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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

ネタがないよ 十四代目

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欲しかったのは?

 記憶の部屋。

 そこは歴代当主や宝玉が記録している景色を再現した場所だ。

 屋敷、庭、そして戦場と様々なものを再現しては、俺に歴代当主たちの記憶を見せてきた。

 ウォルト家の意外な始まりや、歴代当主たちが何を思って行動したのかも宝玉は記録していた。し続けていた。

 そんな記録の部屋で、俺は屋敷の庭を逃げ回っていた。スキル―― スピード・マップ・サーチ・フィールド・リミットバースト ――様々なスキルを同時に使用しては、降り注ぐ魔法から逃げ回っていた。

 屋敷の庭の芝生を抉るのは、空から降り注ぐ紫電の雨だった。

 庭に置かれた女性の彫刻があるのだが、その女性の肩に座って少年姿の俺――らいえるが、足をブラブラさせながら魔法を行使していた。

「こ、こいつ!」

 地面を転がり、起き上がっては走り出す。魔法が地面に衝突し、爆発を起こすと衝撃でまともに走れなかった。

 逃げ回っているのは、攻撃を仕掛けても全て対処されてしまうからだ。

『ほら。まだ始まったばかりだよ。なのに、もう三回も致命傷を受けて……やっぱり、体を返して貰わないとね』

 ニヤニヤしている子供の頃の俺の顔は、自分が見ても腹が立つ。左手を広げ、炎を出現させると魔法を使用した。

 腕を下かららいえるに投げつけるように振るうと、炎の弾がらいえるへと向かった。

「ファイアーバレット!」

 嫌がらせ程度の俺の魔法は、二代目のスキル―― セレクト ――が、確実にらいえるに直撃させるために微調整を行なっていた。

 それを見たらいえるは溜息を吐きながら、手に持っていたサーベルを振るって炎の弾を斬り裂いた。

『素直に急所を狙いすぎだよ。それを実行するなら、もっと早く当てるべきだね。もしくは――セレクト』

 らいえるが呟くと、俺に向かって空から紫電が降り注ぐ。すぐに魔法が直撃する場所を確認し、そこを避けるルートを走ると――。

「しまった。走らされた!」

『気付くのも遅いよ。まぁ、あそこで耐えてもボロボロだったけどね。現実だと致命的だ』

 逃げた場所に移動をしていたらいえるが、俺にサーベルを突き刺してきた。カタナで弾くと、俺はそのまま蹴りを放つ。

 そんな俺の足の上にらいえるは着地をすると、俺を見てニヤリと笑って蹴り上げた。アゴにヒットした少年の足によって、俺は視界が空を見上げ、そのまま地面に倒れ込む。

「な、なんでスキルを……」

 俺がフラフラしながら立ち上がろうとするが、足が震えて立てなかった。歴代当主たちとは違う戦い方と、全てのスキルの応用まで使用するらいえる。

『僕と君は同じだからね。僕は君で、君は僕なんだ。宝玉だってスキルを使わせてくれるよ。言っておくけど、これでも歴代当主よりスキルの扱いは下手だよ。ただ、上手く使用しているだけ』

 らいえるは立ち上がれない俺を見ながら、目の前に屈むと俺を見て笑った。

『これだけ凄いスキルを持っているのに、使いこなせていないね。スキルの練度じゃない。スキルの練度は、発現させた本人より劣って当然だ。だけど、それぞれをもっと上手いタイミング、そして上手く使わないとね』

 無理をして立ち上がろうとすると、らいえるに足払いをされて転がされた。

『今日はここまでだね。次は……五代目の部屋に行きなよ』

 俺は記憶の中にある見慣れた空を見ながら、こんな子供にも勝てないのかと悔しくなるのだった。





 円卓の間。

 そこに顔を出すと、三代目がミレイアさんを見てニヤニヤしていた。

『自慢の瞳でも僕の幻を見間違うんだね。ミレイアちゃんもおっちょこちょいなんだね』

 プークスクス、などと口元に手を当てて笑っている三代目を、ミレイアさんが不機嫌そうな表情で見ていた。

 手には拳銃が握られ、円卓の間にかすかだが火薬の臭いがした。

 俺は円卓に腰掛けている五代目を見ながら。

「何があったんですか?」

 五代目は興味なさそうにしているが、しっかりと今までの流れを見ていたようだ。俺に丁寧に説明してくれた。

『三代目が、ミレイアを煽った。ま、いきなり自分たちに命令してきたから、それに腹が立ったのか、もしくはからかいたかっただけなのか……三代目に銃を向けたんだが、見事に撃ち抜いたのは幻だった訳だ』

 三代目がミレイアさんを煽ったと聞いて、似た者同士でも喧嘩をするのだと俺は珍しいと思いながら二人を見ていた。椅子に座って残念そうにしている七代目を、俺はスルーする。

