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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

二代目様は苦労人

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ライエルの成長

 荷馬車の中、揺られながら俺は体の酷い疲れに悩まされていた。

 青い顔をしていると思う。

 実際、俺は外の景色を見ながら早くダリオンの街に辿り着かないか、という事ばかりを考えていた。

 悪路が終り、どうにか揺れも小さくなってきたが荷馬車の荷台の揺れは酷い。

 作りとしてはしっかりしているし、ギルドが保有しているので手入れも行き届いていた。

「もう、あんまり荷馬車には乗りたくない……」

 疲れているせいなのか、行きよりも帰りが俺にとっては厳しかった。

 そんな俺を見て呆れているのは、アリアである。

 全員が疲れを感じているのだが、俺はその中でも特に酷かった。

「ノウェムがもう一台の荷馬車に治療目的で乗るから、世話を任されたけど……本当に酷い顔をしているわよ。もう少しだけしっかりしなさいよね」

 アリアの物言いに、俺は言い返す。

 酷く疲れているので、気の利いた返しはできない。

「行きはアリアの方が酷かったよね。何度か吐きそうな顔をしてたし」

「あ、あれは揺れが酷かったからよ! 今はもう慣れたから大丈夫なんだからね!」

 恥ずかしそうにしているアリアを見て、メンバーの中で唯一元気なラーフさんが苦笑いをしていた。

「お前ら仲が良いな」

 そんなラーフさんに、俺とアリアは返事が重なった。

「よくないです」
「よくないわよ!」

 元気なアリアが羨ましいと思いつつ、俺は横になっているレイチェルさんの側にいるロンドさんに視線を向けた。

 自分も辛そうなのに、レイチェルさんを気遣っている。

 それを見て四代目がネチネチと――。

『ライエルもさ、もう少し余裕を持てないかな? 女の子は大事にしないと駄目だよ。というか、今の態度をノウェムちゃんに取ったら会議で吊し上げ確実だね』

 女性の扱いに五月蝿い四代目に言われるが、今の俺は本当に疲れていた。今までにない感じの疲れで、
どうにも余裕がない。

 そんな荷馬車の御者は、ゼルフィーさんではなくサポートの人だ。

 ゼルフィーさんは、怪我人を乗せた荷馬車の御者を行なっている。

 ノウェムは五人の看病をしており、疲れもあるのに気丈に振る舞っていた。

 ロンドさんは、疲れた顔で笑いながら言う。

「もしかしたら……これは来るかもな」

 何が? と思っていたら、二代目が補足してくる。

『ライエル、成長前にこうした疲れというか微妙な感じが前兆である時がある。主に大量の経験を得たときだ。そういう時は、普段の生活の中で成長するより、体の変化が大きいから酷く疲れたように感じるんだ』

 つまり、俺はここに来てようやく『成長』の兆しが見えてきたというのだ。

 喜びたいが、そんな余裕は今の俺にはない。

 ラーフさんは、少し残念そうにしている。

「俺も参加したかったな。そうしたら成長を実感できたかも知れないのに……というか、一気に全員が兆しを見せるのは珍しいな」

 多かれ少なかれ、個人差が出るのは人間なら当然だ。

 それが、参加したメンバー全員が成長の兆しが出ている。

 ロンドさんは疲れているが、笑顔のままだ。成長を実感できると思うと、嬉しいのだろう。

「戻ったらしばらくは休むしかないな。それに、ライエル君たちには報酬を譲って貰った訳だし、何かお礼をしたいところだね」

 迷宮の最奥の間――。

 そこにあった希少金属である、魔力のこもった鉄を俺たちはロンドさんたちに譲ったのだ。

 ゼルフィーさんは冒険者からはぎ取った金目の物を報酬として受け取り、俺たちは希少金属を譲る代わりに報酬を貰う事にした。

 ギルドの緊急依頼と、調査結果の報告で少なくない金が貰える。

 希少金属で武具を作ることも考えたが、今の俺たちには必要ない。

 それというのも、俺やアリアは玉を持っている。スキルを付与できる武器があったとしても、互いに干渉して上手く使えない可能性もあった。

 使い慣れればアリアは可能だろうが、俺の方は宝玉が強すぎて現状では不可能だった。

 ノウェムに杖でも作ってやるべきか悩んだのだが、本人が拒否していたので報酬を俺たちが貰うことで話がついた。

「まぁ……この疲れが引いたら、お願いします」

 俺が精一杯の返答をすると、ロンドさんは苦笑いをしていた。

「そうだね」

 対して、ラーフさんはどんな武器を作って貰うか、そしてどんなスキルをセットするのか楽しそうに考えていた。

(早くダリオンに着かないかな)

