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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

動物大好き効率厨な五代目

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若き指揮官たち

 村の中央に位置する場所で、馬上にて指示を出す。

 空を見上げれば、グリフォンが空高くから見下ろしていた。

 周囲では魔物の泣き声や叫び声、そして騎士や兵士に領民の雄叫びや叫び声が聞こえてくる。

 魔物の数よりも、こちらの数は多い。

 しかし、戦える人数は少なかった。

 それでも――。

『防衛戦の方が有利だが、さてグリフォンがどう動くか……おい、良い感じでオークが攻め込んできたな!』

 五代目が言うと、スキルにはオーク数体がわざと通れるようになっている門の方へと攻め込もうとしていた。

 三代目が言う。

『実に素晴らしい。お出迎えをしようか』

 ニヤリとしている姿が思い浮かぶと、俺は大声を出す。

「東側の罠を使う! 指示出せ!」

 大きな鐘を三人組みが決められた数だけ叩く。すると、聞こえた事を知らせる鐘の音が返ってくる。

 小さな村は騒がしく、その中で指示は短く的確にとご先祖様たちから言われていた。

 寄せ集めの遠征部隊では、複雑な指示は出せないし伝わらない。

 東側には位置しているのは、ミランダだった。

 罠はシンプルなものだ。

 シャノンがポーターから顔を出している。

「お前は中にいろ!」

「気になるじゃない!」

 自分の姉の心配をしているのか、東側をシャノンは見ていた。

(見えているのか? 本当に目に関しては凄いな)

 そうしていると、近くにいたマーカスさんが俺に聞いてくる。

「おい、本当に大丈夫なんだろうな! このまま流れ込んできたりすれば――」

 六代目が腹立たしいのかマーカスさんには聞こえないのに、怒鳴るのだった。

『指揮官の周りで騒ぐな! 周囲が不安になる!』

 七代目も冷めた感じだ。

『ライエルの初の防衛戦……それにこのような者たちしかいないとは』

 どうしてご先祖様たちは楽しんでいるのか? 俺には理解出来ないし、理解する気持ちもない。

「――流れ込んでくれば、そのまま戦えば良いだけです。そのための準備をもしていますよ」

 そうして全体をスキルで確認する。

 上手くいっていない部分もあれば、順調に魔物の数を減らしている部分もある。

 やはり、指揮官の経験の差が出ていた。

(上手くやっているのはクラークさんのところか。やはり、弩は強力だな)

 楽しんでいる三代目が言う。

『空を飛んで指揮官気取りかな? まだ若いのか……もう少しだけやれると思ったけど、残念だよね』

 四代目も言う。

『防衛戦はこちらが有利ですから。それしか選択肢がありませんでしたけど。ま、グリフォンは雑魚がいくら減ろうが構わないのでは? ライエル、目立つように指揮をするんだよ』

