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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

最終章 ここまで来たぞ 十八代目

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笑うセレス

「シャノン!」

 謁見の間に響いたミランダの悲痛な叫び声は、シャノンに鋭い牙を突き立てた魔力の塊である獣――後ろ半分がない魔法で出来た獣の牙がシャノンに食い込むとそのまま爆発が起きてかき消された。

 煙やら埃やらが舞う謁見の間では、視界が悪くなる一方だった。天井では、まるで重力が逆さにでもなったように、セレスが俺たちとは逆向きで立っていた。

 髪は垂れているが、天井を掴んでいるようには見えない。

「キャハハハ! ほら、ほらほら! 一匹目が死んだわよ。早くしないとどんどん死んでいくわよ」

 セレスがレイピアと杖を振るうと、またしても黄色に発光する魔法で出来た獣が放たれた。前足で襲いかかるようにこちらに向かってくる魔法は、追尾と一緒にこちらの攻撃を避ける事までやってのける。

 俺はチラリとシャノンがいた場所を見た。

 崩れ落ちるミランダを確認する。兜と髪でミランダの目元は見えなかったが、口元が見えたので満足だった。

 セレスを見上げ、弓矢を構えると光の矢が出現する。

 丁度、セレスが放った魔法の獣たちと同数になった時、俺は矢を放った。

「だから、そんな事をしても駄目だって」

 セレスがレイピアを振るうと、グレイシアとエリザが天井に魔法を放った。天井を駆けるセレスは、先程よりも軽やかな足取りで二人の魔法を避けていた。俺の光の矢を潰すためか、弾けた炎が降り注ぐ。

 しかし――。

「――シャノン、見えているな。誘導しろ」

 俺がシャノンの名前を呼ぶと、ミランダのすぐ後ろにシャノンが現われた。煙が腫れると、ミランダは泣き崩れた振りを止めて短剣を投げつける。

 投げた短剣と、俺が放つ光の矢は。

「……ちょっとドン引きなんですけど。私がすぐ隣にいるのを分かって、アレだけ叫べるとか泣けるとか、凄くドン引きなんですけど」

「シャノン、姉に向かって酷いわね。覚えていなさい」

 笑顔のミランダを見て、シャノンが「ひっ!」という声を喉から出した。

 ミランダの演技に引いているシャノンが、誘導する形で。

「ワープ」

 それぞれをセレスの魔法にぶつけた。爆発する獣たち。セレスが目を見開いている姿を見て、俺はわざと笑う。そう、煽るように笑う。

 そうしなければ――三代目のスキルが成功しない。心の隙を突くように使用する三代目のスキルは、相手の心理状態が乱れている方が成功する。

 つまり、そのためにずっと煽っていた。

「どうした。やったと思ったのか? まさか、信じたのか?」

 そうするように仕組んだ訳だが、こう言った方がセレスには有効だろう。俺から馬鹿にされると激高するセレス。

 そして、シャノンを連れているのにも意味がある。

「この屑がぁぁぁ!!」

 激高して眉間に激しい皺がよったセレスに向かって、シャノンが叫んだ。

「切り替えた! 違う魔法を放つわ。もう、ここを吹き飛ばすくらいの奴!」

 慌てているシャノンが言いたいのは、セレスがスキルを切り替えたという事だ。そして、魔法による攻撃を行なおうとしている。しかも、それは謁見の間を吹き飛ばす勢い――コネクションによって繋がっているので、全員への説明などいらなかった。

