
オリジナルヒーロー戦記SS
ヒーローフォース
第一話「ブレイバー」
五月十四日 木曜日
天照学園。
人工島の上に建設された凄まじく大規模な学園都市の名であり、学区だけでも幼等部から高等部、さらには大学に各種専門学校まである。
更には寮だけでも、学生寮や教職員専用の寮まであり、病院や図書館などの各種公共機関に様々な施設が集まる都市区なども存在しているのだ。
その規模に比例してここでは多くの人間が日々を過ごしている。
倉崎 稜
彼もまたその一人だ。
彼は中学三年の中頃からこの学園に転入し、高校一年になって月日が五月に流れた今でもこの学園都市内にある精神病院に通っていた。
そんな彼は昨日、諸事情(精神科主治医主催で夜中までゲーム大会)でこの病院で夜遅くまでを過ごし、結局朝を病院のベッドで迎える。
病院独特の匂いを嗅ぎつつも個室のベッドから起き上がり、まず室内にある洗面所に向かい。
特徴も無い黒い髪や鏡に映った無機質な表情と瞳、そして今年で16と言うこの年頃男の子の体の割には少し高い身長176cmを眺めた後、彼は顔を洗った。
『人々を守るため!! 白翼の光にて悪を討つ!! 機装天使アウティエル!! アシュタルを倒すためここに降臨!!』
イヤホンを付けてテレビを見ると昨日関西で起きたらしいアシュタルとアウティエルの事が報道されていた。
最近ニュースや学校の話題と言えばこれである。
カッコイイや凄いな~と言う感想よりも稜は恐いなと思った。
(また関西でアシュタルか…恵理さんも無事だと良いけど…)
恵理とは稜にとって掛け替えの無い…それこそ命よりも大切な人の名前である。
関西に住んでいるため、何時アシュタルの事件に巻き込まれるかヒヤヒヤしながらテレビを見ていた。
そのせいかこの関東から電話をする回数も最近多くなっている。
「おはよ~良く眠れたかしら?」
水色の髪の長髪を垂れ流し、スラリとした長身をした凄まじいプロポーションの持ち主。
胸もとても大きく、足はスポーツマンに見たいに少し引き締まっており程よい感じだ。
曰くちょっと前まで外国人のモデルさんだったそうだが突如引退し、ここに流れ着いたらしい
名前は「リンディ・ホワイト」。
倉崎 稜の面倒を見る主治医である。
「リンディ先生…」
「またニュースでソレやってるのね~最近多いけど、何時か関東でも来るんじゃ無いかしら?」
「そう言えばどうして関西ばかり何でしょうね?」
前々から稜は疑問に思っていた事だった。
幾ら何でもニュースに報道されている場所が関西なのはおかしい。
何か特別な事情でもあるのだろうかと首を捻るが考えても仕方が無い事なので諦めた。
「ところでリョウ君は今日学校はどうするの?」
「出席しますよ。あんまり休み過ぎるとまた担任が来ますから」
苦笑しつつ稜は着替えの準備を始めるため衣服を脱ぎ始めた。
「あのねリョウ君。あんまり女の子の前で衣服脱ぐのはどうかと思うわよ?」
「え? そうなんですか?」
「……どうして女の子と一つ屋根の下で暮せたか分る気がするわ」
言葉の意味が分らず、稜は首を捻った。
☆
天照学園は学園都市。
その規模故に生徒の登校風景も圧巻だ。
まるで大名行列のように生徒達は校門を目指し、この行列を狙って店を開く購買部の生徒の姿もある。
(相変わらずだな~この光景…)
その後ろに続く様に戦車や戦闘ヘリやアニメに出て来そうな小型の人型ロボットが道を行く。
通学路を行くこれ達の兵器や乗り物ははとてもシュールな光景に見える。
尚、ロボットとはパンツァーギア(以下PG)…この学園が作り上げたロボットでコードギア〇のNFやボトム〇のATに近いサイズと概念のロボットだ。
悪魔でこの学園が作り上げた特産物なので別にこの世界の戦争の主役がPGと言う訳では無い。
「おはようございます。志郎君」
「おはよう稜君。最近元気に登校出来てますね」
そんな中、稜は一人の生徒とバッタリ遭遇した。
自分とは魔逆。
稜が影なら彼は光だろうとも思える印象を持つ金髪の少年に挨拶をする。
彼の名は天村 志郎と言い、稜のクラスメイトだ。
今年の生徒会選挙の最有力候補としても名高い人物でもある。
「ええ…学校楽しいですから」
「それは良かったです。今度私の家か会社に遊びに来ませんか?」
「う~ん、体調が安定すれば行きますね」
そう言葉を交わした所で話題が変わる。
「そう言えば志郎さんもアウティエルのニュース見ましたか?」
「ええ、最近有名ですよね。どう言う訳か関西だけですが…一度お会いしたい物ですねアウティエルには」
