挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

お金大好きで恐妻家な四代目

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

60/345

攻略開始

 数回の試運転を行ない、ポーターの調整が完了すると俺は自分の武器を取りに鍛冶屋に足を運ぶのだった。

 雑多な都市であるアラムサースは、都市自体が迷路のようなものである。

 だが、ここで生活をしている事もあって、用がある場所へは迷わずにいけるようになった。

 地図を書いてくれたクラーラや、道案内をしてくれたミランダさんに感謝である。

 そうして歩いていると、少し細い道を入った場所に看板がある。

 アラムサースで利用している鍛冶屋であり、武器だけではなく防具も手がけていた。鉄が容易に入手できるので、鍛冶屋は多かった。

 だが、冒険者向けとなるとどうしても表通りに店を出していない。

 アラムサースという都市を物語っているのだが、店主はドワーフだった。

 モジャモジャした髭をして、赤い鼻が特徴だった。

 俺が挨拶をすると、店主も笑顔を向けてくる。

「どうです。頼んだものは?」

「できているよ。しかし、これで良いのかい? 確かに頑丈にはしたんだが……サーベルとして見ると少し重いよ」

 特別に作って貰ったサーベルは、重くても良いので厚みを増して貰った。今の俺なら多少重くても扱える。

 何よりも、数打ち品ではすぐに欠けてしまう。

 鉄で武装した魔物が多いので、サーベルは質の良い物がアラムサースに置いていない。置いていても値段が高すぎて買えない事の方が多い。

 俺はサーベルを五本受け取ると、他の物を見る。

 弓矢の先に魔石がついた爆発する矢だ。

 学生たちの小遣い稼ぎにも利用されている品物だ。

 ただ、今回は数を揃えられなかったので、鍛冶屋の知り合いに頼んで作成して貰っていた。

「……数も十分ですね」

「貰った分はキチンと仕事をしないとね。客が離れると、こんな場所で商売をしている俺はすぐに店を畳むことになる。それにしても……」

 それにしても、なという店主は俺が購入した矢を見て言う。

「どうしました?」

「いや、大規模なパーティーが迷宮に挑むわけでも、近くで戦争があるわけでもない。そんな状態でこの手の武器の数が不足しているんだよ」

 矢に爆発する仕掛けが施された矢は、結構な値段がする。

 一本や二本ではたいした値段ではなくても、数がまとまれば普通の矢よりも倍以上の値段になるのだ。

 それに、ものが悪ければ爆発しない、威力が弱い、などの不良品も多い。

 管理も大変だ。

 長期間の保管に向いていないので、使用する分を決めて必要分を依頼するのが普通だった。

 攻撃を受けて爆発する事もあるので、管理が大変である。

 荷物持ちがいなくては怖くて使用もできない。だが、迷宮では頼りになる……そんな武器である。

「大量に誰かが仕入れたんでしょうね。おかげで前に購入したところからは買えませんでしたよ」

 俺が苦笑いをして言うと、店主は気をつけて扱えと言いつつ商品を俺に渡すのだった。

 そして俺に言う。

「そう言えば、この前のサイドポニーの女の子はどうしたんだい?」

 ノウェムのことを聞かれたので、俺は一緒ではないと言っておいた。

 少し残念そうにする店主。

 ドワーフの美的感覚と、人間の美的感覚は違うのにノウェムを気に入っているようだ。

「いたらサービスしたのに、残念だな」

「それは残念でした。今度は連れてきます」

 そう言うと、店主は笑い出す。

「あの子は、母ちゃんも気に入っているからな。また連れて来てくれよ」

 商品を受け取って代金を払った俺は、鍛冶屋を出るのだった。





 ――アリアは、迷宮に挑む前に装備の点検を行なっていた。

 ポーターに積み込んだ中身をチェックしているのは、ライエルとポヨポヨだ。

 それ以外の面子は、自分の持ち物を点検している。

 サークライ家の屋敷の庭で、朝早くから起きて朝食を食べた。

 まだ薄暗い中で、クラーラが魔法で光を点しながら自分の荷物を点検している。

 周囲もその明かりで自分の荷物をチェックしていた。

(結構、気が利くのよね)

