その15 『新生ARMSの初任務』
「よし、準備は良いぞリルカ。やってくれ。」
「りょーかい!いくよー!」
振られるロッド。
飛び出す火炎。
火炎は一直線に放たれ、やがて目的のものにぶつかる。
四角いドクロマークのそれは火薬がつまったもので。
「伏せろ!」
大きな音を立てて、引火した|火薬<それ>は爆発を起こした。
—ここはアンダートラフィックス。
交易路として人々が行き交うこの洞窟で落盤事故が起きたという知らせがARMSに寄せられた。
メンバーのそろった新生ARMSの初任務として事故現場の調査に向かった彼ら4人は想像以上に崩れ落ち、塞がってしまったその洞窟と出会うのだった。
ともかく、この道が塞がってしまって人の行き来ができずメリアブールの経済に多大な影響が出ると判断した彼らは調査とともにこの道がもう一度交易路として使用できるよう。道の確保につとめることとした。
一同は暗い洞窟の中をリルカの持つ「ファイアロッド」の灯りをたよりに歩いていく——
「…それにしても、なんというか豪快な任務だな。」
「崩れ落ちた瓦礫を火薬で爆発させていることか?でもそうでもしないと僕たちの力では瓦礫を撤去できないし…。」
周囲を珍しそうに観察するジックの言葉にアシュレーが答えた。確かに彼の言う通り一度落盤事故が起きている洞窟内で爆発を起こすのは危険な行為と言える。
しかしアシュレーの言うように自分たちの力ではこの瓦礫の撤去は相当な時間がかかるだろう。そしてアシュレーがこの方法を取った理由がもう一つ。
「それにしてもブラッドが火薬に詳しくてよかったよねー。」
「…昔、火薬にはよく世話になっていたからな。」
先を行くブラッドの隣で嬉しそうに話すリルカ。先頭は彼女ら二人、後ろにジックとアシュレーという陣形で彼らは洞窟内を歩いていた。
爆発音が洞窟内に響くからか、あまりモンスターとは出会うことはなかったが警戒を怠る理由もない。また落盤が起きることも考えての陣形であった。
「うー…。至近距離で何度も爆発音を聞くとさすがに耳が痛いな。」
「そう?わたしはいっつも魔法を爆発させちゃってたから平気だな。」
「…それはリルカが特殊なんだろ…?」
軽口を黙って聞いていたブラッドが立ち止まった。
何だと不思議そうな視線がブラッドに注がれる。彼は振り返って一言。
「残念だったな坊や。またお楽しみの爆発タイムだ。」
がっくり。とジックの首が傾いた。
アンダートラフィックスは海に面した山の中を通っていた。こんな事態もあるだろうと予想はしていた、が。
先ほどのジックのように首を傾けるアシュレー。
「…まさかまるまる水に沈んでいるところがあるなんて…」
「地下水かな?それとも海から流れてるのかな?でもこんなんじゃ向こう側にわたれないよ…どうするの?」
彼らの目の前には一室水に沈んでしまったフロア。いや、浮き島のように所々地面が水から顔を出してはいるのだが、いかんせんそこまで行く道がない。
泳いでいこうにもアシュレーとブラッドの武器はARM。火薬を用いる銃だ。水につかってしまってはせっかくの火薬が湿気てしまい使えない。
と、なればどうするべきか。と悩んでいたアシュレーの視界に何かが映った。
「…なるほどな。面白い話だ。で?実際問題できるのか?」
「そこはブラッドの調整しだいじゃないか?ま、多分大丈夫だ」
何やら話合うブラッドとジックの姿である。アシュレーが声をかければ「試したいことがある」と言われ何も言えなくなってしまった。
仕方がないのでじっと二人の行動を見守るアシュレーとリルカ。互いに彼らが何をしようとしているのかさっぱりだ。
そんななか二人は落盤事故の際壊れたらしい商人が使っていたであろう船の残骸をあさりだした。手際よくブラッドが何かを組み立てている横でジックがなれない手つきで組み立てていく。
結局大半をブラッドに任せてできたものは一隻のイカダ舟であった。
「オールを作る材料もないのにそれでどうするの?もしかして手で漕ぐの?」
「まぁみてろって。ブラッド、後よろしく!」
「あぁ。」
二人に不信そうな目で見つめられつつ、彼らはイカダを水の壁際にそっとおろした。ブラッドがその上に乗る。頑丈に組み立てられたそれはブラッドが乗ってもびくともしない。
互いに目配せをして、ブラッドが行動にでる。自身が向かう先を確認し、体を反転させ壁の方を向いた。
そして、右足を引き、勢いよく壁を蹴りつけた。
「フンッ!!!!」
ガッ!!!!