 賢いのなら、空の上から俺を見ているだろう。

 誰が指示を出しているのか……。

 伝令が走ってくると、俺は報告を聞く。

 ハッキリ言えば必要ないが、誰が指示を出しているのか空から見せるためだった。

 上で旋回しているグリフォンやヒッポグリフが、動き出すのを俺は待っている。





 ――東側の門では、ミランダが突撃してきたオークたちのためにタイミング良く門を開けたところだった。

 水に濡れて泥を塗られた門にはロープがくくりつけられ、いつでも開ける準備が出来ている。

 まだ明るい朝だというのに、松明を持ったミランダは上機嫌だ。

「流石はライエル。使いどころを分かっているわね」

 門の内側には柵が用意されている。

 入るものを拒むように丸太の先が鋭くなっており、柵の隙間はゴブリンも通れない程度だった。

 その隙間から槍を突き刺すために、兵士たちが構えていた。

 門が開いてオークたちが走ってくると、相手も意外だったのか目を見開いたのをミランダは見た。

 柵があると言っても、周囲の兵士や騎士たちはオークの突撃に怯んでいる。

 しかし、体当たりをしようとしたオークは止まることがなく、そのまま門の中に入ると踏ん張ろうとしていた。

「残念ね」

 ミランダが微笑むと、踏ん張りが効かずにそのまま足を滑らせて後ろから押される形で杭に突き刺さった。

 魔物たちが次々に入り込むが、隙間から槍を突き立てられてオークもゴブリンも手が出せないようだ。

 ミランダは松明を掲げると、近くにいた兵士たちが油の入った袋を投げる。

 そうして袋が破かれると、ミランダは松明を投げ込むのだった。

「定員オーバーです」

 可愛く言うが、燃え上がる魔物たちは断末魔の叫び声を上げていた。

 そんな中で、仲間を踏み台にして柵の外に出た魔物は、騎士や兵士たちが槍を突き立てて止めを刺していく。

 一つ目の不気味な鳥が空からミランダを襲うが、ナイフを投げられ頭部に突き刺さって地面に落ちた。

 他に飛んでいる小型の魔物がいるが、金に目のくらんだ騎士や兵士、そして村人たちに追い回され止めを刺されている。

「少ないわね。この三倍は持ってきなさいよ」

 魔物の数が少ないと言うミランダは、少し離れた場所で鐘を持った兵士に成功したことを知らせるように言った。

 罠が成功したことを告げる鐘の音。

 すぐに中央の方からも鐘の音が返ってきた。

「はい、門を閉めて。火は消すから下がって」

 近くにあったバケツを柵にかけていく兵士たち。

 地面には燃えた魔物たちが嫌な臭いを発していた。

 ミランダは顔をしかめることなく、布で口元を押さえる。

 道具を使って門を閉める兵士たちだが、入ってきた魔物は騎士たちが退治していた。

 ミランダの近くにいた兵士が、声をかけてくる。

「上手く行きましたね、ミランダさん!」

 だが、ミランダは一言だけ「そうね」というだけだった。

(というか、ここはオマケみたいなものだし。主戦場はアリアのところか)

 北側のアリアを心配するミランダだが、すぐに頭を切り換える。

(さて、厄介な魔物は出てくるかしら)

 周囲で喜んでいる騎士や兵士たちを見て、ミランダはすぐに配置につくように言うのだった――。





 ――北側では、門の方に炎が撃ち込まれている。

 ローブを着たゴブリンが、杖を掲げて魔法を使用していたのだ。

 だが。

「ローブを着ているゴブリンを狙え! 他は後回しだ!」

 クラークが指示を出しながら、弩で魔物を射る。

 壁の内側には足場を作り、そこから魔物を狙撃しているのだ。

 門のところだけは堀もなく通れるようになっているので、自然と魔物たちが集まっている。

「でもオークが!」

 弩を持っている兵士が叫ぶが、クラークは矢を放った弩を部下に渡し、矢を装填された弩を受け取りながら叫んだ。

 すぐに壁の外に向けて構える。

「燃えたら一気に流れ込んでくる! 厄介な魔物から先に倒せ!」

 叫んだ兵士は、オークの方が報酬は高い事を知っていた。そのため、オークを狙いたかったのである。

 クラークは魔法を撃ち込んでくる魔物を優先的に倒す、という基本を守って攻撃を行なっていた。

 狙って当たるのは自分くらいで、多くの矢が外れていた。

 緊張しているのもあるだろうが、近くで魔物が叫んでいるのだ。

 オークは門を叩いて今にも入り込んできそうだった。

(罠を設置しているとしても、不安になるか――)

 狙った矢がローブを着たゴブリンに命中し、一体が倒れた。

 思っていた以上に敵の数が減らせていない。

(このまま通して、あの子に引き継ぐのは流石に――)