 アリアはクラーラを見てそんなことを思っていた。

 自分の荷物を確認し、装備の点検も行なう。ポーターには予備の武器も積み込んでいたので、そちらの方は先に点検を済ませていた。

「よし、これで大丈夫!」

 こういった大きな計画――迷宮に数日以上泊まり込んで挑む場合、準備が整っていないと本当に困る。

 一つの荷物を忘れ、死んでしまえば悔いが残る。

 そのために、前の日から色々とチェックをしていたのだ。

 ライラの教えを思い出しつつ、自分の準備が整うと周囲を見ていた。

 ミランダは冒険者として自分よりも日が浅いのに、落ち着いて確認をしていた。

「こら、水筒を忘れてる!」

「え? でも、ポーターに水は積んでいるし……ヒッ! ごめんなさい!」

「すぐに取ってくる。中身も確認しなさいよ」

 そんなミランダが、シャノンの確認まで行なっていた。

 屋敷は戸締まりを済ませているので、シャノンは鍵を借りて玄関へと向かった。

 クラーラは、メモを見ながら荷物の一つ一つを確認していた。

 指を差して一個ずつ確認し、チェックを付けていく。

「よし、これもよし……二回目のチェックもよし」

 二回もチェックをしていたようだ。それを今度は詰め込みつつチェックをしていた。

(あれは真似できないわ)

 几帳面には見えないが、サポートとしてプロ意識があるのか荷物をしっかり確認していた。

 そうしてノウェムへと視線を向ける。

 すでに終わっているのか、ノウェムは自分の荷物をポーターへと積み込むためにライエルたちの下へ向かっていく。

 すると、足を止めて急に塀を見つめる。

 アリアもそちらに視線を向けるが、薄暗いこともあって幽霊の類いかと怖がる。

(変なものが見えるとかじゃないわよね……でも、ノウェムだし)

 アリアにとっても、ノウェムは掴み所がない相手だった。

 ミランダが警戒しているのは知っている。何故か、二人はピリピリとしている空気を作ることがあるからだ。

 そうして塀に視線を向けると、急に気配がした。

「え、何か……って」

 塀の上に小さな鳥がいた。

 ノウェムを見て飛び立つ鳥。

(ノウェムも緊張しているのかしら)

 すでに気にした様子もないのか、ノウェムは荷物をライエルのところに持って行った。

 屋敷から出てきたシャノンが、鍵をかけてミランダのところへと戻る。

「水は入っているのよね?」

「ちゃんと入れたわよ」

 すると、ミランダがシャノンから水筒を奪い、蓋を開けて中身を一口飲んだ。

「……水じゃないわよね、これ?」

「て、てへっ!」

 自分を可愛らしく小さな手で叩いたシャノンに、ミランダは笑顔で拳を頭に当ててグリグリとしていた。

「もしもこのまま持って行きたいなら、違う水筒に水を入れてきなさい。荷物も自分で持つのよ」

 ミランダの言葉に、シャノンはポーターを指さす。

「ポーターに積み込めば良いじゃない!」

「ポーターはこれから更に荷物を積み込むのよ! いいから、もう一回、行ってくる!」

 姉妹喧嘩を見つつ、アリアは思った。

(なんか、ポーターが普通に仲間扱いを受けているんだけど……)

 ちょっとだけ納得できないアリアだった。

 そして、ライエルたちを見る。

「まだ余裕があるな」

 ポーターに積み込んだ荷物を見て、満足した表情をしている。

 完成したポーターを自慢するほどに喜んでいたライエルが、アリアには子供のように見えるのだった。

「これから回収した魔石や素材を積み込みますから、こんなものでは? 私はポーターをもっと大きくして、寝泊まりできるようにしたかったですよ。貧弱なチキン野郎に野宿なんて可哀想で……」

