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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

章タイトルのセンスが欲しいぞ 十七代目

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機動要塞

「確かに言ったよ。ポーターの大きな奴みたいに、寝泊まりできるというか便利な奴があれば良いね、って。言ったけどさ……自重しようよ、ダミアン」

 続々とルフェンスに集まる連合軍。

 用意していた場所は何もない広場というか、草原だったのに今では大きな街が出来ていた。多くのテントが立ち並び、中には商売をしている商人や、芸を披露している一座もいた。

 その一角には、ダミアンが作りだした大型のポーターが数十台も並んでいる。大量の荷物を運ぶため、動力に魔鉱石を使用している特注品だった。輸送に関してはポーターのおかげでだいぶ楽になったのは事実だ。

 ダミアンは小柄な体に不釣り合いな杖を両肩にかけ、欠伸をしながら特に大きなポーターを見ていた。

「僕じゃないよ。いや、設計は手伝ったけどね。動力とかその辺もオートマトンたちと協力したけど、発案者はラタータ爺さんだよ」

 俺は、道具を持って自分の弟子たちに指示を出しているラタータ爺さんに視線を向けた。親指を立て、笑顔を俺に向けてきた。

「男の浪漫だ。動く要塞とか恰好いいからな」

 確かに恰好いい。

 ――いや、そうじゃない!

「どんだけ金をかけたんだよ。というか、あのきついスケジュールの中、こんな物が作れた」

 俺の質問に対して、ダミアンは興味なさそうに。

「いいじゃない。要塞とは言っているけど、実際は移動する工房だよ。オートマトンの整備、武具の整備に製造。他には大砲がついているだけだし」

 移動する小さな要塞を見上げた俺は、周囲の兵士たちがそれを見上げて口を開けているのを見て注意する気も起きなかった。

 ダミアンは笑顔で。

「ライエルたちの部屋もあるよ。狭いけどね。後は、目立つように舞台も用意できる。こんな感じ」

 ダミアンが杖を掲げると、機動要塞がゆっくりと動き出す。前の方に確かに舞台が上昇し、目立つようになっていた。

 ダミアンが杖を肩にかけ。

「アレでしょう? ライエルの戦法は基本的に防衛だから、すぐに陣地を作れるこれは役に立つと思うよ」

 俺は機動要塞を見上げながら。

「役に立つというか、そもそもこれって魔鉱石の消費とか――」

 ラタータ爺さんが笑顔で割り込んできた。

「聞いてくれ。あの煙突が見えるか? あれが動力で、あそこに魔石を放り込んで蒸気の力で動くようにした。採算が合わないが、どうせわしたちの金じゃないから無理をしてもいいかと」

「……その支払い、って俺じゃない? 最終的な支払いの義務があるのは俺じゃない!?」

 ダミアンとラタータ爺さんが俺から視線を逸らした。こいつら、自分の浪漫のために俺を犠牲にしやがった。駄目だ。こいつらはセットにして放置してはいけない存在だ。

 ダミアンとラタータ爺さんがか細い声で。

「……要望にはしっかり応えたし」

「う、うむ。完璧に応えた。ちゃんと他のも作ったし」

 こいつら分かってない。

「資金面でまったく俺の要望に応えられてねーよ! なんだよ、少し良いかと思ったら、結局これかよ!」

 俺の叫びに駆けつけて来たのは、一号と二号、そして三号だ。以前よりも豪華な青い鎧を身に纏っている。着ている服は白いもので、ヴァルキリーと言われると納得してしまいそうだ。バインダーも以前よりも翼のような感じが出ている。

 まぁ、中身は駄目過ぎるが。

「おや、やはり資金面でオーバーしていましたか。まぁ、分かっていたことですが」

 知っていたらしい一号がそう言うと、二号も三号も頷いていた。

 分かっていたら言えよ。

「お前ら、後で罰を与えるからな」

 すると、三体が余裕の笑みで俺を見ながら、代表して一号が口を開く。まるで喜んでいるような表情で。

「罰! それを……お待ちしておりました!」

 駄目だ。本当に駄目なやつしかいない。

 すると、俺の方にヴェラが歩いてきた。後ろには銃や荷物を持った船員たちがついてきている。

「ヴェラ? なんでこんなところに?」

 すると、ヴェラが機動要塞を指差す。

「アレの出資者が私だから。本当はお父様だったんだけど、あのままだとライエルにかなりの借金を負わせようとしていたから、こっちで対処したのよ。それに、これってつまり陸の船でしょ? なら、動かすのは私たちの方が向いているわよ。動力だって同じようなものだし」

