創技会の幕が開け、会場は賑やかになった。
二階の観覧席から見ている生徒の中に一人――――充血した赤い目で鋭く睨み付ける少年の姿がある。白いローブを膝の上に掛け、両手をその下にもぐり込ませている。ローブの下で手を動かす少年は、誰にも聞こえないような声で呟く。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
その異様な姿に気が付いた生徒は席をずらして離れていく。「あいつなんか言ってるぜ」「すごい目で見てるわね」「こわい……何年生かしら……」「緊張してんのか?」「練習するなら出て行けっての」少年の周りにはいつしか誰もいなくなっていた。
「……そうだ……離れた方がいい……。命がほしいなら離れた方がいい……。ここは……絶望の悲鳴に包まれるんだからな……」
鋭く赤い瞳が大きくなった。表情が歪むほど歯に力を入れて、グランドフロアの一点を見つめる。
少年の瞳に映るのは、ドレス姿で人混みをかき分けて進むリィンフォース。
「……………………みつけた。本当の幕が開けるのはこれからだ……。この俺の邪魔をした罪は……テメーひとりで償えると思うな……。テメーの関わるこの科全員で償え!」
ローブの下から赤黒い光が放たれる。少年の周りを包む強い光に、会場のほぼ全員が目を向けた。
下からその光を見上げるリィンフォースは嫌な気配を感じ取る。
「まって……なにをする気なの……」
立ち上がった少年は、赤く光っている右手を高く掲げる。左手に色は分からないが、ローブを持っているのを下から確認するリィンフォースは叫ぶ。
「やめて!!」
「復讐の幕開けだ!」
右手の中に光る種を飲み込む少年は、両手を広げて詠唱する。
「我が問いに答えよ! 四大元素の火を宿し精霊よ。復讐を紅蓮に、大地を灰に! 火の名を詠う契りをここに!」
紅蓮の炎柱が会場の天井を突き破る。破片すらも焼け焦げてしまい、灰となって舞い散る。四精霊の火を司るサラマンダーは、通常の数十倍の大きさで召喚された。その傍らでローブを着た少年は高々と笑っている。
悲鳴とともに生徒が扉の方へ向かって流れていく。
始まったばかりの創技会は、一瞬で幕を閉じた。
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