 貧弱呼ばわりをされたライエルが言い返す。

「おい、誰が貧弱だ。迷宮内なんだから野宿じゃないだろうが。雨風もないし」

 ――アリアは。

(やっぱり、ライエルもどこかズレているのよね……というか、このパーティーでまともなの、私しかいないんじゃ……)

 アリアもだいぶ逞しくなり、確かに冒険者としてまともにはなっていた。

 ただ、女の子としてはどうだろう? 以前よりも男っぽくなっている。

(はぁ、私がしっかりしないと)

 そんな事を思うのだった――。





 アラムサースの迷宮に入った俺は、人員も装備も揃えてようやくご先祖様たちの課題に挑む事になった。

 数ヶ月をかけてポーターを完成させ、小遣い稼ぎをしていたような気もする。

 だが、俺も少しは成長しているはずだ。

 前衛にはアリアとミランダさんを配置し、そのすぐ後ろには俺が。

 そして、中央にはノウェムとクラーラおり、後方にはポーターがついてきている。

 割と広いというアラムサースの迷宮の通路を進むポーターには、シャノンが天井に乗っていた。

 ポーターの横にはポヨポヨが控えている。シャノンを見て、天井から降りて荷台に乗れと何度か注意していた。

 クラーラが俺に言う。

「ここ最近は何度も潜っているので、地下五階までは早く移動できそうですね」

 何度も迷宮に挑んでは歩き、そして荷物や人員を運んでいた。

 その甲斐あって、地下五階までの道順は記憶している。

 迷宮が動いて道が変わっていたとしても、前回挑んだ時よりもそこまで大きな変化はないだろう。

「ま、それもあって何度も挑んだわけだけどね」

 俺がクラーラにそう言うと、ノウェムが俺を見て言う。

「ライエル様、あまり無理はしないでくださいね」

 心配しているようだ。

「無理はしていないけどね。ポーターに荷物や人を乗せて移動するだけだよ。『背負われライエル』のポーターと言えば、今では冒険者の間でも人気だから」

 少し自慢気に言うのは、緊張した雰囲気を和らげるためだった。

 ノウェムが注意してくる。

「駄目ですよ、ライエル様。リーダーが気を抜いてはいけません」

「まったくですね」

 クラーラも同意すると、それをポーターの上から眺めていたシャノンが笑ってみていた。

「駄目リーダー」

 指を差して笑ってくるので、俺はシャノンに言い返そうとして――。

「ほら、来たわよ! 前方に二体。ゴブリンね」

 アリアが声を張り上げると、俺はサーベルを抜いて指示を出す。

「アリアとミランダさんで対処。残りは警戒」

 すると、向かってきたゴブリンをミランダさんとアリアが対処する。迷宮の浅い場所――地下五階までなら、前衛を交代するだけでも進むことができる。

 基本的に女性陣二人が軽装なのだが、ゴブリンはすぐに倒されてしまった。

 アリアには突き殺され、ミランダさんには一本目の短剣で目を斬られ、動きが鈍ったところを急所にもう二本目の短剣で一突き――。

(なんだ、これ……一瞬じゃないか)

