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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

最終章 ここまで来たぞ 十八代目

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繋がり

 周囲を見ると、生きているのか記録から呼び出されたのか……。

 辺りは暗くなったが、今日は月が綺麗だった。かがり火も用意されてはいるが、必要なかったかも知れない。

 周りを見ながら俺は言う。

「どっちがどっちだが分からないな」

 涙ながらに抱き合っている者もいれば、笑い合っている者もいる。瓦礫を吹き飛ばし、モニカやヴァルキリーズも大忙しで宴会の準備をしていた。

 勝利宣言を行っているが、セントラルを囲んでいる他の軍勢もこうした現象が起きているために絶賛混乱中だった。

 ただ、勝った。――そして、終わったとは宣言している。

 ファンバイユの先王は俺を見て憤慨し、そして悩み、リアーヌのことを頼むと言って憂さ晴らしにファンバイユ本陣へと戻っていった。

 結果だけを見れば、周囲の軍勢があふれ出ていた死兵たちを押さえ込み、俺の本陣や一部の部隊がセントラルに突撃をかけた……かけたが、それが俺のスキル【セブンス】で蘇った記憶の中の者たちがほとんどだった。

 色々と説明を欲してこちらに来たのは、ブロア将軍にバルドア、マクシムさんたちだ。マクシムさんは、黒い鎧を装着した騎士と一緒だった。親友というのだろうか? 今は互いに語り合っている。

「なんだ、お前はまだ告白もしていないのか? これだけの軍勢の副官だぞ。もう、陪臣だと気にする必要もないだろうに」

 そう言う黒騎士に対して、マクシムさんは嬉しそうで、そして悲しそうだった。

「そうだよな。そうなんだよ……けどさぁ、俺は……今はお前に謝りたかった。あの時、俺は駆けつけることも」

 悔しそうなマクシムさんに、黒騎士は少し笑っていた。

「相変わらず真面目だな。だが、来なくて良かった。今なら分かる。お前の判断は間違ってなかったよ。アデーレのお嬢様を連れて、セレスに対抗しようとしたのは正しかった。だから、もう泣くなよ。男が泣いてもみっともないぞ」

「分かっているんだよ! だけど、言わないと。ずっと俺は……すまなかった。すまなかった!」

 泣いているマクシムさんの背中を軽く叩いて慰めている黒騎士。すると、即席のテーブルの前には次々に料理が運ばれてきた。

 肉料理が中心で、中には持ってきた食糧も使用している料理もある。まぁ、予定よりも早めに片付いたのだ。使用しても問題ない。

 そういう光景を見ている俺の周りでは……。

「な~にぃ! 側室候補が十人超えだぁ!? お前ら、いったいなにをしたらそうなるんだよ!」
「俺も流石にビックリだよ。なんでそこまで増やしたんだよ。ライエルが枯れるだろうが」
「いや~、僕も計算ミスだったね。まだいけると思ったけど、あの面子は流石にきついかも。でも、まだ増えると思うよ」
「羨ましいという感情よりも、心配になってきますね。二代目の言うとおりに枯れますよ」
「……死因は女関係で待ったなし、だな。笑えない。初代皇帝笑えないな」
「ライエルも俺と同じか」
「六代目とは違うと思いますが? というか、先程から視線が注がれていますよね? ここに無理していなくてもいいんですよ」

 六代目が七代目の言葉に「俺を見捨てるな!」などと言うと全員が笑っていた。先程から俺の話題で盛り上がっている。

 すると、そんな俺たちのテーブルには、こき使われているアリアが料理を持ってやってきた。後ろには初代の妻である女傑の姿がある。

 ――俺は思うんだ。この人が初代の奥さんだったから、歴代の奥さんの傾向が決まったんじゃないか、って。もっとお淑やかな人で集まっても良かったと思う。

 すると、初代の奥さんが言う。

「ほら、騒いでないでこっちを見るんだよ。照れて会話も出来ないようだから連れてきたんだ。ちゃんと言っておきな」

 なにを? というのは無粋だろう。初代の奥さんが、アリアを連れてきたのだ。色々と分かっている様子だった。

 初代が立ち上がると、アリアを前にして照れている。

「よ、よう! 元気かな、アリアちゃん」

 呼び出されたついでにこき使われているアリアは、困った様子だった。何しろ、アリアは初代に会った事がない。

 すると、五代目がフォローを入れた。

「このオッサンがウォルト家の初代だ。前に言っていた、ロックウォード家の赤い玉の話に出てくるバジルだよ。アリア……お前に出会った時から、ずっと気にかけていたんだ。話し相手になってくれや」

