第十八話「勉強会・二日目」
零式強化外骨格
時乃宮 夢子がアシュタルに立ち向う為に開発したパワードスーツ。
主に集団での連携などを重視して設計が成されている。
零式制作以前は月見野 由香里が使用している高機動型のTYPEー02、格闘戦特化型のTYPE-01が設計された。
そして零式が制作された際は様々な訓練を始め、以後アシュタルなどの戦いを経て行く中でマイナーチェンジを重ねている。
後にこの零式パワードスーツの後継機である一式強化外骨格がロールアウトし、自衛隊などへ正式に配備される予定だ。
オリジナルヒーロー戦記SS
ヒーローフォース
第十八話「勉強会・二日目」
五月三十日 土曜日
皆雪旅館 稽古部屋
皆雪旅館の施設の一つとして備え付けられた部屋。
床は畳張りの柔らかい感触が足元に広がる。
窓からは太陽の光りが降り注ぎ、部屋全体に電気入らずの明るさと暖かさが感じられた。
何より数十人が稽古するには十分な広さが其処にある。
そんな場所で胴着を着た倉崎 稜。
そしてこの旅館に住まうレイ・ブルーダーが竹刀を持って稽古していた。
レイ独自のルールで防具の類は付けていない。
その直ぐ傍ではこの勉強会を聞き付けて来たのか村雲 青華と宮園 恵理が竹刀で稽古している。
此方は一応防具は付けていた。
「実戦で鍛えたのか…結構強いじゃねえか…」
「いえ…まだまだですよ。まだ戦い始めてから一ヶ月も経ってないですし」
「たく…こっちは俺は幼い頃から鍛えられてるってのに戦い初めて一ヶ月の奴に越えられたら立つ瀬はねえぜ」
笑みを浮かべる稜に対してレイは苦悶の表情を浮かべていた
そんな両者の間で竹刀がぶつかり合い、衝突する度に胴着が着崩れ、汗が飛ぶ。
このレイと稜の模擬戦はレイがずっと勝利しており、稜は一度も勝って無いが段々と稜も腕を挙げているのかレイを追い込むシーンが何度も見られる様になっていた。
「ふふふ…稜さんは才能がおありの様ですね」
「ええ。私サイボーグだってのに貴方から一本も取れないと自分才能無いんじゃ無いかって思う時があるわね」
大して此方もサイボーグである恵理が常人(?)の青華に対して一本も取れないと言う異常事態が展開していた。
そもそも青華の場合、コーディネイターとガンダムファイ〇ーを比べるのと一緒で普通の人間かどうかすら怪しい。
だが全てに置いて常人を超えているサイボーグである恵理からすれば悔しいの一言だったが、まだジャンと言う前例がある分心のダメージはまだ小さい。
なので恵理は幾ら強力な力を持つサイボーグと言えどもちゃんとその力を使いこなさなければその道の達人には劣る(本作の場合、何か違う気もするが)と言う良い教訓だと思う事にした。
何か相手の身体能力がおかしい気もするが。
「いえいえ。こう見えても私も結構ギリギリ何ですよ?」
「そんな余裕そうな笑みを浮かべて言わないでください…益々自信無くしそうですから…」
「私も剣道の練習相手が両手で数えられるぐらいしか居ませんでしたから、こうして付いていける人がいるのは嬉しいです」
「だけど青華さん弓道部でしょ?」
「村雲家ですから剣の心得は必要です」
「どう言う理屈よ…」
そう毒付きながらも青華の猛攻を防ぎつつ反撃の機械を窺う。
一撃一撃が女とは思えない程に重く、何よりサイボーグの目でも捕らえ切れないぐらい速い。
ぶっちゃけ生身でもちゃんとした武器があればこの人はサイボーグに勝てるんじゃ無いのかと思い始めていた。
「本当に強いですね青華さん」
「ああ。まあ村雲家ってのは基本人間兵器だからな。他の四神継承者にも会った事があるが玄武の継承者は嫌だったな…」
「継承者? 朱雀とか青龍の事ですか?」
稜は確認の為、改めてレイに聞いて見た。
「ああ。お前も見た通り朱雀とか青龍ってのは村雲姉妹が変身したあの姿だ」
