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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

動物大好き効率厨な五代目

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資金援助

 サークライ家の庭を借りた俺は、全員の装備を確認する。

 基本的に冒険者は軽装が多い。

 それもあって、全員を見た感想を二代目が述べる。

『……うわぁ、頼りなさそう』

 三代目も笑いながら言う。

『僕なら追い返すレベルだね』

 冒険者組みである俺たちは良いだろう。

 装備も整っているので、傭兵として見ると不揃いだが戦える恰好をしている。

 ――モニカ以外は。

「モニカ、メイド服というかそのドレスを脱げ」

 俺が呆れながら片手で顔を押さえつつ言うと、即答してくるモニカ。

「嫌です! 拒否します! お断りです!」

 断固として拒否の姿勢を見せるが、戦闘には支障がないのは分かっている。

 だが、見た目が駄目なのだ。

「まぁ、モニカはポーターにでも押し込んでおくとして、問題は――」

 俺が視線を向けたのはマーカスさんとブレッドさんだ。

 マーカスさんは所持していたチェーンメイルに剣を持った姿である。

 槍も持っており問題ないのだが、ブレッドさんの方が問題だ。

「すみません。実家の武具は貸し出して貰えませんでした」

 申し訳なさそうなブレッドさんに対し、四代目が言う。

『だろうね。貴重な武具を三男に貸し出すとかあり得ないよ。お金を貰ってもごめんだろうね』

 五代目が言う。

『どこも次男や三男の扱いは酷いところが多いよな』

 俺は思った。

(いや、五代目は次男とか三男とか以前に……)

 子供が三十人以上いた五代目。

 理由もあったのだが、ハッキリ言えばそれ以前の問題で口出しできる立場でもない。

 二代目もそう思ったのだろう。

『いや、お前はこの件に何も口出しできないからな』

 五代目は不満そうだ。

『そう言うと思ったよ』

 俺は全体を見て思案する。

(見た目も整える必要があるな。王都でなら装備も揃うだろうから、この辺で見た目重視の装備を購入しておくか?)

 見た目というのは大事な要素だ。

 例え中身が一緒でも、恰好が整っている方と整っていない方――選ばれるなら、圧倒的に前者である。

「出発まで今日を入れて四日。装備を先に調えましょうか」

 俺がそう言うと、近くで俺たちを見ていたドリスさんとルーシーさんが自分の恋人たちに言うのだ。

「な、なら私がブレッドの武具を買うわ。金貨なら十枚でも二十枚でも出すし」

「わ、私だってそれくらい……」

 ルーシーさんが言うと、ドリスさんがクスクスと笑う。

「ルーシーは無駄遣いをしているから、そんなお金なんかないじゃない」

 顔を赤くしたルーシーさんが、大声で言う。

「お父様に借りるわよ! マーカスのために資金だって金貨五十枚だろうが百枚だろうが出してみせるわよ!」

 そんな言い争いを聞いている本人たちは、微妙な表情をしていた。

 マーカスさんが言う。

「ルーシー、嬉しいがそれだけ金を出して貰っても返せるものがない。俺の装備は整っているし、整備もしているから問題ないぞ」

 溜息を吐くマーカスさんを見て、ブレッドさんがボソリという。

「……世襲騎士は余裕ですね」

 聞こえるように言っているので、マーカスさんも舌打ちをしていた。

 俺は思う。

(仲が悪いんだよな……というか、金を出すのはご先祖様に止められているから、貸し出すくらいはできるんだけど)

 俺が資金援助をするのは、ご先祖様たちに止められている。

 絶対にするな、するなら貸して利子を取れ、とまで言われていた。

(一人に金貨五十枚出しても余裕なんだが)

