第22話
「どうだい、なかなか良い部屋だろう?此処を君だけの部屋にしようと思ってる。」
アオ達を気にしつつダヲテについてきた。
通された部屋は一番街を見下ろせる高さで、大きな窓がある部屋だった。
「僕に此処で生活しろっていうんですか…?」
「勿論だ。」
一度逃げたのをわかった上で此処に閉じ込めるダンテの精神が僕には全くわからなかった。
「この部屋が気に入らないなら他に用意させる。」
「…僕は此処で過ごす気はありません。」
「彼らの場所に戻れると思ってるのか?」
言葉に詰まった。自然と手がポケットのナイフに触れる。
「馬鹿な真似はするな。」
鋭い目付きで僕は睨まれる。
前にもこんなことがあった。何故自分が出来たのかと聞いたときだった気がする。そのときはくだらないことを聞くなと一蹴された。
「人を傷付けるのを恐れるお前に、私は殺せない。」
「……。」
図星だ。返す言葉もなく、僕はダンテを睨むことしか出来なかった。
「トマ、何処にいる?」
「ハイ。ゴ主人サマ。」
現れたのは僕そっくりのロボットだった。
動きは僕と同じくらい滑らかだが、言葉にはたどたどしさが残る。
「しばらくシュウの話し相手になってくれ。」
「ワカリ、マシタ。」
「逃げようなんて考えるなよ?」
「……。」
反抗して目を反らす。
ダンテはフッと笑い、部屋から出ていった。
「何カ飲ミマスカ?」
「…いらない。」
僕はソファの隅に膝を抱えて座っていた。
トマの方を見れば、そこらをうろうろしている。
「あの…座らない?」
「…失礼シマス。」
ソファの端と端に黙って座る僕とトマ。
まるで鏡みたいだ。横を見れば自分そっくりのロボットがいるのだから。
「シュウ様は、ゴ主人様ガ嫌イデスカ?」
「…嫌いだよ。あんな人。」
それなのに逃げ出せないのは自分が弱いせいだ。
うつむいて膝に顔を埋める。
「ゴ主人様ハ僕ヲ大切ニ扱ッテクレマス。…自分ノ子供ソックリニ作ッタカラ。」
「ちょっと待って…何て言ったの?」
彼の声は聞きとりづらい。意外すぎるその言葉を聞き間違えたかと思って僕は逸る気持ちを押さえて尋ねた。
「チョット待ッテテクダサイ。」
トマは何処からか紙とペンを持ってきた。
サラサラとペンを走らせて、僕に紙を差し出す。
「僕達は自分の子供の代わり…?」
読み上げるとトマは頷いて再びペンを走らせる。
「ご主人様の子供は事故で死んだ。血の繋がりはなかったけど、親子みたく仲が良かった……」
紙の上で踊る文字が信じられなかった。
「チョット見テホシイ物ガアリマス。」
手を引かれ、部屋のクローゼットに着いた。
「ねぇ、何があるの?」
トマは答えずに分厚い本を取り出した。
「ドウゾ。」
「これ…アルバム?」
何を意図しているのかわからなかったが、アルバムを開く。
そこにはダンテと僕やトマに似た少年がいた。二人とも幸せそうに微笑んでいる。
「ソレガゴ主人様ノ子供、レオ様デス。」
「……。」
「ダンテ様ハ、モウ一度レオ様ト生キタインデス。」
「…そんなこと、駄目だ。」
「シュウ様…」
「トマは良いの?身代わりのままで…!!」
僕は揺れていた。…揺れてしまった。ダンテにそんな過去があることを知らなかったから。
トマの顔に悲しそうな笑顔が広がった。
「ソノ気持チガナカッタラ、僕ハ此処ニハ…イナイカラ。」
トマの言葉は間違ってない。むしろ正論だ。
ダンテの子供がいなくならなければ、僕だって此処にいることはない。
「デモ、今ノゴ主人ハ皆ヲ困ラセテ自分ダケガ幸セカニナロウトシテイマス。…シュウ様。」
「……?」
「オ願イデス、ゴ主人様ヲ助ケテクダサイ。」
潔いくらいサッとトマは僕に頭を下げた。
「助けられないよ…僕は此処を壊すために来たんだ。」
「ソレデ良インデス。」
「…え?」
「全部、壊シテ。ソレデゴ主人様モ元ニ戻ルカモシレマセン。…タダ。」
「ただ?」
「――――デス。」
「……っ!!」
トマの言葉に僕は大きな決断を迫られた。
|