 すると、アリアが困ったようだが、頷いた。理解したのだろう。

「そう言えば、セントラルでライエルとそんな話を……。えっと、アリアです」

「バ、バジルです。ご先祖様とはその……。あれ? ねぇ、赤い玉の話、ってなんだ?」

 三代目がワクワクしながら。

「実は、アリスさんも初代のことが気になっていたらしいですよ。でも、声をかけられないから、プレゼントに赤い玉を買ったんです。そしたら、それも渡せなくてロックウォード家では代々女性が引き継いでいたとか。凄いですね、初代。初代の言うとおりに運命でしたよ」

 笑顔で説明している三代目だが、分かっていて言っている辺りが腹黒い。知らない方が良いこともあると思うの。

「おいぃぃぃ!! なら、なにか! もしも声をかけていれば!」

 二代目が冷めた様子で。

「可能性はあったな。可能性、は」

 俺は困っているアリアを呼ぶ。

「酒をついであげて。あんな恰好だけど、割と繊細なんだよね」

「わ、分かったけど。この状況、って本当になんなの?」

 アリアが初代のところに酒を注ぎに行くのを見ているのは、初代の奥さんだった。腰に手を当てて初代の方を見て少し笑っている。

 俺はそんな女傑に声をかけた。

「あの、いいんですか?」

「いいんだよ。生きている時にアレだけ頑張ったんだ。記録だろうが、なんだろうが、ご褒美くらいあってもいいだろ」

 すると、片腕を失ったメイが、マリーナさんを伴って酒を持ってくる。五代目に手を振っているが、もう少し顔が赤い。

「フレドリクス!」

「メイ!」

 すぐに立ち上がってメイの下に駆けつけた五代目。メイが持っていた荷物を持って、こちらに戻ってきた。

 六代目が、そんな五代目を複雑そうな表情で見ていた。すると、女傑がマリーナさんを見て。

「よし、お前も来い。なんだか知らないが気に入った!」

「はぁ? 私はこれから飲むんだよ。勝手な事を……っておい! なんだよ、この腕力! は、離せ!」

 豪腕のマリーナさんが、女傑に連れて行かれるのを俺は手を振って見送る。すると、二代目の奥さんが俺たちのテーブルに来た。

「さぁ、皆さん! 味が濃いだけの料理とか嫌でしょうから、私が色々と作ってきましたよ! クラッセル、貴方の大好きなスープもあるわよ。スレイ、お兄ちゃんのデューイが手伝ってくれているのに、貴方はここでノンビリしていて良いの?」

 見れば、二代目の奥さんの傍にはデューイがいた。取り分ける皿などを持っていた。

 二代目が初代の奥さんを警戒しながら、スープを受け取っていた。

「あぁ、助かる。濃い料理ばかりはきついからな。これ、好きだったんだよぁ」

 三代目は目をそらしながら。

「話があるんですよ。ほら、面倒を見てきたライエルをからかうとか、他の連中をからかうとか。だって、僕だけ戦死して人生楽しめてないんだもん」

 デューイが笑っていた。

「スレイは頑張ったからね。座っていて良いよ」

 そんな優しいデューイ少年を見てから、みんなが三代目に視線を戻した。三代目が、口を困っている。汗もかいていた。

「……兄さんもお手伝いをそれくらいにしません? 僕、なんだかいたたまれなくなってきましたよ」

 続いて三代目の奥さんも料理を持ってきた。ヴェラを一緒だ。

「まぁ、手は足りていますからね。ゆっくりしてください」

 ヴェラが三代目の奥さんに捕まったのか、俺の方を見て。

「なんだか分からないけど、手伝ってくるから……またね、ライエル」

「う、うん」

 戻っていく女性陣とデューイを見送り、俺たちは溜息を吐いた。初代だけは、コップに入った酒を見てニヤニヤしている。単純で羨ましい。

 四代目は、眼鏡を外して布で拭く。宝玉内でよく見ていた光景と同じだった。

「しかし、身内だけに見られていて良かったですね。まぁ、周囲から見れば勝った後に何か出て来て、最後は痴話喧嘩をしていたように見えているわけですし。最終的にはあのドラゴンを討ち取った事にして終わりでしょうね」

 レジェンドドラゴン――俺たちの前に立ちはだかった強敵として、語り継がれることが決定した。ちょっとだけ安心する俺。それだけ、レジェンドドラゴンの扱いが悪かったので、最後くらい強敵として歴史に名を残しておこうと思う。