 俺は、揺れる荷馬車にイライラしながら、到着まで横になる事にする。

 アリアが、そんな俺に毛布をかけた。

 お礼を言わないでいると、四代目の舌打ちが聞こえる。

『ちっ!!』





 ダリオンへと到着した俺たち一行は、ギルドに詳細を報告することになった。

 だが、全員が話をする必要もないので、報酬を受け取った俺たちは家に戻ることになる。

 今回のリーダーであるゼルフィーさんが、ギルドで報告を行なうようだ。

 受付のある二階でラーフさんに肩を借りる俺は、戻ってきた俺たちを見て声をかけてくる冒険者たちに返事をしていた。

「仇を討ってきたのか。良くやったな、お前ら!」
「若い奴らも頑張るじゃねーか」
「しかし、これで安心できるな」

 拍手をしてくる冒険者たちもおり、俺たちはちょっとした英雄の凱旋気分を味わう。

「こういうのも悪くないな。ダリオンの良いところだ」

 ラーフさんがそう言うと、俺は他のギルドは違うのかと聞いていみた。

「他のギルドとは違うんですか?」

「やっぱり土地によるからな。気質というか、土地柄というか……だけど、こういう感じも悪くないな。ここでやっていけるなら、残っていたい街だ」

 口ぶりからするに、いずれはダリオンの街を去るのだろう。

 寂しいと思ってしまうが、俺もいつかはダリオンを去る。

 そうして周囲を見ていると、カウンターにいるいつもの受付の顔ぶれが変わっていた。

 美人職員がいなくなっている。

 中年女性の職員が、若い男性職員に色々と説明をしていた。

(少し雰囲気がおかしいな。なんか、若い冒険者たちが微妙な顔をしているし)

 ゼルフィーさんが、死亡した冒険者のギルドカードをホーキンスさんに手渡すと俺たちのところに来る。

「随分と騒がしいね。ま、ダリオンでは珍しいと言えば、珍しいか……今日はこのまま解散するけど、ライエルたちは疲れが抜けないようなら二日か三日は休みな。今のままだと、仕事しても危ないからね」