「自分は…あまり関西で起きて欲しく無いなと思うんです」
「大切な人が…いるからですか?」
コクンと稜は頷いた。
「その人にもし何かあったら自分は正気を保てるかどうなるかとか考えると恐くなるんですよ」
「う~ん稜君がそうなる姿はあまり想像出来ませんけどね」
「そうですか…」
まるで溜め息を付くようにそう稜は答えた。
志郎は話に入っても変わらずポーカーフェイスを崩していない。
「そう言えば稜君は何か部活を始め様かと考えていませんか?」
「部活ですか?」
そう言えばちょっと前に軍隊系部活に声を掛けられたなと思い出す。
その時は体力に自信が無いため断ったが。
「特に何かしようかとは考えてませんね」
「そうですか。私は生徒会選挙が終ったら自分で部活を立ち上げようと思っていますんで…その時は是非見学しに来て下さいね」
「え…ええ…」
―その時、立ち上げられた部活はこの時の稜の想像を遙かに超える物だったが、それは一年後の事なのでこの時の稜には知る術は無かった―
そんな言葉のやり取りを交えつつ一年Z組と言う表札が貼られた教室まで辿り着く。
「お~稜君に志郎。おはよう」
出迎えたのは青くて長い髪をお下げにし、赤いカチーシャ、新体操で鍛えている引き締まった体と健康的な肌をした女子生徒。
名は鈴原 麻衣香。
稜達と同じクラスメイトだ。
「最近調子良さそうね稜君」
「ええ…どうにか登校出来てます」
「それは何よりね」
次に麻衣香は志郎に声を掛けた。
「志郎。今日のニュース見た?」
「アウティエルですか? 一応アウティエル関連のニュースは全部チェックしてますよ?」
「……変態」
目を細めながらボソっと言うが志郎はそれを軽くスルーした。
「いや~だって実際する変身ヒロインですからね~何時かたたか…いえ何でもありません」
「…もしかしてまだ子供の時の野望を持ってたりするの?」
「さあ? 何を仰っているのかさっぱり分りません」
志郎と麻衣香の関り合いは小学生の頃から続き文字通り十年来の仲なのだ。
そう言う二人にしか分らない事は一つや二つあるだろと思い倉崎は口を挟まず見守った。
『一年Z組の倉崎 稜君。今直ぐ一階ロビーまで来てください』
放送が入る。
稜を指名した物だ。
「お、稜君をご指名ですね」
「何かやらかしたの?」
麻衣香が茶化して来るが稜は首を捻る事しか出来なかった。
「分りません…まあ、行けば分ると思います」
「そうね。じゃ、行ってらっしゃい」
そうして稜は一階のロビーまで向った。
☆
(一階ロビーと言われてもこれじゃ分らないよ…)
ロビーはまるでホテルと見間違えるぐらい綺麗で広い。
中央の噴水を中心にした円形のホールであり、此処から様々な施設や部屋、そして昇降口になどへ繋がっている。
一応辿り着いた者は良い者を放送がアバウトだったせいであり何処へ向えば良いか分らない。
「貴方が倉崎 稜君ですね?」
「え?」
声を掛けられた方を見るとそこには稜とは何もかもが対照的な人間が現れた。
紺色のスーツを身に纏い、赤いネクタイを付け腰まで長く伸びた金髪を靡かせたその紳士的を体現した姿は普通の女性であれば振り返るだろう。
顔立ちからして年齢は稜よりも二つか三つぐらい上だがそんな風には感じさせない魅力があり、見様によっては実年齢よりも大人っぽい。
突然現れたその男は稜に挨拶をした。
「おはようございます。そして初めまして。私は天村 京と言いますが…貴方が倉崎 稜君ですか?」
「…ええ、そうですけど」
稜は誰かに似ている気がして首を捻る。
だがその事は深く追求しようと思わなかった。
「実は貴方にお願いがるのですよ」
「お願い?」
「ええ、私は天村財閥の人間です」
天村財閥と言えばかなり有名である。
何でも国の政治にも口出し出来るほどの勢力があると専らの噂だ。
この天照学園の創立に深く関わっており、この学園に在校するなら一度は耳にする単語である。
(って…もしかして…)
ここで目の前の人物が誰か分かった。
「もしかして志郎君のお兄さん!?」
「はい、その通りです」
と言う事は目の前に居るのはその天村財閥の後取り候補。
自分とは及びも付かない程の高い地位にある人間だ。
実は天村 志郎は財閥の御曹司であり、その志郎の口から天村 京と言う兄が居ると言う話を聞いた事がある。
顔もよく見れば何となく面影があり、最初誰かに似ていると感じたのもそのせいだった。
「あ…ああ、あの…何のようですか?」
