第八話「ターニングポイント」
オリジナルヒーロー戦記SS
ヒーローフォース
第八話「ターニングポイント」
五月十七日 日曜日
ティリア・マクシミリアン。
健康的な褐色肌に透通る様な白いショートヘアー。
そして頬の傷が特徴でおり程好く鍛えられた体をしている。
なにより同年代の女性より整ったプロポーションを持っていた。
化粧などとは無縁そうな少女だが、それを確りすれば更に魅力的な女性になる筈だ。(By恵理)
「へえ〜イスラエルから来たの?」
「ええ。ティリアさんはイスラエルから来たんです」
戦車の振動を感じながら恵理は戦車の車内を不思議そうに眺める。
ティリアによると元々四人乗りだった戦車を一人乗りにカスタマイズしているらしい。
そのせいか車内はまるで未来の乗り物見たいにシートの周囲の壁には外の風景がモニターとして映し出されていた為、窮屈な感じはしなかった。
「ああ。病気見たいに戦争ばっかりやってる所だけど、アソコが私の故郷なんだ」
「そう…両親は日本に住んでるの? それともイスラエルに?」
「爆弾テロで…死んだよ」
その時の事を思い出したのかティリアは辛そうな顔をする。
恵理は思わず両手で口を塞ぎ、急いで謝罪した。
「ご…ごめんなさい!! まさかそんな事があったとは知らなくてね…」
「良いんだ。それに此処の人達にも仲良くして貰ってるしね」
「ティリアさん…」
何だか車内が重苦しい空気になったな〜と思いつつ稜も昔、今の恵理と同じ事をやったのを思い出す。
頬の傷は爆弾テロの時に付いた物であり、両親はティリアを庇って爆弾テロの時に死んだと記憶している。
その事をティリアは涙を零しながら語ってくれた。
「それにしても日本も物騒になったな〜アシュタルとか変な組織が出張ってさ」
ふとティリアはそう呟いた。
「聞いた話によるとさっきサイエンスエリアの方でドンパチがあったそうじゃないか」
「ええ。実際に会ったんですよ。ノーベル・フェアリーが居ないとどうなってた事やら…」
「ああ、鈴原の事か」
((バレてるよ鈴原さん!!??))
色々と二人に衝撃が走った。
「と言うか冷静に考えればアイツしかいなんだよな〜あの変身アイテムと同じ物身に着けていて尚且つあのマッドサイエンティストの天村 志郎の傍に居てるのを怪しむのは当然だろう」
「確かに冷静に考えれば分りますね」
「てかアイツって(志郎)そんな風に思われてるんだ……」
段々と素性が割れて行く志郎の素顔に恵理は呆れて良いのか、それとも怒った方が良いのか良く分らない気分になる。
強いて言えばこんな奴が自分のライバルなのかと言う思いが強い。
宮園と天村、その二つの財閥は当然の如くライバル関係であり、恵理と志郎は同い年なので良く比べられる運命にある。
授業参観で我が子よりも他の子を見る親が多いのと同じ。
だがこの体たらくはどう言う事なのか恵理は志郎に小一時間問い詰めたかった。
「ああ。最近では自分専用のパワードスーツとか開発してるって噂だぜ。終いにアイツ世界征服とか訳の分らん事言い出すんじゃ無いのか?」
「流石にソレは無いですよティリアさん」
「稜の言う通り、今時そんなの流行ら無いわよ…と言いたいけど確かに本気で言い出しそうね」
近い未来、恵理とティリアの予想は現実の物となるが、ソレはまた別の物語である。
☆
「ありがとうティリアさん」
『ああ。私はこの戦車を駐車しに行くから』
そう言ってメルカバMk−3に乗ったティリアはキュラキュラと音を立てて女子寮の前から去って行く。
近くの駐車場へ止めに行くらしい。
地面にキャタピラの後が残ってるのはご愛嬌だ。
「大丈夫なのかしら…これ(キャタピラ痕)」
「ティリアさんによると戦車の重量は六十tからそれ以上はありますからね。道路を走ればこうなるらしいです」
「と言うかまだ他にもあんな部活あるのかしら…」
草臥れた声を挙げて二人は女子寮へと戻った。
「お帰りなさいませ、御主人様」
「あの…青華さん? 此処はメイド喫茶じゃ無いんですから態々そんな事しなくても」
二人を出迎えたのは青華である。
青い和服の上に白い頭巾とエプロンを身に付け、何処かの家政婦の様な姿をしていた。
「一度やって見たかったんです」
「そう言えば青華さんは弓道部なのよね? 今日は休みなの?」
「生徒会長も兼任してますから余り無理はしない様に言われてるのです。出来れば夕飯の支度、一緒に手伝ってくれませんか?」
「は…はあ…良いですけど…」
此処で続々と女子寮に住む女性徒らしき人間が入って来る。
恵理と初対面の人間は全員好奇の目線で見ていた。
顔もそうだが胸も眺めていた。
「てか…私よりも胸大きい人とかいるんですけど…」
「ええ。女子プロ部のジュディ・ライアーさんと剣道部の鉄 美久さんですね…」
しかも二人とも顔も良いし、プロポーションもバランスで取れている。
何故稜の周りは何時も女の子がいて、その誰もが可愛いのだろうか?
