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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

誰に似ているのかな? 十五代目

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略奪

 ――ベイムにある村の一つ。

 そこでは、バンセイムの軍勢がなだれ込んできて村人たちを一箇所に集めていた。不安そうな村人たちを前に、武器を構えた兵士たちは村の建物に入っては中から色んな物を奪って一箇所に積み上げていた。

 食べ物に始まり、装飾品、そして武器なども回収されている。村人の前には、武器を持っていた若者たちが、兵士たちに惨殺されて目の前に置かれていた。抵抗は無意味と思わせ、村人たちは恐怖で従っていた。

 村を襲撃した男爵は、寄子である騎士たちと話をしていた。

「なんという緩さだ。バンセイムならもっと激しく抵抗するか、最初から差し出すというのに」

 寄子である騎士たちは、怯える村人たちを見て。

「着ている服も身につけるものも、バンセイムでは考えられませんね。税が安いと聞いていましたが、まるで管理されていない。しかも、向かってきた若い連中はまるでなってない」

「我々と魔物を同列に考えているのでは? 流石は冒険者の都と呼ばれるベイムですね。なにも理解していない」

 略奪した物資の多さに、兵士たちも満足していた。見れば、兵士たちは手にした服や装飾品を持って。

「おい、それと交換してくれ。俺のところは今度娘が嫁に出るんだ。上等な服を持たせてやりたいんだよ」

「だったら、お前の持つ装飾品をくれよ。こっちは妻への土産なんだ」

 略奪したものを早くも自分たちの物として扱い、そして兵士同士で交換をしていた。中には喧嘩を始める者まで出始めるが、そこは騎士が間に入って仲裁をする。

 男爵は、周囲を見て鼻で笑った。

「奪った物は荷馬車に積み込め。それから、もうこの村に用はない……燃やせ」

 その言葉を聞いて、村人たちが叫んだ。

「待ってくれ! もう奪うだけ奪ったのに、なんで燃やす必要が――ッ!」

 立ち上がって抗議した村人の胸には、矢が突き刺さっていた。男爵の近くにいた兵士が矢を放っており、他の兵士たちも矢を構えていた。

 男爵は笑いながら。

「それがどうした? お前たちは俺の領民ではない。そして、興味もない。それに、これだけ奪われては生きていけまい? せめてもの情けだ。この場で殺してやる」

 騎士の数名が魔法を用意すると、周囲の建物に火を放った。魔法で燃やされた建物が燃え上がると、村人たちが泣き叫ぶ。そして、兵士たちは問答無用で矢を放った。

 だが、多くが男性に向けられており、刺さらなかったのは女性がほとんどだ。その様子を見て、男爵が首を横に振って笑った。

「お前たちときたら。まったく……時間には間に合うようにしろ。それから、味方で争うなよ」

 そう言って、笑いながら略奪した物資の山のところへと向かった。兵士たちは、拳を突き上げて叫ぶと、女性の手を引いて引っ張っていく――。





 ――レダント要塞。

 そこでは、朝から出発していく領主貴族たちの軍勢をブロアが見送っていた。内心は複雑だ。だが、彼らを止めるだけの理由がない。

 そして、多かれ少なかれ戦場では珍しいことでもなく、バンセイムも例外ではなかった。むしろ、ベイムという今まで戦火に晒されたことのない土地は領主たちにとって絶好の狩り場である。

 下手に止めれば、ブロアを暗殺してでも実行しようとする者もいるだろう。

「まったく、自分の非力さをこういう時に悔しく思う」

 出世して止めさせようと思った事もある。だが、綺麗事ばかりで出世出来るわけでもなく、出世するためにその手を不正や嫌っている略奪で汚せと言われるとブロアはためらってしまうのだった。

