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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

動物大好き効率厨な五代目

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グリフォン

 ヒッポグリフを退治してから、林に潜んでいる魔物たちの動きはなかった。

 ルカの家で横になっている俺は、毛布をかぶって夜中に何度か目を覚ますとスキルを使用していた。

 数時間おきに起きては、魔物の動きを観察している。

「削れたのは三十程度。でも、残っているのは二百近く……増えているな」

 当初よりもその数を増やしている魔物に脅威を感じるが、補強の方は夜通し行なわれている。

 ノウェムは治療に専念するために村の中央に配置し、アリアやミランダさんには夜は休んで貰う事にした。

 起きているのはクラーラとモニカくらいだろう。

 いきなり金貨を四十枚近くも支払い、必ず報酬を出すという姿勢も見せている。

 もう一度眠るか、と思っていると六代目が声をかけてくる。

『なんだ、眠れないのか? こういうのは慣れだぞ。休む時は休む! いざという時に体が動かないのはまずいと思うが』

 周囲ではルカの親子が眠っており、シャノンも横になっていた。

 ミランダさん、アリアも眠っている。

 誰も起きていないのを確認し、俺は六代目に返事をした。

「ある程度は眠らなくても大丈夫ですよ。ただ、何かあればと思うと、起きてしまうんですよね」

 すると、六代目は。

『もう少し周りを信用するんだな。アリアの実力を見ただろう。任せるところを任せ、お前は自分のやるべき事をしろ』

 今回の目玉であるグリフォン――。

 それを相手にするのは俺だろう。

 実力的にパーティーメンバーで囲んで叩きたいが、それでは村の守りが手薄になってしまう。

 誰かが体を動かすのを感じると、口と目と閉じる。

(起きたのはルカか)

「……父ちゃん」

 寝言のようだ。

(父親がヒッポグリフに襲われたんだったな。そうなるともう……)