恵理は本当に疑問を持った。
現時点でもし恋のライバルを挙げるとすれば村雲 青華。
本気で稜を取ろうとされたら敵わない気がした。
同時にそれは恵理の脳内に危機を促す程の事態だった。
「あの…恵理さん? どうかしましたか?」
「ちょっとね…どうして貴方の周りは何時も女の子だらけなのかと思って…」
恵理は諦めが付いた様にこの現実を受け入れていた。
「そんな事はありませんよ。志郎さんとか恭介さんとかホークさんとか―」
「男友達の名前を無理して上げんでいい!!」
「まあまあ落ち付いて下さい恵理さん。今回のメインゲストは稜君ですから部屋で待機して置いて下さい」
「分りました青華さん…」
そう言われて稜はソソクサと自分の部屋へ向った。
「大丈夫ですよ恵理さん。稜様は女にだらしない殿方ではありません。其処は私が保障します」
「ほ、本当に!?」
「やはり何だかんだ言って稜様が心配なのですね」
恵理は顔を真っ赤にして(この人には勝てないのか…)と心中思った。
☆
この待ち時間の間に稜はWAGUへ連絡を取る。
勿論今回の事だった。
だが携帯電話(WAGUからの貸し出し品)の指が止まる。
それはずばり今日の事をどう伝えようかと言う内容だった。
(元クラスメイトがアシュタルの手先になっていて、襲撃されたけど謎の戦士ノーベルフェアリーが助けてくれました…信じてくれるかな司令)
事実だから余計に困った。
特に後半。
アシュタルは兎も角、ノーベルフェアリーの説明は非常に困った。
(まさか一介の学生がアシュタル撃退出来るぐらいの戦闘能力があるって言われても信じないだろうし…)
先ず信じたらその人間の精神を疑う様な内容である。
取り合えず稜は直接司令に連絡すると言う手段は避けた。
(となると此処は…)
此処はノーベルフェアリー製造の容疑を持つあの男へと連絡を入れた。
「もしもし志郎さん」
『あ、稜君じゃ無いですか? メールを使わない辺り稜君らしいですね』
「そんな事よりも今日アシュタルに…」
『知ってます。ノーベルフェアリーの戦闘データーは全て天村財閥の総合ビルを通じて私に報告されますから』
稜はその場でずっこけた。
「やっぱり志郎さんがノーベルフェアリーの製作者何ですね!?」
『HAHAHAHA、ばれましたか』
「ばれましたかじゃ無いですよ!! 貴方一体どう言う神経してるんですか!!??」
『いや〜まさか麻衣香さんがノーベルフェアリーを使って戦いに身を投じるとは此方も計算外でした』
「でしたって…下手すれば大怪我では済まないんですよ!?」
感情を露にし、本来の目的などそっちのけで自分が思った事をそのまま携帯電話越しに稜は感情をぶつける。
流石の志郎も今の稜の心中を察したのか陽気な態度では無く真剣な物に変化する。
『恐らく前回の一件で危機意識が芽生えたんでしょう。だから常時ノーベルフェアリーを携帯する様になったと考えるのが筋ですね』
「前回ってあの時か…」(*第五話参照)
あの時麻衣香は人質に取られたら空中から落下しそうになったりと散々な目にあった。
志郎の言う通りに考えれば確かに筋は通る話だ。
自分でもそうするだろう。
そう思った時、稜はある事を提案した。
「あの…怒鳴り散らした後で言うのも何ですがブレイバーの装着がノーベル・フェアリーやベルゼルオスの様に変身の一言で済む様に出来ませんか?」
『ええ。今回の時見たいな事を考えればそれが一番ですね』
狼牙の時の様に生身の状態でアシュタルと戦うのは避けたかった。
アシュタルと戦う時、ブレイバーがあるのと無いのとでは雲泥の差がある。
生身での戦闘技術を身に付けると言う方法もある物の、これは時間が掛かるというデメリットが付き纏う。
だがベルゼルオスやノーベルフェアリーの様に持ち歩ける様になればこの問題は直に解決出来るのだ。
「出来ますか?」
『直には出来ますよ。それで変身アイテムはどうしますか?』
「へ…変身アイテム?」