 すると、要塞の上から見て変な動きをしている兵士がいるのを見つけた。周囲を警戒しながら、こちら側に向かってきていたのだ。体つき、そして動きから女性のようである。

「……敵か?」

 ブロアがすぐに要塞内部へと入り、そして部下を数名引き連れて先程見かけた黒髪の女性を探していると、要塞内部で発見した。

 ある部屋から出て来て、そしてブロアから離れて行く。

「少し待って貰えないかな? 君はどこの所属だい?」

 優しく声をかけたブロアだが、その手には剣の柄が握られていた。ブロアの周囲にいる騎士や兵士たちも女性を警戒する。

 だが、その場所に面倒な人物が現われた。

「騒がしいですね。何事ですか?」

 ブロアたちの後ろから声がして、振り返るとそこにはブレッドがいた。ブロアは、面倒になったと思いつつも。

「怪しい人物を発見したので声をかけただけです。それに、こちらは領主貴族たちに貸し出している部屋ですからね。色々と聞きたいことがあるんですよ」

 領主貴族たちの裏切りを警戒しているブロアに、ブレッドは笑って見せた。前日の会議とは違い、今回は余裕のある態度だ。

「彼女は怪しくありません。それは私が保障しましょう。さぁ、行きなさい」

 黒髪――そして赤い瞳をした、表情に変化のない女性兵士は、頭を下げると足早にその場を去って行く。

 ブロアは、ブレッドに対して。

「……話をして頂けるんでしょうね?」

 嫌な予感のするブロアだったが、ブレッドの答えは想像通りだった。

「これも作戦の内ですよ。まぁ、私個人の、というところです。将軍にも手を出さないで貰いたいですね」

 そう言ってブレッドは、女性が出て来た部屋に入るのだった。ブロアは、この事を他の将軍に報告する事にした――。





 ――ブロアが立ち去った事を確認すると、ブレッドは準男爵に苦情を言う。

「手紙のやり取りはもっと目立たなくして貰いたいですね」

「申し訳ありません。それと、先程の者に親衛隊長殿に言われた通りの手紙を書いて出しておきました」

 ブレッドは、準男爵を内心で馬鹿にしながら頷く。

(あのブロアに見つかるとは面倒だな。しかし、こいつら危機感がないのか? 従っているとは言え、足を引っ張られては敵わない。ここは私が管理して今後のやり取りを行なうか。まったく、無能な部下は迷惑なものだな)

 ブレッドは、準男爵に提案をした。

「今後は手紙のやり取りには私も立ち会いましょう」

 自分を出し抜けると思ってはいないが、万が一もあるのでブレッドは準男爵にそう言った。すると、準男爵は困った様子でもなく。

「分かりました。今後はそのようにします。そうなると、次は――」

 自分の思い通りに動く準男爵に、気分がいいのかブレッドは嬉しそうだった。そして、打ち合わせが終わると、準男爵がブレッドに言う。

「時に親衛隊長殿」

「なにか?」

「ブロア将軍ですが、我々の事を探ってくるやも知れません。場合によっては、他の将軍たちに報告し、この件の手柄を奪われるかも知れません。……私どもとしましても、親衛隊長殿以外では、身の安全が保障されているか怪しい状況です。何か手を打たれてはいかがです?」

 すると、ブレッドはすぐに。

「……暗殺ですか?」

 準男爵は、慌ててその考えを否定した。

「いけません! こんな時に暗殺騒ぎが起きれば、我々の計画も明るみになってしまいます。ブロア将軍の動きを封じ、親衛隊長殿が手柄を立てた後で事情を話すのがいいでしょう」

 面倒だと思ったブレッドだが、準男爵の意見も頷けた。

(私が手柄を立てた後なら、周囲も私の意見を無視出来ない。ブロアはその後にでも処分すればいい、か)

「分かりました。こちらで動きましょう」

 ブレッドは、ついでに邪魔なブロアを最終的には処分――殺すつもりだった――。





 迷宮でギルドの手伝いをした俺たち。

 だが、外に出て最初に思ったのは――。

「あの、なにもないとかどういう事ですか?」

 五代目とのお別れかと身構えていたが、五代目がまったく声を出さなかった。ミレイアさんも困っており、最後だと思っていたメイもなんだか肩すかしを食らった気分なのか俺を責めるような視線で見てくる。

 宝玉内。

 五代目を囲みつつ、俺は宝玉内の事情を聞いた。

 ミレイアさんが言うには。

『……記憶の部屋に閉じこもって出てこなかったのよ! せっかく、色々と用意をしたというのに!』

 五代目は、ミレイアさんを睨み付けながら。

『メイを出汁にするんじゃない! いいか、逆にそういった雰囲気の中でさよなら、なんて逆にハードルが高いだろうが! それなら普通にさよならの方が数倍マシだ!』

 何かと思えば、ミレイアさんが計画した“お別れ会”に出るのが五代目は嫌だったようだ。確かに、今までの歴代当主たちは、そんな雰囲気で別れてきたことはない。今までは、必要な時に別れてきた。……いや、二代目だけは、俺のせいでろくにお別れを言えなかったが。

 ミレイアさんは、五代目にスキルの継承を許さなかった。だが、五代目の過去を俺が知ったことで、継承可能にしていたのだ。しかし、それを五代目に伝えておらず、五代目は俺にスキルを継承するタイミングを逃していた。