「ああアレですか…」
もう一週間以上経つ前回の戦いを思い出す。
あのベルゼルオス並、もしくはそれ以上に強力な力を持った和風の鎧。
アシュタルの並大抵のサイボーグなら相手にならないだろう。
水蓮の様なイレギュラーが現れない限り現時点では無敵とも言える。
PS計画の存在意義って何なんだろうと思ってしまう。
「村雲家ってのは表向きは武術家の一族だが、朱雀、青龍、玄武、白虎の霊装具…これ達を一括りに四聖装具とも言うな。この四聖装具を守り、その担い手と供に受け継ぐ家系何だ」
「アレ以外にまだ二つあるんですか…」
「ちなみに俺は玄武の四聖装具に推薦された事があるが断った」
「え?」
意外な過去が突然出てきて稜は思わず目を丸くした。
「実は候補者の中に村雲家の中でも一番上の本家に居る奴がいてな? ソイツの恨みを買うのが面倒だったからよ。確か村雲 氷牙とか言う野朗でな。大した実力もねえ癖にやたら家名だの何だの五月蝿いからドツき回した事があるんだ」
「…本当ですか?」
「ああ、思った通りヤム〇ャキャラだったな。最後辺り地面這い蹲って謝罪して来たんで勘弁してやったのは良い思い出だ」
「昔から無茶苦茶やってたんですね…」
心底レイは破天荒(本来の意味とは違うが…)だなと稜は思った。
「まあんな事があったんで今でも村雲家の本家には近付けないんだよな。その上アイツも結局玄武に選ばれなかったらしいし」
「それは自業自得だとしてもその人は選ばれなかったって…何か試験でもあるんですか?」
「何でも四聖装具は意思を持っていて装着者を選ぶんだ。まあ俺が選ばれた所を察するにぶっちゃけ家名だの血筋だのは関係ないっぽいけどな」
「意思を持ってるんですか?」
「ああ。どう言う技術かは知らないが、どう考えてもありゃオーパーツの一種だな」
よくは分らないがそう言う事らしい。
今度詳しく青華から聞いてみようかなと思った。
「そういや白虎の継承者は結構面白い奴だったな」
ふと思い出したようにレイは白虎の継承者の事を話し始めた。
「名前は村雲 雷太って言うんだが、恐らく素手なら俺と同じぐらいの強さじゃねえか? 最近連絡は取って無いけどまあアイツの事だし元気でやってるだろ」
「へえ~それで雷太さんは選ばれたんですか?」
「ああ。何せ俺が認めた男だからな。普通に白虎の装着者に選ばれたが、一々裸になる変身シーンは嫌ってたから妹にでも擦り付けるんじゃねえのか? 女の場合は幾らでも見るが男の場合はちょっと…ってうげべばぁ!!??」
恵理が投げた竹刀が横ローリング回転をしつつレイの顔面にヒット。
レイはその場でのたうち回った。
「ソレはセクハラよ…」
「確かに恵理さんの言う通りですね。アレは今でこそ馴れましたが人前でやるのはかなり恥しいんですよ?」
(そう言いますけど、見てるこっちも恥ずかしいですよ……)
稜はそんな事を心の内で考えていた。
☆
今回で勉強会も二日目。
この勉強会を聞き付けたのか昨日と比べて参加者は増えた。
皆雪旅館の宴会場を貸し切ったプチ修学旅行状態である。
「え~と今回の相手は綾さんですか…」
「どうも皆雪 綾です。何時もレイ君がお世話になってます」
そう言ってお辞儀する。
透通る様な雪の様に白い腰まで伸びた長い髪の毛。
そして美しく整った肌。
屈託の無い無邪気な笑顔に幼さが見える顔。
胸が多少大きい(後にバスト92と判明)が天照学園では平均的なサイズ。(恵理とか恵理とか恵理とか)
その容姿だけでも充分アイドルとしてやって行けそうだった。
彼女の名は皆雪 綾。
この旅館の経営者の娘、つまりは跡取り娘と言う事になる。
「成績悪いんですか?」
「う~ん…そうでも無いよ? だけどレイ君はお前は人生を学んだ方が良いって言われてるからこの辺で人生を学ぼうかと…」
(人生!!??)