色々と拍子抜けした稜は間抜な声を出して聞き返した。
『そう…変身ベルトとか麻衣香さんの様なハートのブローチが付いたリング…ステッキや剣、宝石、携帯電話、今なら何でもござれですよ』
「じゃ…じゃあ、護身道具などを兼ねた物でお願いします」
『分りました。それでは今から制作に取り掛かります…それではまた明日』
そう言って携帯電話の電源が切られ、会話は終った。
「てっ…振動?」
携帯電話の振動がなる。
すると志郎が出て来た。
『すいません。言い忘れていました』
「何をですか?」
『実はWAGUですが、天照学園に移転するそうです』
「はいー!!??」
またしても稜は間抜な声を出した。
「と、突然…どど、どうしてですか!?」
『何でもK−ナンバーズの攻撃による施設の被害が馬鹿にならないらしくて、間借りする形でこの天照学園に移転するそうです』
直すよりも引越しした方が金は掛からない。
それぐらいの被害をWAGUはあの時受けていたのだろう。
当事者である稜は何だか切ない気持ちになった。
「そ…そうですか…大丈夫なんでしょうかそれは?」
だけど天照学園に移転するのはまた別問題。
考え付くだけでもまず保護者にどう説明するのだろうかなどが挙げられれる。
大なり小なり混乱は起きる筈だ。
『兎に角詳しい事はまた明日の学校にでも話しますから』
「分りました…お気を付けて」
☆
夕食は何事も無く無事完成。
皆和室に置かれた座布団の上で楽しそうに食事を食べていた。
女約三十名+男一人と言う異常事態を除けば至って平和な日常だ。
「稜君。何時もこうなの?」
「ええ…朝食などは一人で取る場合がありますけど、夕食などは大体こんな感じです」
お茶を口に含みながら稜は恵理の問いに答える。
この間に恵理達は質問攻めを受けるがその質問には恵理が答えて行く。
Q「大体どれぐらいの付き合いなんですか?」
A「確か稜君と出あったのが一昨年の四月か三月ぐらいの頃だから大体二年とちょっとぐらいね」
と言う具合に次々と稜が回答する間も無く答えて行く。
Q「胸のサイズはどれぐらいアルか?」
A「Lcupよ…この前図った時は103cmだったけど。まあこれ以上増える可能性もあるわね」
恵理の悩みの種である。
胸が大きくなればなる程服やブラのサイズをちゃんと吟味しなければならない。
この服いいんだけど胸のサイズと合わない〜何手てのはしょっちゅう経験していた。
Q「稜君と恵理さんって何処まで中が進んでるんですか?」
A「そ…それは…まあ、それなりに進んでるわ」
と言う物のかなり進んでいる。
一旦離れ離れになる前は本当に親密。
キスまで経験していた。
Q「どうして稜だけ天照学園に来たの?」
A「ちょっとこいつが暴れ過ぎてね…」
稜は苦笑いしながら食事に出された鍋を突付く。
一見優男に見える稜だが、実は中学の時飛んでも無い大事件に巻き込まれたのだ。
その事件の際に稜は色々とやり過ぎた為、中学を退学に持ち込まれた過去を持つ。
この事件はまた後程語ろう。
Q「セッ〇スはしたの?」
A「面と向って何聞いてんのよ貴方は!?」
とまあこんな具合に宴は過ぎて行った。
☆
何時しか二人は横に並んで夜空を眺める。
女子寮の庭を一望出来る場所に襖を動かして腰を置いていた。
空は星満開とまで行かないが、それなりにロマンチックな光景。
まだ夜遅いと言う訳では無く今時の若者なら今でも騒いでいるであろう時間。
だが不思議と女子寮は静かだった。
「ねえ…実は話があるんだけど…」
「話ですか?」
会話を切り出したのは恵理。
稜へ視線を合わせずに問い詰めた。
「火銅…またきっと襲って来るわよね」
「……まだ信じられませんよ。火銅がアシュタルのサイボーグになってるだなんて」
「私も最初はそうだったわ。だけどあの姿を見たでしょ?」
サイエンスエリアで目撃した狼牙の変身形態を稜は脳に投影。
恵理の言う通りあの姿を見た以上信じる他は無かった。
