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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

最終章 ここまで来たぞ 十八代目

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ライエルの戦い方

 王宮の謁見の間。

 そこでは、魔物になった人間――魔人たちが俺たちに群がってきた。

 玉座近くで俺たちを見下しているセレスは、手を出そうともしない。別にどれだけ自身の味方が失われても良いのだ。セレスにとって、重要なのは味方の勝利ではない。自身の勝利なのだ。

 強すぎるが故に、他に興味がない。今では、アレだけ愛していた両親すらすぐに生き返らせればいい、などと思っている。

「――マップモデル、リアルスペック」

 二つのスキルを呟くと、俺の脳内に謁見の間を立体的に再現した地図が表示された。そして、リアルスペックが周囲にいる敵を正確に捉える。

「出し惜しみはしない。――セレクト……リミットバースト、アップダウン」

 次々に使用するスキル。歴代当主たちが残してくれたスキルを、俺はコネクションでラインの繋がった全員に使用した。

 すると、全員で周辺の状況を把握、そしてスキルによる肉体強化を受けて。

「邪魔よ!」

 アリアが先陣を切った。槍を横に振って斬撃を飛ばすと、数体の魔人を吹き飛ばしながら斬り裂く。赤い鎧を着用しているアリアの動きは、鋭く、そしてとても力強かった。

 走り出したミランダは、横にゴーレムを従えている。そのゴーレムの背中にはシャノンが乗っており、シャノンの視界が全員に共有されているのだ。

 俺だけではとらえられない魔力の流れを、シャノンが補っていた。そのおかげで、死兵などの位置も正確に敵として認識できている。

「バラバラにすれば終わりよね」

 ミランダがそう言って笑みを浮かべると、左手から糸を出して魔人をとらえ、そのまま糸を引き締めてバラバラにした。

 とても酷い光景だ。シャノンがゴーレムの背中に乗りながら。

「うわぁ、酷い」

 などとドン引きしていた。

 魔人が大きな口を開くと、俺たちに向かって魔法を放ってくる。

 俺たちは下がると、逆に前に出たのはノウェムだ。フォクスズ家の家宝である杖を掲げれば、マジックシールドが展開され魔法を全て防いだ。

 直後、マジックシールドが消えると三人が飛び出す。

 援護するのはエヴァだ。矢を放って飛び出して来た魔人のこめかみに矢を射貫くと、その矢が爆発を起こす。

「これで終わるわね」

 エヴァがそう言うと、俺も終わったのを確信した。飛び出したのはルドミラ、グレイシア、エリザだ。この三人――ハッキリ言って単体でも厄介な戦力だ。

 ルドミラは細く長い赤い刃の長剣を横に振るう。

「期待には応えるとしようか」

 赤い刃がまるで光っているように見えた。しなり、そして鋭く魔人たちに襲いかかると、ズタズタにしていく。まるで持っているのは鞭ではないのか? などと錯覚してしまうような斬撃だった。

「吹き飛べ」

 グレイシアは、持っていたスピアを魔人に突き刺すとそのまま青白い炎で魔人を焼き尽くした。炎が周囲に発生し、飛びかかった魔人に燃え移って相手を消し炭にする。

「凍らせれば全て同じだ」

 そう言って杖を床に力強くぶつけたエリザ。そんなエリザに魔人たちが近付くと、動きが急に鈍くなった。足下が氷漬けにされ、身動きが取れなくなっていたのだ。徐々に氷が体を這い上がっていく。