 そしたら、黄金の鱗を持って走ってくる小柄な女性を見た。後ろには五代目の奥様たちと、大勢の男女。五代目の子供たちだ。

 ミレイアさんもいる。周りの姉妹からは文句を言われているが、涼しい顔をしている。

「カマトトぶりやがって」
「本性見せろや、腹黒が」
「何のことかしら? あ、ライエル~、頑張ったわね!」

 俺の方を見て手を振ってくるミレイアさん。そして、小柄な女性である四代目の奥さんは、俺の方に来て。

「ライエル! 見て! これを見て! あのドラゴンの鱗なんだけど、絶対に凄い素材よ! 再生するからそれなりの量を確保したからね! 一匹分はしっかり保存して、余っている分でしっかり研究するのよ。そして……少しだけ他に流しなさい。そうして価値を周りが理解したら、この素材は貴重なものとして価値が上がるわ。しばらく手に入らないだろうし」

 四代目の奥さんだけあって、お金関係に厳しい人だった。鱗を大事そうに持っているのを、四代目がニコニコしてみている。光り物が好きな夫婦だな。

 そして、五代目の子供たちに囲まれる俺。

「これが本家筋の跡取りか」
「なんだ、頼りないぞ」
「まぁ、いいじゃないか。それに、皇帝になるみたいだからな」
「私たちの孫とかひ孫も取り立てなさいよ」
「ミレイアと関わって可哀想に。あいつ、酷かったでしょ」

 騒がしくなる俺の周り。そして、メイを隣に座らせている五代目にも、視線が集まっていた。

「親父、最後くらい動物好きをなんとかしろや」

 子供たちを代表した言葉。五代目を見ると、いつの間にか飼っていた動物たちも傍にいた。モフモフに囲まれて幸せそうな五代目は。

「断る」

 即答していた。そんな五代目の周りでは、奥様方が料理やお酒を運んで生きたのか並べている。

「まったく、変わりませんね」

 そう言われて、五代目が頬を赤く染めてそっぽを向いた。対照的に、六代目の周りを見ると。

「聞いた? ひ孫は十人以上も抱えているらしいわよ。ブロードも何か言いなさい」
「誰の影響なのかな?」
「ファインズ……こっちを向いてくれないの?」

 六代目はネチネチと攻撃されている。五代目と対照的すぎる。なんでこうなったのか……自業自得だろう。

 すると、七代目はゼノアお婆様が父と母を連れて来ているのを見つけた。

「おぉ、来たか」

「連れてきましたよ。やらかしてしまった八代目の夫婦を、ね。ライエル、来なさい」

 こき使われている父とは母を見ると微妙な感じだ。助けたいとも思うが、二人がソレを望んでもいない。

 皆の前で両親と向き合うと、二人とも泣いていた。父は手で目元を隠しながら。

「……すまなかった。迷惑をかけたな、ライエル」

 エプロン姿で言われても……。まぁ、今更恨んでもいないので、俺は笑顔を向けた。

「大丈夫です。理由も分かっていますから。だから、俺は大丈夫です。二人とも、安心してください」

 母が俺の方を見て両手でスカートを握りしめ、ポロポロと涙をこぼしていた。二人が出て来たのに、セレスは出て来ていない。きっと、俺の事を本当に憎んでいたのだろう。

「ごめんね。駄目な両親で……駄目な母親で、ごめんなさい」

 二人に抱きしめられると、俺は涙が出た。周りを見ると、仲間たちも集まっている。バルドアも、ベイル――俺が憧れていた騎士と並んで、その姿を見ていた。

「ライエル様、良かったですね」

「……生きている時に実現させたかった。だが、生きていれば若は……いや、ライエル様は苦しんだのだろうな」

 そして、ブロア将軍が立ち上がった。

「私は詳細をまとめて周囲の軍勢に知らせてきます。まぁ、本当の事など言えませんけどね。本当に伝説と関わったみたいですよ。まるで夢でも見ているようだ。それに、変な事を考える軍勢がいないか見張る人間も必要でしょうから」