どうしてそんな人間が自分を何の前触れも無しに尋ねて来たのか分らず、半ば声を震わせて質問した。
稜を初めとした高校生からして見ればこんな状況など、天地が引っくり返るぐらいあり得ない事である。
この反応も当然だ。
「実はと言うと貴方をスカウトに来ました」
「…どう言う事ですか?」
当然な疑問な対し、京は懐から新聞紙を取り出した。
「その一面の記事を見てください」
「…謎のテロ集団が人々を襲撃。救世主? 羽の生えた女性戦士『アウティエル』がテロ集団を撃退…」
その記事の内容はここからは馴れた遠方で恵理がテレビで見たニュースが新聞紙に記載された物だ。
稜に取っては最早耳タコな内容であり、ウンザリしている。
「その表情ですとこの新聞紙は無駄だったようですね」
「ええ…」
「実は我々はその新聞紙に描かれているテロ集団『アシュタル』と戦う為のスーツを開発してそれを動かせる人材を探していたんですよ?」
「戦力を動かす人材…?」
その言葉に疑問を思った倉崎は口に出し、京はニヤリと少し口元で笑みを浮かべながら答えた。
「ええ、俗に言うパワードスーツのテストをして頂きたいのです」
「あの宇宙の戦士に出て来るみたいな奴ですか?」
倉崎が言っているのはロバート・A・ハインライン氏のSF小説(1959年)「宇宙の戦士」の事でこの作品に登場するパワードスーツの事を指している。
この作品に出てくるパワードスーツこそが元祖と言われて、後に色々な作品に影響を与えたと言われていが、本当の元祖は同じ作者による作品「ウォルドゥ」(1942年)と言う声もあるが、話が長くなるためここで割愛。
「後察しの通りですが例えが意外ですね。取り合えず話はそれだけです」
「と言うかどうして私何ですか?」
「貴方が適任だと思ったからです。貴方の事を前々からスカウトしようかと思ったんですが事情が変わり、こうして直接足を運んで来たんですよ」
今の所、言ってる事に矛盾点は感じられない。
だが重要な部分は話されていなかった。
「どうして適任だと思ったんですか?」
「其処から先はここでは不味いので…場所を移します」
「え…今から授業…」
「学校には話を通していますので大丈夫です」
「は…はあ…」
こうして稜は強制的に京に連れ出されてしまった。
そして連れ出された場所は天照学園内でも規模が大きい施設。
そこは科学部系の部活の専門施設が過密しており、八十階建ての異様な高さを誇る中央センタービルを中心にして施設が立ち並んでいる場所だ。
沿岸部に建設されている為、潮風が肌に当るのを感じる。
そしてここは本当に科学部の施設かと言うぐらい緑が豊かだ。
敷地内の道路には三頭身ぐらいのロボットや、空中浮遊する円盤物体、掃除する四速歩行メカなどが見掛けられた。
この敷地の直隣には軍隊系の部活の施設と兼任し、この学園都市の自警団「SDF」が存在しているせいか時折銃弾の音や大砲の発射音のような物が微かに聞える。
稜はその中央センタービル内のエレベーター内で再び事情を説明されていた。
「自分が…アシュタルから命を狙われている?」
突然そんな事を言われても冗談としか思えなかった。
しかもアシュタルからである。
さっきから非現実的過ぎて何が何だかサッパリだ。
「ええ、どうしてかはまだ確証が無い為言えませんがその危険性は高いのです。その為私はWAGUを経由し貴方の保護を任されました」
「WAGU?」
聞き慣れない単語が出たなと思いつつ自分の頭からそれが何なのか捻り出そうとするがサッパリ思い浮かばなかった。
「対アシュタル防衛チーム英単語、頭文字から組み合わせた名前です。言わば対アシュタル専門の極秘部隊だと思ってください」
「は…はあ…」
何か段々と訳が分からなくなった稜は頷く事しか出来なかった。
そこでエレベーターが目的の階まで辿り着く。
大分下まで降りたなと思うと場所は十五階を指していた。
「これは一体…」
エレベーターが開くとそこには旅客機数機が収容できそうな広さを持つ格納庫らしき場所である。
何処かSFチックな流線的フォルムの白いバイクやパワードスーツらしき物などが白衣を着た研究員らしき職員達の手によって整備されていた。
他にも見た事も無い乗り物や3~10級のPGらしきロボットが整備されている。
恐らく科学部が使用する部活の格納庫なのだろうと稜は(意地でも)思う事にした。
「さて…目的の場所はこちらです」
「え?」
驚く暇無く稜は更に格納庫の奥を案内される。
そしてゲートを潜り抜けると別の格納庫に繋がっていた。
(青い飛行機?)