「だから…私。ちょっとの間この学園に留まろうと思うの」
思わず恵理の顔を見る。
恵理の顔はとても真剣で、眼差しには決意の光りが宿っていた。
「だ…だけど、学校は?」
「そんな事、家の権力使えばどうにでもなるわ」
「しかし…」
「こう言う時ぐらいお金持ちらしい事しても罰は当らないわよ」
こうなったら稜でも意見を捻じ曲げるの至難の技と化す。
恵理は『自分が本気で正しいと思った時の行動力』は一般人のソレを凌駕し、時には家の権力すら持ち出す(が大抵は最終手段になる場合が多かった)女性なのだ。
昔起きた事件の中にはイジメ問題何てのもあったが平気で放送室を占拠してこの事を暴露し、演説を始めた事もあった。
「あの…一つ思うんですけど、仮に恵理さんがいて何が出来るんですか?」
「あっ……」
たかが女子高生一人護衛に付いてどうこう出来る訳が無い。
その事を指摘されると今更気付いたかの様に恵理は考え込む。
何故か表情に恐怖の色は無く、まるでどうやったら稜を納得させる事が出来るのか考えている様な表情だった。
「……兎に角、私がそうさせて貰うわ」
「いやいや!! スルーしないで下さい!?」
長考の末に弾き出された恵理の考えがスルー。
とても頭の良いお嬢様が考え出した結論とは思えない物だった。
「あ…だけど部屋は何処にすれば良いのかしら? 流石に稜の部屋は不味いし、また青華さんの部屋も…」
「何でもうそんな所まで考え始めてるんですか…」
「そんな事言うなら生活費、引くわよ」
恵理は此処で対倉崎様の最強のカードを引く。
しかしその効力が効いたのはもう昔の話。
今は大した効力を持っていなかった。
「一応天村財閥から金は貰ってますから…」
十五歳と言う若さで一流企業(?)に就職を果した稜。
その月給はサラリーマンのソレを超えている。
学生が質素な暮らしをしていくには十分だった
「あーもう!! うだうだ言うな!! 私がそうと決めたら貴方ははいってと答えればいいのよ!!」
「何自棄起こしてるんですか!!??」
「大体貴方立場上は私の執事でしょうが!? 何で普通に私へ口出したり、勝手に就職先変えてんのよ!! どう考えたって稜がおかしいわよ」
「これは事故―「言い訳は認めない!! そして口出ししない!! これは命令よ!!」
何とも強引な命令があった物だなと思い、稜は苦笑する。
しかも恵理の言う事も一理あるので達が悪い。
だが問題として恵理に危険が及ぶ可能性が放置されていた。
(だけど言っても聞かないだろうな…)
稜は半ば諦めの境地に辿り着く。
所為ギブアップであった。
「たく…しかも全部聞かれちゃった見たいね…」
恵理の視線が彼方此方に向けられる。
瞬間茂みやら屋根から近くの壁から物音が聞え始める。
この瞬間、稜は恵理が何を言いたいのか良く分った。
「貴方達!! 隠れてるのは分ってるわよ!!」
その一言で女子寮の生徒達は脱兎の如く逃走を始める。
しかも耳に聞える足音や影は一つや二つでは無い。
恐らく女子寮にいた生徒のほぼ全員が盗み聞きしていて、さっきまで不気味な程静かだったのこのせいだ。
「気持ちは分るんだけどもうちょいプライベートを尊重して欲しいわ」
そう言って恵理は顔を真っ赤にして寮内へと戻る。
聞かれたのが余程恥しいのだろうと稜は思う。
何故なら自分もそうだからだ。
「私…稜君の傍に居ても良いのよね?」
ボソッと小声で恵理は呟いた。
「何か言いましたか?」
「ううん。何でも無いわ…何でもね…」
笑みを作って恵理は答えると再び歩を進めた。
(本当に今日は色々あったな…)
アシュタルとの戦いに巻き込まれたり、恵理の事を根掘り葉掘り聞かれたり色々と散々な日々だったが遥訳、稜の長い一日は終わりを告げたのであった。
第八話 END
+注意+
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