 セレスの体から黄色い光が出現すると、俺たちは一箇所に集まる。ポーターの後ろに回ると、ポーターが防御態勢を取った。

 クラーラが淡々と。

「このポーター、既に耐魔法の処理は施してあります。加えて、胸部に仕込んだ魔鉱石があるので――」

 大きな両腕をクロスさせたポーターの後ろに隠れた俺たちも、マジックシールドを展開する。

「五月蝿いんだよぉ!!」

 セレスの言葉にかき消され、クラーラの説明が途中だった。しかし、ポーターの前に大きなマジックシールドが展開すると魔法による全てを吹き飛ばしそうな攻撃を防いだ。

 全体を吹き飛ばすような攻撃かと思っていたら、魔力による細い攻撃を全体に放つものだった。

 謁見の間自体にも耐魔法の処理がされているため、全てが吹き飛びはしなかったが酷い状態になったのは確かだ。

 壁や柱が穴だらけになる中で、俺たちは無事だった。

 ルドミラがポーターの前に出ると、自分の剣を肩に担ぐ。

「強力だな。だが、無理やり吹き飛ばさなかったのか、出来なかったのか……」

 ピクリと反応するセレスを見て、シャノンが叫んだ。

「吹き飛ばせない! セレスはこの城を吹き飛ばせないわ! 最初の方に反応して魔力が揺らいだから間違いないわ!」

 面白い事を聞いた。何かしら理由があって、セレスは王宮を吹き飛ばすことが出来ないらしい。それがどんな理由か知らないが。

 すると、ノウェムが口を開く。

「遺体の一部を保存しているためです。マイゼル様、クレア様の遺体まで吹き飛ばせば、もう作り出す事が出来ません。それを恐れています」

 ノウェムが言うと、セレスの表情が歪む。

 俺は二人の方を軽く叩いておいた。

「よくやった、二人とも。つまり、派手に王宮を吹き飛ばすような戦い方はしたくないわけだ。ついでに言えば、ここで出迎えたのもそういった理由からか」

 処理がされた謁見の間ですら吹き飛ばす魔法を放つセレスだ。外で暴れて両親の遺体を吹き飛ばしてしまうことを恐れたのだろう。

 俺はセレスを見ながら。

「随分と両親には優しいな。意外だよ。お前は家族なんかなんとも思っていないように感じていたのに」

 俺が疑問を口にすると、セレスの表情が更に歪む。

「黙れ! お前のような出来損ないの屑に……力や記憶も満足に受け継いだお前なんかに!」

 俺はそれを聞いて笑う。

「まぁ、どうでもいい。シャノンが色々とお前の事を丸裸にするために時間が欲しかっただけだ。どうやら、アグリッサは宝玉の中にいる。ここからは本気を出してやる」

 俺がそう言うと、全員が武器を構えた。

 セレスが天井から降りて床に着地する。その速度は常人なら見えないだろう。そう、常人なら、だ。この場にいるほとんどが、常人ではない。

「ゴミがでかい口を叩くんじゃ――」

 俺はセレスを煽るように。

「お前の言葉は聞き飽きた。お前は俺のために死ね。お前の死は、俺が最大限に利用してやる」

 セレスが瞬間的に激怒して俺に突撃してくる。だが、俺は何も構えないでセレスを待ち構え――セレスのレイピアが俺の胸を貫いた。

 貫いたところで、俺の幻は消え去る。

 セレスがそのまま壁にまで激突すると、俺はセレスの後ろから声をかけた。

「いいだろ。三代目のスキルで精神系なんだ。幻覚を見せるだけなんだが……お前、大したことないな」

 無表情のセレスを見ながら、実はギリギリで発動したとは言えなかった。

 表面上は余裕だが、かなりギリギリだ。そんな俺の内心は、スキルで全員に伝わっているわけで。

 シャノンが俺から視線を逸らしつつ。

「……うん、仕方ないわ。私もゴーレムにしがみつくのが精一杯だし」

 シャノンに気を遣われてしまった。地味に心に来るものがあった。

 煽ってこちらの術中にはめる。セレスは精神的に弱いというのを前提とした戦い方だ。もっとも、今まで強者の立場でしか戦ってこなかったのだ。

 こういう場面に弱いというのは、三代目が俺に教えてくれていた。

「ここからは本気だ。本気でお前を潰す。――フルドライブ」

 四代目の三段階目のスキルを発動すると、周囲の動きが緩やかに感じられた。そんな状況の中で、俺たちは先程とは違って全員でセレスに向かう。

 ルドミラが前から、グレイシアとエリザが両脇から。