そこに置かれているのは大きさは少なく見積もっても輸送機サイズだ。
ブーメラン横に置いたへの字様な形をした胴体はステルス爆撃機に似ている。
だがステルス機能の事など排除しているかの様に分厚く、頑丈そうな胴体や青いカラーリング。
そして後部に開いているハッチのスペースは広々としており、重量関係を無視すれば戦車も詰め込めそうだった。
翼の下部やら至る所には武器らしき物が搭載されている。
「これはパワードスーツでの戦闘を支援する為に開発された飛行艇で名はソウヨクです。すみませんが今からこの飛行艇に乗ってWAGUの本部に向って貰います」
「今からこれにですか?」
「ええ。必要な積荷も積んでますしね。ついでにそれを運びますので」
何だか上手い具合に話を乗せられている気がして来たが稜は黙って付いて行く事にした。
☆
蒼翼。
この飛行機の内部は旅客機までとは行かないが思ったより広い。
今稜は格納スペースで僅かの時間だが空のフライトを楽しんでいる。
ちなみに操縦しているのは興…では無く京である。
これには『この人何でも出来るんだな~』と思う事にした。
ちなみに地下十五階からどうやって発進したかと言うと…
この飛行機に乗った瞬間地面が競り上がって行き…恐らく台座がエレベーターになっていたんだろう。
そして青い空が広がる地上に出る。
そのまま垂直離着陸のジェット噴射でそのまま一定高度まで飛び上がり、飛行を始めたのだ。
そうして空を飛び立つと戦闘機が護衛に入る。
WAGUのロゴが刻まれたF-15戦闘機四機。
念には念を入れてと言う事なのだろうと稜は思った。
「あれが…ブレイバーですか」
『その通りです』
格納スペースには件のパワードスーツ「ブレイバー」が置かれていた。
京は稜の様子をカメラで把握しており、操縦席からの通信で答えている。
主なカラーリング色は黒。
肩はゴツくて腕部や脚部はスマートで殴り合うと壊れてしまいそうだ。
胸部装甲板はやや丸みを帯びており、両肩の逆台形アーマーは体と比例して大きい。
その胸部装甲と肩アーマーを挟み込む様に赤い突起物ーまるでマジックハンドのアームでもを嵌め込んだかの様な意図不明の物体があった。
其処まで見て稜は下半身にも目を移す。
股間部分の逆台形装甲部がやや出っ張っており、足の付け根部分も装甲版でガード。
その両側にはガンマンのホルスターに当たるらしいパーツが確認出来た。
稜の総評はアレを着て本当に動けるのだろうかと稜はちょっと半信半疑な目で見ていた。
『対アシュタル戦闘様のパワードスーツです。戦闘もその気になれば今直ぐでも可能ですよ?』
「そうですか」
台座にちゃんと固定されており、まるで鎧の置物の様だ。
他にもそうした台座の収納スペースが幾つもあり、後五体程のパワードスーツを格納出切る。
そう言ったスペースを差し引いても広々とした空間が広がっているため、ある程度ゆったり過ごせる事が出来た。
(何か段々と頭が混乱して来た…)
正直稜は突然此処まで連れ出されて何が何だか状況を充分に把握出来ていない。
突然命を狙われているとか言い出して、ここまで連れて来られた。
その理由については何かしら説明してくれるとは思うが。
―ここで突如、爆発音と共に飛行機が揺れる―
「な、何が起きたんですか!!??」
『分りません、何者かの攻撃でしょうか…』
更に爆発音。
何かが直撃して爆発した音が立て続けに発生。
護衛の戦闘機に何かが起きたのだろうかと稜は思った。
(本当に何がどうなってるんだ!!)