稜は日本の高校生にしては波乱万丈な人生を送っているが人生を語れる程精神は成熟はしていない。
聞く相手が十八歳とは思えないダイ〇ーン3でお馴染破嵐 〇丈なら兎も角、稜に聞くのは明らかにお門違いだ。
ぶっちゃけ他を当たって欲しい。
だが其処まで稜は融通が聞く人間では無かった。
「う~ん…その自分じゃ無理です…」
「どうして?」
「まだ人生を語れる程、生きていませんから……」
「じゃあどれぐらいで人生を語れる様になるの?」
「さあ…自分には分りません」
稜は正直な人間であった。
綾の質問に対して真面目に答えて行った。
一方恵理はと言うと――
「なあ恵理よ、昨日はしたアルか?」
「貴方も突然何なのよ…てかちょっと見ない間にキャラ変わってない?」
「打ち解けたと言って欲しいアルよ」
今回恵理が勉強を教える相手である春龍にチャカされた。
何かここ最近急に親父臭くなっている節がある。
「打ち解けたねぇ……所でティリアさんの事何だけど」
「その様子だと稜から聞いたアルな…」
「まあね」
恵理は真剣な眼差しで頷いた。
ティリアとの接点はそんなに無いが、彼女には色々迷惑を掛けた。(実際掛けて無いが、恵理はそう思っている)
そのお詫びをするぐらいなら手助けするのは構わないと思っている。
「私もティリアの過去には詳しい方では無いアル。だが彼女が生まれた土地がイスラエルでフォックスがテロリストと考えるのなら接点は一つアル」
「フォックスのテロに巻き込まれたって事ね」
「それで何らかの恨みを抱く様になった…と考えるのが自然アルね」
「そうなるわよね…そう言えばそのティリアさんは?」
「たぶん天村財閥のビルか、もしくはSDFの基地内にいると思うアルよ。勉強そっちのけでブレイバーの訓練をしていると思うアルから」
☆
=SDF敷地内=
海が見える広い滑走路の近く。
其処で今日もパワードスーツの訓練が行われていた。
朝からバトルロイヤル方式で戦っているのである。
この戦いは見物者はかなり多く、工科学科出身の生徒や基地内の職員なども混じっていた。
『ヤレヤレ。まだ馴れてないってのにちょっとは手加減して欲しいもんだぜ』
ブレイバーと比べてややゴツゴツしたパワードスーツ零式の一体がペイント弾で染まる。
新入隊員の一人「グレッグ」でSDF出身の黒人だ。
現役時代は歩兵でかなり実力があるが、まだパワードスーツに馴れていないのか真っ先に脱落した。
『グレッグさん脱落っと……んじゃあ私は火渡隊長貰いっと』
『貴様、もう少し隊長に対して敬意を払わんか!!』
『今は訓練中ですよ~それに火渡隊長に罵倒されると何か下半身がハアハア言って…』
『気色悪い事言うな!!』
五人から四人に減った事で一対一の戦いが発生。
麗奈と同じWAGU出身の沢松 健との戦い。
お互いの間で凄まじい弾幕が飛び交うが、沢松 健は後退しながら。
麗奈は前進しながらの応戦と言うのが大きな違いだった。
『ててててぃ、ティリアさん!? 訓練なのにななななな、何か物凄い勢いですね!?』
『クライアントが見てる前でヘマは出来ないんでね!!』
一方此方は由香里が零ーTYPE2(プロトタイプ零式。高機動戦闘特化型)で空中を高速移動しながらティリアに応戦。
対するティリアは件のブレイバー二号機。
まるで最初からティリアの為に作られたかの様な砲撃戦仕様の白いブレイバーだった。
バックパックと接続している二門の大砲。
肥大化した肩にはミサイルが小型ロケット砲が搭載。
胴体には12・7mm弾を発射するマシンキャノン。
両足にはミサイルパック、そしてキャタピラがまるでローラースケートの様に搭載されていた。
