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第九話「キリストと修道女と女学生」

長い黒髪に小さな花飾りをつけた女学生-佐天涙子-は日が沈み、
夕飯時を少し過ぎた学園都市を早足に歩いていた。
この時間帯に出歩く生徒は少ない。学園都市からの補助金があるにしても、
基本的に生徒は自炊をしている。この時間帯に出歩いているのは、
外食帰りか、学生寮に帰るつもりのない夜遊びをする学生くらいだろう。

だが、佐天涙子が今学園都市の町並みを歩いている理由は前者でも後者でもない。

「初春大丈夫かな……早く行かないと………。」

彼女は今、風邪を引いた友人の寮へと向かっていた。
クラスメイトである初春は今日学校へ来なかった。
休み時間の合間に電話してみてもつながらない。
そして、つい5分前、ようやく電話がつながり、事情を聞くと、
風邪を引き、寝込んでいるらしい。
それを聞いた彼女は急いで自分の寮を出て、現在にいたる。

『少し急がないと………!』

そんな事を考えながら、彼女は友人の寮へと続く角を曲がった。

……その時、


ドン


死角になっていた角に、誰かがいたようだ。
彼女はぶつかった反動に耐えられず、尻餅をついてしまった。

「いたた………、あ、すいません!!」

彼女はすぐに起きあがると、友人の寮へと駆け出そうとした。

……だが、

「いって~~な~~オイ!」

ぶつかった相手が悪かった。

「へ!?」

駆け出そうとした所で袖口を捕まれ、前のめりな体制になる。

「おいおいぶつかっといてそれだけか!?」

彼女がぶつかった相手は、俗に不良と呼ばれる存在だった。
彼女が曲がろうとした角には、2、3人の不良がたむろしていた。

「へ……あの…すいま…せん……。」
「謝るのがおせーんだよ!」
「へ~~君結構カワイイじゃん!」
「どう?これから俺らとどっか行かない?」
「いいとこ連れてくからさ~」
「や、、やめ、てください…」

チーマー達に囲まれ、縮こまる佐天。
この通りは人通りが少なく、警備員(アンチスキル)が来る望みは薄かった。

『どうしよう………初春…待ってるのに………』

彼女がそんなことを思ったその時、

「おいおい、止めてやれよ。」

けだるそうな声が彼女の耳に届いた。
不良達もその声に反応し、後ろを振り返る。

そこには一人の男が立っていた。
高校生くらいだろうか、黒いジーンズに前の開いた黒い薄手のジャケット、
その下に十字架がプリントされているシャツを着ている。

普段の彼女なら「あ、あの人カッコイイ」とか思っていただろうが、
当然今の彼女にそんな余裕はない。

「あぁ、何だテメェ。」
「すっこんでろガキ!」
「殺されてぇのか!?」

邪魔が入った事に苛ついたのか、不良達が口々に罵声を飛ばす。

「そんなか弱い女学生を複数で………。何。発情期?とりあえずぶちまけようって?
 あ、か弱いって一応表現だから。俺その子のこと知らないし。」

そんな怒声には耳を貸さず、尚もその人は気だるい声で続ける。

『な……なんかユルい人だなぁ……』

少し余裕を取り戻したのか、佐天涙子はそんなことを思っていた。
恐らく彼女に少し余裕が戻ったのは、
目の前の高校生が少しも動揺もせず、態度を崩さないからだろう。

「何訳わかんねぇこと言ってんだ!」
「こっちにゃレベル4一人とレベル3二人だぞ!あぁ!?」

余裕すら見せる目の前の男がカンに障ったのか、
不良達は手に炎や電気を発生させ、脅しをかける。

『!!…やばい……レベル4とレベル3って………!!』

レベル3以上三人と一人では勝利は絶望的だろう。
見た限り、あのレベル4の発火能力者(パイロキネシスト)は相当強い能力者だろう。
だが……高校生はなおも焦る様子はなく、顔には小さく笑みすら浮かんでいる。