 ポーターのノウハウを売り渡したこともあって、資金的には余裕があった。

 俺は二人に言う。

「俺の方でいくらか立て替えておくというか、貸し出しても良いので必要があったら言ってください。二人とも、ラルフさんが保証人になってくれるでしょうし」

 それを聞いたマーカスさんが、俺に詰め寄る。

「本当か! なら、少し頼む! 武具の整備が思ったよりもかかって、生活が厳しいんだ」

 ブレッドさんも同様だった。

「今回の報酬で必ず返します! なんとかチェーンメイルと武器だけでも揃えないと……」

 二人の必死な様子に、俺は苦笑いをする事になる。





『いいかい、ライエル。人は容易に狂う。ましてや金ともなれば、簡単に狂うからね』

 宝玉内。

 三代目が俺に説明する。

 俺は呼び出されてみれば、ご先祖様たちに囲まれ説教を受けている。

「は、はい」

 理解していない俺を見て、五代目が言う。

『ライエル、お前は金がなくて困っているとする。そうしたらどうする?』

 俺は即答する。

「え? 稼げば良いじゃないですか。そもそも、そうなる前に働こうと思いますよ。今では俺だって冒険者ですからね」

 前なら困っていたかも知れないが、今では外の世界で生きていける自信もある。

 パーティーが解散したとしても、ノウェム一人なら……いや、家族を養っていける自信もあった。

 六代目が言う。

『装備も金も失って、腹を空かせていたらどうだ?』

 それにも答える。

「時間の短い仕事を選んで、食事をしますかね?」

 七代目が聞いてくる。

『では、腹を空かせて装備もないとしよう。高額な依頼を受けないかと持ちかけられたら、ライエルならどうする?』

 それも簡単だ。

「受けませんね。そんな状態で高額な依頼とか怖いじゃないですか」

 すると、四代目が言う。

『貧すれば鈍する、とも言うんだがね。ま、ライエルならそうなる前に行動するだろうし、それだけの実力もある』

 三代目が言う。

『怪我をして動けないとか、そういう場合もあるんだけどね。手足を失って、働きたくとも働けない場合もあるんだよ』

 俺が困っていると、二代目がドリスさんとルーシーさんの恋人二人を思い出せと言ってきた。

『あの二人、金を貸すと言ったら興奮していただろ? 装備を揃えるにしても、あの二人には大金だ。簡単には用意できない』

 俺は首をかしげた。

「働けば良いのでは?」

 冒険者としてそれなりのお金を稼いだ俺から言わせて貰うと、外に出て弱い魔物でも相手にする方が金になる。

 一週間から一ヶ月で、それなりの金額を得られるのではないか? そう思った。

 七代目が呆れたように言う。俺にではなく、王都の宮廷貴族や騎士たちに、だろう。

『奴らにも面子がある。冒険者の真似事はできないし、そもそも王都周辺では役職を持った連中が見回っている。仕事の邪魔だと追い返されるだろうな。残っているのは臨時の仕事に本当の雑用だ。しかも安い』

 三代目が教えてくれる。

『僕の時代もそうだったけどね。王都は大都会だけど、お金が余っているわけでもない。それに食料も同じだよ。いつもお金で買えるとは限らない』

 賊、魔物、凶作、災害――色んな理由はあるが、食べ物が手に入らないときもある。そんな時は、周囲の領主から買う必要が出てくる。

 二代目が言う。

『ライエル、誰もがお前と同じだと思うなよ。後先考えずに、お前が金を持っていそうだから、という理由で襲う奴も出てくるんだぞ』

 四代目も真剣だ。

『金のやり取りはしっかりしなさい。報酬を支払うことが多かったけどね、そういう立場になると分かるんだよ。金のやり取りはしっかりしないと信用に関わってくる』

 最後に三代目がまとめる。

『僕たちが何を言いたいかというとだね……つまり、安易な施しはその人のためにならない、って事だよ』

 俺は俯いて考える。

(そんなに難しいことなのか? 働けば金が貰えて、それで生活をする……それだけなんだけど)

 頭では理解できていたが、それが本当に理解できたかは微妙だった。





 王都で冒険者たちが利用する店に出向いた俺は、値札を見て微妙な表情をしていたと思う。

 買い物に来てみれば、以前立ち寄った場所ではない。

 値が張っても良い物を揃えようと思ったのだ。

 しかし、来てみれば装飾に優れている物は多いのだが、機能的でない物が多いのである。

 三代目が言う。

『王都の冒険者はお抱えだったかな? 普段はこういった飾りの多い装備で着飾って、仕事の時は愛用している武具を使うのかも知れないね』

 確かに見た目は大事だが、王都でのみ使用するような武具を持っていても意味がない。

 男物の装備を見ていると、近くで同じように商品を見ていた冒険者が噂をしていた。

「おい、今度のジオニ村の遠征の話を聞いたか?」
「十騎長のノーマが指揮する部隊だったか? 選ばれた連中は可哀想に」
「金を出せば、すぐにでも終わるのにさ」
「小さな村だろ? それにしてもノーマかよ」

 二人組の冒険者は、事情を知っているのか装備を選びながら話をしていた。

「女性騎士は珍しくないが、あのノーマだからな」

(指揮する人間に問題でもあるのか?)

