File.1:殺人少女
白い腕から滴り落ちる深紅のルビーのような赤黒い液体・・・。
その液体は白い腕のひじまで到達するとその少女の目の前に横たわっている屍に一滴ずつ屍の洋服に染み込んでいく・・・。
「っはぁ、はぁ、はぁ・・・。・・・がう・・・ちがう。あたしがやったんじゃない!!」
『貴様だ。そこで永遠の眠りについている人間は・・・貴様が・・・紅 美樺が殺したのだ。・・・そう。その手に持っているナイフで・・・貴様が・・・』
気味の悪い声としゃべり方だった。耳元で囁かれている様で吐き気がした。
「違う・・・あたしじゃない!殺したりなんかしてないっ!」
『・・・死体を学校の裏山の奥深くに行って埋めろ。・・・さもなくば・・・捕まるぞ?』
「っ!やめて!誰なの。さっきから・・・私に話しかけないでっ!」
『・・・』返事はなかった。ミカは恐る恐る手にしているナイフと自分の目の前に広がる血の海を視界に入れた。
・ ・・あたし・・・どうすればいいの・・・。そういえばさっき・・・アイツが・・・
『死体を学校の裏山の奥深くに行って埋めろ』って・・・。
ミカは殺害現場となった王陵高校の屋上から死体を背負って姿を消した。だが、死体が消えても真っ赤な血の海は満月に近い形の月に照らされ変に光っていた。
〜翌日〜
「ミカぁ?ご飯よ。おきなさい。」ミカの母親がミカを起こしにきた。呼んでも呼んでも起きてこないので直接起こしにきたのだろう・・・。
「うぅん・・・。今日・・・学校休む・・・。」
「・・・いい加減にしなさいっ!!ほらっ。涼眞君が迎えに来てるわよ。」
「り、リョーマがっ!?」あたし、バッとベッドから降りて急いで制服に着替えた。
「もぉ。お母さん・・・なんでもっと早く・・・おこし・・・て・・・いえ・・・何でもありません・・・」お母さんの機嫌悪そうな顔を横目で見てあたしは悟った。
『口答えすると・・・血祭りにあげられる・・・』と。
血・・・そういえば・・・あの光景は・・・夢だったのだろうか・・・。夢・・・そうであってほしい・・・。あたし、そう思いながら階段を下りていった。もし・・・もし夢ではなく、あれが現実であれば・・・私は一生ではなくとも長い間冷たい鉄格子とコンクリートに囲まれた牢屋の中で・・・すごすことにぃぃぃぃぃ・・・。
「どうしたの?顔色が・・・まぁ、あんたは年中白いしね。はははっ。」・・・我が母ながら・・・年中陽気で・・・うらやましい・・・。
「あ、リョウマ。ちょっとだけ待って!すぐご飯済ませてくる!!」あたし、玄関に座っていたリョウマに顔の前で手を合わせてゴメンっ!のポーズをするとすぐさまキッチンへ行き冷蔵庫からバターロールをだしてほおばった。それを見てお母さんが
「まぁ・・・。はしたない。あんた・・・女の子でしょ?もう少しお上品にしたらどうなの・・・。はぁ・・・雄輝はあんなにおとなしいのに・・・姉として恥ずかしくないの・・・」
「もぉ・・・。うるさいなぁ・・・。あたしはあたし。ユウキはユウキ。姉も弟もない!行ってきます!!」
ミカは走って玄関に行ってしまった。
「はぁ・・・。どこで育て方を間違ってしまったのかしら・・・はぁ・・・」
「・・・母さん。俺も行ってくるよ。」
「あぁ。ユウキ。行ってらっしゃい。」
「リョウマ、ごめん!待たせたね・・・。」再びゴメンのポーズ。
「いいよ。ミカの寝坊は今に始まったことじゃないし。」うぅっ・・・。あたしが悪いんだけど・・・ちょっとムカつく・・・。
「あ、ユウキ。おっはよう。」リョウマが私の弟、ユウキに挨拶する。
「・・・おはようございます。朝から大変ですね。リョウマさん。・・・猛獣のお散歩・・・」
・ ・・猛獣・・・ってあたしのこと?!
