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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

そろそろ駄目な奴が出て来てもおかしくないぞ十三代目

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第十三章 エピローグ

 ――東支部のギルド。

 そこには、職員の人事異動が発表されていた。

 ベイム南方に出現した迷宮が、管理迷宮に指定されたのだ。理由はよく扱われる素材が手に入る事と、攻略しやすくベイムの管理している迷宮では手に入らない素材が手に入るためだ。

 人事異動の張り紙には、職員の名前が一人だけ記入されていた。そして、希望者を募っていた。

 自分の名前が書かれているのを、マリアーヌは見て少し驚く。

 そんなマリアーヌに、後ろからタニヤが声をかけた。

「久しぶりですね、マリアーヌ。少し宜しいですか? ……警戒しないでください。もう手を出せなくなりましたから」

 振り返り、無意識に身構えてしまったマリアーヌに、自嘲気味に笑っていたタニヤは二階にある使用していない会議室へ誘うのだった。

 二人が会議室に入ると、朝早く新人への説明会の準備もされていなかった。

 マリアーヌは、タニヤを見て言う。

「手を出せなくなったというのは――」

 最後まで言い切る前に、タニヤが腕を組んでテーブルに腰掛けた。

「ライエル君ですよ。昨日のギルドからの通告に回収したスイーパーの面を持ってきました。マリアーヌが襲われたので助けた、なんて言っていましたからね。次も手を出せば、同じように返り討ちでしょうね」

 ライエルがギルド幹部の前で面を取りだしたのは、煽っただけではない。スイーパーを送っても無意味、というのを示したのだ。

 そして、ギルドが出した結論は、ベイム南方に支部を置くために職員の派遣だった。その職員の派遣で名前が挙がったのが、マリアーヌだったのだ。

 ライエルたちと親しく、そしてギルドが内側に抱えるのを嫌がった。だが、処分出来ないので送り込もうというのだ。

 マリアーヌにしてみれば、エアハルトたちを助けるためだった。何組もパーティーを育成してきたが、やはり可愛気があったのかエアハルトたちはマリアーヌのお気に入りだった。

「南方行きは拒否しないわ。それで、私に用があるんでしょ?」

 タニヤは頷くと用件を切り出すのだった。

「他の支部が南方に冒険者を送る余裕がありません。海運関係の北支部は勝手が違いすぎますし、西支部は一流パーティーが一つは全滅、もう一つはベイムから南方へ移籍を決定しましたからね。カルタフスの女王から、南方行きを引き受けろと言われたようです。本当にやってくれますよ」

 南支部。そこは傭兵専門であるため、冒険者を送る事ができない。そして、多くの傭兵団が既にベイムを去ってしまった。

 残るのは被害の少ない東支部だけだ。

「エアハルト君たちは南方へ行って貰います。彼らはライエル君に近すぎる。……向こうでは貴方がギルドをまとめる事になると思います」

 迷宮の規模は大きくはない。これから管理をするにしても、規模は小さいものになるとタニヤはマリアーヌに告げた。

「ギルドから職員をあと二人ほど。残りは現地で雇ってください。ま、事実上の追放処分ですよ。ベイムは南方に興味がありません。魔石や素材の管理は、商人たちも移住するようなので話し合ってください」

 マリアーヌはそれを聞いて、少し疑問に思った。まるでベイムが分裂しているように感じたのだ。

(トレース家を中心とした商人。それにギルドの職員……冒険者。まるでベイムから綺麗に必要な部分を切り取ったような……まさか!)

 小さなベイムが、南方に誕生しようとしているのをマリアーヌは感じていた。

「タニヤ、もしかして」

 マリアーヌは自分の不安をタニヤに確認しようとした。タニヤは、表情を変えずに言うのだった。

「やられましたよ。調べたら商人経由で職人たちも移住者が多いんですから。本当に小さなベイムが完成しましたね。ライエル君……ここまで予想していたとは思いたくありませんけど」

