第16話
「結論から言うよ。…シュウは最新型のロボットだ。」
予想していたより僕は驚かなかった。まぁ驚きはあったけど。
どちらかというとアオとアリアの方がショックを隠せないみたいだった。
「今日の依頼でシュウを探して欲しいってセシリア研究所の男に言われた。」
「セシリアって最近あんまり良い噂聞かないけど…」
「カイ、断ったんだよな?」
「勿論。そしたら向こう怒ったみたいでさ。それのストーカーに追われたから軽く潰してきた。」
楽しそうな顔で言うカイさん。
…カイさんを怒らすべきじゃない。僕は瞬時にそう思った。
「此処のこと…バレてないわよね?」
「うん。何回か遠回りしてまいたから。」
ちょっと大変だったんだよ、カイさんはそう続けた。
「なら良いけど…」
「あと…明日からシュウはしばらく外出禁止ね。」
「……え?」
いきなり話が僕に来たのと予想外の言葉に反応が少し遅れた。
「研究所の奴らに見つかったらすぐ捕まると思う。しばらくご飯の買い物とかシュウの身の周りのことは三人でローテーションしよう。」
「わかった。」
「了解。」
二人はすぐに納得してくれた。
「よし。じゃあちょっとデネさんのところに行ってくるね。」
そう言ってカイさんは出かけていった。
「外出禁止かぁ…」
ぼんやり呟く言葉はすぐに消えていく。
「シュウ。」
アリアが僕を呼んだ。
「何?」
「読みたい本ある?しばらく家で生活するなら、何かあった方が良いでしょ。」
「この前買ってきてくれた本で充分だよ。」
「欲がねぇよな、シュウは。もっとワガママ言って良いんだぜ?」
アオも話に入ってきた。
「ワガママ…。」
拾われて居候中の自分がワガママになっちゃ駄目だと思うけど…。僕はそう答えた。
「良いんだよ。そんな気にしなくて。」
「そう…かなぁ。」
「……俺が初めて人を殺したのは六歳のとき。」
「…え…?」
いきなりすぎるアオの話。
僕の思考は上手く作動しなくて、戸惑うしかなかった。
「しかも母親だ。俺を産んで育てた女。」
「……。」
言葉に出来なかった。
アリアを見れば静かにドアに寄りかかっている。最後までアオの話を聞くつもりなんだろう。
「シュウはシングルマザーってわかるか?」
小さく頷いた。
前に何かの本で読んだことがある。
「親がそれでさ。しかも男好きで俺の父親が誰かわかんねぇとか言ってた。」
アオはどこか遠いところを見ていて、声をかけるような雰囲気じゃなかった。
「俺が成長するにつれて、母親はどんどんおかしくなった。たぶん変な薬に手ぇ出したんだろうな。」
外はもう薄明かりがさしている。いつの間にか朝になろうとしていた。
「いつも通り遊んで外から帰ってきたら母親がナイフ持って立ってた。」
僕は背筋がぞくっとした。
当人はいたって平気そうで、続きを話している。
「俺は酷い別れ方をした男の顔にそっくりだ…って言ってさ。笑いながらナイフで俺を刺したんだ。」
想像しただけでも辛い。眉間にシワが寄った。
「それはまぁ腕をかすっただけだったんだけどさ。その後の母親の言葉にキレて…返り討ちにしてた。」
「何て言われたの?」
今までずっと沈黙を通していたアリアが口を開いたのがその言葉だった。
「…お前を産んだのは人生最大の汚点だ。」
苦虫を噛み潰したような表情をしつつ、アオは答えた。
僕の頬を伝うのは涙。アリアも不快感を露にしている。
育ててくれた相手に自分の存在を全否定されることは、辛いかもしれない。
「気付いたら家から逃げててさ。何も考えらんなくて、路地裏にじっと座り込んでた。そのとき、偶然カイに会ったんだ。」
最後の言葉でアオが少しだけ微笑んだように見えた。
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