「おー恐い恐い。俺を丸焼きにでもするつもりかーw」
「テメェ…バカにしてんのか!」
「………え?バカと違うの?」

本気で意外そうな顔してるし。

「ふざけんじゃねーーぞ!!」
「そうとう殺されてぇみてーだなぁ!!」
「来ねぇならこっちから行くぞゴラァァァア!!」

その怒声と共に、不良達の手から炎と電撃が目の前の高校生に向かって放たれる。

『!やばい!逃げて!!』

そう叫ぼうとしたが、恐怖で声が出なかった。


だが目の前の高校生は小さく何かを呟くと、
指をパチンと鳴らした。


そして空中で炎と電撃が消滅した。

「「「「…………は?」」」」

不良達に加え、私も思わず声を出してしまった。
え?だって今指を鳴らしただけで………。

「さて……まだやる?」

先程までと同じ、小さく笑みを浮かべた表情で高校生が不良達に尋ねる。
しかし、その笑みにはどこか黒いモノがあった。
その表情に不良達(と私)は戦慄を憶えた。

「ひっ、、ウソ、だろ………!」
「まさか、コイツ、、都市伝説の…!?」
「お、、おい!にげろ!!」

不気味に思った不良達が怯えながら走り去っていく。
そんな不良には視線もやらず、高校生は私に歩み寄ってきた。

「………大丈夫か?」
「…え!?あ、、ありがとうございました!」

唐突に声を掛けられた私は、小さく頭を下げ、
名前も聞かないまま駆け足でその場から離れてしまった。

☆☆☆☆☆


「何だ、お前言ってなかったのか?」

キリスト兄ちゃんと神様に言われた男(まだ理解が追いついてない)は
当麻達には、てっきり説明がされていたと思ってたらしい。

「ウソだ~!だって俺の中のイメージだと髭はやした中年って感じだぞ!?」
「(コクコク)」

当麻の疑うような発言とそれに全面同意する俺。

「いや~、ほら神様は威厳あった方がいいじゃん?だから、姿変えて人間界(した)に下りてったら
 思ってたより反応が良くて………。で、何かあれよあれよと言う間に………
 崇められちゃって…………。」

衝撃!キリストの登場は本当に暇つぶしだった!!

そんな三流週刊誌の見出しみたいなのが俺の頭の中に浮かんだ。

「それより久しぶりに人間界(した)に下りてきたらどういう事?
 いつの間にか十字教みたいなのがいくつもできて、ソレで勢力争いって………、
 何が嬉しくて自分が処刑された道具を俺のシンボルとして崇められなきゃ……
 どんな拷問だよ…、ホントに…。」
「おい、ちょっと神様、何かキリストさん愚痴こぼし始めたけど。 
 トラウマ蘇ってるよキリストさん。情緒不安定なんだけど、
 大丈夫ですか創造者?不安なんだけど。」
「え、ちょ、キリスト兄ちゃん!?大丈夫だから!あの時はちょっと油断しただけでしょ!?
 大丈夫、もうお弟子さん達生きてないから!落ち着いて!」

「………神様って鬱になるんだな………。」
「……ここに来てから、俺の神様観が核の炎で焼き尽くされたよ……。」

キリストさんと神様の会話を隣で聞いて、遠い目になる俺と当麻。
…………あれ?

「ところでインデックスは?」
「そういえばさっきから静かだな………。」

ふと、後ろを振り返ると其処には………………、

「……………(゜Д゜)…………」

石になってる暴食シスターがいた。

「………え?あの~インデックスさん?」
「……………(゜Д゜)…………」

当麻がインデックスの前で手を振ったりしているが反応が無い。

「………モノ…………?」
「はい?」

インデックスが消え入りそうな声で呟いた。

「本当に…ホン……モノ…?」

そんなインデックスの様子に気づいたのか、キリストさんはインデックスに歩み寄り、
インデックスに尋ねた。

「…どした?」
「本当に…ホンモノ…?」

混乱が収まらないのか、インデックスはキリストさんにも同じように呟いた。
(と、言うかそれしか言いやがらねぇ。)

「…それは俺がキリスト本人か、と言う質問の意なのならそうだな。」
「ホン………トニ………?」
「あぁ。…けど、俺はそんなに崇められるほどの神じゃないぞ?」

いや、神ってだけで崇める対象としては十分なんじゃ……。
キリストさんはインデックスのそんな反応を見て、不思議そうな顔をしている。

「………なぁ、インデックスちゃんどうしたの…?」
「キリスト兄ちゃん………(一応)迷える子羊の前で何言ってるの………。
 とりあえず労っておげたら?」

神様の呆れ口調のアドバイスに、

「………え~~と、その、何だ……。」

ポン、とインデックスの頭に手を置き、一言。

「……ありがとうな。」

インデックスの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。





ちなみに余談だが、キリストさん曰く、
『迷える子羊』とは、昔、人間界に下りた時に、女の子を口説く決め台詞として使ってた言葉らしい。
…………それでいいのか、唯一神。
更新が滞ってますね。申し訳ありません。。


さて、今回は佐天さん出してみました!
何で佐天さんかって?作者の趣味に決まってるでしょ!w(←
不良に絡まれる役は、候補として初春と春上さんver.もあったのですが、
やっぱ佐天さんかな~、と^^

感想、指摘などありましたら宜しくお願いしますm(_ _)m

※side表現を削除しました。


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