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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

最終章 ここまで来たぞ 十八代目

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ノックして正面から

「まるで話が違うではないか!」
「いつまでこの状況が続くというのだ!」
「既に戦える状態にない国も多い。この状況をいかにして突破するおつもりか!」

 機動要塞近くに用意した大きな天幕では、各国の代表が集まって俺に意見という名の吊し上げを行ってきた。

 一向に崩れる気配のないバンセイム王国を前に、徐々に崩れ始める連合軍の連携。

 寄せ集めにしては、ここまでよく持った方だ。セレスが甘く考えているおかげもあって、俺はその状況をおおいに利用も出来た。

 セントラルを攻撃し始めて十日が過ぎた。互いに消耗しながら戦えば、死者を操るセレスが有利なのは目に見えていたことだ。

 慌てる必要性もない。

 全員の視線が俺に集まる。中には、堂々と俺を指差して罵声を浴びせる者もいた。

「盟主殿の軍勢は大きな被害を出していないと聞く! よもや、我々が消耗するのを見ているのではないだろうな! そうして良いところだけを持っていくおつもりか! やはり、ウォルト家が諸悪の根源ではないか! 敵味方に分かれ、大陸を血で染め上げる疫病神が!」

 周囲が流石に止めに入るが、俺は手で制した。

 実際、冷静に見れば準備をしている俺と他の国では被害が違って当然だ。この日のために準備をしてきたのだ。参加しているだけの国とは意気込みも違う。

 もっとも、すり潰されているのを見ていたのは事実だが。

「後半は聞かなかった事にしましょう。ただし、次はありませんけどね。しかし、いくら倒してもわいてくるような敵兵を前に、これ以上戦えばこちらが参ってしまいますね。士気も下がってばかりだ」

 元から死んでいる敵兵が、後の事など考えるわけがない。ただ、突撃して仲間を踏み越え、そして目の前の敵を殺す。痛みすら感じていない様子だ。

 味方からすれば、恐ろしい敵を前にして毎日のように戦うのだ。体力もそうだが、精神面でもかなり追い込まれていた。

 俺は座っていた椅子から立ち上がり。

「……セントラルの城壁を破壊する道具が仕上がった。我々はこの状況を打開するために、セントラルに突撃をかける。しかし、いいとこ取りをされていると言われると、そうとしか言えない。セントラルに突撃をかけるが、共に突撃する者は名乗り出よ」

 敵がどれだけいるのか分からないセントラルに、突撃すると言うと周りがざわついた。しかし、名乗り出る者はいない。

 ファンバイユの国王が、手を上げた。

「……セントラルの城壁は厚く、そして魔法に対しても耐性が高い。そんな城壁を簡単に打ち破れるとは思えないが? しかも、我々は連日攻め込まれ、ろくに城壁に取り付けていない。突破する事は可能か? こちらも情報を集めるために人手を出したが、誰も戻ってこなかったのだぞ。裏から爆破する、などというやり方が出来るとは思えないが?」

 流石にファンバイユ王家だけはある。七代目に痛い目に遭わされてきたせいか、俺が裏から城門を吹き飛ばすとでも考えたらしい。

 しかし、今回は正攻法だ。

「いえ、正面からいきますよ。そのために用意した訳ですからね」

 俺が天幕の後ろを見た。すると、天幕内が騒がしくなる。

「まさか、アレをぶつけるのか?」
「し、しかし……」
「いや、それなら可能だ。突破できなくとも、足がかりにはなる」

 騒がしくなった天幕内で、俺は手を小さく上げた。周囲が静かになると、俺は言う。

「明朝、俺の軍勢が突撃をかける。反対意見のある者は? ただし、反論するなら代案を提示せよ」

 意見があるなら、これ以上の策を出せと言って黙らせた。実際、各勢力が人やスキル持ちを侵入させているはずだ。だが、成果が出ていないことを見るに、誰もが躊躇(ためら)っている様子だった。

 現状を打開するため、周囲が俺の意見に納得すると会議が終わる。





 ――メイは、麒麟の姿で空を駆けていた。

 セントラル周辺の上空を飛び回っているのだが……。

「あ~、五月蝿い!」

 全速力で空中を駆けるメイの背中を追いかけるのは、黒い麒麟だった。真っ赤な角を持ち、メイを無言で追いかけてくる。

 しかし、息づかいがない。まるで人形のような、そんな麒麟だった。

「いい加減にして貰えないかな?」

 空中で身を翻すと、そこを光が走る。雷が発生し、メイは軽くしびれを感じた。

(疲れ知らずで、これだけの雷を撃てるとか……)

