それは恐ろしい冒険だった。今、この記者会見をひらいてくれたのは嬉しいが誰が信じてくれようか。本当に信じられない体験を私達はしたのだ。信じてくれなくてもいい。だけど私は話そう。亡くなった仲間のためにも。
私はジョン・マクマフラー探検隊の一員として冒険にでた。10名ほどの探検隊だ。ジョンはそこで隊長をしている者だったが、腕っ節や実力も間違いなく世界一だった。
私はジョンに通称テラーと呼ばれていた。今でもその名前は気に入っているよ。
私達が向かったのは、南極のはずだった。南極にいき、そこで未知の生物を発見しようと思ったのだ。今思えば馬鹿らしい探検目的だ。
航路は間違いなく南極に向かっていた。
しかし、私達は南極にはつかなかった。一人の船員、あらゆる航路を知り尽くしている男。名前はアロウといった。その男が言ったのだ。
「テラ・アウストラリス・インコグニダ」
私ははっとした。
「メガラニア!?」
ジョンも驚いていた。それと同時に歓喜の表情を浮かべていた。
「今すぐ準備をして、探検に行くぞ!」
そこが南極ではないと気がついたのは、そこに氷が無かったからだ。私達は南極を越えていたのかもしれない。だが、奇妙なところだった。半分が氷に覆われ、また半分は森林が生い茂っていたのだ。
私達は完全に南極対策の防寒具を装備していたのだが、それに加えてアマゾンの装備も加えた。
そこは非常にじめじめとして暑いところだった。まるで国境のようなところがあり、そこを越えると凍るように寒くなる。まさに幻の大陸といえるような場所だ。
寒さにうんざりしていた私たちはジャングルのような熱帯雨林を探検することにした。そこには何も文明が伝わっていないかのように信じられない光景を私達に与えてくれるかのようだった。
まだ、この大陸に入ってまもない頃。
何やら、騒がしい声が響き渡ったのだ。
「ほっほっほうほっほっほ」
ジョンが先に進もうとする私を制止する。
「この先は彼らの縄張りらしい」
ジョンが私に双眼鏡を手渡した。
「ゴリラ……」
私の目に映ったのは野生のゴリラたちだった。
「素晴らしい、こんなにたくさんのゴリラの群れが」
動物好きのルヌは目を輝かしている。
「ジョン、ゴリラは見かけにくらべるとずっと大人しい生物だよ。ちょっと挨拶でも行こうか」
「やめろ、ルヌ」
ジョンは小さな声でルヌを制止したが、ルヌは行ってしまった。
「くそ、何もおこらなければいいが」
私はこの時、何がおこるのかまったく予想がつかなかった。
「うほぉおおおおお!!」
ゴリラの咆哮がジャングルに響き渡った。
「やばい、みんな逃げるぞ!」
「え? ルヌは?」
「いいから、ここにいたら殺されるぞ!」
ジョンの合図で探検隊は走り出した。
「ぎゃあああああ!!」
後ろからルヌの叫び声が聞こえて、後ろをふと見るとゴリラたちがルヌに群がっているのが見えた。
「はあはあ、馬鹿ルヌめ。今行くやつがいるか」
生態学者のサラッドは息たえだえに話した。
「どういう事です?」
「あそこには子連れのゴリラがたくさんいた。ゴリラはもともと神経質な動物だ。見た事の無い生き物が子供のいるゴリラの群れなんかいってみろ、それこそ恐ろしいことになるぞ」
科学者の難しい話はよく分からなかったが、子供を守るお母さんは強いということは分かった。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
ジョンの合図で私達は腰を落ち着けた。
「お前ら、これからは絶対に俺のいう事を聞くんだ。ルヌの事は残念だったら、隊長の俺の命令を聞かなかったのだ悪いんだ」
「でも、ルヌは救えなかったのですか!?」
ルヌの友人だったらクラークは頭に血がのぼっている。
「おい、クラーク。お前ならどうやってルヌを救った?」