 門の内側では、魔物が突破してくるのを待っているアリアの姿があった。

 二日目にヒッポグリフを倒している事もあって、周囲は落ち着いている。

 今更、アリアがオーク程度でやられないと思っているのだ。

 世の中に絶対はない。

 オークを倒せる戦士でも、ゴブリンに囲まれて命を落とすことがある。

 自分たちが戦えているように、やり方次第で有利にも不利にもなるとクラークは知っていた。

「せめてあいつらだけは……よしっ!」

 狙った矢が命中し、厄介だと思っていたローブを着たゴブリンを倒し終わる。だが、叫び声が聞こえると近くで兵士が足場から転げ落ちた。

「た、助けてくれぇぇぇ!!」

 黒いカラスのような一つ目の魔物に襲われ、そのまま足場から落ちて骨折をしたようだった。

 弩を構えた兵士を即座に止める。

「撃つんじゃない! お前たちは外の魔物を狙え!」

 味方に当たるのも怖いが、それ以上に役割が決まっている。

 駆けつけて来た騎士たちが、魔物を槍で叩いていた。兵士を助けると、そのまま怪我人として運ぶことに。

 落ちた衝撃で弩の弦が切れており、一つが使い物にならなくなっていた。

「彼の相方は付き添ってやれ! 他はこのまま外の魔物を狙い続けろ!」

 壁の外にはまだ多くの魔物がいた。

 これだけの数の魔物が入り込めば、きっと倒せても怪我人が増える。

 クラークは、そのまま矢を放ち続ける――。





 ミランダさんのところが成功したのを知ると、俺は伝令を出す事にした。

「東側から北側に増援を送る。十名だ!」

「はい!」

 駆けだした伝令を見て、俺は空を見上げた。

 動きを見せないグリフォンは、魔物たちがその数を大きく減らしても意味がないのかこちらを見下ろしている。

 二代目が言う。

『そこは一気に攻めて来いよ! 空から攻撃とか、色々とあるだろうが!』

(どっちの味方だよ)

 三代目は――。

『ライエル、マーカスたちのフォローもよろしく。相当イライラしているから、適当に仕事でも回そうか』

(なんでイライラしているんだよ。ちゃんと仕事がある、って言っただろうに!)

 四代目が――。

『一箇所に集中するな。全体を見るように。マーカスたちはグリフォンが来る前に、北側の支援に行かせる準備でもさせろ』

(そのタイミングを見るために集中しないと……)

 五代目は……。

『あぁ、確かに邪魔だな』

(確かに邪魔ですけど、依頼だから……なんで味方の方が厄介なんだ)

 こちらを空から見下ろしているグリフォンたちは、動きを見せていない。

 二代目が言う。

『……なんかアレだ。上の奴らは、雑魚を当てて力尽きたところを襲うつもりかも知れないな』

 七代目は。

『見た感じが若いですからね。これがもう少しだけ成長していると、良い感じに賢いのですが……』

 六代目が何故かウキウキしている。

『ライエル、ロープや布は持ったか? それから、グリフォンは一撃で仕留めろ。高く売れるぞ』

 五代目は。

『返り血とか浴びると滑るからな。背中に乗る時は――』

(乗らねーよ!)

 俺は馬上で空を見上げて深呼吸をし、周囲を見る。

 俺を不満そうに見上げているのは、俺の周囲に配置したマーカスさんたちだ。いつになったら出番が来るのかと、イライラしている。

 対して、ノーマさんは椅子に座って落ち着いていた。

(……なんだろう。確かに指揮権は貰ったけど、もう少しだけ悔しそうにしてよ)