 互いに紫電を纏い、角を相手に向けて突撃すると角がぶつかり火花が飛び散る。

 相手の黒い麒麟の目を見ると、真っ赤だった。そして、生きている気配がない。

「……僕の言葉が分かる?」

 声をかけるが、相手の麒麟に反応はない。ただ、口を開けると禍々しく大きく、牙がデタラメに配置され痛々しさすら感じる。

 空からセントラル内部を偵察しようとすると、黒い麒麟が邪魔をしてきた。そんな麒麟と何度か出くわしては、このように相手をするメイ。

 しかし、いくら突き刺しても、雷をぶつけても相手はすぐに復活する。メイも手足を失えば再生はするが、それでも時間はかかる。

「同族がこんな姿になっているなら、助けたいんだけど……今はタイミングが悪いんだよ。だから、また今度ね」

 相手のデタラメな力をいなし、メイは黒い麒麟を地面に叩き落とすとそのままセントラルの上空から逃げ出した。

 黒い麒麟は、セントラルの上空を守っているのか、逃げたメイを追いかけることはない。

「……あんまり仕事が出来なかったな。仲間も集まらないし。はぁ、ライエルになんて説明しよう」

 ガッカリするメイは、少し離れた位置で振り返った。そこには、黒い麒麟がメイを見つめていた――。





 ――モニカは、機動要塞の屋上からセントラルの城壁を見ていた。

 赤い瞳の中にあるレンズのズームが動くと、城壁の上に入り込んだ連合軍の兵士が見えた。

 夜。月が雲に隠れて真っ暗な時を狙って侵入したようだが、城壁の上にいた兵士たちは一向に動かない。

 不思議に思っていた忍び込んだ兵士だが、すぐに動こうとするが倒れ込む。

 何も見えない暗闇の中、燕尾服を着た赤い髪の男が入り込んで兵士を始末していた。

「……敵にもオートマトンがいるとは聞いていましたが、こうして見ると」

 モニカが相手の動きを見ていると、燕尾服を着たオートマトンが右手を振るう。直後、モニカは左手を顔の前に出した。

 指の隙間にナイフの刃が握られ、それをモニカは指先に力を入れて破壊する。

 視線を城壁の上に向けると、既に相手の姿はなかった。

「話には聞いていましたが、執事タイプですか。よりにもよって、私たちとは別系統……少々厄介ですね」

 モニカは、そう言うと地面を見た。壊したナイフを見て、スカートとエプロンの隙間から道具を取り出し掃除を開始した。

「まさかこのような場所で敵対するとは……これも運命でしょうか」

 何やら因縁めいたことを言いだしたモニカ。しかし、モニカはモニカだ。頭のネジが一本ではすまないくらいに抜け落ちているオートマトンだ。

「メイドと執事……どちらがよりご主人様にお仕えするに相応しいか、決着をつけようではありませんか」

 特に、個人的な恨みや因縁はないようだ――。





 夜明け前。

 機動要塞にブロア将軍、バルドア、マクシムさんを呼んだ俺は、メイから聞いた話を伝えていた。

 それを聞いたバルドアが、難しい表情をする。

「神獣を呼び出し、なんとか優勢に進めたかったのですが」

 マクシムさんも同様だ。

「魔物の軍勢の時は手助けをしてくれたが、今回は無理か。手伝ってくれても良いと思うんだが」

 ブロア将軍は、マクシムさんの方を見ながら呆れていた。

「一度助けられただけでも幸運ですよ。我々が勝てないはずです。神獣にまでコネを持っているとか……しかし、逆を言えば他の問題に頭を悩ませる事もなくなりましたね」

 俺は頷く。

 メイが同族や他の神獣に声をかけて回った。だが、結果として協力は得られなかったのだ。その理由が、大量に兵士がバンセイムの首都に集まり、魔物の被害が増えたためだ。

 加えて、本来なら討伐されるはずだった迷宮の類いも、手が付けられなくなっている。

 迷宮が暴走する可能性があった。だが、神獣がそのフォローをしてくれていた。

「三百年以上前に、だいぶ数を減らしているらしい。まぁ、迷宮や魔物関係で動いてくれているなら、間接的に協力してくれているようなものだ。ありがたい話だと思っておこう」

 ただ、ブロア将軍はアゴに手を当てて。

「しかし、黒い麒麟ですか。確かに噂は聞いていましたが、麒麟同士でも厄介となると怖いですね。上から雷を落とされでもしたらたまりません」

 黒い麒麟が上空から俺たちを攻撃してくる。それは避けたかった。

「メイとマリーナさんに対応して貰うさ。それと、内部にオートマトンの姿も確認できたらしい。そちらはモニカが対応するみたいだから、任せようと思う。正直、ラインが繋がっているオートマトンは再生するから厄介なんだよな」

