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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

お金大好きで恐妻家な四代目

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ライエルの答え

 ダミアンの研究室に来た俺たち。

 今日は珍しく俺、ノウェム、アリア、ミランダ、ポヨポヨとクラーラにもついてきて貰った。

 クラーラを連れてきたのは、三代目が強く推すからだ。

 研究室でダミアンがポーターを見て、そして動かして様子を見ている。今日の目的は、人形使いのダミアンとしての意見を聞くことだった。

 荷物持ち兼パーティーの盾役となるに相応しいかどうかを、ダミアンに確認を取っているのだ。

 俺たちのパーティーの欠点は、戦闘時に盾役がいない事だ。同時に、大量の荷物を持っていては動けない。

 人手不足を人形で補うことを考えた時、俺がまず考えたのは人型でなければいけないのか? という疑問であった。

 ダミアンはポーターを見ると、俺に聞いてくる。

 普段はダミアンの研究室で掃除などをしている三体のオートマトン【一号】【二号】【三号】は、何故かダミアンの近くで待機していた。

 視線が時折、ノウェムを向いている。

「これはまだ変更するつもり?」

 俺は頷いた。

「迷宮で何度か試験してみたんだけど、やっぱり大きさはもっとあってもいいかな、って」

 ポーターは未完成品だ。

 何度も迷宮で試験し、改善点を洗い出していた。これはポヨポヨが強く要求したので行なっている。

「試作品でこれだけなら良いと思うよ。ただ、本当にアラムサースの迷宮に特化している作りだね。他で使えるか怪しいかな」

 迷宮は場所によって大きく違う。割と床が平らなアラムサースの迷宮は、珍しい部類である。

 ただ、今回はアラムサースの迷宮で地下三十階層を突破するのを目的としていた。ポーターは、それで良いと思っている。

 必要があればまた改良を加えれば良い。

「特化型で行こうと思うんだよ。それで、動かしてみた感想は?」

 広い研究室でポーターを動かすダミアンは、眼鏡を人差し指で押し上げつつ言う。

「ライエルや僕なら問題ない。冒険者として中堅以上のサポートでも問題ないと思うけど……使用できるのは本当に一握りだよ」

 ダミアンは大きさに問題があると言った。

 俺が使うなら問題ないのなら、それで良いと思うのだが――。

 宝玉の中から声がする。

 四代目が悔しそうに。

『ちっ、計画の変更が必要だね。ポーターがあれば、ゴーレムの魔法は一気に人気が高まると思ったのに……問題ありか』

 そう。

 四代目がお金を稼ぐ計画を、楽しそうに作成していたのだ。

 そのために、他の冒険者で使用できるのか聞いてみたのだ。

「そこの図書館の子なら……」

 ダミアンが見たのはクラーラだった。

 しかし――。

「……駄目かな。こいつに盾を取り付ければ重量が増すね。いや、ギリギリか……」

 ダミアンが考え込む。

 すると、ノウェムが。

「クラーラさんにゴーレムの魔法を教えてみてはいかがですか? 適正もあるでしょうし」

 そんな簡単に教えるだろうか?