「ゴリラを射殺しました」
「ここはどこだ?」
「わかりません」
「ここは未知の大陸だ。何が起こるのかわからない。ましてやあのたくさんのゴリラ相手にこっちはたったの20名。銃を使ったところで俺達はルヌのほかに何人も殺されたに違いないぞ」
ジョンに言われ、クラークは黙ってしまった。
「昔、大人しいゴリラの家族を驚かしたおろかな探検隊がいた。俺の友人だがな、俺はそれっきり奴の顔を見ていない。俺が奴の探索をして見つけたもの、それは粉々に引き裂かれた奴の死体だったよ」
クラークはもちろん、私も絶句した。探検に詳しくない私達はルヌを救おうとして死んでいたであろう。
「オーマイガー」
先頭を歩いていたオーマが立ち止まった。
「オーマ?」
「た、隊長。これはやばいです」
私と隊長は目を凝らすようにして遠くを見た。
「まさに、オーマイガーだ」
目の前には巨大なグリズリーが立っていた。
「おい、お前らこの地形を良く見ろ。ここはもう熱帯雨林じゃないぞ」
さっきまでじめじめとしていた場所が嘘のように肌寒くまでなっていた。
「た、隊長。もう限界です。やつら気がついています。逃げないと……」
「まて、まてオーマ」
巨大なグリズリーは私からみても5メートルほどの大きさに見えた。どうみても絶望的な壁のようだ。立ち上がって私達を脅している。
グリズリーは四足歩行になると、ゆっくりとオーマのところまで近づいてきた。
「大丈夫だ、あいつは腹は減っていない。このままあいつが見えなくなるまでここでまつんだ」
「無理ですー!!」
オーマはそういうと一目散に走り出した。
「ガオ!」
グリズリーは猛獣の声を発するとオーマを追って走り出した。
「興奮させちまったようだな、逃げるぞみんな!」
探検隊はオーマとは別の方向に走り出した。
「銃で助けてやれないんですか!?」
「馬鹿やろう! グリズリーに普通の銃なんか聞かないんだよ!」
私達は走りに走り、また熱帯雨林のようなところにきてしまった。
「もう2名死んだ。探索は中止せざるを得まい」
ジョンは短く、寂しげに言った。
「何いってるんだ隊長! ここは幻の大陸なんだ! ここで帰ったら探検隊の名が廃るぜ!」
やる気満々のケビンが言った。
「ケビン、悪いが俺は帰る。これからはケビン探検隊としてがんばれ」
「何、隊長? いいのか?」
「ああ、俺と共に帰りたいやつはいるか? ここは危険だ。後でまた装備を整えてくる必要があると思うが」
隊長と一緒に帰ったものは5人。
私を含めて三人が残った。
「テラー。気をつけろよ、ここはやばいところだ」
「アマゾンで危険なのは、アナコンダですよね?」
「違う、ジャガーだ。ジャガーはアナコンダを襲うことはあるが、アナコンダがジャガーを襲うことはない。奴らはグリズリーやゴリラなんかの保守的な生き物じゃない。自分から獲物を追ってきて襲う。その中でもジャガーは一番狩りにすぐれているんだ」
「分かりました。大丈夫です、すごい発見をしますから」
私は隊長に約束をした。
残ったのはケビンとデッド、そして私だ。
私達は密林の奥深くに進んだ。
「みろ、テラー!」
デッドが大きな声で叫んだ。
「なんです?」
「こいつは世界最大のワニだ。こいつを撃ち殺して捕まえよう」
イリエワニの一種に見えた。デッドが銃を構えてイリエワニに標準を落とした。
銃の乾いた音が密林に響き、鳥が飛び立っていく音がした。
「ジーザズ」
だが、ワニは怪我一人負っていなかった。
「ど、どういうことだ? おい、ケビン!」
「しらねえよ、てかあいつこっちみてるよな?」
「にげろー!」
イリエワニに襲われて死んでいる人は一年で3000人を越える話を聞くことがある。もっとも獰猛で危険な爬虫類。
だけど、私はワニが陸上を素早く走ることがないと知っていた。またデッドの放った銃がはずれたことも。