 ヴァルキリーズは再生しないが、モニカは再生する。それは、以前に確認済みだ。倒せなくても、セレスと戦う間だけでも時間稼ぎをして欲しかった。

 バルドアが肩をすくめた。

「執事タイプですか? なんで対抗心を燃やすんでしょうね。執事と言えば、屋敷などでは管理する者ですよ。メイドの上司みたいなものじゃないですか」

 マクシムさんが呆れながら。

「オートマトンや古代人の常識は理解できないからな。あの言動で正常だと言うから、きっとそういうものなんだろ? しかし、こいつごとぶつけますか」

 マクシムさんが、床を見ながらそう言った。

 機動要塞。本来は、こういう時のために用意していたのだ。要塞の機能や工房はダミアンたちが悪のりで取り付けたに過ぎない。

 ブロア将軍が面白そうに。

「これで資金面の問題が片付けば、きっと戦争が変わりますよ。まぁ、実用化するには数百年くらいかかりそうですけどね」

 魔石の消費量。加えて機動要塞に使用されているのは、希少金属だ。整備だって手間がかかっている。動かないのに、整備が必要なのだ。

「……戦争では確かに有効だが、二度と使おうとは思わないな。それより、ブロア将軍には」

「分かっています。変な動きをする軍勢がいれば、対応しますよ。そういう事にならないといいんですけどね」

 少数精鋭でセントラルの王宮に殴り込む。残りは、都市を埋め尽くす敵兵を王宮に近づけないで貰う役割があった。同時に、漁夫の利を得ようとする軍勢がいないか見張って貰う事になる。

「機動要塞がどこまで進めるかもポイントですね。城壁はなんとしても突破して欲しいものです」

 ブロア将軍が言うと、俺もバルドアも、そしてマクシムさんも頷いた。すると、部屋にヴェラがやってくる。

「時間よ。準備は出来ているわね?」

 男四人で頷くと、ヴェラは言う。

「それは良かった。ダミアン教授もラタータ爺さんも準備は出来ているわ。それと、城壁を越えられるか心配しているようだから言ってあげる。……確実に王宮まで送り届けてあげるから、あんたたちは自分の仕事をしっかりしなさい!」

 自信満々のヴェラを見て、俺は心配している事を聞かれたと思って少し恥ずかしかった。そうだ、機動要塞に関してはヴェラに任せていた。

「そうだな。俺たちは俺たちの仕事をしようか。さて、俺もポーターに乗り込むとするかな」

 俺がそう言うと、バルドアが俺の方を見た。

「ライエル様、お気持ちは変わらないというのなら、これ以上はなにも言いません。ですが、勝利とは生き残ってこそ、です。相打ちは負けと同じですよ」

 真剣なバルドアの視線。それに、ブロア将軍とマクシムさんも同じような気落ちだったのか。

「まぁ、ここで死なれたら全ての計画が狂いますからね。俺としては、戦国時代など勘弁です」

「同じく。せっかく新しい主君を得られたなら、その下で平和に暮らしたいじゃないですか」

 俺は、三人を見て笑う。

「俺は往生際が悪いから心配ない。憎まれっ子は世にはばかるのさ」

 ヴェラが、クスクスと笑っていた。

「ほら、行くわよ」





 ――機動要塞の操作室。

 窓に網状の鉄板を張った部屋では、全員が厚着をしていた。ヴェラは、部下である船長や船員に向かって。

「さぁ、大仕事よ。こいつでセントラルに殴り込みをかけるわ。動力炉の状態は?」

 船員が確認をすると、大声で。

「最高の状態です。早く動かさないと熱でこいつが溶けちまう、って文句を言っていますよ」

 ヴェラは頷く。

「全員、ちゃんとベルトはしたわね?」

 船長が頷く。

「お嬢こそ、指示を出すときに舌を噛まないでください。しまりませんからね」

 衝撃に備えたベルトや手すりなどは、モニカたちオートマトンが提案して、ダミアンやラタータ爺さんが取り付けた。突撃するという馬鹿げた行動を前提とした機動要塞は、その役割を果たせるように設計されている。