 そう思ったが、ダミアンは言われるまま。

「そうだね。試した方が速い。図書館の子、教えるから使ってみてよ」

 ――こういう奴だった。

 クラーラは、溜息を吐きながら言う。

「はぁ……こんな感じで教えて貰う事になるとは、思ってもいませんでしたよ」

 教えて貰ったクラーラは、その場でポーターを使用する。

 それを見て、ポヨポヨが。

「あぁ、ポーターが……私とチキン野郎の愛の結晶が!」

 一人で芝居を始めたので放置すると、ミランダさんがそれを見て感想を述べる。

「良い感じじゃないの? はじめてにしては良く動いている気がするわよ」

 ダミアンも同意した。

「うん、そこの女の人が言うように才能があるね」

 それを聞いて、アリアがダミアンに言う。

「そこの女って……ミランダはあんたの生徒だったじゃない」

 ダミアンがミランダを見る。すると――。

「そうだったかな? あれ? でも知っているような、知らないような……君みたいな人は記憶に残りそうなのに、不思議だね」

 不思議だと首をかしげるダミアンに、ミランダさんは笑いかけた。

「酷いですよ、教授。でも、教授らしくて安心しました」

 宝玉から声がする。

 五代目だ。

『いっきに雰囲気が増したからな。人目を引くようになったんだろう。ミレイアに似ているよ……性格は少し違うが』

 性格は違うらしいが、更にご先祖であるミレイアさんに似てきたようだ。

 クラーラが感想を述べる。

「動かす事はできますけど、足ですかね? これを使うと重く感じます。普通なら問題ないと思いますけど」

 それを聞いてダミアンは頷いていた。

「君の実力は覚えているけど、サポートなら中堅レベルだったよね? このレベルでギリギリとなると、普通の人が扱うにはもっと小さくしないと駄目だね。魔力の消費を減らすなら、もっと改善する点は多いと思うよ。しかし、車輪は良いね」

 ダミアンが褒めていた。

 ポヨポヨが三体のオートマトンをチラチラ見てニヤニヤしている。

 三体は悔しそうな表情をしている。本当に芸が細かいとしか言いようがなかった。

 ダミアンは結論を言う。

「一般の冒険者が使用するには、もっとコンパクトな奴が良いね。階段は……足を短くして這う感じかな? そうすればあまり動かないよ」

 ゴーレムや人形に関しては、やはりダミアンの方が良い意見を言ってくれた。

 ミランダさんが言う。

「そうなると、当分はまた倉庫にこもってポーターの改良?」

 俺は頷くが、その前にいくつか予定を立てる。

「改良もしますけど、近い内に迷宮に挑みますよ。あんまりパーティーで動いていないと、自分が冒険者だと忘れそうになりますからね」

 最近の俺は、迷宮内で小銭を稼いでいた。

 深く潜るために重い荷物を持って移動する冒険者たちがいたら、俺は荷物を乗せていないポーターで荷物を地下五階までは運んで上げた。

 お礼に銀貨を貰い、その帰りには戻ろうとする冒険者たちを拾っていく。そこでも銀貨を貰う。

 そうして四代目が、冒険者たちが出せる程度の金額を割り出し、行きは銀貨何枚、という形で商売をしていたのである。

 本気でサポートとして金貨を払うからついてきてくれと言われたのは、一度や二度ではなかった。

 それを受けて、商品化を四代目が考えたのである。

 ダミアンがポーターを見て言う。

「新しい刺激を受けたよ。やっぱりライエルは面白いね。おっと、そうだ……あのボスの装甲だけど、やっぱり丸々一体分は残っていたよ。買うんだよね? 邪魔になるから学園は引き取るなら安くする、って言っていたよ」

 研究に使用する分だけ残れば、あとは必要ないと言われた。

 大量に手に入った地下四十階のボスの装甲を、俺は購入するためにダミアンに打診をしていたのだ。

 購入は決まっていたのだが、安く済むというならそれはありがたかった。

 ノウェムが言う。

「最近のライエル様は、稼いでいますからある程度は大丈夫ですものね」

 クスクスと笑うノウェムを見て、俺は言い訳をしたかったが止めた。

 小銭稼ぎの鬼が、俺に指示を出すから仕方なく実行していたのだ。俺自身は、ポーターの試験が出来ればそれで良かったのである。

 四代目が言う。

『まだまだこれからだけど、ポーターの改良があるならしばらく休業か……顧客も出来てきたのに』

 四代目の手腕に驚くが、俺は冒険者である。こういった稼ぎ方はどうかと思うし、ポーターの商品化など考えもつかなかった。

(後で話す必要があるな)