 魔物退治の時に、無理に避難させたこともあってルカは不満そうだった。

 父親の敵を討ちたかったのだろう。

 二代目の長男に似ている事から、暇な時に面倒を見ると約束していた。

 夜が明けようとしているのを確認すると、俺は上半身を起こす。立ち上がって背伸びをし、ルカを起こした。

 小さな体を揺すってやると、ルカが目を覚ます。

「あれ? ライエル様?」

「起きられるか」

 そう言うと、眠そうに目をこすってルカが起きる。

「何? も、もしかして――」

 敵が来たのかと勘違いをしたルカに、自分の人差し指を口に当てて「しー!」と言って黙らせる。

 両手で口を押さえたルカに、俺は言うのだ。

「外に来い。少しだけ教えてやる」

 そう言って家からルカを連れ出すのだった。





 村の中に的を作ったその場所は、弩を練習するために用意した。

 村の周囲は補強を行ない働いている男たちの声が聞こえる。

「この分だと昼には予定していた分は終わるな」

 それまでにグリフォンが来ないとは言い切れないが、それでも勝つための準備は進んでいる。

 そして、俺は的に目がけて矢を放つルカを見る。

 矢は的に当たらず、違う方向に飛んでいった。

「あれ? おかしいな……」

 俺が持っていた小さな弓矢を、ルカに貸しているのだ。

 迷宮で使用するために買ったために、小さい作りをしている。

 だが、ルカに大きいだろう。

「ほら、良く狙って。最後まで的を見ておくんだ」

 力んで顔を逸らしており、矢の狙いが定まらないのだ。

「絶対に耳の後ろまで引くなよ。そう、そんな感じで」

 次の矢も的に当たらない。

「これ、壊れてない?」

 俺は苦笑いをするとルカから弓を受け取って矢を一本取る。そして、構えて矢を放つと的の真ん中に矢が刺さるのだった。

「凄ぇ!」

「基本をしっかり覚えろ。俺は本職じゃないから、余計な事は教えられないけどな」

 すると、ルカは俺の腰に下がっているサーベルを見る。

「ライエル様、俺もそっちがいい。それか、あの赤い姉ちゃんみたいに槍とか」

 俺はルカの頭を撫でる。

「今日は弓だ。空いた時間が出来たら教えてやるよ。それより、ルカは読み書きが出来るか?」

 ルカは目をそらす。

「……村長とか名士ができれば問題ないよ。だって、難しいし」

 俺は言う。

「覚えておけば損はないぞ。読み書き計算は大事だ」

 ムスッとするルカは弓を持ってまた矢を構えるのだった。

「俺は強くなって、父ちゃんの仇を討つんだ!」

 そう言って放った矢は、的に当たらなかった。

 その光景を見ていた二代目は、嬉しいのか悲しいのか分からない声を出す。

『親思いだな』

 三代目は心配しているようだ。

『良いことなんだけど、この年齢だと流石に……。ライエル、これからもちょくちょく目をかけて上げてよ』

 そのまま、時間が来るまで俺はルカに弓を教えるのだった。

 弓を教えた理由は……なんとなく、である。





 ルカに弓を教え終り、朝食を食べて仕事に入った。

 そして、何かあれば現場に向かって指示を出していた。

 予定していた補強や罠の設置が終わったのは、昼を過ぎる前である。

 やはり報酬の支払いがあると違うのか、村人たちの仕事は早い。

 馬を借りて村を見て回り、更に補強が必要な場所を探しては追加報酬を支払い、仕事を割り振る事にした。

 元から予算は多めに用意していたが、やはり計算通りにならない。

 前もって余裕のある計画にしていたご先祖様たちのおかげで、最低限の準備は整った形になっていた。

 ポーターに集まり、現在の状況を確認したのは昼食後である。

 兵の訓練を行なったクラークさんが、現状を説明してくる。

「弩の矢は作って貰っているが、訓練でいくらか駄目になったから多めに欲しい。それでも、撃つ方と弩に矢を装填する仕事に分けて二人一組……近ければ当たるだろうが、飛んでいる敵を狙うのは難しいね」