「だねぇ。でも毎回のことだからなれちゃったよ。」うぅっ・・・。
星峰 涼眞は私の幼馴染。この家の、隣の隣に住んでるの。もう・・・超アイドル顔でぇ、かっこよくてぇ・・・ってそんなんじゃないからねっ!!!!
私の弟の紅 雄輝は、顔はすっごくよくて、パーツそろってて、スタイルもよくて、COOLで、頭よくて・・・あたし以外のメスだったらお好みの男子だろうけど・・・性格・・・悪すぎ・・・。
「ミ〜カぁ。いつまで突っ立ってんの・・・。俺一人で行くよ?」
「あ、ちょっとまってよ。」ミカはそう叫ぶと急いでリョウマの自転車の後ろに座った。
「・・・ったく・・・。色気もへったくれもねぇなぁ。女子なら横向いて座れよ・・・。スカートのくせに堂々と座りやがって・・・。」リョウマが後ろを向いて呟く。
「へっ?何のこと?」
「・・・リョウマさん。猛獣に何言っても無駄ですよ。馬の耳に念仏?・・・違うな・・・。虎の耳に念仏?て感じ・・・。まぁ、馬のほうが大人しく聞いているだけ利口だな・・・ふっ・・・」っと前を自転車で走っているユウキが言う。
・ ・・。私ってそんなに色気ないのっ!!ショック・・・。
「だなぁ。せっかく美人なのにもったいねぇな。」え・・・。美人?うれしい///
「ねぇ、リョウマぁ。」ん?何だ?と聞き返してくれるリョウマをあたしは愛しく思った。
次々とこみ上げてくる感情を抑えきれなくて、一生懸命自転車をこいでいるリョウマの腰に手を回してギュッと抱きしめた。こういうのが【幸せ】って言うのだろう。
・・・美香はそう思った。【不幸】を知らないというのが【幸せ】だ。
この後の【不幸】が訪れることはアイツしかしらないのだから・・・。
〜学校到着〜
「?みんななんかざわざわしてるな・・・。なんだろう・・・」
「・・・。」・・・もしかしたら・・・もしかしたら・・・。
「・・・事件があったみたいです・・・ね・・・」ユウキが冷静に口を開く。
「な、何であんたにそんなことがわかるのよ。」私、ちょっとあせる。怖くて怖くてリョウマの腕を握る力が強くなる。
「だって・・・屋上に人だかりが・・・たぶん警察だと思うけど・・・しかも駐車場に刑事の車あったし。」・・・。どうしよう・・・昨日のことが事実だとしたら・・・。
「さすがユウキだなぁ。よし。屋上に行ってみようぜ!」リョウマがはしゃぐ。
「そうですね。俺も行きます。」・・・本当ならば・・・この事件(?)に無関係です!って言い切れるなら・・・リョウマが行くんだから私が行くのも当然・・・。でも・・・無関係かどうか・・・わかんないよ・・・もし関係あるなら・・・張本人だよ!!あたしは!