 そう思いながら、俺はダミアンとポーターの事で話を続けるのだった。

 ミランダもアリアも、最近の事を話し始める。

「アリア、最近なんだか雰囲気変わったね」

「そ、そうかな! やっぱり、少しは冒険者として――」

「男っぽくなったわよ」

 笑顔で言うミランダさんに、アリアが言う。

「……あんた、良い性格をしていたのね。気付かなかったわ」

 笑顔のミランダさんと、怒気を放っているアリアが睨み合っている中で、ノウェムとポヨポヨ、それに三体のオートマトンが――。

「あの、何か?」

 オートマトン四体に見つめられ、ノウェムが首をかしげる。凄く可愛いと思う。

 ポヨポヨが言う。

「この女狐……可愛い仕草を……」

 一号から三号が。

「計算尽く! きっと全て計算していますよ!」
「なんでしょう。ここまで対抗心を持つなんて! 貴方、何者ですか!」
「ポンコツのポヨポヨでは勝てない相手なのですね。いいでしょう、ここは私たちが貴方の相手です!」

 三体のオートマトンがポーズを決めると、ポヨポヨが叫ぶ。

「誰がポンコツですか! ポンコツ呼ばわりして良いのは、チキン野郎だけです! お前らスクラップにしてやりますよ!」

 どこから取り出したのか、手にドリルを付けて戦闘態勢に入っている。

 そう言えば、ポーターを作っている時に「ドリルとロボットは浪漫です」などと言いながら作っていた。

(賑やかだな)

 研究室が騒がしくなる中で、俺はそんなことを思っていた。

 そして、クラーラが――。

「あの……私はこのままパーティー加入の流れなのでしょうか? 最近は普通に誘われていますが、私は基本的にソロで臨時パーティー要員……聞いていますか、みなさん?」





 深夜。

 宝玉内に顔を出した俺は、以前から気になっていた事を聞くのだった。

 それは、俺が辿り着いた答えである。

 アラムサースの迷宮を攻略するために、ゴーレムを使用して人員の少なさとパーティーの弱点である防御――盾役を用意したことだ。

 これを、自分たちの回答とは違う、と言ったのを以前聞いていた。

 そのため、俺はご先祖様たちにどういう意図があったのかたずねたのだ。

 結果――。

「つまりアレですか……最初からいくつか方法があった、と? わざと黙っていたと?」

 俺がそう言うと、二代目が頷いて説明してきた。

『そうだな。俺は単純に時間をかけて地力を上げつつ信用できる仲間を探す、っていう選択だった。あのクラーラっていう子は狙い目かな。黙っていたというか……気付くかと思っていたけど、ライエルが気付かないから』

 三代目はクラーラを気に入っていた。

『いいよね、クラーラちゃん。歩く図書館だよ。きっと一杯知識を持っているよ。あ、僕の場合は他のパーティーに同行してボスだけを倒す、だね。そこまで信用できるパーティーと知り合う、っていう問題はあったけど、クラーラちゃんに聞けば良かったのに』

 四代目の意見はかなりアレだった。

『金で雇っても良かったよな。護衛を頼んで地下三十階まで行く。俺的には、そうして他の冒険者たちを間近で見て勉強してもスキルの使用は許したよ』

 俺に足りなかったもの。

 それに気が付くだけでも良かったのだと、四代目は言う。いや、正確にはスキルを使用できない環境下で、学べば良かったのだろう。

 五代目は俺の答えに近かった。

『俺はゴーレムで人員の少なさを補う事を考えていたな。盾役――盾だけを用意して、戦闘になると展開して安全に戦う。迷宮内で防衛用の即席陣地を築く作戦だ。シンプルだが、確実だろ』

 言われてみて確かに、と頷いてしまった。

 冒険者としての意見とは思えないが、有効ではある。覚えておこう。

 六代目は五代目の意見と似ている。

『俺の場合も同じだが、操りやすいシンプルな人形を用意して数を補うというのを考えていたぞ。他には金で人を雇う、だな』

 最後の七代目は。

『お前がどうやって課題をクリアするのか、そして問題に気が付いてどう解決するのかを見ていた……本当だぞ? ちなみに、わしの答えは地下三十階層のボスを倒す依頼を出す、だったな。ゴーレムの活用も考えてはいたが』