 天井にジャンプをしたエヴァが弓を構えてセレスに狙いをつけていた。

 すると、セレスの体から半透明な黄色の腕が見えた。

 シャノンの魔眼がとらえている情報だろう。

「これ、前にも同じのを見たわ! 最近も見たから間違いない!」

 シャノンがそう言うと、俺も思い出す。剣術の兄弟子であるアルフレードが使用していたスキルだ。体から見えない手を出すスキルだ。

 ミランダがワイヤーを取り付けた短剣を投げた。

「随分と色んなスキルを持っているわね。でも、同時使用はできないのよね?」

 操られた短剣が、セレスの見えない腕を次々に斬り裂いていく。シャノンの魔眼により、どこを攻撃すれば解けるというのが、ミランダには分かっているようだった。

 二人で一人――かつてのミレイアさんの面影を見ているようだ。いや、もう超えたかも知れない。

 ルドミラの斬撃を弾き、杖でグレイシアをいなすとセレスはエリザを蹴った。しかし、エヴァが放った矢には対応が遅れて矢が頬をかすめた。

 三人が吹き飛ばされると、今度はポーターが拳を横殴りのようにして振るう。それを避けると、ノウェムが魔法を放っていた。

 幾分、手加減していた。ノウェムの心情が流れ込んでくる。セレスもウォルト家の血筋で、全力を出すのを躊躇っていた。

 そこに、ミランダとアリアが飛びかかった。

 ワイヤーでセレスの左腕をミランダがとらえる。だが、力任せに振り回されミランダが壁に激突しそうになった。

 俺はミランダのカバーに入り、そしてアリアの一撃はセレスのレイピアに防がれ――なかった。

 赤い玉が光っていた。アリアの一撃には、武器の硬化や威力を上げるもの、そして速度を上げた一撃でとんでもない威力が生み出されていたのだ。

「これならぁぁぁ!!」

「この怪力女ぁ!!」

 セレスが弾き飛ばされた。アリアの渾身の一撃は、セレスのレイピアの刃を砕いて吹き飛ばしたのだ。

 立ち上がって移動を開始するセレスは、俺たちも加速しているのに随分な速さだった。だが。

「魔法の準備! た、たぶん火!」

「たぶんとか言うな!」

 俺はシャノンの声を聞いて氷の壁を用意する。すると、セレスが放った魔法がぶつかって氷の壁が一瞬にして蒸気を発生させ消えていく。

 エリザのようにはいかないらしい。だが、十分だった。セレスの魔法は潰せたのだから。

 ルドミラがセレスに接近すると、刃を失ったセレスは杖でルドミラの攻撃を防ごうとして、グレイシアとエリザの上空からの攻撃に対応が遅れた。

 以前も同じように、真上からの攻撃にやたらと鈍いところを見せていたのを思い出し。

「改善していないのか? シャノン!」

 シャノンに聞くと。

「真上が死角のスキルみたいだけど……でも、あの二人だから不意を突けたとしか」

 二人の攻撃により、服をボロボロにしたセレスが無理をしてその場から離れ、俺たちの方を向いた。

 すぐに幻を用意すると、幻に向けてセレスが攻撃を仕掛けた。何もない床に杖を振り下ろしている姿は滑稽だった。

 そして、壁際近くのその場所で驚いているセレスに――。

「お待たせしましたぁぁぁ!!」

 巨大なハンマーで壁を吹き飛ばして侵入してきたのは、モニカだった。その壁からは、続々とヴァルキリーズも侵入してくる。

 俺はノウェムの方を見た。

 まだ、躊躇っている様子だ。いや、ウォルト家の血筋を崇拝しているようなノウェムには、セレスの相手は難しいのだ。

 ハンマーによる攻撃で吹き飛んだセレスに、全員が襲いかかる。次第に余裕が消えたセレスは、集団の前にボロボロになるだけだった。

 しかし、その青い瞳がぎらりと輝くと。

「また来るわ!」

 シャノンが叫ぶと、ヴァルキリーズが翼のようなバインダーを前面に展開。俺たちはその後ろに隠れる。

 そして、俺は駆け出した。

 弱っているセレスに向かって駆け出し、カタナを抜いて斬りかかる。セレスが壊れかけの杖で防ごうとすると。

「以前とは逆だな」

「ッ! この糞野郎ぉぉぉ!!」

 防戦に回ったセレスが煽ると面白いように防御を解いた。そこで、俺はカタナを振るった。最初の斬撃はセレスが無理やり避けた。このような状況でも、体が反応しているのが凄い。