「ミカは行かないのか?」リョウマはミカの顔を覗き込んだ。
「あ、あたしは・・・いいや。」
「なんだぁ?怖いのかぁ?あ、怖いんだろっ!!ヨワムシ〜。」・・・ゴメン・・・リョウマ・・・冗談で言ってるってわかってるよ。でも・・・本当に怖いの・・・そうだよ。ヨワムシだよ。真実を知るのが怖いだけ・・・。
「・・・足・・・震えてんぞ。・・・怖いなら怖いって言えよ。横に素敵なヒーローが二匹もいるだろ?」
「・・・うん。そうだね。たのもしいや」私はその優しい言葉のせいで目から次々と涙がこぼれて校門のところに植えてある芝生を潤した。そうだ・・・あたしにはこんな頼もしいヒーローが二匹(違)もいるじゃないか。怖くない。
『・・・怖くない・・・とは随分と勇敢になったなぁ。ミカ。早くそいつらと屋上へ向かうのだ。』
「や・・・やめて・・・誰なの?あたしに話しかけるのは・・・。」
『私か?私に名などない。・・・しいて言えば・・・貴様の中にいるもう一人のミカだ。・・・さぁ・・・自己紹介は終わりだ。早く屋上へ行くのだ。』
「や・・・やめて・・・あたしの中にもう一人のあたしなんかいない・・・。あたしはあたしよ!」
「・・・?どうしたんだミカ。さっきから独り言がヒドイぞ?」
「ち、ちがうよ。独り言なんかじゃない・・・あたしに話しかけてくる奴がいるの!」
「えっと・・・そんな奴はいないけどなぁ・・・」リョウマが周りをキョロキョロと見る。
「・・・私の心から・・・私のもう一つの人格が・・・私に喋り掛けてくるの・・・!」
リョウマは疑った目であたしを見てくる。・・・そんな目で見ないで・・・リョウマからそんな目で見られたらあたし・・・。どうしたら・・・。
そのとき、リョウマとミカのやり取りを黙って見ていたユウキがミカを抱き寄せてミカの目を手でふさいだ。
「なんだよ急に・・・姉弟で・・・」
「・・・なんだよ、はあんただ。リョウマさん。あんた、少しは・・・気付いてんだろう?こいつが・・・ミカがあんたのことスキだってこと・・・なのにそんな目で見て・・・ちょっとは考えろよ。好きな奴にそんな目で見られるのがどんなにつらいか・・・。」
ちょ、ちょっと!何言ってんのコイツ!てかいい加減はな・・・せ・・・
「・・・」そんな勝手な言い分に反論一つ帰ってこず、足音はどんどんあたしから遠ざかっていった。これは・・・あたしとリョウマの心の距離だ。ここで何も言わずに去っていった。それがリョウマの本当の気持ち・・・。本当の答え・・・。
ミカはユウキの手でふさがれた目から宝石のような涙を流した。
「・・・」そして少しの間その姉弟は紅葉した葉が落ち、風と一緒になって舞うのを一緒にみていた。
〜放課後〜
ううっ!!気まずい・・・リョウマと一緒のクラスだぁ!って喜んだ一学期が懐かしい・・・。
しかもよりによって隣の席かよ。・・・どうしよう・・・このままってのも嫌だな・・・。
「あ、あのさぁ、さ、さっきはごめんな?」えっ?リョウマが謝ってる?マジで?
ミカは夢ではないのか?と言わんばかりにリョウマの頬をつねる。
「いへっ。いひゃい。いひゃいっ。いひゃいってばっ!!」・・・夢じゃない!!
「いやぁ。こっちもごめんね。ユウキがへんなこと言っちゃって。あとで叱っとかなきゃ」
「え?なんでユウキを叱るの?別にウソではないだろ?叱ることないよ」あ、そっか。別に変なことではないよね・・・って
「ち、ちちち・・・・違うよ!!だ、断じてリョウマの事は・・・」
「スキ、なんだろ?そんぐらい小さいころから知ってるよ」もぉ///恥ずかしい///
「あ。そうだ。仲直りもかねてユウキと三人で屋上見に行こうぜ。さっきお姉さまを傷つけちゃったからなぁ。ユウキ、怒ってるだろうな。」
「別に怒ってはいないと思うよ?」・・・アイツかわいそうだな・・・とリョウマが呟く。
「なんで?」するとリョウマはあたしの耳にささやく
「男の秘密は告げ口禁止だ。」と。クスッと笑いながら教室を出て行ってしまった。
「ねぇ。リョウマ?」ん?何?という返事。やっぱりこのヒトだけは離したくない。離れたくない。だって・・・スキなんだもん///
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