 マリアーヌもライエルが行き当たりばったりで行動しているとは思っていない。

 ベイムから資金を吸い上げ、ベイムで良識派の商人たち、職人――そして、冒険者やギルドのノウハウを奪ったように感じたのだった。

 手の平の上で踊らされたような感覚に、二人はライエルに恐怖するのだった――。





 ――ラウノは、ベイム南方の迷宮討伐の拠点に来ていた。

 迷宮討伐をする際には、拠点を作るのだが小さな街が出来るレベルであるのはベイムでは当然だった。

 だが、整理された区画に、元からそこに街を作る予定だったような手際の良さ。

 隣に小柄のイニスを連れ、ラウノはイニスの歩調に合わせて街を歩いていた。

「寂しいところだな。迷宮討伐の拠点と言えば、もっとゴミゴミして歌い手がいて娼婦が客引きをするのが普通なんだが。雑多な感じがないと面白くないな」

 街を歩けば屋台から食べ物の匂い、そして酒場からは迷宮から引き上げてきた冒険者たちが朝も昼も関係なく酒を飲んで騒ぐ。

 娼婦が客引きを行ない、冒険者たちが鼻の下を伸ばすのが一般的な光景だ。それが、ここには全くない。

 ラウノの手を掴んでいるイニスが言う。

「故郷はどうだったんですか?」

 ラウノは右手で頭をかいた。

「……前の上司はいなかったよ。引退していたみたいだ。女王陛下の治政じゃない、先代の国王陛下の時代だからな。俺を覚えている連中も少なくなっていたよ」

 汚れ仕事をしていたラウノは、カルタフスから追い出されたようなものだった。そして、自分の仕事が嫌になっていた。

 どこにでも入り込めるスキルを持った。だから、騎士として相応しくない仕事を押しつけられ、周囲からは見下された。

 それでも仕事をやり遂げていたのは、国に忠誠を誓うためだ。だが、そんなラウノに先代の国王が言った言葉は――。

『カルタフス騎士の面汚し』

 ――だった。

「あの女王陛下は堅物の先代とは違う様だが……それでも、どうだかな」

 イニスがラウノの手を強く握った。

「ラウノさん、騎士に戻りたいんですよね?」

 ラウノは苦笑いをする。

「そう見えるか? いや、お前が言うならそうなんだろうな。そうかも知れないな。俺は騎士として認められたいのかも知れない。青臭い理想を持っていた時期もあった、なんて思っていたんだが」

 未だに自分の中に青臭い理想があるのだと、ラウノはイニスに言われて気付いたのだった。

「それでイニス――情報は集めたか?」

 ラウノの真剣な声に、イニスは頷いた。

「それで結果は?」

 イニスはラウノにだけ聞こえるように小声で言うのだった。

「ライエルさんはベイムを利用するつもりです。最終的にライエルさんは追放され、世間的には負けた扱いになっています。ですが、四ヶ国連合にカルタフス……全てに食い込んでいます。ベイムから都合良く逃げ出した形だと思います」

「何から逃げる? バンセイムのセレスか?」

 イニスは首を横に振った。

「色々です。英雄としてベイムに残れば、ライエルさんは身動きが取れませんでした。これからは身軽な方がいいのでしょう。ライエルさんは、ベイムに全面的な支援を受けるのを嫌がっているようでした。そして、ベイムを二つに割ったのは――」

 そこで、ラウノとイニスに声がかかった。

 買い物をしていたノウェムだ。

「イニスさん、それにラウノさんも。こちらに来られていたのですね」

 後ろから声をかけられ、ラウノは飄々とした態度で答えるのだった。

「あぁ、そうだよ。お得意様がいるこっちの方が稼げるからな。また利用してくれるんだろ? 事務所を構えたいんだが、どこかに空いている物件とかないかな?」

 南方に来たのは、ライエルを追いかけたからだ。それは、客だからではない。イニスがベイムは滅ぶと予想したためだった。

 ノウェムは左手を口元に持っていくと、クスクスと笑い出した。

「それは助かります。すぐに用意させますね。何か希望があれば人を出しますので、その時に言ってください。それでは」

 ノウェムが二人から離れようとすると、イニスはラウノの手を強く握った。ラウノがイニスを見ると、少しだけ怯えていた。

「どうした?」

「……多分ですが、ノウェムさんは私たちを見張っていました」

 イニスはノウェムを警戒している様子だった。

「そこまでか? そんな雰囲気は――」

 イニスは言う。

「あの人は、ライエルさんのためならなんでもします。そういう人です。それに、怖いんです。あの人を見ていると、まるで懐かしいような……すいません、忘れてください」

 ラウノは頭をかくと、イニスを連れて宿屋へと向かうのだった――。





 ――ロランドは、開発の進む港にトレース家の船で入った。

 そこで指揮を執っているガレリアの次期公王であるレオルドに会うためだ。

 港に用意された一番立派な建物にあるレオルドの部屋に通されると、ロランドは一方的に通達された書類を取り出す。

 レオルドは外ではないので、シャツにズボンというラフな恰好をして書類仕事をしていた。

 ロランドが部屋に来ると、休憩に入るためにお茶を用意させる。

 使用人がお茶を持ってくると、仕事を切り上げてロランドの相手をする事になった。だが、その態度は失礼だ。

 ロランドは見くびられていると思いながらも、丁寧に話し始めた。

「ベイムに届いた書状の件で伺いました。公王代理からは、貴方に決定権があると言って話が出来なかったので、直接乗り込む形になりました。お聞かせください、一方的にトレース家との取引の破棄を決定したのは何故です? こちらがどれだけの支援をしてきたかを忘れたわけではありませんよね?」