 もう少しだけ時間がかかると思ったが、二人の動きが前よりも鋭くなっていた。

 アリアが周囲の警戒に入ると、クラーラが動き出す。

 深くに潜るとあって、今回は魔石だけを回収する計画だ。ここで大量に素材を入手しては、地下三十階に到着する前に荷物が満杯になる。

 俺も魔石の回収を手伝うと、宝玉から二代目の声がした。

『不思議だよな』

 三代目の声もする。

『何が?』

 二代目は言う。

『人だよ。今まで目立たなかったのに、仕事を任せるといきなり仕事ができたりしないか?』

 四代目も同意していた。

『ありますね。今までは自分がしなくても、とか思っているんですよね。でも、任せられて自分がしなくては! とかなるタイプ』

 五代目も言う。

『十人いれば、そのうちの二人から三人が駄目になる。代わりに、残りのうち二人か三人は頑張るんだよな』

 六代目が俺に言ってきた。

『そうなると、今まではライエルが他のメンバーを駄目にしてきた、と』

 少し心が痛い。

 思い当たる節があるだけに、言い返せない。

 七代目がフォローしてくれる。

『スキルの性能が破格ですからね。ただ、ライエルだけのせいでもないでしょう。アリアが少し自覚を持ったのも大きな変化ですよ』

 七代目はアリアのフォローもする。

 最近は男っぽくなったが、動きは冒険者らしくなった。

 言われた事だけをするのではなく、言われる前に自分のできることをしていた。

 それだけで、こちらが指示をしないで他に意識を向けられるので助かっている。

 ただ――二代目が言う。

『でも、なんか違う意味でピリピリしている気がするな』

 四代目が言う。

『なんです? 初代と同じような『勘』って奴ですか』

 俺は気になったので、クラーラを手伝いつつ宝玉から聞こえてくる会話を聞いていた。

『いや、ミランダちゃんがやたらと周囲を警戒しているし、ノウェムちゃんも今日はなんだか雰囲気が……ま、気のせいだと良いんだけどな』

 俺はパーティーを見渡した。

 確かに、普段よりも緊張しているように見える。

(スキル無しで地下三十階を目指すから、だけじゃないのか?)

 ただ、この場で話をしても始まらないので俺は移動することを告げた。

「回収終り。さて、なら移動しようか。今日中に行けるところまでいかないと」

 そう言って俺が歩き出そうとすると、全員が先程の配置について移動を開始するのだった。





 予定していた休憩ポイントへ向かった俺たち。

 地下五階に良い場所があったのでそこへと向かうと、部屋の中が明るかった。

 俺は頭をかく。

「ついてないな。先客だ」

 違うパーティーがそこで休憩をしていたのだ。

 短時間かも知れないが、それでもこちらはそれを待っている訳にもいかない。

 クラーラが言う。

「優先権は先に休憩をしている冒険者たちにあります。交渉してみますか? 出発するかもしれませんけど」

 俺はここまでの時間を確認する。

(割とここまでは順調だったな。道も覚えていたし……先に進んで手頃な場所を確保するか)

 五代目、六代目のスキルによって、他の冒険者たちと出くわす事が極端に少なかった。

 こうした小さな予定外の出来事も多い。

「いや、先に進もう。次の休憩は長めに取る。ミランダさんは俺と交代しましょう。アリア、まだいける?」

 アリアは頷いた。

「当然」

 ミランダさんは少し悩んだが、俺の指示に従うことにしたようだ。

「……ま、リーダーさんの指示だしね。下がらせて貰うわ」

 俺はミランダさんと交代して移動を開始する。

 二代目が言う。

『数が少ないのはやっぱり不利だな。というか、ここで休憩か……』

 地下五階は先に進むにしても、戻るにしても休憩に入る冒険者が多かった。

 俺たちのように、道中で一泊するパーティーもいる。

(そういった冒険者が多いから、ここで休憩をしたかったんだけど)

 安全確保のために、周囲の魔物を倒しておくパーティーは多い。だから、休憩中に襲撃を受ける事が少ないので休憩には適していた。

(いきなりの予定変更は辛いな)

 そう思って地下六階へと足を踏み入れるのだった。

 二代目は言う。

『な~んか、嫌な感じだな。先回りされたような気分だ』

 確かに予定していた場所に同業者たちが休憩をしていると、文句を言うパーティーも多い。

 しかし、それは難癖をつけているのと一緒だった。

 俺も文句を言いたい気分にはなるが、実際に言おうとは思わない。

 ただ――。

(確かに、なんか嫌な気分だな)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