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ゼロからやり直す魔王軍生成術 作者:茶虎の猫

0章

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俺は勇者じゃありません

「勇者様ッ!」

 戻って来た俺を迎えてくれたのは、ユーリちゃんの声だった。

 彼女は俺が開けた穴から顔を覗かせ、全てを目の当たりにしていたんだろう。

 つい先程までの絶望した表情は何処へやら。

 キラキラとその髪と同じ桃色の瞳を向けてくる彼女の表情は、すでに英雄でも見ているかのような希望に満ちたものだ。

「流石は勇者様ねっ! あれほどまでいた魔物の軍勢を瞬く間に一掃するだなんて」

「ふっ、あの程度……準備運動にもならないさ」

 両手を腰に当て、踏ん反り返って調子にのるのが魔王クオリティ。

 見ようによっては、ただ調子にのってる馬鹿にしか見えないだろう。

 しかしだ!
 いつの世の魔王も常に調子にのり、豪華な椅子に座っては踏ん反り返っていたんだ。

 このくらいは、他の魔王に比べれば可愛いものなんだよ。

「ところで、ユーリちゃん。君は先程から俺のことを勇者と呼んでいるが、敢えて訂正させてもらうぞ?」

「えっ? 貴方は歴戦の戦士じゃないの?」

「俺は勇者では無い。我が名はサタンッ! このフレイティア大陸全土を手中に収めんと侵攻している魔王軍の王だッ!」

 確かに俺は先程の軍勢を一掃するほどの力がある。
 勇者を召喚したユーリが、俺のことを勇者的存在と見てもおかしくは無いだろう。

 しかしッ!

 それを認めてしまえば俺のこれまでの人生全てを否定してしまうことに繋がるんだ。

 勇者というのは人間の強者に与えられる称号。
 そんな称号を受け取っていたとしたら、俺は魔族を辞めてなければいけない。

 俺は魔族だ。

 確かに人間以下の奴隷にも至らない魔族に生まれ何度か嫌な思いをすることもあったが、今はそんな自分を誇りに思ってる。

 魔族を率いて人間界に侵攻したのも、世界を征服し全てのものが平等に生きられる世を作りたいと思ったからだ。

 そして、女の子に囲まれた楽園ハーレムを作り上げられたらという理由からでもある。

 それ故に俺は魔族で魔王だ。

 けして、城の中に引きこもり怠惰を貪り自身の周りに美女を並べ、毎日のようにどんちゃん騒ぎを起こしている男勇者とは違うのだ。

 同じことを夢に見ているようだが、俺は断じて奴らとは違う。

 俺は双方同意の上でそういう状況を作り出すのだ。
 決して、金や名声の力で女性を虜にするつもりはない。

「ま、魔王様……ですか?」

「あぁ、そうさ。これからこの世界を征服するこの俺の命を救った事は大変な評価に値する。勇者を倒したあかつきには、このシルバスターン国の改革をまず全面的に考えようじゃないか」

「勇者を倒す?」

「あぁ。今もこのフレイティアの南に位置する魔王城で、突然消えた俺の存在に戸惑ってることだろうしな。早く戻って彼女のハートを射抜かねば……ッ!」

 世界を制するためには、やはり勇者の存在は本当に目障りだ。
 まぁ、無駄に正義感を振りかざす男勇者に限るけど。

 具体的にいうと、殺しても殺しても調理場や部屋の中に現れる黒い閃光Gのように邪魔な存在かな?

 奴ら、一匹家の中にいるなら、百匹くらい家の何処かに潜んでいると言われてるし。

 まぁ、勇者がそんな百人ほどいられたら、流石の俺でも対処できないと思うけどさ。

 あぁ、女勇者ちゃんは別だよ?
 あの胸の果実。あれは、この世に必要不可欠な大事な要素だと俺は思います。

 あの美貌に胸の辺りに垂れた大きな果実。

 俺の攻撃を完璧に防ぐ要素を持ち合わせている上に最強など、反則すぎるね。

「そんなわけだから、俺は魔王城に戻る。数時間経ったら戻るつもりだから、それまでにこのシルバスターン国の重要書類の数々、それから君のスリーサイズの書かれた紙を用意して……」

 魔王城の位置を確認しようとして、俺は言葉を詰まらせた。

 いやね、魔王城ってのは俺が一人で作り上げた最高傑作だからね。

 ある程度、俺の魔力が込められてるから探知ディテクションを使えば場所は簡単に把握出来るんだ。

 だと言うのに、何故かその魔力を感じません。

 探しても、俺の魔力はおろか勇者の巨大な魔力すら感じないんだけど?

 これはどういうことだろうかとユーリを見据えてみれば、彼女は気まずそうに視線を逸らす。

「ねぇ、ユーリちゃん。等価交換だ……俺に、色々と教えて欲しい」

「えっ、あっ……はい、分かりました……」

 優しくだけど、今にも飛びかかりそうな欲求を抑えながら彼女を見据えていると、少し身震いした後に彼女は答える。

 何だか不吉な予感がするんだが、俺のこの予感が当たらなければ良いんだけど。
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