 ヴェラは、軽く深呼吸をした。

「……よし! 突撃よ! セントラルの城壁を吹き飛ばしなさい!」

「聞いたな、野郎共! 陸の上だから、って手を抜いたら承知しねーぞ! 海の男の意地を見せやがれ!」

 操作室に男共の叫び声が響くと、機動要塞が大きく動いた。地面に縫い付けていた杭が抜かれ、そして動き出したのだ。

 部屋でシートベルトのついた椅子に座っていたダミアンが、眼鏡を外して近くにいたオートマトンに手渡した。

「計算上なら突破できるんだけどね」

 隣に座るラタータ爺さんは、目を輝かせながら。

「こいつで城壁を破壊して突撃する。聞いたときは馬鹿かと思ったが、やってみると面白いな」

 ダミアンも、ラタータ爺さんも実に楽しそうにしていた。周囲の景色が次第に速く流れ、機動要塞が加速しているのが分かる。

 ヴェラが大声で。

「パイルバンカー、準備急いで!」

 すると、機動要塞の煙突のようなものが、倒れていく。大きな筒が水平に倒れ込むと、筒の上下に中央よりも小さな筒が取り付けられていた。

「敵の集中砲火、来ます!」

 機動要塞が動いたことで魔法が集中してぶつけられると、機動要塞が揺れた。最低限のシールドが展開されているが、衝撃で要塞の勢いが弱まる。

「そんなの、最初から分かってんのよ! やり返して!」

 機動要塞の大砲が火を噴くと、城壁にぶつかった。距離が縮まり、敵のシールドをぶち破って城壁に砲弾が次々にぶつかる。しかし、ひび割れは起きるが、破れはしなかった。

「ぶつかります!」

 船員の声に、全員が耐ショックの体勢に入った。ぶつかることを前提にしており、耐ショックにも色々と工夫がされているが、その衝撃全てを吸収は出来ない。激しい揺れが起きると、ヴェラが叫ぶ。

「大筒に点火!」

 船長が「点火急げ!」そう言うと、船員の一人が留め具のついたレバーを握りしめ、誤操作防止の留め具を外した。そのまま力一杯にレバーを下ろす。

 機動要塞の後方に山積みされた筒の蓋が吹き飛び、そこから火が噴く。その勢いは凄まじく、青白い光が尾となり、周囲の光景を熱で歪めた。機動要塞の前方部分には大きなくの字の鉄板があり、それが城壁に食い込んでいた。そこから、次第にひびが大きくなっていく。

 ヴェラが手すりに掴まり、目の前の光景を見て笑う。

「切り込みは入れたわ。後は……ぶち破るだけよ!」

 船員が操作を行うと、大きな筒の上下にある筒から杭が放たれた。城壁に固定されると、機動要塞が揺れる。

「固定している器具を外せよ! 衝撃にも備えろ! 中に入っても気を抜くな! 耳を押さえて口を開けろ!」

 船長の声がすると、ヴェラは耳を塞いで口を開けた。すると、大きな筒が大爆発を起こし、そこから杭が放たれたのだ。

 特大の杭は、城壁を貫いてセントラルの街中に突き刺さり、筒の方は後方に吹き飛んだ。

(これ、耳が……もう、絶対に使わない)

 二度と使いたくないと思っていると、城壁が大きく穴が開きそこから崩れ始めた。そして、後方の筒から火を噴いて加速する機動要塞が……。

「吹き飛ばしなさい!」

 ヴェラの声がすると、機動要塞はそのまま城壁を破壊してセントラルに侵入する。

 大砲でひびを入れ、切り込みを入れて一気に衝撃を加えるという突撃で、機動要塞がセントラルに入り込んだのだ。

 その光景を見たセントラルの兵士たちだが、慌てていなかった。唖然としている訳でもない。ただ、なんとかしようと機動要塞に突撃して踏みつぶされていく。

「王宮の位置は!」

 船長がヴェラに言う。

「向きがズレました。とにかく近くまでは――」

「なんとしても王宮にぶつけなさい! そうでないと、大きく外れて王宮を通り過ぎるわよ!」

 加速した機動要塞を操作する船員が、舵を切って機動要塞の方向を修正する。大きく曲がるようにセントラルの街並みを破壊して突き進む機動要塞。

 操作室の窓には、建物の瓦礫やら布、果てはぬいぐるみまでが叩き付けられ前が見えにくくなっていた。

 地面を削り、王宮に向かって突撃する機動要塞。タイヤのいくつかが吹き飛び、勢いが弱まりつつあった。機動要塞の大砲が吹き飛び、装甲もはがれ、ボロボロになりながら王宮を目指す。

 ダミアンが。

「最後まで持つかな?」

 ラタータ爺さんは笑っていた。

「持つさ! 何しろ、わしらが作って、こいつらが動かしているんだ!」

 機動要塞の中で嫌な震動や、斜めになっていく床を感じながらヴェラは前を見ていた。機動要塞が軋みだすが、それでも前進し続ける。

 その後ろからは、大型のポーターが兵士を乗せて追随してくる。

「正面、とらえました! お嬢、成功です!」

 船長が叫ぶと、ヴェラは衝撃に備えるように言う。そして、心の中で。

(ちゃんと送り届けたわよ、ライエル!)