 レオルドは、ロランドを見ながらカップに口をつけて少しだけお茶を飲んだ。そして、カップから口を離すと両手でカップを持つ。

「……契約内容は守っていますよ。我々が契約したのはベイム南方ですか? そこのフィデル殿が代表を勤める商家のトレース家であって、乗っ取られたトレース家ではありません。つまり、我々は貴方たちを認めていないという事です」

 少し疲れの見えるレオルドは、書類仕事が続いているのかシャツの袖にインク汚れがあった。手も少し汚れていた。

 目の下には隈もある。

「ベイムで正式にトレース家を受け継ぐ事が決まりました。これでは契約を破ったと言われても言い返せませんよ」

 レオルドは淡々と言い返す。

「ベイムが認めたか認めなかったのか……そんな事はどうでもいいのです。四ヶ国連合は正式にベイムに抗議する予定ですからね。義兄――いえ、ライエル殿をほとんどいいがかりで追放処分にしたベイムは信用出来ない。何より、親族を追放して家を乗っ取った貴方も信用出来ない」

 ロランドがソファーから立ち上がると、驚いた表情で言うのだった。

「ベイムを敵に回せるとでも思っているんですか? 確かに四ヶ国連合になり、色々と協力関係が出来ているとは聞きますが、それでもベイムから毎年――」

「――えぇ、毎年のように品物を購入していました。まぁ、主に武具関係だった訳ですが、他には魔石などですね。ただ、こちらはもう状況が違います。戦争の数も激減。必要なのは武具ではなく生活を豊かにするものですよ。一定量の武具は必要ですが、こちらでも生産出来ますからね。知っていますか? そちらがいくつかの商家を追い出した事で、行き場を失った職人が四ヶ国連合にも流れてきたんです。ライエル殿からは手厚く迎えて欲しいと言われており、我々も恩人であるライエル殿の要望に応えた形です」

 ロランドが俯く。

 自分のせいでトレース家の信用を落としてしまった事を、悔いていたいのだ。だが、ロランドがジーナの計画を知った時には引き返せなかった。

 そして、ベイムの商人会議から睨まれて生きていけるとは、ベイム育ちのロランドには想像出来なかったのである。

「……港の使用権は我々には与えられないと?」

 レオルドは言う。

「与えたつもりもありません。四ヶ国連合はベイム南方を支持します。今後の取引はそちらが中心になります」

 ロランドは、その言葉に対して。

「ベイムの力を侮られているようですね。南方にある小さな港町が機能するまで何年あると思われているのですか? その間に取引をしないでやっていけると?」

 レオルドは言う。

「侮っているのは貴方たちの方だ。確かにベイムは大陸でも有数の大都市でしょう。あの都市で手に入らないものはないと思いますよ。ですが、そうやって周囲を見下してきた事で、不満も集まっていると知るべきだ」

 ロランドはレオルドの視線を見て、少しだけ怯む。ベイム内で働く事がほとんどで、他国に出て仕事をする機会など少なかった。

 そして、外に出てはじめて向けられる視線に、息をのむ。

 レオルドはすぐに表情を戻すと、ロランドに言うのだった。

「お帰りください。ベイムの決定にまでこちらが従う必要はありませんし、そのつもりもありません」

 ロランドは部屋から出ると、次の商人会議でなんと説明すれば良いのか悩むのだった。港の利権をベイムに渡す事を条件に、ロランドはトレース家の当主として認められているのだ。