 三代目はクスクスと笑いながら。

『ミレイアちゃん、ミレイアちゃん。その魔眼の事を自慢していたけど、もしかしてわざと? わざと外したの? 曾お爺さんだから、って遠慮しないで良いんだよ。ほら、僕はここだ。撃ってごらん』

 両手を広げる三代目に、ミレイアさんは何も持っていなかった左手を向けた。すると、いつ抜いたのか、拳銃が握られておりそのまま発砲――。

『くっ!』

 ――三代目が、俺たちの前から銃弾で撃たれた場所から歪んで笑みを作りながら消えていった。

『アハハハ、こっちだよ。もう、そんなに怒らなくてもいいのに』

 ウォルト家の名前をバンセイム――そして、周辺諸国に広めた義将であり、レムラントの英雄は、どうやらミレイアさんを手玉に取っているようだ。

 ミレイアさんが次々に発砲。そして、次々に銃を投げ捨てつつ、円卓の間を走り回ると三代目の笑い声が円卓の間に響いた。

 流れ弾が、七代目に当たった。

『あうっ!』

 五代目がソレを見て、溜息を吐くと円卓から飛び降りて俺を手招きした。

『ライエル、ここは五月蝿いからちょっと来い』

 俺は五代目に誘われ、五代目の記憶の部屋へと向かうのだった。





 以前。

 五代目の部屋では、メイとの出来事や家族間の問題を見て来た。

 達観したような五代目は、溜息を吐くと指を鳴らして周囲の光景を変えていく。灰色の景色は、ウォルト家の屋敷の中を映し出し、次第に色を持ち始めた。

 そこには、赤ん坊を大事そうに抱えた小柄な女性がいた。

 歳の差のある四代目――マークスが、その光景を微笑んでみていた。

『旦那様、男の子よ! 男の子!』

 やはり男の子を産めたのが嬉しいのか、女性は満面の笑みだった。かつて、四代目の記憶では、仁王立ちで四代目に駄目出しをしている印象が強いだけに意外に見えた。

『あぁ、これでウォルト家も安泰だ』

 嬉しそうなマークスだが、女性――マークスの妻は表情が変った。

『何を言っているの? 今の世の中、何があるか分からないのよ。この子にも弟や妹が必要よ。ねぇ、フレドリクス! 貴方を支えてくれる弟や妹が出来たら、大事にするのよ』

 マークスは苦笑いをしていた。

『最終的に俺の提案通り【フレドリクス】か。嬉しいよ』

 女性は顔を赤くしつつ。

『そ、それは……次の子は私が名前を決めるからね! フレドリクス、弟や妹はどんな名前が良いかしらね?』

 赤ん坊に頬ずりする妻である女性。マークスは笑顔で見守っていた。

『そうだな。父さんも若くして亡くなった。本来なら、俺の弟か妹を用意するはずだったんだけどね』

 三代目は、ウォルト家で唯一の戦死者だ。絶望的な状況を覆したが、代償に失ったのは命だった。

 五代目がその光景を見ながら。

『ミレイアが何を見せろと言っているのか、俺にはよく分からん。見せたくないものは多いが、そう言っているといつまでもここに居座る事になる。メイの成長を見られたのは嬉しいが、いつまでもこのままというのも、な』

 そう言って、五代目はこの光景を説明してくれた。四代目の記憶や、宝玉が保管しているが、それは紛れもなく五代目の誕生の瞬間だった。

 そして、この時点で五代目は一人っ子という状況になるとは思えない。何しろ、マークスも、その妻も次を考えていたからだ。

 夫婦仲は、四代目が怖がっている様子から酷いのかと思ったが、そうでもなかった。

 ――そうなると、原因は四代目が言っていた【事故】である。

 五代目は暖かい家庭の光景を見ながら言う。周囲では、女中が喜んでいる女性を見て微笑んでいた。ドアの外では騎士たちが喜んで拳を握っていた。

 そんな光景を見ながら。

『ライエル。この光景がお前にはどう見える? 異常か? それとも正常か?』
 俺はその言葉を聞いて。

「あの……正常じゃないんですか? 周りも喜んでいますし、四代目もその奥さんも凄く嬉しそうなんですけど」

 五代目は少し疲れたように。

『そうだな。お前の時はそう思えるだけの余裕があったんだな。当時は男爵家だった。三代目の功績で陞爵して本物の貴族になったばかり。ウォルト家は成り上がりで勢いのある家だったよ。だからだろうな。こんな光景は珍しいんだ』

 説明してくれたのは、貴族という生き物の事だった。

『知っているか? 貴族の結婚は家同士の繋がりだ』

「知っています。いえ、知っているつもりです」

 俺の返答を聞いて、五代目は少し悲しそうに笑った。

『知らないのを良いと思うべきか、怒るべきなのか……俺のせいなのかも知れないな。ファインズは暖かい家庭を求めて失敗した。そこに家族愛と貴族の義務を押し込んだからだ。ブロードは上手くやったようで、全ての元凶をウォルト家に抱え込んだ』