両手に今回持つのは模擬弾を発射するアサルトライフルだ。
「やれやれ…また若い子を雇って…例え実力主義だとしても限度ってもんがあるんじゃ」
拓海司令はそう思いつつテントの下でこの様子を直に見守っていた。
横に立つ天村 京は表情を変える事無く言葉を返す。
「彼フォックスとの因縁を考えれば、何かしでかす前にああやって鎖を付けて置かなければならないと思ったまでです」
「それは自分の意思かい?」
「学園長の意思ですね。それにティリアの経歴を考えれば有り得ない話ではありません…まあ私からすればかなり良い逸材が合法的に手に入ったと考えております」
「成る程ね……」
京のこう言う性格は今に始まった話では無いのであえてスルー。
拓海は京を罵倒出来る程、自分も善人では無いと自覚している。
それにこうしてまだWAGUの正式な司令として居られるのもどう言う風の吹き回しか京の屈力による物が大きい。
拓海に取って京とは『自分の首』の恩人なのである。
故に強くは言えなかった。
「さて…この短期間の内にかなり仕上がってるようですし…午後から水曜日までちょっとティリアさんには休憩して貰いましょうか」
「そう言えばテスト期間中だったんだね」
「ええ。彼女は成績は良い方ではありませんし、それにメンタルケアも考えれば勉強会に参加させた方が…」
「勉強会?」
「倉崎君や宮園財閥のご令嬢、私の弟が所属する一年Z組の実質的な纏め役であるレイ・ブルーダー…シュハイン・ブルーダーの養子が主催しているんです」
ちなみにシュハイン・ブルーダーは前回の戦いから機体をオーバーホールしており、仕方なく以前の乗機である青いA-10爆撃機で今日もパトロールしていた。
「へえ~最近の若い子でもやる子はやるんだね…」
「話し込んでいる内に結果は出たようです」
勝者は麗奈だった。
最初に由香里とティリアとの戦いで由香里が勝利し、その直後に健が漁夫の利を狙う形で由香里に直撃弾を当てる。
更にその隙を付いて麗奈が勝利と言う何ともパズルゲームの連鎖的な終り方だった。
☆
時は流れ、日は真上に達し昼飯時となる。
今回集まった人数の腹を満たす為、必然的に料理は協力して作る事になる。
志朗がやって来たのは宴会室に食事の匂いが充満し始めた頃だった。
「いや~遥訳合流出来ましたよ」
「志朗さん。扇風機マンとガスコンロマンは……」
「何とか修理には目処が立ちました。ベルゼルオスの完成と並行に進めています」
「そうですか」
その言葉を聞いて稜はホッと安堵感を覚えた。
「その点に付いては私も心配だったアルよ」
「命の恩人ですもんね」
フォックスとの戦いで身を挺して庇ってくれたのだ。
恩義を感じない方がオカシイ話である。
「そう言ってくれると作った私は鼻が高い。何としても修復せねばなりませんね」
「それよりも貴方此処に来る意味あんの?」
「おや失礼ですね…私は勿論教える側として参加です。それに、テスト前に配られたプリントってどうにも放置しがいになりますからね~この機械に掃討しちょうおうかなと」
幾ら頭が良かろうとテスト前に配られるプリントはちゃんと真面目にやらなければならない。
それは内申の評価にも響くからだ。
稜や恵理もその点は重々承知しており、既にもう片付けている。
「プリントな~そう言えば何処行ったっけ?」
「そう言えば口陰さんの机って滅茶苦茶置き勉してましたよね…」
テスト期間が始まった途端引越しでもしたかの様に綺麗な机となり、更に落書まで消滅。
学校ではよくあるテスト前の清掃である。
口陰もその例に漏れず担任の司令一つで稜の手により生理整頓されたのであった。