 俺はそれを聞いて言い返す。

「いや、そもそも仲間のコミュニケーションとか、もっと他の事に気付かせるためとか!」

 そう思っていたのだが、ご先祖様たちはニヤニヤとする。

 二代目が言う。

『俺たちの課題に対して、どうクリアするのか見たかったんだよ。真面目に取り組む姿は見ていて良かったぞ』

 三代目は。

『ライエル、もっと視野を広げようか。確かにライエルが考えているように誘導したけど、僕たちの出した課題は『スキルの使用制限下で地下三十階層のボスを倒して戻ってくる』だよ。究極的に言えば……ライエルはボスだけと戦って、後は雇った冒険者に任せて地上に戻っても良かったんだよ』

 三代目が笑い出した。

 スキルの制限をかける時、このままでは危険だと言っていたのはなんだったのか。俺が不満に思っていると、四代目が言う。

『そう怒るなよ。お前がどうやって課題をこなすのか見たかったのは事実だし、俺たちが思う以上に問題にも気が付いていた。それに、ゴーレムの新しい使用方法も思いついただろ? 俺たちに聞いているだけだと、ポーターは誕生していないからな』

 ご先祖様たちは、俺がどう考えて動くのかも見たかったようだ。結果的に、俺はご先祖様たちを納得させる答えを出したのだろう。

 納得は出来ないが。

 普段よりも楽しそうな五代目は、俺に言うのだった。

『発想は良かった。盾の重要性に気が付いたのも良い。これで無事に地下三十階層を突破できれば合格だよ』

 無事に突破できれば、である。

 俺は未だに合格はしていないという事だ。

 六代目が俺の不満に答える。

『ライエル、問題を解決する方法は一つではない。実際、時間をかけて全員の地力を上げるのも正しい選択だ。だが、同時に人を雇うのも正しい選択だというだけだ。ま、勘違いをするように誘導はしたが』

 七代目が謝罪してくる。

『悪かったとは思うが、世の中など抜け道はいくらでもある。正攻法だけではどうにもならない時も来る。それに、だ』

 二代目が七代目の説明を引き継いだ。

『今の問題に気が付いて、改善しようと思った時点で俺たちの目的は達成されたんだよ。気が付かないままなら、また違う課題を出したからな』

 納得できない俺を見て、ご先祖様たちは笑うのだった。

 五代目が言う。

『自分の欠点に気が付いて改善した。俺たちが気付かなかった問題にも、お前はクラーラを頼って答えを出した。少し頼りすぎだったのが不満だったが、それも間違いではないからな』

 俺は皆に聞いてみた。

「あの、つまりどんな方法でも良かったと? 俺が今の問題に気が付くことなく、それらを無視して課題をクリアしても?」

 三代目は頷いた。

『そうだね。極端に言えばそれでも良かったよ。その程度の問題を歯牙にもかけないだけの力を持てば、ね』

 だが、六代目が言う。

『ただ、お前が道を踏み外せば、二度とスキルは使用させなかった。ライエル、お前は俺たちの出した課題に真剣に取り組んで、納得させる回答を出したと言うわけだ。後は、実行して力を示せば良い』

 納得できる部分もあるが、納得できない部分もあった。

「俺が無理をして失敗するとか、思わなかったんですか?」

 すると、二代目が真剣な表情で告げてくるのだった。

『この程度で死ぬなら、お前はその程度だった、と言うことだよ。お前の才能、仲間、環境……ここで駄目なら、先に進んでもいずれ駄目になって全滅だ』

 俺は二代目の迫力に黙ってしまうと、三代目がフォローしてくれる。

『安心しなよ。ここにいる全員が、ライエルがどうやって課題をクリアするのか楽しみにしていたんだ。出来ると思ったから、課題を出したんだよ。駄目だと思うなら、もっと前からライエルには期待しなかったと思うね』

 いや、フォローではなかった。

 こいつら、今日は俺を威圧してくる。

 俺がいったい何をしたというのか。

 最後に、五代目が頭をかきながら言う。

『どいつもこいつも……ライエル、お前の人生だ。お前が答えを出すしかないんだよ。何をどう感じ、どう答えを出すか。お前が決めるんだ』

 五代目の言葉に、俺は初代の言葉を思い出した。


【ライエル、お前……目標は決まったか?】


 俺は、チクリと心に痛みを覚える。

(俺の答え……)

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