 確かに俺もこの状態で仕事をしたくないので、ゼルフィーさんに頷いて返事をする。

 ノウェムも同じだ。

 アリアだけは、ゼルフィーさんの顔を見ずに俯いている。

 ロンドさんたちはゼルフィーさんにお礼を言った。

「なかなか良い経験でした。生き残れましたしね。よかったらまた声をかけてください」

 疲れているのに爽やかなロンドさんに、ゼルフィーさんは頷いていた。

「また同じような事があるのは勘弁して欲しいけどね。ただ、あんたたちの事は覚えておくよ」

 そう言って三人がギルドから去って行く。

「ほら、あんたらも行きなよ。酷い顔だよ」

 ラーフさんの次に、俺はノウェムに肩を借りてギルドを後にするのだった。





 ――ギルドの個室。

 ホーキンスは机を挟んでゼルフィーと向き合い座っている。

 大柄なホーキンスがいるせいか、部屋はいつもよりも狭くテーブルも小さく見えた。

「……ご苦労様でした。今回の件はギルドの上の方にも報告しておきます」

 聞き取りを終えたホーキンスが、書類を手に取りテーブルの上で縦にしてトントンと二度落として綺麗に書類をまとめる。

「本当に疲れたよ。良いところはないし、汚い部分だけ見せて終りだ。本当に二度とごめんだね」

 ホーキンスは苦笑いをした。

 ゼルフィーが、死亡した冒険者の貴重品を報酬として貰いたいと言ったので、大体の事は理解している。

「……彼の家は知っていますか?」

 ホーキンスが彼――死亡した冒険者の家を、ゼルフィーが知っているかたずねる。

「知ってるよ。家族も奥さんが一人に子供が二人、だ。本当に嫌になる……こんな事は、あんまりしたくないんだけどね」

 家族構成まで知っていると知り、ホーキンスの表情は少し悲しそうだった。

「わざわざ嫌な役を引き受けるんですか? それも、ライエル君たちには黙ったままで」

「指導員としての仕事はしているよ。こいつは料金外だからね」

 ホーキンスは、ゼルフィーが報酬として求めた金目の物をどうするか想像がついている。

 死んでしまった冒険者の所持品は、大体は調査に向かった冒険者か、仲間が貰い受ける。

 しかし、中でも周囲に認められていた冒険者の場合、世話になった冒険者がそれらを遺族に届ける事があった。

「教えてあげてはいかがです。これからを考えれば重要ですよ」

 気が乗らないのか、ゼルフィーはホーキンスから視線を逸らした。

「私の仕事は、あいつらを一人前の冒険者にする事だ。仕事も覚えさせたし、今回の一件で移動やら野営、それに迷宮まで教えたんだよ。これ以上は必要ないね」

 基本的な事は教えている。

 だから問題ない。

 ゼルフィーはそう言い切った。

 ホーキンスは呆れつつも、ゼルフィーに指導員としての仕事に関して言うことはない。

 確かに仕事はしている。

 料金分の仕事をしているので、ギルドも細かいところまでは口を挟めない。

「貴方らしいですね。今回は報酬を受け取らないでただ働きじゃないですか」

 報酬をライエルたちに渡し、迷宮で見つけた希少金属はロンドたちに渡してしまっている。

 死亡した冒険者が持っていた貴重品を受け取ったゼルフィーだが、それは遺族に返すつもりでいる。

 ただ働きだ。

 冒険者としては失格と言える。

「……引退する人間にそんな事を言われても、ね。私はここまでだよ。婚約者もいるし、あいつみたいに最後に死ぬなんてごめんだ」

 ゼルフィーの最後の仕事は、ライエルたちを指導することだった。

 冒険者としてある程度の成功を収め、領主にも認められている。

 ギルドと領主との間で、上手く仕事をしてきたのがゼルフィーだった。

 だが、アリアの一件でそれも大きく狂いだしている。

「アリアさんの一件で無茶をしたようですね。ライエル君に押しつけて……本当は、ライエル君が困ったら引き取るつもりだったんでしょう?」

 ゼルフィーは深い溜息を吐いた。

「は~、まったく……アリアお嬢様を扱いきれなかったら『助けるなら最後まで面倒を見るつもりで助けな!』って、説教かまして凹ませるつもりだったのに。世間知らずのボンボンかと思えば、どんな困難もあっさりと乗り切る。あれは私なんかより相当上に行くね」

 自分が教えられることは、もうほとんどないと愚痴を言うゼルフィー。

 ホーキンスはその愚痴に付き合った。

「そうですね。私も多くの冒険者を見てきましたが、ライエル君たちは上に行くでしょうね。それこそ、国中に名の知れた冒険者になるかも知れませんよ」

 ホーキンスが冗談を言うと、ゼルフィーは笑う。

 流石に、そこまでとは思っていないようだ。

「それは面白いね。だったら、私は国で有数の冒険者を指導した女、って事だ! 随分と立派な箔じゃないか」

 そして、話題は美人職員の事に移り変わる。

「それはそうと、旦那。あの美人はどうなったんだい」

 ゼルフィーの視線は厳しいものになった。

「……出発前に手を回しましたね? 領主様の方から事情を説明するようにと命令が来ました。ダリオンではギルドの立場は領主様に劣りますからね。言われれば説明するしかありません」