「だって面倒臭いし~」
「そんなんだからプリント失くすんでしょうが…ルーズに生きればカッコイイと思ったら大間違いですよ」
「テメェ最近ハッキリ物言うようになったな……」
入学から自分の立場が段々と下がっている事に気付いた口陰であった。
「あ…ティリアさん」
「よお」
「あ…倉崎さん」
其処でティリアもやって来る。
続いて夢子までもが後ろからやって来た。
二人とも私服姿でティリアはサスペンダーが付いた短パン、上は黒のタンクトップの上に茶色のジャケットを羽織っている。
夢子はシンプルに白のワンピース姿だ。
「夢子さんは確か中等区の筈じゃ…」
「一応これでもMIT卒ですから皆さんに勉強を教えるぐらいなら可能ですよ」
MIT
マサチューセッツ工科大学の略称として使われ、米国のマサチューセッツ州ケンブリッジ市にあるアメリカ合衆国の工科大学である。
良く漫画で天才少女や天才少年の設定として多用されているから聞いた事が多い方もいるだろう。
非現実的に思えるかも知れ無いが現実でも小学生ぐらいの年で大学を卒業している人間はいる。
ジョ●ョ第5部のラスボスが二重人格で人格により体格が変わるがそれにも実在した人物がいるのと同じ。
現実は小説よりも奇なりと言う言葉が良く分る実例だ。
「では早速私は誰を担当すれば良いんでしょうか?」
「じゃあ口陰さん辺りで…」
「俺かよ!!?? テメェ俺に何か恨みでもあんのか!!??」
ギャーギャー喚いているが実際一番危ないのは雅人。
年下でありどう見ても小学生の体型である夢子に教えられれば、雅人はその屈辱を胸に真面目に生きてくれる。
と言うのは嘘。
ただ稜は思い付きで言っただけである。
☆
(何だこの屈辱的な気分は……)
雅人は途轍もない敗北感を覚えつつ科学を夢子から教えて貰っている。
傍から見れば出来の良すぎる妹と出来の悪すぎる兄の図。
兄より優れた妹など存在しねえと言うのが嘘だ(謎)
「そういやお前中等区出身何だろ?」
「ええ。そうですけどテストが『簡単すぎますから』息抜きに…」
雅人は中学のテストを思い出す。
授業を受けずサボってばっかだったせいか口陰は今一つ分らない。
かろうじて二桁台とかそんな悲惨な有様だ。
その事を思い出してガックリと
「ごめん…質問が悪かった……」
「は…はあ…」
夢子からすれば此処まで頭の悪い人間でどう見ても年上の人間に物を教えるなど初めての経験であった。
今この機会を逃せばもう二度と巡り合えなかったのかも知れない。
無くても今後の人生にはあまり影響は無いかも知れないが。
「たく…頭が良い奴が此処まで羨ましいとは思いもよらなかったぜ…」
「そうですか?」
「あのな~自分を基準に考えんじゃねえよ…」
「だ、だけど日本語は世界でも有数の習得が難しい言語でして…」
「お前それ慰めになってねえぞ……」
愚痴を言いながら雅人はシャーペンを走らせる。
横には教科書。
手元にはノートを置き、教科書の内容で重要と思われる項目を書くと言うスタイルだった。
「あ~あ、そういやアイツ達元気にしてるかな…」
「アイツ達?」
「中学時代のツレだよ。中学時代は自分の学校や他校相手に大暴れしてよ…高校生にもケンカ売った事もあったな。地元じゃ結構名のと追った不良だったんだぜ」
「もしかして他にもカツアゲしたりとか、万引きしたりとか……」
「いや…それはやってないよ?」
手と合わせて首を横にブンブン振った。
「大体はやる事と言えばケンカだ。他にも教師打ん殴ったりもしたがな」
「そ、それは不味いでしょ…」
