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紫陽花
作者:御伽人
  『紫陽花』

 私はいつも夢を見る。私は紫陽花が咲く頃に逝ってしまった恋人を。27才だった。すぐ近くに紫陽花の花が咲いていた。梅雨の季節は雰囲気が曖昧。だから、私たちみたいに結婚もしないで同棲している関係みたいで良い。
 彼氏は30になれば結婚しようと言ってくれた。
 30になったら、教会に行って、遺影と共に結婚式をするつもりだ。きっと、死んでも私たちは、ずっと愛し合える。喪服がウエディングドレス。涙は隠せないだろう。でも、いい。梅雨の休日に、ずっと二人だけであの世とこの世の恋人同士結ばれたい。最期を見れなかったから、「始まり」だけは私がしたい。
 仕事に行く。何かが抜けている。職場でも同情されたりする。仕事にも力が入らない。私はずっと婚約指輪をしている。付き合って10年で買った。記念だよ。単なる。
 そう言っていた。でも、一番良い想い出だったかもしれない。
アパートに帰る。誰もいない。
 梅雨が来て欲しい。そうすれば、私は赦されるから。ずっと一人で居られる気がするから。君が隣にいてくれる気がするから。
――私たちは17才で知り合った。他に恋人がいたけど、ずっと気にかかっていた。だから、別れた。そして、付き合いだした。きっかけは今となっては思い出せない。自然と気が合った。
 梅雨が振るから相合傘をした。そして、紫陽花が咲いている姿を見た。
「綺麗だな」
「何色に色を変える花だから、飽きないかもね」
「また来年も一緒に見られるといいね」
「うん。きっと別れないよ」
「俺もそんな気がする」
そうして、高校を卒業して、すぐに彼氏は大学に進学して、私はそのまま会社員になった。二人で住む部屋を見つけて、住み着いた。彼氏の両親の仕送りもあったが、それをなるべく使わないようにした。それは彼氏の分だからだ。
 そうして、楽しい日々が続いた。色褪せなかった。これ以上もう恋はできなくなってしまいそうな気がする程、心が燃えた。ずっと消えはしない。そう思っていた。
 26才に二人で紫陽花を見に行く。6月に咲く花だ。ずっと、綺麗だった――
 30になった。私は喪服を着て、彼氏の遺影にキスをした。ずっと叶わぬキスではあるが。これからは、一人で生きるよ。私が好きな人の祈りを込めて、生きていくよ。私は裏切らないから。絶対裏切らないから。ずっと二人でいよう。
 私が想い出を持って朽ち果てるまで。
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