 ホーキンスは、青い顔をした美人職員を思い出す。

 同時に、彼女の父もダリオンの冒険者ギルドから出て行く事になった。

 表向きは新しいギルドの立ち上げで、そこの支部長という出世である。

 しかし、その場所はこれから開拓村が出来る予定の村だった。

 ダリオンの街から追放処分という事だ。

「流石は領主様だ。随分と素早い動きだね。領民としては安心できるよ」

 ゼルフィーは冒険者ギルドに所属している。

 しかし、同時に彼女はダリオンの領民でもある。

 引退を考えている彼女にとって、どちらにつく方がメリットはあるのか? 言うまでもなく領主である。

 ギルドとしても、その事に口を挟むつもりはなかった。

「おかげでしばらくは大変ですよ」

 今度はホーキンスが愚痴をこぼす。しかし、ゼルフィーは笑っている。

「それは何よりだね。こっちも苦労したんだ。少しはギルドにも苦労して貰わないと」

 「まったく」と呟いたホーキンスは、書類を丁寧に持ち上げると立ち上がり、部屋から出て行くのだった――。





 帰ってから二日目の朝。

 俺は清々しい気分だった。

「なんて爽快な朝なんだ……まるで生まれ変わったような気分。これが成長か!」

 ベッドの上で立ち上がり、両手を広げて天井を見上げる。

 天井が近く、シミまでハッキリと見えるが気にしない。

 そのままベッドから飛び降りると、座り込むように着地をしてゆっくりと立ち上がった。

 まるで感覚が広がり、自分が大きくなった気がする。

「感じるぞ……魔力が今まで以上だ! ギリギリでやりくりを必要とするこれまでの俺とは違う! 俺は……生まれ変わったんだ!!」

 部屋の中で叫ぶ俺は、実に気分が良かった。

 今から走り出したい気分だった。

 昨日の夜までグッタリとしていたのが、まるで嘘のようである。

「今なら空だって飛んでみせ……流石に無理か? いや、俺なら出来る! もう、怖いものなんか何もない! セレスにだって勝てる! いや、勝てると良いな……」

 セレスを思い出すと、急に弱気になってきた。

 首を横に振ってセレスのことを忘れると、とにかく今は大声で叫びたかった。

「俺は成長したぞぉぉぉ!!」

 すると、バタバタと音が聞こえ、部屋のドアが勢いよく開けられた。

 そこには顔を真っ赤にしたアリアが、涙目で立っている。

「どうしたんだ、アリア? そんなに泣きそうな顔をして……何か悲しいことがあったのかな? 俺ならいつでも相談に乗ってやるぞ!」

 両手を広げる俺に、アリアは顔を両手で覆う。

 そして、耳まで真っ赤にして叫んだ。

「これ以上騒ぐのを止めて! 私まで昔の自分を思い出すじゃない!」

 昔の自分と言われ、俺は首をかしげた。

 そして、気付く。

「なんだ。はじめて成長した時に何かやらかしたのか? そんな小さな事を気にするな。俺なんか、今までどうしてこんな小さな事で悩んでいたのか不思議なくらいだ。昔の自分を殴り飛ばしてやりたいね!」