「ああ。停学食らったしな…確か中学二年ぐらいに赴任して来やがった野朗でな。名前は屑宮とか言う奴でクズ先って言うアダ名で呼ばれてた」
雅人はその当時の事を思い出したのか眉間に皺を寄せて拳をプルプルと振るわせる。
察するにかなりムカついていた様だった。
「自分が一流大学出身だからって、俺見たいな不良をやたら目の敵にして来てな。しかも授業で問題を答えられなかったらネチネチと嫌味を言う野朗で『これだから頭の出来が悪い奴は~』が口癖だったな」
「は…はあ…」(そう言う人いるんですね…)
「しかも俺に対しては執拗にやられてな…まあ相手にはしなかったが段々と腹がたってな…ブチ切れて…」
「殴ったと?」
「ああ。打ん殴って気絶させた後、そのままバリカンでハゲ頭にした後、ズボンを剥ぎ取ってチ●毛を…」
雅人の後頭部に衝撃が走った。
まるでハンマーでぶっ叩かれたかの様な鋭い痛み。
背後には金色の髪を持つあの少年がいた。
「いってぇ…何すんだレイ!! 人が折角武勇伝話てんのに!!」
「いや…そろそろ止めた方がいいかなと…」
「幾ら何でも下品ですよそれ」
「ウルセェ!! 中途半端にやると訴えられるだろうが!!」
((そりゃ髪の毛とチ●毛を中学生に剃られたらな……))
そもそも何故バリカンを持ち歩いていたかのツッコミはこの時無かった。
「何かあっちはあっちで盛り上がってますね」
「最後辺り下品だったけどな。それよりもお前は私に何か様があるんだろ?」
ティリアの質問に稜は頷いた。
「…ティリアさんも分ってるでしょ?」
「……此処で話せる内容じゃない。場所を移そう」
二人は他人の目を盗む様にコッソリ勉強会から抜け出して行った。
☆
二人は暖かい温泉に浸かって話していた。
皆雪旅館にある温泉。
男風呂、女風呂の他に混浴があるのだ。
しかしどの風呂も露天風呂であり、外の風景が眺められる。
その天照島の山や巨大大樹が広がっており、天照島の風景を一望出来る名所と化していた。
「此処なら誰も聞かないだろう」
「何で混浴で話すんですか?」
大事な部分はちゃんとタオルで隠しています。
大事な部分はちゃんとタオルで隠しています。
大事な事なので二回書きました。
「嫁が同伴しないと駄目か?」
「嫁って誰ですか…まだ結婚してませんよ…」
ちなみに稜は何度か恵理と一緒に入っている。
その時の事を思い出すと何だか気が変になってしまいそうなのでなるべく思い出さない様にしていた。
「父親に虐待されてたお前には分らないかも知れ無いが、私の親は良い親だった……父は戦車兵でちょっとオタクっぽい所があったけど、優しかった。母もそんな父に呆れる事も多かったけど何だかんだでそんな父を愛してた…本当、最高の両親…だった」
他人の親の自慢話を聞くのはどちらかと言えば苦手である。
どうして自分と比べてしまうからだ。
そして大抵嫌な気分になる。
だがティリアは態とそんな事をしている訳では無いので稜は堪えて耳を傾けた。
「……もう気付いているだろうとは思うがフォックスのテロから私を庇って両親は二人とも遠い所へ逝ってしまったよ…この頬の傷はその時に付いた物さ」
ティリアは頬の切り傷を指でなぞる。
頬の傷はティリアの心の傷が具現化した物だったらしい。
稜もある程度は予想していたとは言え、こうして本人の口から直接聞くと何だか悲しい気持ちになって来た。
だけどティリアが堪えている以上、稜も我慢した。
「フォックスの仕業だって分ったのは病院に運ばれて目覚めた後さ……父の親友が教えてくれたんだ」
「親友?」
「傭兵さ。しかも凄腕のね…私はその父の親友に無理行って仇討ちを…フォックスへの復讐を誓ったんだ…」