 ただ、俺は斬り返して二撃目をセレスに向ける。

「全然成長してないわね! そんな見え透いた――」

 だが、斬り返した段階で左手には銃を握っていた。引き金を引くと、セレスの頭部を狙ったのだが無理やり体を動かしたのか右肩に弾丸がめり込んだ。

 そして、俺は。

「シャノン!」

 シャノンが持っていた銃を真上に向けて発砲する。セレスはすぐに無視をすると、俺に襲いかかろうとしていた。無表情でただ殺意のこもった瞳に俺の顔が写り込むと――。

 セレスが前のめりになっていたために、跳弾した銃弾がセレスの胸を貫いた。

「武具くらい身につけておくべきだったな。それで防げたかも知れないのに」

 セレスの目が驚いていた。驚いて、そして胸を貫かれても杖を地面に突き立てて膝を突かなかった。

「離れろ!」

 止めを刺そうとした俺だったが、セレスの周囲に炎が出現したためにノウェムが俺を抱きしめて下がらせた。吹き荒れる嵐のような炎の中で、セレスはヨロヨロと二本の足で立ち上がり胸を触れた。

 白いドレスの胸元が赤く染まっていた。

 シャノンの持っているミレイアさんの形見である銃には、ラタータ爺さんに頼んで魔具にして貰った。一撃の威力なら確かなものがあった。

 セレスは、自分の胸から流れる血を見ながら。

「クヒッ……クヒヒヒッ!!」

 口を三日月に歪め、そして口の端から血を流して笑っていた。魔法によって出現した炎なのに、エリザが消せないでいる。

「なんだ、この炎……いくらなんでもおかしいぞ」

 氷を飛ばしても一瞬で蒸発してしまう。なのに、火の勢いは止まらなかった。グレシアも。

「自慢だったんだが……これには私の炎も霞むな」

 セレスを囲む炎を前に、グレイシアも冷や汗を流していた。

 ノウェムが。

「近付いてはいけません。この炎は――簡単には消せません」

 すぐに銃に持ち替えて攻撃をしようと弾丸を装填するが、セレスは俺を見て笑っていた。

「本当に最悪だよ、お前ら……私の楽しい時間を邪魔しやがって」

 胸を貫かれたのに元気なセレスを見て、俺は呟く。

「怪物が」

 すると、セレスは笑いながら俺を指差した。

「馬鹿が。本物の怪物はお前だろうが、糞野郎。私はお前みたいな糞野郎な怪物を封じてやったんだ」

 俺はセレスの言葉に耳を貸さずに、銃を構えて発砲した。しかし、銃弾がセレスに当たることはなかった。

 ノウェムが、俺を見て首を横に振る。

「こいつは特別製なんだよ。特別製の炎……まぁ、自決用だからな。本当は周辺一帯を吹き飛ばしたかったのに、邪魔が入るから」

 邪魔。それを聞いて、俺はすぐに見当がついた。

「アグリッサ!」

 すると、どこからともなく声が聞こえた。自分のレイピアの柄を破壊して、セレスが黄色の宝玉を取り出す。

『セレス、どうやら約束の時が来たぞ!』

 嬉しそうな。愉快そうに笑っている女性の声だった。妖艶な声だ。すると、セレスは嫌々ながら。

「分かっているわよ。約束だものね」

 俺は手を伸ばした。だが、俺が言っても逆に意固地になる。そう思って隣にいたノウェムを見ると。

「セレス様、アグリッサに騙されてはなりません。アグリッサが狙っているのは貴方の体――」

「知っているわよ。それが何?」

 セレスは淡々とノウェムに言うのだ。

「私は知っていてこいつの指示に従った。そして、こいつは私に力をくれた。どうしても憎かったそこの屑をボコボコに出来るなら、別に命なんかどうでもいいわ。嫌いなのよね。吐き気がするのよ。お前みたいな屑を見ていると」