 そう言えば、ヴェラの船は同じような動力を積んでいた。魔石を炉の中に入れると、確かそんな事を――。

「え? お前も来るの? いや、危ないし――」

「危ないのはみんな同じよ。それに、荒事にも慣れているし、他の面子だと技術者ばかりで操作に関しては素人よ」

 ラタータ爺さんが腕を組んで頷く。

「まぁ、そうだな。だが、わしはお嬢ちゃんが来るとは思わなかったぞ」

 ヴェラは溜息を吐きながら。

「他の誰にも譲る気はないわよ。まぁ、陸の船だと思えば興味もあるからね。というか、随分と規模が大きいわね」

 ヴェラが周囲を見て、その規模に驚いていた。だが、これでも全部ではない。違う場所にも軍勢が集まりつつある。

 俺のいる本隊。それに別働隊が二つ。三つの軍勢で総勢二十万は超えそうだった。四ヶ国連合に加え、逃げ出した兵士たちや賊を吸収して数は膨れあがっている。

「本隊十万。他は五万の軍勢が二つだ。一つはバルドア、もう一つはマクシムさんに任せたよ」

「あら、以外ね。ブロア将軍の方は?」

「本隊で指揮を任せる。というか、基本的に東部は進軍するだけで終わるから、セントラルが動くまであんまり大きな戦とかないだろうし」

 そう……ウォルト家の敗北がここに来て効いている。何しろ、領主貴族で今の俺とまともに戦える兵力を持つ領主は存在しない。

 まとまって戦おうとしても、領主たちが集まってまともに戦えるかと言えば答えは「いいえ」だ。面子があって誰かの下につけないという理由もあるが、一番の問題は二十万の軍勢に対抗するだけの兵士を集められない。

 バンセイムは、かなり弱っていた。

「ラウノさんの調査だと、まともなは判断が出来ていればこっちに寝返っている、ってさ。なにしろ、セントラルのバンセイム王家がまったく動かないんだ。救援を求めても動く気配もないらしいし」

 話を聞いていたダミアンが、興味なさげに。

「判断力のない領主もいるんじゃないの? ほら、最終的に勝った方につけばいい、って人も少なくないだろうし」

 ヴェラも頷く。

「そうよね。流れを読めない人、っているのよね。貴族でも割と多いわよ」

 俺はそんな二人に対して。

「俺はね、どちらにつくか明確にしろ、って流布しているの。実際、その噂を聞いてこちらに合流した人たちや、逃げ延びてきた人もいるわけだ。そこまでしてどっちつかず、って駄目だよね? 悪いけど領地や財産は没収です。まぁ、動けない理由があれば別だけどね。でも、当主不在で跡取りが十歳にも届かないのにこちらに合流した家もあるんだよねぇ」

 そういう家と比べ、当主がいるのに日和見を決め込むというのはいかがなものか? そして、もう一つ厄介な問題があった。

 アグリッサを倒した時に、バンセイムがしたような事を狙う輩も多いのだ。つまり、俺に対して自分たちを高く売りつけようとしている連中だ。

 ただ、本当に高値で売りつける時期は終わっている。

 俺は笑顔で。

「まぁ、勝利後に土地が欲しいから、結構な領主には消えて貰います。軽く計算しても、ベイムやルフェンスを分け与えても足りない訳よ。切り崩しすぎれば他の国と対抗できないから権威が薄れるし、睨みもきかないし」

 ヴェラが俺を見ながら。

「あんた、結構そういうところはドライよね。普段を見ていると情けが出そうなのに」

 俺は少し前を思い出しながら。

「色々あってすれちゃった。まぁ、綺麗事は好きなんだけど、俺もセレスも恨みを買いすぎたわけ。そういうのを処理して、次代に問題なく渡せるようにしたいのよ」

 とにかく、しっかりとした地盤を手にしておきたかった。そのために、邪魔な領主なども多い。

 ラタータ爺さんが俺の方を見て。

「兄ちゃん、結構な悪党だな」

 俺は笑顔で。

「それは違うね。だって俺は……歴史に名を残す大悪党だから。まぁ、勝てば英雄だけど」

 何しろ、疲弊するのがバンセイムや俺たちだけにならないように、大陸中を巻き込んで決戦を行うのだから。





 ――ラウノは、バンセイムに潜入していた。

 場所はバンセイムの領主貴族が治めている街で、酒場で部下たちと合流していた。酒場と言えば夜に賑わいを見せるというのに、出される料理や周囲の客の少なさからラウノはバンセイムがかなり疲弊しているのを察した。

 旅人に扮した部下の一人が、周囲を見ながら。

「どこも寂れていますね。それに、出される料理も酷いものです」

 皿の上には薄いスープに、小さなパン。それに、少量の酒のつまみが皿の上にいくつか置かれているだけだった。

 旅芸人を装っているのは、エルフの二人組だった。エルフなら旅をしていても怪しまれず、しかも騎士になれると聞いて志願した二人だ。

「同族の話だと、どこも同じようですよ」

「ただ、セントラルはなんだか不気味みたいです。歌を歌って客が集まっても、まるで生気を感じないというか……それに、活気が全くないみたいです。そいつが言うには、火が消えたみたいだって。あまりに不気味だったみたいで、すぐに逃げ出したようですが」

 ラウノは集めた情報を整理しながら。

「どのルートを通っても問題ばかりだ。食糧不足も酷い。冬を越せないところが多すぎるだろうな」

 心配するラウノは、内心ではそれ以上に厄介な事を考えていた。

(それにしても、セレスに魅了されているとは思えない領主たちが、バンセイムに従っている理由は何だ?)