 そう思っていると、冒険者の一人が言う。

「出世するために必死なんだろ。両親が死んで官位が下がったとか言うからな。ま、恨まれるようなやり方をいつまで続けるんだか」

 問題のありそうな人物なのは間違いない。

 そう思っていると、ノウェムが俺のところに来る。

「ライエル様、そちらはどうでしたか?」

 何かを購入したようで、手には荷物を持っていた。

 俺は首を横に振る。

「服は良いんだけど、武具はちょっと手が届かないかな」

 金ならあるのだが、飾りが多くて使用するとなると邪魔になりそうだった。

 ノウェムの後ろにいたアリアも、荷物を持っている。

「高いわよね。昔は考えなかったけど、今となると冒険者が装備を余所で買うかホームを変える理由が理解できたわ」

 王都で仕事などほとんどない。

 あっても、多くの冒険者たちが貴族のお抱え、あるいは有名どころで仕事に困らない立場である。

 それ以外だと、王都に立ち寄った俺たちのような冒険者がいるだけだ。

 戦争でも起これば、周辺から冒険者が大量に集まってくる事もあるらしい。

 ノウェムとアリアが購入したのは、フードのついたローブである。ファーがついており、防寒着として使用するのだろう。

「ライエル様も、防寒着は購入してくださいね」

 ノウェムが心配してくるので、俺は頭をかく。

「そうするか。それにしても、冬場に遠征か……暖房関係もしっかりしないといけないね」

 宝玉の中から、声が聞こえた二代目だ。

『……ライエル、自分たちの分だけじゃなく予定よりも多く必要な物資を揃えろ。指揮官が駄目だとか、笑い話にもならないからな』

 三代目も同じだった。

『男とか女とかどうでもいいんだけど、無能がトップだと苦労するからね。必要な物が揃っているとは思わない方がいいよ』

 今回の指揮は王都の騎士団から十騎長が出てくる。

 マーカスさんのような兵士を持つ騎士たちをまとめるような立場であるが、基本的には階級が上なのでどれだけの兵士を指揮するのか決まっていない。

 今回のように義勇兵を指揮する場合もあるが、王都の兵士を連れて行く場合もある。

 誰かの下で動くというのは、正確に言えばこれがはじめてだろう。

 今まではパーティーのリーダーとして、色々と指示を出してきた。

(今度は指示を出される立場か。普通は圧倒的にこっち側の立場が多いんだろうな)