 俺は頷くと、村長からの報告を聞く。

「村の補強は終わって、今は追加の分を休んでいた連中が中心で作業を……夜通し働いていた連中は、今は休んでいます」

 地図に作業に取りかかっている場所を記入し、そしてモニカから報告を受ける。

「食料の消費が早いですね。正直に言えば、このまま引きこもって戦えるのは二週間もありません。それ以上は退治しても村の食料が足りなくなります」

 収穫が終わった後だというのに、やはり人数が多く食べる量も増えているので仕方がない事だろう。

 ノウェムが報告してくる。

「怪我人の治療は終わっています。大怪我をした兵士さんは、流石に参加は難しいと思いますが、命は無事です。王都に戻るまでには動いても大丈夫になるかと」

 作業での怪我人もそうだが、自分が倒したと言い張って喧嘩をした兵士たち。

 そういった余計な手間をかける連中が地味に多かった。

 現状では、後は待つことくらいしか出来ない。

 作業を優先して疲れさせてもまずいので、見張りを用意して交代で休憩に入って貰っている。

 すると、村長が俺に意見を言う。

「あ、あの……家や畑が壊された連中もいます。作業が終わったら、そのままそちらの方に人手を割いても構わないでしょうか?」

 それを聞いて、ノーマさんが却下する。

「馬鹿か。兵も民も休ませておきたいのに余計な仕事をこれ以上は――」

 正論を言うノーマさんを見て、クラークさんが頭を抱えていた。

 二代目が俺に素早く言ってくる。

『引き受けろ。それから、こっちからも人手を出せ。そうだな……クラーラを出して、村の整備を手伝って貰え。マーカスたちも、だ』

 休ませておきたいが、二代目の意見に従って俺は村長の提案を受け入れる。

「俺の方から人手を出します。手伝いが必要なら言ってください。ただ、あまり無理はしないでくださいね」

「は、はい!」

 村長が安心するのを見ると、ノーマさんが俺を睨んでいた。

 言いたいことがあるのだろうが、指揮官は俺なので黙っているのだろう。

 意外にしっかりしているところもある。

 三代目が言う。

『……この娘は、誰かの下でしっかり学べば優秀な騎士になったかも知れないね』

 違う意味でなら優秀かも知れない。

 村長とは打ち合わせを続け、どこの作業に人手が欲しいのかを聞いて誰を向かわせるのかを考えた。

 その様子を、クラークさんは見て安心しているようだった。





 魔物の襲撃がなかった三日目は、夕方になってクラーラが俺のところに報告に来る。

 朝から昼にかけて眠っていたクラーラは、起きてすぐに魔法を使用して貰って村の整備に取りかかって貰った。

 魔法を使用して作業を手伝い、大変感謝されたようだ。

「……大丈夫? なんかフラフラしているけど」

 俺が心配をすると、クラーラは椅子に座って飲み物を飲んでいた。

 木製のコップからは湯気が出ている。

「いえ、人に頼られてあそこまで感謝されたのがどうも……」

 簡単な魔法で作業を手伝う。それだけで、感謝されてクラーラはなんとも言い難い気持ちになったらしい。

 本当ならもっと大きなことも出来たのだろうが、魔力を制限するためにチマチマと手伝って感謝されるのだ。

 本人は思うところもあったのだろう。

「良いじゃないか。明日も頑張って貰うんだ。それに、いざとなればポーターを操作して貰うから」

 ポーターを見る俺は、単純に魔物にぶつけるだけでも威力があると判断している。

(……腕とか付けたら、武器も持てるよな)

 今後の改造プランも思い浮かんだので、クラーラを見た。

「アラムサースではこんなに感謝はされませんでしたから。私程度の魔法使いなら、沢山いましたし」

 クラーラが少しだけ俯く。

「……役に立てて喜ばれたんだから、それでいいんじゃないかな? 俺なんか、認めて貰うために頑張ってきたけど、最後まで無理だったし」

 そう言うと、クラーラが意外そうな表情をする。

「ライエルさんを、ですか? ライエルさんは控えめに言っても冒険者で一流を目指せるレベルですよ。それこそ、歴史に名を残せる可能性もあると思いますけどね」

「俺が?」

 笑って返事をしたのだが、クラーラは本気のようだった。

「冒険者になって一年未満で、アラムサースの迷宮で地下四十階層を突破しました。これって凄い事ですよ」

 俺はダミアンの依頼で、地下四十階層を突破した時のことを思い出す。

「どうかな? あの時はダミアンもいたし。それに、俺は実家を追い出されたから」

 クラーラは不思議そうにしている。

「ライエルさんを追い出したんですか? 私としては、問題が多いようには見えませんが」

「……全くない、とは言わないんだね」

 そう言うと、クラーラは無表情で頷いた。俺を見て、駄目な部分を告げてくる。

「色々とあると思いますよ。実際、アラムサースでも私に相談してきましたし。今だから言いますが、あの時は驚きました。普通は数ヶ月の新人が悩むことを、地下四十階層を突破してから悩むんですからね」

 スキルの使用を制限し、地力で迷宮に挑むことになった。そのために必要な事を、クラーラに聞いたのだ。

 俺が苦笑いをしていると、クラーラは少しだけ笑った。

「でも、私は感謝もしています。アラムサースにいるのも良かったですが、外に出てこうして色んな経験が出来ますから」

 クラーラは、そう言うとコップの中身を飲み干して少し顔を赤くしてポーターの中に入るのだった。

 四代目が駄目出しをしてくる。

『そこはさぁ……『俺も君と旅が出来て嬉しいよ』くらいは言おうよ!』

 何を言っているんだ、こいつは?

 そんな事を思っていると、クラークさんが俺に声をかけてくる。

「おや、一人ですか」

 弩を背中に担いで、疲れた表情をしていた。

 魔物が攻めてきた場合に備えて、訓練を行なっているのだろう。

「そちらも大変そうですね」

 そう言うと、クラークさんは笑う。

「実戦なんて訓練でやったことをどれだけ出せるか、ですからね。英雄のようにここ一番で大きな力を発揮するのは、凡人にはとても」

 そう言って、クラークさんは椅子に座る。

 俺は近くでたき火をしている事もあって、そこにかけている鍋からスープをコップに注いでクラークさんに渡すのだった。

「ありがとうございます」

 腰の低いクラークさんは、俺を見て何か言いたそうにしている。

「何か?」

「……ライエル君は、元は貴族かな? 王宮の貴族ではなく、領主貴族だと思うんだが……ま、答えたくなければいいんだが」

 少し驚くと、俺は深くは話さないことにして頷いた。

「追い出されました」

「そうかい。なら、事情は聞かない方が良いね。だが、正直に言えば本当に助かったよ。現場慣れしている君が指示を出さなければ、私ではあそこまでできたか……それに、ノーマ隊長も指揮権を譲らなかった」