そう思った矢先、この飛行機本体が激しく揺れる。
天井の赤いランプが点灯し、徐々に機体が傾いて行った。
『不味いですね…不時着します』
『えっ!!??』
突然過ぎた稜は何が何だか分らない。
唯分る事は非情に自分の身が危険だと言う事だった。
「うわ!!??」
機内にアラームが鳴り響き、振動が機内を揺さぶるも稜はその場でじっと耐える。
煙を上げて不時着しようとする蒼翼。
眼下には町が広がり不時着は避けられも無い。
☆
『こちらk-04。護衛の戦闘機破壊。敵の無力化に成功。地上に降下した所で積荷を抑えろ』
『了解』
それを飛行機である蒼翼の背後に付き、後方から眺める者がいた。
色は緑色で頭部は胴体に若干沈むように配置されており、背中には大きな挟みの様な物体が背負うように取り付けられている。
爬虫類の様に鋭い爪や尻尾まである。
先程ビーム砲で蒼翼を不時着追い込んだのは背中のハサミの様なデザインをしたビーム砲からだ。
どう言う原理で空を飛んでいるかは不明。
明らかにオーバーテクノロジーだ。
『天村財閥のパワードスーツか…どれ程の性能か見物だな』
奇跡的に被害を出さず町の公園に降り立った蒼翼。
その森林地帯のど真中へ木々を薙ぎ倒す様に着陸する。
『K-04。そちらにWAGUが向っている。成るべく早く目的を達成しろ』
『こちらK-04。奴達は囮のアンドロイドが引き付けるんじゃ無かったのか?』
『奴達も馬鹿では無い。こちらが本命だと気付いたんだろう。アンドロイドは武装と対策さえすればどうにでもなるしな』
『…了解』
そこで通信が切れる。
『オリジナルと天村財閥のパワードスーツ。その開発者。一石三鳥とでも言えば良いかな?』
K-04と呼ばれた戦士はまるで物語の結末を楽しみかの様にじっと蒼翼を眺めた。
☆
『不時着に成功しました』
ホッと稜は一息付いたのも束の間、京から警告が入る。
『未確認のパワードスーツが四機接近しています』
「え? もしかしてそれって…」
『間違いなく敵ですね。念の為ブレイバーを装着して下さい』
稜はええっと表情を変えた。
「ど、どうして…」
『実は脱出装置もドアも異常を起こしてこの操縦席から出るのが無理なんです。コクピットのガラスも防弾性ですから…』
驚きの余りもう声も出なかった。
顔も段々と青くして行く。
『奴達の目的は貴方と私…それとブレイバーでしょうね』
「奴達ってまさかアシュタル!!??」
『察しの通りです。抵抗しなければ殺されはしないかも知れませんが…捕まった後どんな酷い目に会うか分った物ではありませんよ?』
実質選択肢が一つしか無い事に稜は泣きそうになる。
「うわ!!??」
ここで爆音が立て続けに響き渡り、飛行機内を揺らす。
立て続けに外はまるで戦争映画でしか聞け無い様な銃声が引っ切り無しに聞えてくる。
『数が増えてます。このままでは持って一分でしょうね』
この時、稜には死刑判決に聞えた。
『護衛も消されて何とか貴方を連れ出す事に成功しましたが…まさかこの様な結果になるとは…』
稜はゴクリと唾を飲んだ。
―やるしか無いんだと―
だが頭で分っても体の震えが止まらない。
(…そんな…こんな所で…自分は…何もしないまま…)
どんどん視界が真赤になって行った。
段々と時間の感覚が狂い始め、恐怖と生への渇望が爆発的に湧き上がって行く。
(やだよ…まだ死にたくない…)
心臓もバクバク音を立て、歯もガチがちと鳴らし顔も氷点下の中に居る様に生気を失わせて行く。
「まだ終りたくないよ!! まだ死にたくないよ!! まだ死にたく無いんだああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
その叫びに答えるようにブレイバのバイザーが赤く光りだす。
――Vibration Heart System――
英語の単語三文字が浮かび上がると同時にブレイバーが激しく発光。
赤い光が格納庫内を包んで行く。
☆
双翼の周辺は完全に取り囲まれていた。
完全武装したアシュタルのアンドロイド。
そして一つ目のパワードスーツ四体。
まさに袋のネズミ状態である。
今正にパワードスーツの一体がハッチを爆破し、突入しようとした瞬間。
ブレイバーがハッチを突き破り、一つ目のパワードスーツの頭をワシ掴みにしてそのまま地面を滑る。