 その場で拳を突き出し、かつての自分を殴り飛ばしたイメージを思い浮かべるとそのまま右腕を高らかに上げる。

「……いや。私はこんな感じじゃなかった。もっと普通だった」

 その場に座り込んで首を横に振るアリアに、俺は高笑いしながら慰める。

「元気がないぞ、アリア! そうだ、今日はロンドさんたちに会いに行こう! この前のお礼も言わないといけないからな。ついでに報酬で大宴会だ! 今日は奢ってやる!」

 ハイテンションの俺を、アリアは焦点の定まらない目で見ていた。

 ハイライトの消えた瞳で見つめられ、俺は照れる。

「そんなに見るなよ……照れるだろ」

 髪をかき上げるポーズを俺が取ると、アリアは立ち上がって黙ったままその場を後にした。





『そんなに見つめるなよ、照れるだろ』

 三代目が髪をかき上げキメ顔でポーズを取ると、丸いテーブルを囲んだご先祖様たちが笑い出す。

 俺はテーブルに顔を埋め、何度も両手でテーブルを叩いた。

 次に、三代目は素手で殴るように拳を突き出しつつ言う。

『昔の自分を殴り飛ばしてやりたいね!』

 またしてもご先祖様たちは大爆笑だ。

 初代は腹を抱えながら笑い、そして足をバタバタさせている。

『ここに来てはじめてここまで笑ったぜ! 腹が痛ぇ~!!』

 二代目は口元を押さえて小刻みに震えていた。

『ライエルは空も飛べるんだね。プッ!』

 吹き出してんじゃねーよ! などと思っていると、四代目は眼鏡を外して笑いすぎて出てきた涙を拭いていた。

『俺ならいつでも相談に乗るぞ、だって……普段からそれぐらい言ってやりなよ』

 五代目は、俺を生暖かい目で見ている。

『安心しろ。誰しも経験する事だ。初めての成長で気が大きくなるんだよ。ほら、ノウェムは何も言わずに見守っていてくれただろ。あれを普通は家族がやるんだ』

 俺は叫ぶ。

「あの時の俺を殴り飛ばしてやりたいぃぃぃ!!」

 だが、六代目は俺に追撃をかけてきた。

『いや、しかしですよ。あれは、なかなか見られない程の騒ぎようでした。ライエル、お前には人を笑わせる才能があるかも知れないぞ』

 笑いながら言われても説得力がない。

 そもそも、笑われることと笑わせることはまったくの別物じゃないか。

 俺をからかっているご先祖様たちだが、俺の祖父である七代目も必死に笑うのを堪えている。

『う、うむ。誰しも経験する事だ。恥じることはないぞ、ライエル……ブフッッッ!!』

 耐えきれずに噴き出した七代目を冷たい目で見つつ、俺はさっさと呼び出された理由を聞くことにした。

「それで、今日はどんな理由で呼び出したんですか? からかうだけなら帰らせて貰いますよ」

 イライラとしながら言うと、周囲は未だに笑いながら俺を引き留める。

 四代目が最初に立ち直ると――。

『待ちなよ。大事な話だから。ただ、今回の成長はインパクトが強すぎて、ね……駄目だ、思い出したら笑いそうになる』

 口元を押さえる四代目を見て、俺は両手で頭をかきむしる。

 なんであんな事をしたのか?

 どうしてあんな言葉を口走ったのか?

 後悔してもしきれない。

 三代目がニコニコしながら四代目から続きを引き継いだ。

『ライエルのスキルなんだけど、あれって僕たちのスキルと違って常時発動しているタイプじゃない』

「そうですね」

 俺がジト目で三代目を見ると、ヤレヤレといった感じで説明を続けた。

『魔力の消費量が多かった原因の一つなんだろうけど、これは一度でも発現すると常に魔力を消費するタイプだ。効果は大きいけど、今までと同じように使用できる魔力には制限がつく』

 成長した今の俺にとって、消費量に耐えられるだけの魔力はある。だが、枷をされている事には変わりがなかった。

 三代目は続ける。

『それと同時に、ライエルの状態を僕らなりに考えたんだよ。それで、二代目が言うには――』

 そこまで来て、二代目が口を開いた。

『とんでもなく経験を必要とするタイプだ。成長前の兆候が酷いのもそうだが、お前はその反動で大きく成長する。大量の経験を積んで一気に成長するタイプなんだが……ハッキリ言って極端すぎる。必要な経験が人の何倍もあると思え』

 俺は自分の耳を疑った。

 大きく成長するが、人より多くの経験を必要とする。

 しかも倍以上、だ。

「それ、なんとかならないんですか? ほら、俺のスキルだって効果を発揮する訳ですし」

 そう言うと、二代目は首を横に振る。

『いくらスキルで増やすと言っても、今の状態では増えても二割から三割じゃないか? 次の成長を考えれば、今以上の経験が必要になる』

「……と言う事は?」

『ダリオンから出る事を視野に入れて行動しろ。ここでは次の成長が起きたとしても数年単位だ。下手をすれば十年かかってもおかしくない』

 二代目の視線は真剣なものだった。嘘を言っている顔ではない。

 本気で俺に次に進めと言っている。

「まだ指導員を雇っている途中ですよ」

 三代目が言う。

『三ヶ月間だけだよね。そこまでみっちり教わったら、ダリオンを離れよう。ここは住みやすいかも知れないけど、ライエルはここで一生を過ごすつもりかな? それは無理だと思うけどね』

 五代目が補足してくる。

『ダリオンの領主はお前に出て行って欲しいだろうな。ここに住むにしても、領主の影響下に置かれる。それは必ずしもお前のためにはならないぞ。いざとなれば、あの領主はお前を簡単に切り捨てるだろうさ。……お互いのためにも、お前がここを離れる方が良い』

 ダリオンの領主であるベントラーさんにとって、俺は実家であるウォルト家がどう動くか分からない爆弾のようなものだ。

 いるだけで扱いに困るだろう。

「指導期間が終わればダリオンを去ります。それまでに次の場所を決めれば良いんですよね?」

 俺がそう言うと、全員が真顔で頷いた。

 そして、最後に初代が言う。

『それと、だ。俺からも話がある。明日にでもここに来い。時間はかかると思うから、そのつもりでいろよ』

 初代の真剣な表情に、俺は頷いて答えた。

 周囲のご先祖様たちの雰囲気も、先程と違って静まりかえっている。

 四代目が普段通り会議の終了を宣言した。

『これで終わろうか。それにしても、初代とライエルは随分と打ち解けましたね』

 最初を思えば、絶対にあり得ない状況だと思う。

 何しろ、俺は初代に「お前は嫌いだ」と言われていたくらいだ。

 自分でもこうなるとは思ってもいなかった。

 それは初代も同じだろう。

『ま、認めてやらんとな。ライエルは俺に実力を示したんだ。アリアちゃんも救ってくれたんだから、俺はそれに応えるだけだ』

 妙に初代の言葉が引っかかった。
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