料理は持ち運び易い物、食べやすい物が良いと思います。
 皆さん、お料理を持って観戦席に行きましたから」

 確かに。

「近くの食事スペースは、あまり利用されていませんでした」

 あれは残念だったが、後半はその食事スペースに料理を並べる事で活用した。

「まとめると……
 大きくて、運び易く、食べ易く、醤油味?」

「醤油味に限定する必要は無いと思います。
 他にも調味料はありますから」

「でも、あの匂いには惹き付けられるでしょ」

「否定はしないけど」

 とりあえず、出た意見は紙に記録された。

「今日は、この辺りにしておこう。
 お祭り用の料理に関しては、俺も考えて置くが、各自でも考えてくれると助かる。
 アイディアだけでも良い。
 よろしくお願いする」

 俺が場をまとめ、次の議題に進む。


 武闘会の進行に関する問題点。

「選手を呼んでもすぐに来ない」

「試合を待っている間、退屈でした」

「回復する時間を設けた方は良かったとも思います」


 不戦勝が出た事に対する不公平の是正。

「まあ、仕方が無いかと」

「なんとか人数を揃えるべきじゃないかな」


 その他、諸々。

 長い反省会だった。

 まあ、反省会はしないよりはした方が良い。

 何がウケて、何がウケなかったかを理解しておかないと次に繋がらない。

 まあ、武闘会はもうやるつもりは無いが……

「来年も期待しています」

「次は勝ってみせます!」

 言い出せる空気じゃない。

 しかし、俺も村長。

 責任のある立場だ。

 なのでしっかりと伝える。

「ま、まあ。
 そう慌てずに。
 来年も、お祭りの内容はクジで決めるから。
 武闘会になるとは限らないぞ」

 うん、俺は頑張った。

 頑張ったぞ。

「では、武闘会は武闘会でやるというのはどうでしょう?」

「武闘会と新しいお祭り。
 来年は賑やかになりそうですね」

 皆の期待する目が、こちらを向く。

 ……

「け、検討しておこう」

 俺は頑張った……筈だ。


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