Prolog - Nacht.zip
アクエリアスの星月・アハツェーン――現実世界の時間でいうと、三月十八日。
グラツィオーソ樹林――書庫喫茶『Largo』。
ドアのベルが鳴る。
アリアは、同時に人影に気付いて振り返る。
「ようこそ、書庫喫茶……あら、こんばんは?」
「……」
その人影は黙ったまま、カウンターに静かに近付く。
カウンターの灯りが、近付く人影を照らした。
アリアと同い年位の少年だ。
「……こんばんは」
遅れて声を発した。
夜の様な静かな声だ。
少年はカウンターの前にある、一つのカウンターチェアに腰を掛ける。
「どうしたの? もしかして、わたしを口説きに来たの?」
アリアは微笑を少年に向ける。
少年はフッと笑い返し。
「……まさか。君の事を知っていたら、そのつもりで来たと思うか? ……まぁ、今でも分からない事だらけだけど」
「はいはい、……情報だね。勿論、何方の世界でも友達同士だからと言って、無料で教えるつもりは無いわ。何の情報が欲しいの?」
少年は深刻そうな顔を浮かべる。
「その前に、この世界で『オウバ』という名前だったプレイヤーが、自宅のアパートで変死している事について、君は何か知っているか?」
アリアは目を見開き、その場で固まる。
少年はアリアの顔をジッと見つめている。
まるで時が停まったかの様に暫く、沈黙が続く……。
それは、長い物語の始まり。
そして、……数万人の犠牲者を出す、後の大きなテロ事件の始まりでもあった。
(To be continued......)