 無理をした魔人は、下半身が砕けて酷い状態だ。全てが氷漬けになると、エリザは杖で全てを破壊する。粉々になる魔人たち。

「たわいない。人より少し丈夫なだけだな」

 そう言えるエリザが怖いのだが、友達であるシャノンがエリザを応援していた。

「いいぞ、エリザ!」

 小さく、エリザがシャノンに手を振っていた。

 俺は、何をするまでもなく魔人たちが一掃されたのを確認し、玉座の間を見上げた。

「どうする、セレス。この場にいるのはお前だけだが?」

 挑発的な笑みを浮かべ、俺はセレスを煽ることにした。セレスは、眉を少しだけ動かすとゆっくりと一歩足を踏み出し――直後、消えた。

 気が付けば、左手に杖状の鞘を持ち、そして右手にはレイピアを握りしめていた。一瞬で俺との距離を詰め、レイピアで胸を突き刺そうとしていた。レイピアの刃が、赤く光っている。きっと、アグリッサが用意したスキルか何かだろう。

 だが、俺は笑う。

「――シャッフル」

 七代目の三段階目のスキル。それは、位置の交換である。

 俺を突き刺そうとしたセレスだが、俺は自分の位置をルドミラと交換した。ルドミラも、それを理解して自身の剣でセレスの一撃を受け止めた。

 剣技に関して、俺はセレスに劣る。そして、ルドミラにも劣る。俺たちの中で、剣技に一番長けているのはルドミラだ。

「任された。さて、お初にお目にかかるな、義妹よ」

 セレスが目を見開くが、余り驚いた様子もない。ただ。

「カルタフスの女王だったかしら? 随分と優秀な手駒を手に入れたみたいね。でも……女の影に隠れて随分とでかい口を叩くようになったわね、屑。まずはこいつから仕留めてあげるわ」

 セレスはすぐにルドミラから離れ、そのままレイピアで攻撃を繰り出した。しかし、ルドミラは笑っている。

「確かに強い。だが――勝てないほどでもないな」

 剣技だけに関して言えば、ルドミラはセレスに負けていなかった。スキルによるサポートを何重にも受けている影響もあって、ルドミラはセレスと戦えていたのだ。

 セレスが加速してルドミラの後ろに回った。

「図に乗るな!」

 だが、そこを狙い澄ましてエヴァが矢を放つ。そして、セレスはレイピアで矢を弾くのだが、矢が爆発したために飛び退いた。

 ルドミラが距離を詰めると、セレスが杖を持つ左手をルドミラに向ける。

 俺はその行動を見ながら、シャノンの目から得られた情報で何を放つのか予想が出来た。

「シャッフル――エリザ、壁を作れ」

 ルドミラとエリザの位置が交換されると、エリザは杖を横に振るった。巨大な氷の壁が出現すると、部屋の中が一気に寒くなる。

 そして、氷の向こうで炎が発生するのが見えた。

 エリザは少し驚きながら。

「凄いものだ。グレイシアの炎に近い火力だ」

 つまり、グレイシアの火力よりも弱いわけだ。氷の壁を溶かしきれないと思ったセレスが、壁を無理やり破壊した。

 レイピアでズタズタに引き裂くと、俺は左手を掲げ、そして振り下ろす。

「全員、一斉攻撃」

 右手に後ろ腰のホルスターから銃を引き抜いて、俺は飛び出してくるセレスに向けて銃弾を放った。

 ノウェムやミランダ、グレイシアにエリザは魔法を。

 アリア、ルドミラは斬撃を。

 エヴァとクラーラは矢やポーターに積んだ大砲で攻撃する。

 一点集中。スキルのセレクトで、相手に狙いをつけているので外れる事もない。だが、セレスはマジックシールドを展開してそれを防いだ。

 防いだが、セレスが吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされ、壁に激突したセレス。壁をするように落下し、そして着地をすると俺の方を睨み付けた。

「……女の後ろに隠れて随分と強気な態度ね。もしかして、これだけ仲間がいれば勝てると思ったのかしら?」

 睨み付けてくるセレスに恐怖を覚えながらも、俺は銃をホルスターにしまい込んだ。

「実際に勝っている。それと、別に恥ずかしくも何ともない。お前に負けたのは事実だが、一対一で勝てなかっただけだ。むしろ、雑魚しか周りに置かないお前が悪い。一対一で戦うとでも思っていたのか?」