両親の仇討ち。
小説、漫画、アニメでも使い古されたシチュエーションの一つ。
しかしこうして自分がその物語の主役から体験談を聞くなど稜はちょっと前まで思いもしなかった。
次第に稜はその物語へ引き込まれて行きながらも続きを聞いた。
「そして…復讐を果たしたんだね?」
「ああ。本当にその筈だった…この手で殺したと思った。あの時は嬉しくて涙が出た…けど…けどアイツはまた私の前に現れた!! しかも悪魔の様に強くなって!!」
その時の事を思い出したのか様にティリアは吐露した。
「もう私の復讐とかそんな話じゃないんだ!! アイツは生きている限り命を食らって生き続ける!! そしてまた私の様な人間を生み続ける!! しかもフォックスはその事を分った上でやってやがるんだ!!」
そして稜に顔を向けた。
「稜…これだけは覚えて置いてくれ。同じ人殺しでも無関係な奴を楽しんで殺すのと、生きる為に、守る為に殺すのは違う!! 例えその結果が人殺しだとしてもだ!!」
「ティリアさん…」
この言葉に稜は大きく揺さぶられる物を感じた。
「頼む!! お前はアイツ見たいには絶対ならないでくれ!! 戦いにしか生きられない兵器見たいな奴には…少なくとも恵理はそんなの望んじゃいない」
「どうして其処まで自分の事を…」
「……その傭兵に似てんだよ。お前が……」
この呟きに心臓がドクッと反応した。
「始めて見た時は驚いた……まるでその傭兵が若返ってやって来たって思った…その氷の様に冷たくて、何処か寂しい目とかまでもソックリそのままで…」
「そんなに似てるんですか?」
「ああ、ソックリなんだよ……何から何までアイツと…好きだったあの人と……」
何処か儚げの表情でティリアは呟いた。
――二人は知らなかった、この会話を盗み聞きしている影達の存在を――
「うわ~もしかしてこれって告白タイムアルか?」
「それよりもどうして稜とティリアが一緒に風呂入ってんだよ?」(*●人)
「ちゃんと話聞けよ……」(*レ●)
混浴風呂の隣にある男湯に蠢く影達ありけり。
この者達は二人の会話を必死に盗み聞きしていた。
「それよりもティリアにあんな過去があったとはな…」(*レ●)
「普段から明るい奴アルからな~」
「だけど稜は……」
「御主が心配する事アルか? 言わば恋敵アルよ?」
「分ってるんだけど、未だに不安に思う時があるのよ。本当に私で良いのかって…」
話はやがて恋話へと傾いて行く――
「そんな事言うとまた稜が泣き付いて来るんじゃない?」(*●ンディ)
「御主もそう何度もキングゲ●ナー張りの告白は体験したくは無いアルよな?」
(アレはどちらかって言うと聞いてるこっちが恥しくなるのよね…)(*●衣香)
すかさずサポート――
「アイツ何て言うのかな…普通の人間とは色々と感覚が違うのよ…ずっと一人で生きて来たせいもあるのかも知れないけど」
「けど滅茶苦茶分り易い性格じゃない。ああ言うのって結構羨ましいわね」(*●ンディ)
「下手するとヤンデレですけどね」(*●朗)
(あ…それ私も思った)(*●衣香)
そして脱線して行く――
「何か横が騒がしいですね」
「…本当に暇な奴が多いぜ、この学園は」
横から漏れている音声で何が起きているか察したティリアは呆れながらも湯船から出る。
バレなきゃイカサマじゃねえと思ってやったがまさかこうなるとは思いも――いや、予測は出来た。
出来たからこそあえて混浴にしたのだ。
流石にアイツ達もそれぐらいのモラルはあるだろうと思っていたが大きな計算違いだった。
それこそ足し算間違えてるぐらいのレベルだ。