 セレスに魅了され、徹底抗戦を宣言している領地もあった。だが、逆にセレスが関わってもいないのに、ライエルに対して従おうとはしない領地も多い。正義感や、ライエルがセレスと同じウォルト家だから、というのとは違う気がした。

 ラウノは部下たちに。

「最後はダリオンまで行くぞ。そこで集合予定だ」

 部下たちが頷くのを見て、ラウノは最終目的地であるダリオンの状況を心配するのだった――。





 ――輸送部隊を率いるクラーラは、目の前の光景を見て眉をピクピクと動かしていた。

 ノースベイムに集められた野芋は、木箱にこれでもかと詰め込まれている。生命力溢れ、放置すれば増え続ける厄介な芋だ。

 人の手が入らない場所などには、大量に存在していることがある。これが管理されている場所では、適度に処分されている。

 バンセイムで野芋が手に入らないのは、そういった場所が少ないからとも言えた。ところが、ノースベイムで野芋を買い取りを始めると、ベイムの人々が大量に野芋を探し持ってきてしまった。

 金になると分かると、行動力が違うベイムの人々らしい反応だ。

 そして、その野芋の山を見ながら、金を出すと宣言したアデーレが青い顔をしていた。

「……確かに去年からゴタゴタしていましたが、まさかこれだけあるなんて。どうしよう。財政が……食糧は確保できたけど、財政が……」

 アデーレの隣にいるのは、この場にいてはいけない人物――マクシムだ。

「大丈夫です、アデーレ様。このマクシム、食糧の交換に応じる者たちからは資金を回収して参ります」

 アデーレはマクシムを見ながら。

「お願いしますね、マクシム。でないと、もう資金が」

 クラーラは二人を見ながら。

「私が言えた義理ではありませんが、大きな戦を前にして別れなのですからもっとお金から離れませんか? それに、この野芋の山……下処理を住ませているとは言え、かなり不味いのですが?」

 手を握っているアデーレとマクシムは、クラーラの方を向いて。

「食糧問題の解決を考えた結果です。これで冬場は越せるのですからいいではないですか。餓死するより断然良いです」

「そうですよ、クラーラ殿。アデーレ様の大手柄です」

 クラーラは眼鏡を少しお上げ、レンズを光らせながら。

「……兵士たちが、これが自分たちの食糧になるのではないかと落ち込んでいます。ちゃんと説明はしたんですよね? 士気が下がっているのですが?」

 アデーレは「え!?」という表情で固まると、ぎこちない動きでマクシムの方を見た。マクシムは首を横に振りながら。

「何も指示を受けていません。というか、これは全体の問題として、ライエル殿やリアーヌ殿の管轄では?」

 クラーラはアデーレを見ながら。

「野芋の件は責任を持ってアデーレさんが担当すると聞いています。いつまで経っても通達も来ないので心配していれば……やっちゃいましたね」

 冷や汗をかくアデーレに、クラーラは笑顔で。

「だから劣化リアーヌ、って言われるんですよ」

 すると、アデーレはクラーラに向かって怒鳴りつける。

「言っているのは貴方でしょうに! いいですか、こっちはベイムの管理や復興もあって忙しいんですよ!」

 マクシムもアデーレの援護に回る。

「そうです! アデーレ様はお忙しいんです!」

 ただ、クラーラは鼻で笑いながら。

「リアーヌさんは、ルフェンスの管理をしながら全体も見ていますけどね。まぁ、頑張ってください。それと、いい加減に周りの空気に気付いてくれませんか? もう決戦も近いというのに、いつまでも微妙な関係でここまで来て……いい加減、結婚するなりしてくださいよ。バルドアさんはもうアレットさんと簡略ですが式までしていますよ」

 それを聞いたマクシムは、アワアワと慌て出す。大男がそんな事をしても可愛くないと思いながら、クラーラはアデーレを見ていた。

 すると、アデーレは首を傾げながら。

「……誰が誰と結婚するんですか?」

 そんな事を言って、マクシムを撃沈させていた。クラーラは、ドン引きしながらもマクシムに近付き。

「頑張ってください。応援はしていますので。あと、ルドミラさんがマクシムさんに嫁の手配をしようとしています。気を付けてくださいね」

 マクシムは地面に膝から崩れた状態で、クラーラに。

「……が、頑張ります」

 と、言うのだった――。
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