 煽る。俺はセレスを煽る。その方がいいから。

 セレスは武器を握りしめ、俺を睨んでいた。黄色の魔力がセレスをおおうように光り出し、そしてセレスの力が高まっていく。

「屑が。勝てないから後ろに隠れてみているだけで済むと思うなよ!」

 セレスが今まで以上のスピードを出し、俺に接近してきた。俺はカタナでセレスの攻撃を受け止める。

 セレスは驚いた顔をしていた。

「悪いな。昔より成長しているんだ。それと――」

 俺に飛びかかったセレスだが、その後ろにはアリアが追いついていた。槍を構え、そのまま横に振るうと接近に気が付いたセレスが杖でアリアの一撃を防ぐ。しかし、体勢を崩したところで俺はセレスを蹴り飛ばした。

 俺の蹴りがセレスの腹部に命中し、そのまま吹き飛ばす。

「硬すぎだ。石でも蹴ったような感じだったぞ」

 蹴った足に痛みを覚えた俺は、文句を言いながら吹き飛んだセレスを見た。空中で体勢を立て直し、着地をしたセレスはもう無表情だった。視線の動きが、シャノンをとらえる。

「……お前か」

 セレスも気が付いたようだ。俺たちのもう一つの目であるシャノンを、先に潰そうと接近すると。

「させると思うなよ。シャッフル」

 次にセレスの前に出たのはシャノンと入れ替わったグレイシアだった。シャノンを守るように炎を出現させるグレイシア。流石に突撃を諦めたのか、セレスが立ち止まるとそこにエヴァが矢を放つ。

 セレスが爆発を恐れて飛び退くと、そこにはルドミラが回り込んでいた。

 黙っていても熟練のような連携が出来る。それがコネクションの力でもあった。

「確かに一対一なら勝率はかなり落ちる。だが、お前の魅了に耐えられ、そして全員が実力者だ。別に俺の勝利にこだわる必要もないからな。これが俺の出した答えだよ、セレス」

 本当はノウェムが準備を進めていたが、今は俺の答えでもある。無理して怪我をするのも馬鹿らしい。

 本物の英雄ならきっとここでセレスと一騎討ちをして勝利を掴むだろう。だが、俺のやり方じゃない。

 セレスが激高した。

「この屑。やっぱりお前は嫌いだ。全てを奪って、それでも私の前に立とうとする。やっぱり、お前は消しておくべきだったんだ!」

 そう言って、セレスが地味に弓矢でセレスを苛立たせるエヴァに向かうと、俺は指を鳴らした。

「シャッフル――ノウェム」

 エヴァとノウェムの位置が交代されると、ノウェムが杖でセレスのレイピアを防ぐ。

「させませんよ、セレス様」

「ノォォウェムゥゥゥ!!」

 セレスの顔が酷く歪んだ。恨み、そして複雑な感情が渦巻いているように見えるのは、シャノンの目のおかげだろう。

 そして、セレスの雰囲気が変わった。

「どいつもこいつもウゼェ!」

 セレスから放たれたのは、魔力の塊である獣のようなものだった。出現すると、全員に襲いかかる。

 シャノンが叫ぶ。

「こいつら爆発するわよ!」

 内部に魔力を凝縮した爆弾のようなものだった。アグリッサの作りだした魔法だろうか? 俺はカタナをしまって宝玉を握ると弓を用意した。光の矢を放つと、セレスが謁見の間の天井に跳び上がり。