 ――サークライ家の裏庭。

 クラーラは、モニカが改造したポーターを動かしていた。

 予定よりも早く終わったのは、モニカ自身が作業を効率的に行えるようになったから、だそうだ。

 クラーラは、自慢気なモニカを見てなんと言って良いのか分からなかった。

「動かしてみますね」

 改造と言っても、今回は外で使う事も考えて盾の可動範囲が広くなっているだけだ。

 ポーターが展開した盾を、上に広げて簡易の屋根を作り出す。

 モニカが言う。

「ポーター……なんだか、キャンピングカーに近くなってしまいました。装甲車を目指しているというのに」

 納得のいかないモニカのようだが、クラーラにしてみれば屋根が用意できるというのは素晴らしいことだった。

 それだけでも外で行動する際に雨をしのげるようになる。

「普通に凄いと思いますけどね」

 稼働した盾を固定する仕掛けが施されている。

 モニカのこうした技術を見て、クラーラは職人並かそれ以上であると確信していた。

「モニカさん、これからどうするんですか?」

 動かしてみたクラーラは、問題ないと分かるとモニカに予定を確認する。

「買い出しです。サークライ家の方で荷物なども用意して貰ってはいますが、やはり外でもチキン野郎のために少しでも良い料理を用意したいので」

 それを聞いたクラーラは、首を横に振る。

「今回はあまり目立たない方が良いと思いますよ。まぁ、ポーターがいる時点で目立つとは思いますけど」

 アラムサースではポーターも冒険者には知られていたが、王都であるセントラルで使用するのは今回が初めてだ。

 というよりも、王都で依頼を受けるとは考えてもいなかったのである。

 ギルドにホームの変更手続きを行なわず、知り合いからの依頼という形で義勇兵であるマーカスの部下として参加するのだ。

「面倒ですね。まぁ、チキン野郎の邪魔にならない範囲で頑張りますよ」

「それが良いと思います」

 安心するクラーラは、ポーターの盾を元の位置に戻す。

 出発までに荷物を積み込んでしまえば、自分たちの仕事は終りだった――。





 準備が進む中。

 俺はアリアを連れて買い出しに来ていた。

 土地勘がない俺と違い、アリアは王都出身である。

 ノウェムたちは、屋敷の方で色々と準備をして貰う事になっていた。

 二人で市場に顔を出すと、そこで保存に向いていそうな食品を見て回る。

「え~と、モニカの要望は……」

 メモを見ながら書かれている物を見ていく。

 俺もアリアも荷物を持っており、遠征に行くために必用と思われるものを購入していた。

 アリアは少し疲れた表情をしていた。

「ちょっと、こんなにいるの? 予定だと移動と滞在も入れて十分な食事も確保しているのよね? なんで自分たちの分を用意するのよ」

 俺はアリアにメモを片手に、市場の商品を見ながら言う。

「義勇兵の参加は色々とあるんだよ。しっかり揃えているのは、騎士と兵士の分。義勇兵の分はオマケみたいなものらしくてさ」

「らしい、って……ちゃんと確認しなさいよ」

 アリアが責めてくるが、俺は言う。

「足りない食事で我慢するくらいなら、自分たちで揃えた方が良いだろ。ラルフさんに内容を確認させて貰ったけど、本当に今回の遠征は酷いよ」

 組まれた予算もそうだが、義勇兵の方が多かった。

 冒険者も末端騎士たちに雇われるなり、自分で参加を決めて少数が行動を共にすることを知らされている。

 しかし、大半が家を継げない貴族の次男や三男だったのだ。

 手柄を挙げて騎士に――誰もがそれを夢見ている。

(最初から被害を出しても問題ない、と……それって、本当に良いのかな?)

 疑問に思っていると、アリアの視線が果物に注がれていた。

 購入リストにはないものである。

 店主に大銅貨を手渡し、果物を購入する。

「細かいのはないのかい? これだと――」

 店主がそう言うと、俺は果物をいくつか手に取りアリアに手渡した。

「ちょ、ちょっと!」

「いいから。……それより、おばちゃん」

 アリアに押しつけ、俺はおばちゃんに話をする。

「なんだい? おや、随分と育ちの良さそうな坊やじゃないか。まさか、貴族様かい?」

「違うよ。それより王都に来たのは数回目でね。少し知りたいことがあるんだ。最近聞いたんだけど、騎士団が遠征するんだって? ジオニ村とか聞いたんだけど」

 店主は理解したのか、俺が出した大銅貨をしまうと笑顔になって教えてくれる。

「女性騎士のノーマが率いるとか聞いたけどね。噂だと良くない事が聞こえてくるよ。参加しようと思うなら止めておいた方が無難だね」

 俺が冒険者で情報を求めていると思ったのか、悪い噂が多いと言って止めてくる。

「詳しく知っている人はいる?」

「私の知り合いにはいないね。ただ、出世するために色々と無茶をする騎士だと聞いているよ。関わらない方が無難だと思うけどね」

 俺は礼を言ってその場から移動をする。

 アリアは、俺の横を歩きながら聞いてきた。

「ミランダに聞けばいいじゃない。わざわざ、あんな事をする必要があるの?」

 右手には荷物を抱え、左手には俺が購入した果物を持っていた。

「さぁ?」

「さぁ!? どういう事よ!」

 アリアが俺の答えに驚く。俺はメモを手にまだ購入していない物を探す。

「いや、違う噂も聞けたらいいなぁ、って思っていたんだけどね。なんか、聞けば出世の鬼みたいな印象しかなくてさ」

 どんな人物か知っておきたかったのだが、手に入る情報からではあまり好感の持てない人物のようである。

 二十代を前にした若い女性騎士で、才能に溢れている。

 ここまでは良いのだが、問題は彼女が出世のために今まで多くの無理をしてきたことだ。

 自分だけでなく、周りにも迷惑がかかっていることが多いらしい。

(失っても痛くない人材、なのか? 本当に王都はドロドロしているな)

 空を見上げる俺は、そんな事を持っていた。

 アリアが言う。

「……出発まで時間がないのに、そんな事でいいの?」

 俺は呟く。

「出発まで残り二日か」
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