勢いよく壁を蹴り上げたブラッド—イカダは蹴り上げた反動で水の上をすいっと滑っていく。
そして想像通りの道を進み、彼らの目指した対岸へと、イカダはブラッドを導いていった。
「…ブラッドのキックシューズで壁を蹴り、その反動でイカダを動かしたのか…」
「ほぇー。ブラッドのキックシューズのすごさはイルズベイル監獄島で知ってたけどこんな使い方もあったんだ」
どうだ。見直しただろう?そんな自信満々な言葉にすっごーい!とはしゃぐリルカ。
また、壁を反動に戻ってきたブラッドの前で、調子にのるなとジックの頭を小突いたアシュレーだった。
「さーって。そろそろ出口だと思うんだが…。というか、残りの火薬からしてそろそろ出口じゃないとまずいな。」
一面水のフロアを通り過ぎてしばらく。未だアシュレーたちはアンダートラフィックスの中にいた。
先ほどから使っていた火薬はアシュレーやブラッドの持つARMの弾から取り出した火薬だ。数を持ってきてるとはいえ、これ以上消費すると次補充するまで持たないだろう。
この洞窟を抜ければまたモンスターの溢れる大地に戻ることになる。強力な攻撃方法であるARMを今ここで使用不能にするのは危ぶまれた。
そんな彼らの前にまた落盤し、道を塞いでしまった岩が立ちふさがった。
「…この量の瓦礫を壊すには今持ってる火薬の大半を消費することになるな」
「えぇ!?じゃあ次また瓦礫が出てきたらもう壊せないじゃない!」
「その場合はヴァレリアシャトーに戻って弾の補充してからもう一度ここに来ることになるな」
ため息まじりにジックがそう告げるとリルカはぱたん。と地面に座り込んでしまった。
行きは爆発音をさせてモンスターを遠ざけれていたが帰りは足音のみ。むしろモンスターを招き寄せてしまうだろう。となると帰りも、もう一度来る時もこの長い洞窟内をモンスターを相手にしながら進むことになる。リルカでなくとも座り込んでしまいたいものである。
「おい、アシュレー」
どうするべきか悩むアシュレーに、瓦礫を調査していたブラッドが声をかけた。
「どうした?」
「かすかだが岩の隙間から風が吹いてきている。リルカ、灯りを消してくれ」
言われるまま灯りを消すリルカ。ふっと灯火が消えあたりに暗闇が広がった。
一同は目の前にある瓦礫を見た。うっすらと、一陣の光が岩の間から差していた。
「これは…ブラッド!」
「あぁ、どうやら出口は目と鼻の先のようだ」
すぐさまブラッドが火薬の準備を進めた。光が差す場所を確認しリルカに灯りをつけてもらう。アシュレーとジックで弾を分解、火薬を取り出しブラッドへ渡す。
ブラッドは火薬を受け取ると手際よく岩へ設置し、リルカへ合図を送った。
「よーし、いっくよー!」
リルカにより魔力を込められたロッドは振り下ろすのとともに先端から炎を放出し、火薬に火をつけた。
ドォオオオンッ…!!!!
今までよりも量の多い火薬に盛大な音が洞窟内に響き渡った。
しっかりと耳を塞ぐアシュレー一行。しばらく岩が崩れる振動が彼らを襲う。
振動と砂埃が収まる頃、ゆっくりと彼らが開いた瞳に映ったもの、それは——
「…どうやら、ブラッドの見立ては合ってたらしいな。」
出口から差す、日光であった。
と、もう一つ。
「ねぇ、誰か倒れてない?」
「そういえば、逆光でよく見えないけど…」
「人だッ!!——大丈夫かッ!?」
それが人だと確信したアシュレーたちは急いでその人物のそばへと近寄る。怪我をしているらしいその様子を確認したジックはすぐさま自分の出番だと鞄の中身を広げ応急処置を施していく。
「どうだ?」
「…とりあえず応急処置はしたが、もっと落ち着けるところに行った方が良いな」
「こちらアシュレー。要救助者一名を発見!怪我をしていて——」
怪我人の様子を見るジックに本部へと連絡を取るアシュレー。慌ただしい二人から少し離れたところでブラッドは気になるものを見つける。
地面に落ちたそれは彼が昔見たものと似通っていて、記憶通りのそれに、彼の口から微笑がこぼれた。
彼が手に持つそれは、ダイナマイトの残骸—
どうやらこれはただの落盤事故ではないらしい。そう確信したブラッドはそのダイナマイトの残骸を手に取りポケットにしまった。
「ねぇ、ブラッド」
ここで先ほどから難しい顔をしていたリルカが声をかけてきた。てっきり痛々しい姿の落盤事故の被害者に心を痛めているのだと思ったが、どうやら違うらしい。
難しい顔をしたままのリルカは治療を受けている被害者を見たまま、こう言った。
「…あの人の怪我。わたしたちが瓦礫を火薬で吹っ飛ばしたからじゃないよね?」
ブラッドは被害者のほうを見た。
…そういえば、出口のすぐ側に倒れていたが。自力で逃げ出そうとして出口付近で力つきたのか、それとも——
「…奴が目覚めればわかるさ」
曖昧に返答を返したブラッド。起きる前に立ち去った方が良いかもしれん。と、頭をよぎる言葉になんだか頭を抱えたい気分になったのだった。
最後のネタは昔のアンソロ4コマから。実際問題なぜあの位置に倒れてたのか謎。まぁ最後のフロアに壊す岩はないのですが。
「主人公空気ですよね」と言われて。「そんあ馬鹿な…」と思いながら読み返してみたら超空気だった。済まん。まったく自覚してなかったんだ。今回は空気になってないと信じてる。
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