 そう言って歩き去って行くブロア将軍を見送った。頼りになる人だ。

 そう、夢だ。これは幻だ。俺のスキルが創り出した幻。でも……。

 宝玉を見れば、光が弱々しくなっていた。

 初代が手を叩く。

「お前ら並べ! 酒も配り終わったな? 料理も配ったな? なら、乾杯だ!」

 七代目が俺を心配そうに見ていた。

「ライエル、お前はお茶か何かにするか?」

 俺も流石にこの雰囲気もあって。

「お酒にします。ま、前よりは強くなりましたよ」

 席に戻るときには、ノウェムを始め、全員が揃っていた。初代が音頭を取るようだ。周りを見れば、騎士や兵士たちも酒や料理を前に多くの集団を作っていた。それぞれ、もう始めているところもあった。

 いや、俺たちの集団がほとんど最後だろう。

「え~、それでは……なにに乾杯すればいいんだ? ライエルの勝利か、それとも」

 三代目がニヤニヤしながら。

「ライエルの結婚とか勝利とか色々とあるけど、ここはやっぱりライエルに乾杯しようか。ウォルト家が生み出した麒麟児だよ。もう、ライエルを超える逸材が出るのは難しいからね」

 どういう意味で言っているんだ? まぁ、三代目なのでらいえるサン絡みだろう。

 二代目が呆れつつも、賛同する。

「そうだな。ライエルに乾杯するか」

 四代目も眼鏡をかけ。

「ですね。よく頑張りましたよ。本当に……」

 五代目も珍しく笑顔だった。

「だな。ずっと見て来たからかも知れないが、頑張ったよ。ライエル、お前は頑張った」

 六代目は少し物足りなさそうに。

「もっと酒や遊びを教えたかったんですけどね。ライエル、気を抜くことも覚えろよ」

 七代目は俺の方を見て頷いた。

「やはり、お前はわしの自慢の孫だったよ。さぁ、ライエル」

 初代が杯を掲げると、全員が掲げた。ノウェムが、俺に酒の入ったコップを持ってきた。受け取ると、少し恥ずかしかった。ノウェムはソレを見て、笑っている。

「なら、ライエル・ウォルトに――乾杯!!」

 全員が「乾杯」と叫び、酒を飲む。俺も酒を一気に飲んで……気を利かせたのか、ノウェムが酒を薄めていた。飲みやすかったが。

「……おふぅ」

 崩れるように座り込む俺。そして、周囲には青い光に包まれていた。青い光が粒になり、そして空へとキラキラと上って行く。そんな光景を見ていると、涙が流れた。溢れてきて止められない。

 セントラルだけではない。その周りからも青い光が上って行く。空を見ると月が綺麗だった。そんな月に向かうように上って行く光。

 周囲からはコップを置く音が聞こえた。

 最後に聞こえたのは。


 ―― よく頑張ったな、ライエル ――


 そんな言葉だった。コップを置いて、俺は右手で顔を隠した。ずっと見守ってくれた人たちがいた。そして、助けてくれた大勢の人たち。

 俺は、そんな人たちがいたから、この場にいるのだと思う。多くの関わった人たちがいて、俺という一人がいる。俺もきっと周りと関わっていき……そんな一人になるのだろう。

 そうして関わって、また次の世代に託して……。

 近付く足音が聞こえた。ノウェムだ。

「ライエル様。皆さんはもう――」

 必死で泣くのを堪えながら、光が見えなくなると俯いて宝玉を握りしめた。以前のような反応がない。光が消えた気がした。ただの玉に戻ってしまったのだ。そんな玉を両手で大事に握りしめ、俺は嗚咽を漏らした。

「分かって……いるから……ごめん、今だけは……ごめん。俺、泣き虫のままだ」

 背中をさすってくれるのはミランダとシャノンだ。アリアは、俺にタオルを持ってきた。メイは空を見上げている。泣いているようだ。ヴェラは、周囲に指示を出して全員居座るように言っていた。

 モニカもコップを大事そうに集めている。クラーラも手伝い、ルドミラやグレイシア、エリザは疲れた顔をしていたが、周りを見て寂しそうにしていた。

 エヴァは酒を飲むと、俺のために歌ってくれた。悲しい別れの歌だった。ただ、新しい出会いもあるという歌だった。

 そうだ。

 前に進む時が来た。独り立ちの時が来た。

 恥ずかしくないように。あの人たちの血を引いた俺は、恥ずかしくないように生きよう。胸を張って、頑張ったと言えるように生きよう。

 だから、今だけは……泣いてもいいでしょうか? すぐにまた立ち上がって前に進むから。今だけは――。

「ライエル様、大丈夫です。周りも泣いています。それに、ヴァルキリーズが囲っていますから……もっと泣いていいですよ」

 子供のように泣くと、周りの女性たちに慰められた。それでも、涙が止まらなかった。
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