『な、何だぁ!!??』
パワードスーツなので突然中には人がいる。
突然の出来事に一つ目のパワードスーツ装着者は成す術無くそのままサーフボード代わりにされた。
装甲を重視した様な無骨な外見が地面を滑って行く。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
『こいつガキの方か!!?? 取り押さえろ!!』
稜はまるで闘争本能に任せたているかの様に咆哮を挙げる。
素手のアンドロイド達が群がって来るが稜は腕を思いっきり振るだけで敵を粉砕する。
その隙にサーフボード代わりにされたパワードスーツは離れた。
『何だコイツの異常な出力は!!??』
『化け物か!!??』
次々とアンドロイドが押さえ込もうとするが耐久力の有りそうな胴体の鎧事蹴りで真っ二つにされたり、拳で穿たれたりなどして次々と撃退される。
『応戦だ!! 応戦しろ!!』
『こんな話聞いていないぞ!!』
一つ目のパワードスーツが手持ちの火器で発砲。
その威力で木々を倒して行くが稜はまるで獣の様な反応とスピードで跳躍。
左脇のウェポンラックから棒を取り出す。
棒のスイッチを押すと光の剣になり、そのまま稜は一つ目のパワードスーツの一体に振り下ろした。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??』
脳天から焼き切る様に切り裂き、胴体、股間を一刀両断。
そして後方跳躍して離れる。
直後、サイクロプスの一体が爆発を起こした。
『ビームの剣だと!!?? もう実用化していたのか!!??』
『こっ、こっちに来るぞ!!??』
鬼気迫る物を撒き散らしながらブレイバーは、稜はビームソードを片手に迫った。
普段の彼を知る人間が見たら間違い無く目を疑うだろう。
『うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』
臆した様子も見せず、稜は一つ目のパワードスーツから発射されるアサルトライフルくらすの銃弾を掻い潜りながら迫る。
その姿は宛ら獲物を目の前にした野獣だった。
『と、飛んだ!!??』
一定距離まで近づくと再び空中に舞う。
空中をクルクルと前回転しながら相手の背後に着地。
そのまま弧を描く様にビームソードを振る。
『な、何だコイツは!!??』
『うおぉ!!??』
胴体を切り裂き、二体の一つ目のパワードスーツを同時に撃破。
動力に引火して爆発を起こす。
『ひ、ヒイイイイイイイイイイイイ!!??』
最後の一つ目のパワードスーツは恐怖に狩られながらも銃を向けた途端、稜はビームソードを投げた。
まるで投げナイフのように一直線に飛んで行く。
『こ、こんな攻撃で!!』
横にサッと回避し、ビームソードは木に突き刺さり。
そうして前を向くと既に稜は眼前まで迫っていた。
鉄と鉄がぶつかり合う音が響く。
ブレイバーの、稜の拳が一つ目のパワードスーツの鳩尾へアッパーが直撃。
そのまま拳で持ち上げる様に宙に浮かした後、右腕の内蔵武装をON。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??』
腕の真下に搭載されていたヒートーナイフの刀身が食い込む。
そのまま短い刀身に稜の感情が注ぎ込まれたのか、一つ目のパワードスーツの背中を卵から孵る雛鳥の様に、赤い閃光と共に突き破る。
☆
蒼翼を不時着させた緑色の戦士は空中からこの様子を眺めている。
あの凄まじい動きを見て、絶句していた。
戦闘の素人の筈がまるで歴戦の戦士の様に動き回る姿。
事前情報と明らかに食い違っていた。
最後の一つ目のパワードスーツが爆発した所で通信が入る。
『な…何なんだアレは…素人では無かったのか!!??』
『K-04。撤退しろ。予想以上にWAGUの動きが早い…それにあのパワードスーツは何か異常だ』
『クッ…分った』
ホッと安心したのか、戦えなかったのが悔しいのか自分でも良く分らない返事を出してその場を離れた。
既に現場には警察のサイレン音が向って来ている。
同時に輸送ヘリの機影も捉えた。
『引き際か…次出合った時は私が相手をしてやろう…それまで待っていろ』
そう言って緑色の戦士は飛び去って行く。
第一話 FIN