「させるかよ、ばーか!」

 そう言ってレイピアを振るうと、炎の粒が光の矢を破壊してセレスの放った魔力の獣の破壊を阻害する。

「くっ! 各自迎撃!」

 全員が獣を破壊しようとするが、獣は魔法や攻撃を避けて相手に接近する。いくつかが爆破したところで、その威力はかなりのものだった。

 そして、ミランダが叫ぶ。

「シャノン!」

「……え?」

 爆風から飛び出して来た魔力の魔物が、その牙でシャノンをとらえようとしていた。俺は慌てて手を伸ばすが距離が遠かった。

 シャッフルを使用しようとするが、俺の方にも魔物が来て銀の弓で矢を放った。セレスが天井に張り付きながら笑い声を上げた。

「アハハハァ……ほら、まずは一匹目!」

 ミランダが叫ぶと、シャノンに魔獣の鋭い牙が深々と突き刺さる。





 ――セントラルの街中。

 マリーナが、ボロボロになりながらもルメルに拳を何度もぶつけていた。その拳も血だらけで、希少金属の籠手は破壊されていた。

「いい加減に……くたばれぇぇぇ!!」

 周囲の空気すら揺らすようなマリーナの一撃を受けても、すぐに再生するルメルは大きな手でマリーナを横薙ぎに払って吹き飛ばした。

 建物の壁を壊して屋内まで吹き飛んだマリーナ。ルメルは、マリーナに殴られ潰れ、そして肉が飛び出した部分を再生させた。

「グフ、グフフフゥ」

 再生を続け、最初の形から微妙に変化しつつあった。変に盛り上がった部分もあれば、棘がつきだした部分もある。

 そんな中、額を斬って血で片目が開けなくなったメイがルメルの前に立った。

 息を切らしており、メイとルメルが向かい合う。

 その周囲は――残っている建物の方が少ないくらいだ。メイの右手が淡く光っていた。

「マリーナに時間稼ぎをして貰ったけど、ようやく準備が整ったよ。まったく、タフすぎるよね。おかげでこっちも切り札を使う事になったじゃないか」

 メイはそう言って右手で拳を作った。

 ルメルの大きすぎる片方の目が、そんなメイの拳を見ていた。

「気になる? 気になっちゃう? そう……だったら、教えてあげるよ!」

 地面を踏みしめると、地面が抉れた。ルメルもメイに合わせるように飛び出すと、大きな口を開けてメイをのみ込もうとしていた。周囲に死兵が少なかったため、メイを食べて回復しようとしていたのだ。

 だが、好都合だった。

(死兵を潰して回った甲斐があったね。まったく、痛いのは嫌いなんだけどなぁ)

 メイはそう思いながら、右腕をルメルの口の中に入れた。ルメルの不気味な舌を右手で掴むと、ルメルは大きな口を勢いよく閉じた。

 メイの右腕が、二の腕から切断される。

 肩当たりを押さえたメイは、痛みを堪えながら。

「……中から吹き飛べ」

 やせ我慢して笑いながら、後ろに飛び退くと意味を分かっていないルメルがメイの右腕をのみ込んだ。のみ込んでしまった。

 そして、メイは切断された傷口を左手で押さえながら。

「もう少しだけ頭が良ければ良かったのにね。でも、考える頭がないからそこまで強かったのかも知れないけどさ」

 直後、ルメルの上半身が吹き飛んだ。血が噴き出し、そして肉片が残っていた周囲の建物に飛び散る。

 メイもルメルの血で体を赤く染めると、すぐに魔法で水を用意して体を洗った。

 そして、ゆっくりと建物から出て来たマリーナが、口で息をしながら残っていたルメルの下半身を殴って潰す。

 二人とも、口で呼吸をして息が荒い。

 その場に二人が座り込むと、メイは王宮の方角を見た。銃や大砲の音が未だに聞こえており、地響きのような震動もなんどか聞こえてきた。

 そして、王宮の一部が吹き飛ぶのを見て、メイが呟く。

「……シャノンが」

 目を見開き、フラフラしながら立ち上がるメイ。ゆっくりと歩き出し、王宮を目指そうとしていた。

 マリーナが、慌てて立ち上がってメイの肩を掴んだ。

「馬鹿、すぐに傷を塞ぐんだよ! 麒麟だから、って放置したら危ないんだろうが!」

 メイは、ボンヤリとマリーナの顔を見てから。

「そうだね。でも、行かないと……」

 メイがそれでも行こうとするので、マリーナはメイを担いで取りあえず味方がいる場所を目指すのだった――。
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