 セレスの憎しみは本物だった。アグリッサに関係なく、セレスは俺を心底憎んでいた。

「全てが憎い。人間なんか等しく価値がない。両親以外は必要のないゴミ以下の存在よ。沢山増えたから、アグリッサと楽しく潰して遊ぼうと思った訳よ。そのためなら、自分の命なんか安かったわ」

 最後だと思ったのか、セレスは自分の中にある不満をぶちまけた。

「全然遊び足りない! もっと拷問をして苦しんでいる連中を見たかった! 大事な人を目の前で殺して、私を憎む奴を屈服させて遊びたかった! まだまだ面白い殺し方だって試してない! ……だけど、もういいわ。約束だから」

「約束? お前は騙されていたんじゃ――」

 俺がそう言うと、セレスが大笑いしていた。口から血を吐き出しながら炎の中で笑うセレスを見て、俺は地獄で笑う魔のような存在に見えた。

「楽しく遊ぶための対価が私の体だった! それだけじゃない。そうする事で、私はあんたを超えられた。奪い、封じ、そして痛めつけてきた。最高の時間だったわ。やり残した事はあるけど、後悔なんか微塵もないわよ。むしろ、なんでお前たちの前で悔しがってやる必要があるのかしら? 私はこんなに清々しい気分なのよ!」

 セレスが踊り始めた。

 今から死のうとしている人間には見えない。いや、人間なのだろうか?

『お前たちは勘違いをしている。私は確かにセレスに語りかけた。何代にもわたって私を封じ続けてきた私の子孫たちと同じように。だが、私だって自分の子孫は可愛いからな。無理をする気もなかった』

 アグリッサの言葉が謁見の間に響く。俺は、全員に下がるように指示を出した。

『セレスには私が望む条件を提示した。もしも敗北した場合、お前の体は死ぬのだから私に寄越せ、とな。そしたら、私の可愛いセレスは――』

「その程度の条件、私にとっては対価でもなかった。むしろ、その程度でいいのかと疑ったわ。私を騙しているのかも知れない、ってね」

『あの時は誤解を解くのに苦労した。まさか、自分の命をその程度というのだからな。流石の私も驚かされたよ。だからこそ、私はセレスが可愛かった。お前と過ごした時間は楽しかったぞ、セレス』

「えぇ、私も楽しかったわ。もっと遊びたかったのが心残りね。でも、これくらいが良いのかも知れないわ。満足しちゃうと飽きちゃうから。楽しいと思えた状態で終わる方が最高かもね」

『やはりお前は可愛いよ、セレス』

 二人の笑い声が響く。

 心臓を貫かれて生きているとは思わなかった。俺はしくじったと思っていると、アグリッサが笑い出す。

『愛しのライエル、お前は自分を責めているような顔だな。だが、そんな必要はない。例え……セレスが肉片になろうが、灰になろうが、消失しようが、契約は実行されたよ。お前がすべきだったのは、私を破壊することだった。もっとも、生半可なことではこの宝玉を破壊できないがね』

 セレスは踊りながら。

「これからはアグリッサが蘇って、この世を地獄にしてくれるわ。見られないのは残念だけど、別に問題ないわね。だって、私以上に面白い事をしてくれるもの!」

 歪んだセレスの笑みは、本当に嬉しそうだった。

「何よ、こいつ……」

 アリアが槍を構えているが、恐怖で一歩下がっていた。エヴァも矢を構えるが手が震えている。他も同じだ。

 みんなが状況について行けなかった。いや、予想していたよりも最悪だ。セレスは、自分の体を奪われることに何の抵抗も抱いていないのだ。

 セレスは笑う。

「お前らが必死になってやってきた事は、私以上の存在を呼び出しただけなのよ。本当に無様ね。まぁ、いいわ。負けは認めてあげる。どうせすぐにこっち側に来るだろうし、そしたらまた遊びましょう。地獄で待っているから」

 セレスは笑顔で宝玉を丸呑みした。
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