だって自分だってそうするだろうし。
「自分はもう少しゆっくりして行きます」
「ああ。もう嫁(●理)にはバレてると思うからちゃんと謝っとけよ」
「何をですか?」
「……本当、良い性格してるぜお前」
苦笑しつつティリアは退散。
同時に男湯から人の大量移動音が流れ始めるが稜は気にせず暖かい湯を体全身で味わう。
と行ってもこの温泉に入るのは今日でもう二度目なのだが。
それでも飽きない所を見ると自分は温泉好きなのかなと思ったりした。
「恵理さんの事も大事だけど…自分はティリアさんの事…どう思ってるんだろうね」
最近自分の事が分らなくなる事が多い。
いっそ自分の事がゲームの様にパラメーターで表示出来たら便利なのにと思う時がある。
そうすればこの悩みも直に解決出来るかも知れないのに。
だがそんなの出来る訳無い。
(分らない………けど、恵理さんならきっと……)
なので自分の思考パターンを放棄。
恵理ならどうするかと考える。
そうするとさっきの悩みが嘘の様に吹き飛んだ。
「ティリアさんの復讐の成就を手伝う…か。本当は止めなきゃならないのにね…」
「ええ。本当にそうね」
私服を着た状態で恵理が温泉へ上がり込んで来る。
硬い床は湿っているのは分っているので恵理の足は素足の状態だった。
そんな恵理に稜は特に気にした様子も見せず恵理に話し掛ける。
「恵理さん…」
「復讐はいけない事だって良く言うけど…それでもフォックスって奴は許せないわ。それにフォックスがアシュタルである以上、どの道ぶち当たる壁だわ」
「だから遅かれ、速かれ結果的にティリアさんの復讐は成就すると?」
「まあそうるなわね。それはそうと…」
恵理は稜に拳を振り落した。
「え…恵理さん…痛いです…」
「何で殴ったか分れば一人前だって認めてあげるわ…」
「えーと何で?」
「あーもう!! どうして私はこんな奴に惚れたんだが!!」
恵理はプンプンしつつ。
その場を立ち去った。
「…怒られちゃった」
昔から恵理に怒られるのは稜に取ってはかなり精神的ダメージが大きい。
まだ親父に打ん殴られる方がマシなぐらいだ。
その後、稜は夕飯になっても姿を現さないので恵理が呼びに来るまでてずっとその場で三角座りをし続けるのはまた別の話であった。
第十八話 END
ACFAでネタ機体作ってたら投稿が遅くなってしまいました。(ボー●とかホ●ートラックとかリ・●ズィとかド●とかザ●とかファ●ファンとかrY)
私生活では会社見学とか会社説明会とかに参加したりしたけど、中々成果が上がらないんですよね。
一番辛かったのが会社の人に作品見せた後に酷評貰った時ですね。
あれだね…腐らずに頑張るしか無いですよね。
うん。
(*ピクシヴの絵柄改造中の理由がこれである)
それと今日仮面ライダーW見逃してしまいました。
やはりあの時間帯起きるのが辛いっす。
Wになってから段々と見逃す回数が増えて来たような(汗)
そしてワンピースとかは見れるんだけどね~(汗)
それはそうと最近ワンピースに再び嵌り始めてます。
最初の方の巻とか見るとワンピースの世界の奥深さが改めて分ったりするんですよ。
卒業制作課題の方ですがボチボチ進んでます。
小説イラストって言う事で小説の話の内容を考えてそれにイラストを描こうって言う課題です。
私が考えた内容はオーガンに勇者シリーズを足した様な作品です。
もしかするとそのイラストをピクシヴで挙げるかも知れません。
それではまた次回に御会いしましょう。
+注意+
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