 俺は言う。

「簡単に譲りましたけど?」

「あの人があんな事をするとは意外だったよ。あの時の魔法と、大量の金貨が効いたのかも知れないね」

 笑うクラークさんは、俺を見て元は貴族というのを理解していたようだ。

 魔法を使ったからではなく、立ち居振る舞いからそう思っていたらしい。

「この仕事も長いからね。色んな人を見てきたよ。領主貴族だと思ったのは、村人の感情を考慮したから、かな」

 昼に村長の頼みを聞いて、人を出したのを言っているのだろう。

「珍しいですか?」

「……王宮の騎士はね、どうしてもそういうところが鈍くてね。下手をすれば協力が得られず、ギスギスする事だってあるんだよ。そうなると仕事がはかどらない。その辺を理解しているのは、やっぱり領主貴族たちだろうね」

 色々と苦労してきたようだ。

 五代目が言う。

『こいつはアレだな。ライエルを規模的には小さな領地の跡取り、くらいに思っているんだろうな』

 七代目も同意見だった。

『でしょうね。わしでも二代目のような意見は出せませんから』

 二人とも、二代目を褒めているのだろう。

 しかし、二代目は言う。

『……本物の貴族様であるお前たちと比べるな。小さな領地をいかに大きくするか、どうすれば良かったのか? 色々と地味に考えてきたんだよ。ま、俺にはこんなやり方しかなかったからな』

 三代目が言う。

『おかげで僕は楽ができたからね。いや~、楽だったよ。二代目が色々と用意してくれていたから、計画通りに動くだけだったし』

 明るい三代目の声を聞きつつ、俺はクラークさんとそのまま世間話をするのだった。





 三日も過ぎ、四日目、そして五日目の朝を迎えた。

 早起きしてルカに弓の扱いを教えていた俺は、迎え撃つ準備が整った村が徐々に明るくなるのを見ていた。

 すると、的に矢が当たった音が聞こえる。

「やった! 当たったよ!」

 大喜びするルカを見て、俺は褒めるのだった。

「良かったな。三日目で当たるようになるなんて凄いじゃないか」

 距離は短く、的の端に当たっただけだ。

 だが、それでも今までを考えれば上達具合は早かった。

 それを見ていた二代目が言う。

『これもライエルのスキルのおかげかな。次は、もっとためて撃つ方法を教えてやれ』

 ルカの弓の指導に、二代目も口を出してきた。

 嬉しそうである。

(俺のスキル【エクスペリエンス】の力、か……ま、判断は出来ないよな)

 経験値を多く獲得するという常時発動型のスキルだが、未だにどの程度の効果が出ているのか分かっていなかった。

 常に魔力を消費しているので、俺としては枷にもなっている。

「ねぇ、次は剣を教えてよ!」

「駄目だ。それに、剣は覚えても使えないだろう」

「そんなこと言わないで、お願いだよ~」

 甘えてくるルカに、笑って弓を構えさせる。だが、すぐに林の方角を見た。

「ライエル様?」

 ルカが不安そうにしている。

 俺は笑顔を向けて弓と矢をルカから受け取ると、ルカに言うのだ。

「みんなを起こしてこい、ルカ。……今日は忙しくなる」

 林の中で動き出した魔物たちは、この前のように小出しにしようとはしていない。動かせるだけの魔物が動いた。

 スキルでは、林の方で蠢いているように見えた。

「お、俺も戦うよ!」

「駄目だ」

 そう言ってルカに忠告する。

「いいか。母さんを守ってやれ。魔物の相手は大人たちでする」

 そのままルカを連れて家まで戻ると、俺はシャノンを起こして狼煙を上げさせるのだった。





 ――鐘を何度も叩く音で起こされたブレッドは、飛び起きると自分の装備を手にとった。

 周囲も驚き、慌てて自分の装備を手に取っている。

 すると、横から伸ばされた手にブレッドは睨み付けた。

「これは私の装備です!」

 隣にいた騎士は、舌打ちをすると他の誰かから奪おうと視線を動かしていた。

 すぐに装備を着込んで武器を持って外に出るブレッドは、装備を着込んだマーカスに声をかけられた。

「おい、すぐに中央に行くぞ!」

「言われなくても分かっています!」

 ここ数日、村の修復という作業で使われるだけだった。

(借金で報酬も出ない。ここで大きな活躍をしないと)