私は冷静だったことから逃げずに観察していた。すると、驚いた光景を目にした。
一匹のジャガーがワニに近づき、上に乗っかってしまったのだ。ワニは口を閉じる力は強いが開く力は弱い。そして、うろこがそこまで丈夫ではないイリエワニはジャガーに首元を噛みつかれるとあっけなく絶命してしまったのだ。
「うぎゃああああ!!」
デッドの叫び声がした。
私はその声の方に近づいてみる。アマゾンで慌てて愚かな行動にでるとそこには死が待っている。
「テラーか! こっちにくるな、ここはバイソンがいるぞ!」
あたりは草原だった。どこまでも草原、ここで危ない生き物とすればライオンやヒョウなどだと思われるが。
「バイソンがどうしたんです?」
「あの木を見ろ!」
私は驚愕した。木に蛸のようにぐちゃぐちゃになってしまってデッドがはりつけられていたのだ。
「バイソンにふっとばされたんだ。やばいぞ、バイソンは強い」
その時、バイソンがぐちゃぐちゃになっているデッドの方に猛突進をしてきた。
「デッド逃げろー!」
ケビンの願いもむなしく、デッドと木はバイソンの一撃をくらって粉々に吹き飛んでしまった。
「デッド……」
ケビンはそういうと、地面に腰を降ろしてしまった。
「俺が探検を続けるなんていわなければ、いってえええ!」
ケビンの足には大きなアナコンダが噛み付いていた。私はケビンはもう絶対に助からないと思った。
アナコンダはケビンをあっというまにぐるぐる巻きにしてしまった。
「たすけてくれ……テラー」
私も助けたかったのだが、ケビンがそういうとアナコンダはケビンを丸呑みにしてしまったのだ。アナコンダは続けて食事をしないことをしっていたから私はそのままゆうゆうと立ち去った。
私もそのまま去ることにしたのだ。一人で探検ができるほどここは甘くない。
私が船に近づくと、そこにはおびただしい血痕が見えた。
私は急いで船に入るとそこには血まみれになったジョンの姿があった。
「テラーか。憐れだな、先に逃げ帰ろうとした俺達がこのざまじゃあ」
「どうしたんですか!?」
「バーバリライオンにやられた。盲点だった。まさか絶滅したといわれるやつらの群れに遭遇するなんてな」
「バーバリライオンって、百獣の王の中の王って言われる。隊長、手当てをさせてください」
「いや、もう無理だ。俺はもう死ぬ。他のメンバーも全員やられた。手榴弾を使わなきゃしんでたぜ」
「大丈夫です、さあ帰りましょう」
私達は幻の大陸、メガラニアから去ることにした。
10人いたメンバーはわずか2名。散々な結果だった。
だが、航海士が死んでしまったため、私とジョンはしばらく漂流することになった。
「すまないな、テラー」
「大丈夫です。幻の大陸を拝めただけで本望ですよ」
「だが、もう腹が減って死ぬな俺たち」
「ええ、アザラシすらいませんね」
私達は魚でもいないかと海を眺めていた。
「おい、今何かいたぞ!」
ジョンが指をさしたほうを見ると、なんと牛が海を泳いでいた。
「なんだあの巨大な牛は!」
「分かりません、でもこいつを食べれば生きられます!」
私はモリをもちだすとそいつに一刺しした。
「おい、ステラーカイギュウだ。信じられん」
「でも、栄養はありそうですね」
私達はそのカイギュウを解体して食べ、見事生き残ることができた。
ジョンは病院に運ばれて今では入院している。
どうだ? 信じられるか?
私達は幻の大陸を探検し、そして仲間はほとんど死んでしまった。事実を知っているのは私とジョンのみ。
何? ジョンが今さっき死んだだと?
じゃあ事実を知っているのは私のみだ。だが、残念なことにその航海図といったものはない。その船員は死んでしまったのだ。だから、行きかたは分からない。だが、これから行くものにアドバイスしておこう。
あそこは非常に危険だよ。 |