 機動要塞が、王宮の外壁にぶつかり止まった――。





 ポーターの荷台の中。

 体を固定していた俺たちは、ヴェラが約束通り機動要塞を王宮にぶつけたのを確認した。宝玉を握りしめる俺は、クラーラに言う。

「クラーラ、突撃だ」

 クラーラがポーターの操縦室から返事をする。

「はい。カバーを吹き飛ばします」

 金属のカバーには瓦礫やゴミが乗っていた。それを、ポーターが前方部分を起き上がらせ、腕で払いのけた。

 外の光景が見える。クラーラの見ている光景を、荷台に乗っている全員が共有していた。

 ルドミラが唇を気にしながら。

「生きた心地がしなかったな。だが、文句なしの成果だ」

 口元を両手で押さえたシャノンが、青い顔をしていた。隣に座るエリザが、心配そうに声をかけている。

「き、気持ち悪い。それと、もう限界。疲れた」

「シャ、シャノン、まだこれからだぞ」

 外の景色を見ながら、クラーラがポーターを操作する。ポーターの上半身。胸部分には、魔鉱石という希少な魔力を持つ宝石が使用された装置がある。それが操作をするクラーラの助けになっていた。

 力強く加速したポーターは、機動要塞から飛び出して王宮の中に入り込んだ。

「ライエルさん、騎士たちが出て来ました。どうやら、魔物もいるようですね」

 クラーラの見ている光景を見ながら、俺は指示を出す。

「蹴散らせ」

 すると、加速したポーターが両腕で騎士や魔物になった元人間たちを吹き飛ばす。俺が王宮内の地図を思い浮かべ、そしてセレスの反応を探った。

 ミランダが、その場所を呟く。

「……謁見の間ね。この子、階段を上れるかしら?」

 すると、不敵に笑うモニカが言うのだ。

「ふっ、私とチキン野郎の愛の結晶であるポーターに不可能はありません。チキン野郎からくすねた……貰い受けたペリドットの宝石の力が唸りますよ!」

 確かに、モニカの言うとおりだった。目の前の敵を蹴散らし、ポーターは階段を無理やり上って謁見の間を目指した。

「お前、探しても見つからないと思ったら……今度は何に使った?」

 モニカが慌てながら。

「待ってください! 私じゃないです。あの劣化品の一号と二号に三号が、魔石ではエネルギーが足りないから、これでいい、って!」

 どうやら、ヴァルキリーズも俺から貴重な魔鉱石を奪ったようだ。叱るのは後で良いと思っていると、モニカがシートベルトを外した。

 真剣な表情で。

「……どうやら、私の相手が来ました」

 直後、クラーラがポーターの両腕を交差させ、防御の体勢に入った。衝撃がポーターを襲うと、目の前に燕尾服を着たオートマトンが現われる。

「ここから先はご遠慮して頂きたいですね。装甲車か機動兵器か分からない、寄せ集め品で乗り込んでくるなど不作法すぎますよ」

 真顔のモニカが、荷台から飛び出すと敵であるオートマトンの前に出た。綺麗な姿勢で、お辞儀を相手にする。

「この無骨さと愛らしさが分からないポンコツ野郎が、不作法とは笑わせてくれますね。執事タイプのオートマトンですか。一度で良いから、ボコボコにしてやりたかったんですよ」

 モニカが、スカートとエプロンの隙間に手を入れると、そこから大きなハンマーとドリルのついた道具を取り出した。

 相手も一度綺麗なお辞儀をしてから。

「私は模倣しか出来ない国の偽物が嫌いでしてね。いいでしょう。ここでスクラップにして性能の違いや格の違いを見せてあげましょう」

 俺は荷台の天井から顔を出す。

「モニカ!」

「……先に言ってください。後で姉妹たちも合流するでしょうし、ここは私に任せて先に……はっ! まさか、言いたかった台詞がこんなところで言えるなんて!」

 あ、こいつはやっぱりいつものモニカだ。

「……ちゃんと後から来いよ」

 俺に振り返ったモニカは、笑顔だった。

「えぇ、必ず後から追いかけます。私の定位置は、チキン野郎のすぐ隣ですからね」

 そう言って、敵のオートマトンに向かって行った。
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