 それがなくなれば、何を言われるか分かったものではない。

 ロランドは、早く戻ってジーナと対策を立てる事にするのだった――。





 ――ベイムへの最前線基地となってしまった領地で、ブロアは溜息を吐いていた。

 バンセイムから送られてきたのは、どう考えても不気味な箱である。商人の体の一部が入っているのは確実で、それをベイムに届けて宣戦布告するという書状まで入っていた。

 執務室で書状を確認すると、ベイム侵攻のために準備をするようにと書かれていた。

 副官の騎士がブロアを見て言う。

「将軍、気乗りはしないのは分かりますが、王宮の命令には従わないと」

 真面目な騎士を前に、ブロアは椅子に深く座って片手で書類を持ちながら。

「無理だよ。無理。ベイム侵攻……負ける気はないけど、どれだけの兵力と物資が必要だと思う? 厄介な要塞まで出来ている上に、最後は大都市のベイムを攻めるんだよ? 十万から二十万の大軍勢が必要だ。それを俺たちだけで準備? 有り得ないよ。もう、泣きつくしかないね」

 ブロアはベイムの商人たちが生きて戻れなかったのを、良いのか悪いのか判断が出来なかった。

(まぁ、心を奪われて戻るよりも、この商人には良い結果だったかも知れないな。そのままベイムに潜んで味方や家族を裏切るよりも、さ)

 自信満々にセレスに会いに行った商人が、変わり果てた姿で戻ってきた。ふくよかな体は、今は片手で持てるような箱に入るだけになっている。

 騎士が心配そうにしていた。

「命令を無視すれば処分されかねません」

 ブロアは溜息を吐いた。

「分かっているよ。でも、実際問題として周辺の統治に人を割いているから、人手が足りないんだよね。現状を説明して助けを求めるしかないね」

 騎士がブロアを見ながら。

「将軍なら落とせるんじゃないですか? 前にベイムはあんまり恐れる必要がない、って言っていましたし」

 その騎士の言葉を聞いて、ブロアは訂正するのだった。

「君、もう少し詳細に覚えておいてくれ。それではベイムなんかたいした事がない、って言っているみたいじゃないか」

「違うんですか?」

「違うよ。戦争をするなら、って前提がつくね。それに、ベイムは領土を広げようなんて思わないから向こうからは攻めてこない。まぁ、煽って戦争を起こさせるくらいはしてくるかな? あとは商業関係で潜り込むとか、色仕掛けとか搦め手が得意なんだよ。平時の方が強敵だよ。でも、戦えば確実に勝てるんだよね」

 ブロアはそう言ってある資料を騎士に見せるのだった。

 それは、ブロアが足りない人手を補うために雇った傭兵団だ。騎士はソレを見ても理解出来ない様子だった。

「これがなにか?」

「……元はベイムギルド南支部に在籍していた冒険者の傭兵団。ベイム防衛の際には、重要な部分の防衛を担当していたらしいよ。規模も大きいし、質も悪くない。でもね、彼らは傭兵なんだ」

 雇えばどちらにでもつく。そして、ベイムを知り尽くしていると言っても良かった。どれだけの財がベイムにあるかも知っており、彼らにとっては戦いやすい場所なのだ。

「商人と冒険者の都……滅んじゃうね」

 ブロアはそう言うと、中央である王宮に宛てた手紙を用意する。現状の説明と、応援を求める内容の手紙だった――。





 宝玉内。

 俺の記憶の部屋から出て来たらいえるが、歴代当主たちと話をしていた。

『僕、ガーター以外だとストッキングも良いと思うんですよ』

 それを聞いた三代目が、真剣な表情で俺とらいえるを見比べながら。

『なる程……ライエルは足フェチだったのかな? 僕はお尻の方が好きだけどね』

 俺はそんな三代目に。

「自分の性癖を語らないでください。恥ずかしくないんですか?」

 三代目は笑いながら。

『もう死んでいるのに? というか、こういうのは大事だよ。だって、自分を知るのは大事だからね。いいじゃない、足フェチ』

「足フェチ、って決めつけるなよ!」

 俺が叫ぶと、七代目がフォローをしてくれた。

『そうです! 今までのライエルの視線から考えるに、もう巨乳好きだと結論が出ています。何度も巨乳をチラ見するから間違いありません。そんなライエルに足フェチと言えばライエルだって怒りますよ、三代目』