 七代目が言う。

『もう、この場で継承して終わりにしますか? あまり騒ぎ立てるものでもありませんし、五代目も伝えたいことは伝えたわけですからね』

 五代目は不機嫌だった。

『伝えたくないものまで伝えたけどな。ほら行くぞ、ライエル』

 俺を記憶の部屋に案内しようとする五代目の前に、ミレイアさんが立ちはだかった。

『駄目です! 私の責任であるのなら、ここは私が何とかします!』

 五代目が、ミレイアさんを見ながら。

『だ、か、ら! 迷惑なんだよ! いいか、タイミング云々は気にしていない。ライエルにスキルを伝えるという役目が大事だ。確かに恰好はつかないが、それよりも大事なのはライエルにスキルを伝えることなんだよ。ミレイア、だからもう気にするな』

 微妙な雰囲気の中、そうして話が進んでいるのだが……俺も、歴代当主たちに伝えなければいけないことがあった。

「すみません、どうやらバンセイムが動き出したので、俺の方も動くことになりそうです。しばらく忙しいので、ここには来られないと……ほ、本当にごめんなさい!」

 逃げるように去って行く俺を、右手を伸ばした五代目がなんとも言えない表情で見ていた。





 ――ベイム北部にある村。

 そこでは、護衛として雇った冒険者たち。そして、村出身の冒険者たちが、兵士に敗れて地面に倒れていた。地面に吸い込まれた赤い血が、多くの場所に戦った跡を示していた。

 若い兵士が、一人の冒険者を持ち上げた。

「こいつ、凄いいい鎧を着ているな。これ、倒した俺が貰っていいんだろ?」

 兵士たちは、若い兵士と同郷なのか笑っていた。

「構わないが、あんまりうちの大将より目立つのもどうかと思うけどな。目立てば戦場で真っ先に狙われるぜ。それなら、売り払って独立の資金にしろよ」

 そういった周囲の声を聞きながら、若い準男爵は周囲を見ていた。

「まったく、余計な手間をかけさせてくれる。まさか、完全装備した兵士に、そんな散発的な攻撃が効くと思ったのか?」

 若い準男爵が、まだ息のある冒険者を蹴り飛ばした。周囲では、死んでしまった兵士の仇のためか、一人の冒険者を数人がいたぶっていた。

 冒険者は、理解出来ていない様子だった。

「な、なんで……俺たちは、迷宮で地下三十階層を……」

 地下三十階層を突破した冒険者たち。彼らは実に優秀だった。それは、冒険者としてみれば、という前提がつく。

 準男爵は鼻で笑った。

「これ見よがしに魔法使いを用意して、狙ってくださいと言わんばかりだ。君たち程度の実力なら、囲めばいくらでも対処出来る。十名にも届かない数で、こちらに二十名近くの怪我人と戦死者を出したのは認めよう。だが、それだけだ。それにしても、お前の持っている剣は実にいいな。魔具か……これからは私が使ってやろう」

 武装した兵士が百名を超えており、弓矢で集中的に魔法使いを狙われた冒険者たち。その後は、遠距離攻撃を持つ者を、そして飛び出して来た冒険者たちを囲んで倒していた。

 若い準男爵は、冒険者から奪った剣で元の持ち主を突き殺した。

「魔物相手に勝った程度で喜んでいた様子だが……戦場を知らなすぎたな。これだから、勘違いをしている冒険者は困る」

 剣の切れ味を確認する準男爵。すると、準男爵のところに傭兵たちが近づいて来た。

「旦那、俺たちの働きも忘れないでくださいよ」

 ニヤニヤした傭兵たちに、準男爵は笑顔を向けた。

「もちろんだ。村までの道案内には感謝している。約束の物資の融通を互いの立ち会いの下に行なおうじゃないか。さて、それではここが終われば我々はどこに向かうべきかな?」

 周囲では兵士たちが略奪を行ない、そして女性に襲いかかっていた。それを見ていられなかった村の男たちが、武器を手に取り向かってくると兵士たちが村の男たちを槍で串刺しにし、矢で射貫いていた。

 傭兵たちは、そんな準男爵の兵士たちを見て。

「それにしても、俺たち傭兵よりも容赦がないですね」

 準男爵は、笑顔で言うのだ。

「バンセイムではもっと過酷な戦いを経験している。だが、ここまで抵抗が弱いと流石に心が痛むね。もっとも、だからと言って手を抜くつもりもない。さぁ、急ごうか。グズグズしていては、他の領主たちに獲物を奪われてしまう」

 ベイムにも問題があった。金という力を使い、長い間平和が続きすぎていた。周辺国で流れる血を金に換え、それらを吸い上げ繁栄してきたベイム。

 自分たちは安全だと、どこかで思っておりそれがこういう自体でろくな抵抗が出来ない環境を作り出していた。

 バンセイムにとっては、奪い放題という環境だ。領主たちは、目の色を変えて周辺へと広がっていく――。
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