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波乱のじだい

安徳天皇、いみなは言仁さま。

高倉天皇のお子さまでいらっしゃいました。

母上と云えば建礼門院。

治承二年十一月十二日に内大臣の平重盛の住まい六波羅の屋敷に於いてご出生なさいました。

二月二十一には早くも立太子礼をお受けに成られました。

時は平家一門盤石の構えで都を支配している中でした。

帝は四月二十二日に紫宸殿に於いてご即位なさいました。

おん歳三歳であらせられた。

此の時、都では突然の嵐が巻き起こり、突風と共に雷雨や雹が吹き付けて、

宮中も市井も人々は慌てふためいた。

この時、平の清盛は法皇に請いて八條烏丸の屋敷に遷座を求めた。

世の中は平家一門の思いの侭に成り、世を憂うる人々も声を潜めた。

この日都が厚い黒雲に覆われし時も都の外れの荒れ寺には、

多くの人々がその時を痺れを切らして待っていた。

「令旨じゃ。」

「何と。」

「来たか。」

「ご使者じゃ、通せ。」

沈黙の中にやんごとなき方からの切なる命を待ち受ける面々の眼差しは引き締まった。

寺の奥座敷では、以仁王の使者と云う、荒法師姿の男が上座に据えられてじっと時を待って居た。

「これはこれはご苦労であった。」

「先ずは粥でも啜って。」

すると使者は、

埃に塗れた顔を振って、

「いやいや、飯等後じゃ。」

主は良しとばかりに、

下座に平伏し直して令旨を受けた。

「辱い、勿体ない事である。」

「我等、六波羅の入道を討たんが為、此処に決起す。」

「おおっつ。」

「やるぞ!」

「おおっ。」

「鎮まれ鎮まれ!」

「何を、どうした。」

「今が大事じゃ、六波羅を忘れるな。」

何処に六波羅の耳が有るか知れない。

ひとまず用心に越した事は無い。

十五日是より先に、前兵庫頭源頼政は以仁王を奉じて兵を起こした。

あちらでも、こちらでも、平家を討たんとの声が上がった。

全国の街道と云う街道は平家の守りが固く

裏街道を多くの名も無き使者達が、

野武士、荒法師の姿に窶して駈けた。

「待て待て。」

「…。」

「何者じゃ。名乗れ。」

「儂はこの辺りの猟師じゃ。」

「獲物はどうした。弓矢はどうして持っとらん。」

思いつきの嘘は六波羅には通じなかった。

平家征伐の令旨など見つかれば立ち所に首を刎ねられた。

帰って来た使者の数は稀だったであろう。

「申し上げます。」

「何じゃ。」

「先ほど此の先の辻で怪しい奴を拘束すれど、

これ、此奴。名を申せ。」

「しぶとい奴じゃ。」

「構わん。刎ねろ刎ねてしまえ。」

なんとも恐ろしい時代であった。

その日、朝議により、以仁王を土佐に流す事が決定された。

検非違使源兼綱、源光長が遣わされた。

早速彼らは以仁王の高倉邸を囲むが藻抜けの殻。

以仁王は機転を働かし、

園城寺に奔ると

右兵衛尉長谷部信連を捕虜にした。

すると園城寺の僧侶共は延暦寺、興福寺に遣いを送り、

援軍を頼んだ。

波乱は波乱を招いた。

二十二日には

前兵庫頭源頼政は長年暮らした我が家を

焼いてしまった。

兵を集めて園城寺に合流した。

幼い帝は清盛の八條坊門の屋敷に

渡御なさいました。


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