 今になって、宝玉で俺の視点を観察していたのかと気が付いて恥ずかしくなり、俺はその場に座り込む。

 らいえるは俺に構う事なく。

『僕はあのヴェラちゃんのないようでちょっとだけある胸も好きですけどね。スカートとソックスの間から見える太ももを顔でスリスリしたいです!』

「お前は本当に嫌な奴だな」

 そう言うと、五代目が俺を見ながら。

『ライエル、今のお前は鏡に向かって文句を言っているようにしか見えないぞ。受け入れろ。それも大事だ』

 こんなエロガキが自分だと認めたくない。そう思って首を横に振ると、ミレイアさんが俺の肩に優しく手を置いた。

 親指を突き立てて。

『大丈夫よ、ライエル。ミランダにはガーター以外にも買わせておいたから。私に似て良い体をしているのよ、あの子』

 俺が否定する前に、七代目が口を開いた。

『ハハハ、胸の大きさは似ていませんけどね。叔母上は微妙な大きさで――痛っ!』

 ヒラヒラした袖から、一発だけ撃てる銃を素早く取り出すと、ミレイアさんが七代目を撃ち抜いた。

 宝玉内だから、痛い、程度で済んでいる。現実なら非常にとんでもない光景だろう。

『ブロード君、女性にそんな事を言っていいと教えたかしら? まったく、昔と変らないんだから』

 七代目の昔にも興味はあるが、俺は話題を逸らすためにベイムの話をする。

「それより、これで予定通りベイムを二つにしました。一つが潰されても予備は出来るわけですが……本当にこのまま俺は旅に出るんですか?」

 このままバンセイムが動きを見せる前に、俺は四ヶ国連合、そしてカルタフスを経由してバンセイムに入り、そこからファンバイユを目指す事が決まっていた。

 三代目が、肩をすくめながら円卓に座る。

『仕方ないじゃない。どうしてもファンバイユや周辺国の力が必要なんだよ。四ヶ国連合、それにカルタフスの書状を持って行けば説得力も増すから大丈夫。ま、問題はファンバイユが大のウォルト家嫌い、っていうとことかな』

 七代目が復活しており、咳払いをして三代目の視線を無視していた。ファンバイユ王国――バンセイムと何度も戦い、そして二度もウォルト家によって大敗して領土を失った国だ。

 今では全盛期の三分の二、程度の領土しか持っていない。三分の一を削ったのは、ウォルト家だ。

 しかも、七代目が大きく関わっていた。攻め込んで来たファンバイユの軍勢が、勝利で喜んでいる時にボコボコにして追い返したのだ。ついでに領土も奪っている。

 ファンバイユ王国でウォルト家と言えば、敵以外の何ものでもないのである。

 そんな中で、五代目が椅子から立ち上がった。

 円卓の上に浮んでいる銀色の武器たちを見ていた。

 初代の大剣。

 二代目の弓。

 四代目の短剣。

 六代目のハルバード。

 四つの銀色の輝く武器が浮んでおり、五代目が軽く深呼吸をしてから言う。

『……ライエル、旅の前にお前に俺の最後のスキルを教える。マップ、ディメンション。そして最後は【リアルマップ】だ。三次元的に周囲の地形を確認出来るが、しかも細かな動きまで読み取れる。視点を見たい場所に移動させる事も出来るスキルだ。ま、旅をするにしても便利だから丁度いい』

 五代目が覚悟を決めた表情でそう言うと、俺は五代目もついに俺にスキルを託すのかと思って少し悲しくなった。

 動物好き、そして子供が沢山いて子供に対して冷たく、ウォルト家に大きな問題を残した人でもある。

 伝え聞いたイメージとはかけ離れており、どこかやる気がなく見える人だった。ウォルト家の中でも小柄な方だが、大男である六代目が最後まで勝てなかった人でもある。

「……分かりました。五代目の記憶の部屋に移動します」

 そう言って俺が立ち上がった。三代目も俯きつつ、七代目も真顔で俺や五代目を見ていた。なのに――。

『……何を勝手に話を進めているんですか? 言っておきますけど、案内役である私は父上よりも宝玉内で決定権が上ですからね? そんな勝手に消えるなんて許しませんよ』

 俺がミレイアさんに振り返ると、らいえるも両手を頭の後ろで組んでいた。

『だよね。ちゃんとライエルに伝えておくべきだと思いますよ』

 五代目がミレイアさんたちを指差しながら。

『お前ら! 何を言ってんだ! もう、俺がライエルに伝えられる事なんか――』

 すると、ミレイアさんが真剣な表情で姿勢を正し、五代目に向き直った。

『ありますよ。あるじゃないですか、父上。父上が耐えてきたものを、ライエルは知るべきです。皇帝を目指すライエルが、知っておかなければいけない事実……そして、ライエルが五代目である父上を知るために、私はスキルの継承を認めません』

 五代目のスキル継承は、ミレイアさんによって阻止されてしまうのだった――。
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