 ブレッドは焦っていた。

 出世――。

 父は世襲できる地位のある騎士ではなく、一代限りの騎士だった。

 兄たちは騎士になるのを諦めており、仕事を見つけては家を出ていた。

 継ぐものなどほとんどない家で、ブレッドだけは騎士になると心に決めて読み書きや計算を学んでいた。

 剣も父から教わり、毎日のように振っていた。

 自分が努力しているのに、何もしないで読み書きも計算も出来ない騎士がいるのに腹が立ったこともある。

 何よりも許せないのは、冒険者に身を落としたライエルだった。

 地位も失ったのに、冒険者として成功したのか大金を出してきたのだ。

 今回のグリフォン討伐に一番貢献しているのは、間違いなくライエルだった。

(なのに……)

 なのに、ライエルは功績などいらないと言うのだ。

 自分が求めている功績など、価値がないと言われた気分だった。

 許せなかった。

 そうして駆け出すと、行軍中に知り合った三人組みが近づいてくる。

 リーダー格の青年が言う。

「おい、これってもしかして!」

 マーカスが返事をした。

「言わなくても分かるって! 空を見ろ!」

 鐘の音に狼煙が上がっている。

 魔物が動き出すという合図だった。

「これで活躍できれば――」

 ライエルの側にいたために、最初の襲撃では活躍の機会がなかった。

 ブレッドにすれば、計算違いも良いところだ。

 マーカスがポーターを見つけると、そこには既にある程度の人数が集まっていた。

 ライエルが準備を整えて指示を出している。

(今度こそ。絶対に騎士になれるほどの功績を!)

 意気込むブレッドは、ライエルの下に到着する――。





 ポーターの近くで集まった小隊から順番に指示を出していく。

「グリフォンやヒッポグリフは俺たちで対処します。怪我をしないように注意して。それから、勢いのあるうちに罠を使用します。騎士は入り込んだ魔物を倒す用意を!」

 二代目が指示を出してくる。

『まだ時間はある。食事をさせてから向かわせろよ。腹が減ると力なんか出ないからな』

「少しでも良いので食事をしてから向かってください! モニカ!」

 俺がモニカに視線を送ると、既に用意しているのかパンに具材を挟み込んだものと温かいスープをコップに注いだものを大量に並べていた。

「このモニカに抜かりはありません。後で泣いて感謝しなさい」

「ポヨポヨに改名するぞ! 食事を終えたら配置場所に向かって! それから、伝令は――」

 指示を出していると、マーカスさんたちが駆け寄ってきた。

「ライエル、俺たちはどうしたらいい!」

 俺はマーカスさんたちを見て、指示を出す。

「食事をしたらポーターの近くで待機を。遊撃部隊として頑張って貰います」

 本当はこの戦いに参加しただけで功績になるのだ。

 後で俺が倒した分を彼らの功績に加えてもいい。

 護衛対象でもあるので、出来るだけ無茶はさせたくない。

 だが、ブレッドさんが叫ぶ。

「そんな……私たちだって戦いに来たんです! 正面に配置してくれれば、手柄だって!」

 一番危険な場所に配置したくないので、俺は言う。

「危険な場所に投入するために、ここに残って貰うんです! アリア!」

 パンを加えていたアリアが、俺の方を見る。

ふぁにお(何よ)?」

「正面はきついぞ。グリフォンなら逃げてもいい」

 アリアはパンをスープで流し込み、口をぬぐう。

 男らしい仕草だ。

「分かっているわよ。ライエルに任せるわ。ちゃんと仕留めなさいよね」

 次々に指示を出していく俺は、全員が配置場所に向かうと空を見た。

「――来たか」

 時間的には間に合った。

 空に飛び上がったのは三体の魔物――。

 一体は他の二体よりも大きく、そして遠くからここまで聞こえるような鳴き声をあげる。

 林からはゴブリンやオークが駆けだしていた。

 スキルで確認した数は、二百体を超えている。

 鷲の頭に翼。

 そして首から下は獅子の体。

 鋭い爪を持ち、空を飛ぶその姿は雄々しかった。

 その場にいた誰かが言う。

「――本当にグリフォンだ」

 今まで姿を見せなかった魔物たちのボスが、翼を広げてこちらに向かってくる。

 グリフォンとの戦いが始まろうとしていた。
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