 六代目は、好きな女性に求婚した。だが、同時に五代目のように子供を増やそうと妾を抱え込み、正妻を怒らせてしまったようだ。

 俺の知らない六代目の一面を、五代目が教えてくれた。

『あいつ、俺の真似をする必要はなかったんだ。なにをするにしても、メリットもあればデメリットも発生する。俺が家族を増やしたんだから、もう気にしなくても良かったのに……あいつ、正妻を迎えてからすぐに妾を用意したんだぞ。俺なんか凄く悩んだんだ。見合いで知り合った結婚相手がどう思うとか、凄く気にしたのにあいつはそれを当然だと思って実行しやがった』

 頭を抱える五代目を見て、当時はきっと大変だったのだろうと思った。実際、五代目も何か六代目に対して不満を抱えているようだ。

 俺から言わせて貰えれば、五代目の姿を見てきた結果なのではないだろうか? 自分が嫌うものに似てくると、三代目も言っていた。

 場面は変り、オロオロとしている若い六代目――ファインズの姿があった。金髪碧眼のお嬢様というような女性を前に困り果てており、歳を取ったフレドリクスも頭を押さえている。

 五代目が、髪を振り乱し、手当たり次第にものを投げて壊している女性を見た。これだけ見ると、女性が最悪に見えてくる。
だが――。

『この子は宮廷貴族の娘だ。領主貴族であるウォルト家に嫁いでくれたんだが、それは六代目が熱烈な告白をしたからだ。それで屋敷に来て、この子なりに頑張っていたんだよ。慣れない環境で泣きたい時もあったのに我慢して……そしたらさ、こいつが堂々と』

 周囲の映像が動き出した。ファインズは飛んでくる壺を避けながら。

『め、妾の何が悪い! ウォルト家の規模なら、それくらいは――』

 女性は叫んだ。

『私だけを愛するとか言ったじゃない! 信じていたのに! なのに……なのに!』

 投げた飾りものの皿がファインズに直撃したが、同情する事は出来なかった。

 五代目が、溜息を吐いた。

『……後で落ち着けるために、嫁と一緒に話を聞いたんだ。そしたら、貴族の家に生まれた時から覚悟をしていたようだ。好きでもない相手の子供を産む……男には分からないが、辛いと思うぜ。だけど、告白されて結婚するなんて夢のようだと思ったんだと。色々と環境が違うのも、その告白やファインズの愛のために乗り切ろうとしたらしい。ここでの当然が、セントラルでは異常というのは多いからな。その頑張りに、ファインズがした事は他の女を紹介する、だ』

 意外と息子のフォローをしている事に、逆に俺は驚いた。

 そして、五代目は金髪碧眼の泣いている女性を見て言う。

『ライエル。この子が言うように貴族の結婚は家同士の繋がり。愛がなくても子供が出来て、家を継ぐ。それが普通だ。中には子供を産んでからは互いに愛人を持つ夫婦も珍しくない。ウォルト家はその辺の事を成り上がりで、良くも悪くも知らないでいたんだ。ママ……俺のお袋も、少し夢見がちなところがあったのは事実だ。だから、暖かい家庭に憧れを持っていたのかも知れないな』

 ママと自分の母を呼ぶ五代目は、父である四代目をパパとは呼ばない。きっと、母親に強制されてきたのだろう。

「ウォルト家は異常という事ですか?」

 俺がそう言うと、五代目は笑った。

『正常ではないな。それだけはハッキリ言える。初代から続く家訓は、酒盛りでの冗談だぞ?』

 俺も苦笑いをした。

「そう、ですね」

 そして、五代目は悲しそうに笑うのだった。

『……俺もさぁ。嫁は一人で、暖かい家庭が欲しかったよ。なのに、ファインズはそれを捨てやがった。子供が生まれない時だけ、妾を用意しろと言ったのになぁ』

 五代目は、実は六代目が羨ましかったようだ。そして、周囲の景色が灰色になり消えていくと、新しい景色が見えるのだった。
ライエル(;`・ω・´)「五代目! ハーレムを維持するコツを教えてください! 派閥とか出来たらどうしたらいいんですか!」

五代目Σ(゜Д゜;)「不用意に干渉するな! 導火線に火のついた爆弾だと思え! 下手に触ると爆発するからな! いいか、毎日が爆発寸前の爆弾だと思って対処するんだ。常に気を配れ。知らないふりをしつつ、冷静に対処するんだ。だが……」

五代目(;゜д゜)「……それでも爆発するけどね。だから、爆発させないようにするんじゃない。上手く爆発させるんだ。ハーレムは……いつ爆発してもおかしくない爆弾だと思え。そして、必ず爆発する事も覚えておけ。俺も表向き二回くらい……」
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