 俺は騒がしい宝玉を無視して、マーカスさんたちに言うのだ。

「……しばらくしたら北側に増援に向かって貰います。いつでも動けるようにしてください」

 明らかにやる気になったマーカスさんだが、限界に来たのはブレッドさんだ。

「いつですか! このままでは戦いが終わってしまうじゃないですか!」

 マーカスさんが、ブレッドさんをなだめる。

「お、おい」

「黙っていてください! 私はこの戦いに人生を賭けているんです!」

 人生を賭けている。

 その言葉を聞いた時、俺は思ったのだ。

 ――この程度に――

 と。

 そして、上空から甲高い鳴き声が聞こえた。ヒッポグリフよりも大きなその鳴き声に、俺は空を見上げると即座に近くにいた伝令に指示を出す。

「北側にはそのまま門の防衛に集中するように! 東側はヒッポグリフが来ると伝えろ!」

 走り出した二人の伝令。

 そして、同じように空を見上げるマーカスさんたちに俺は言うのだ。

「この場で待機をしてください! 俺を狙ってきます」

 ブレッドさんが叫ぶ。

「どうしてですか! 私だって役に立ちます!」

 スキルで見ている地図には、ヒッポグリフが東側の門に一体が向かった。

 四代目が言う。

『数を減らしたところを狙ったのかも知れないね。そのままライエルに三体で突撃をかければ良かったのに。もしくは、どこか一箇所を』

 二代目が。

『その時は増援を出して終りだな。というか、五代目と六代目のスキルは便利だな。俺の時も欲しかったぜ』

 俺はブレッドさんを放置して俺は馬を走らせた。

 ポーターから離れて様子をうかがうが、グリフォンとヒッポグリフは俺の方についてくる。

 やはり、指揮官を潰しに来たようだ。

 三代目が言う。

『ライエル、邪魔なヒッポグリフから排除しようか。あいつは大物面した小物だね。人間なら駄目なタイプだ』

 魔物にタイプなどあるのかと疑問に思った俺だが、馬上から見上げると先に仕掛けてきたのはヒッポグリフであった。

 スキルを使用する。

 限界以上の能力出す【リミットバースト】。

 オールよりも更に広範囲をカバーする二代目のスキル【フィールド】。

 馬から飛び降り、そのまま馬を走らせて避難させると右腕を掲げ。

「ライトニング!」

 紫電が発せられ、ヒッポグリフとグリフォンに襲いかかる。

 ヒッポグリフは回避出来ずに直撃したが、グリフォンは余裕を見せながら避けていた。

 感電し、地面に落ちるヒッポグリフ。

 だが、まだ生きている。

 待機しているように言ったのに、駆け寄ってくるマーカスさんたち。

「おーい!」

「逃げてください!」

「そんな事できるか! 俺たちだって!」

 二代目が言う。

『嫌な感じがするな』

 七代目が言う。

『ライエル、ヒッポグリフの始末はこいつらに任せろ。お前はグリフォンの相手だ』

 俺は即座に指示を出す。

「なら、ヒッポグリフに止めを刺してください。まだ生きていますから、十分に注意するように!」

 そう言って俺は空を見上げる。

 旋回しながらこちらをうかがっているグリフォンは、どうやら俺を獲物と決めたようだ。鋭い眼光と目が合う。

 六代目が言う。

『ハハハ、グリフォンに睨まれたな、ライエル! いいぞ。強者と認められた証だ!』

 全く嬉しくないが、駆け出すと右手でサーベルを引き抜いて左手で魔法を使用する。

 紫電を何度も撃つのだが、グリフォンは俺の攻撃を避けていた。

(厄介な奴!)

 空の敵がここまで厄介とは思わず、苦々しく思っているとグリフォンが急降下してくる。





 ――ライエルに言われ、ヒッポグリフを囲んだブレッドたち。

「なぁ、槍で突き刺せば良いんだよな?」

「首を落とした方が良くないか」

 三人組みのリーダー格の青年は、連れている二人がオロオロしているので先に槍を突き刺そうとする。

 すると、ブレッドは止めるのだった。

「何をしているんですか! こういった魔物は外傷が少ない方が高く売れるんです。それに、剥製にする貴族も多い。心臓を突き刺すんです」

 リーダー格の青年がヒッポグリフを見る。

「心臓? いや、分からないし、動き出す前にはやく止めを……」

 マーカスも同意見なのか、槍を突き立てようとする。

「さっさと終わらせて次に行くぞ。ここにいてもこれ以上は稼げないからな」

 ブレッドは、槍を持つと狙った場所に突き刺した。

「……意見が合うのは嫌ですが、確かにこの場にいては稼げない。すぐに行きましょう。それから、外傷を少なくしたのは私というのを忘れないでください」

 マーカスはブレッドを見て舌打ちをする。

「もう焦げてるだろうが」

 ライエルの魔法で焦げたヒッポグリフを、忌々しそうにブレッドは見ていた。

 普段は気にしないことでも、ライエルが絡むと憎くてしょうがなくなっていた。

 槍を引き抜き、血を振り払うと我先にと走り出す。

「おい、待てよ! 俺が隊長だろうが!」

 マーカスも負けないように北側に走り出すと、三人組みもそれに従うのだった。

 ――ヒッポグリフの前足は、ピクリと動いたのを五人は見逃してしまう――。
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