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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

そろそろ駄目な奴が出て来てもおかしくないぞ十三代目

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追い詰められたのは誰だ?

 ――森の中を逃げ回るリーダーは、数名の頼りになる仲間と共に出口に辿り着いていた。

 森の切れ目――そこを突破すると、見えたのは燃え上がって動く者の気配がない陣だった。

 一人が周囲をスキルで確認すると。

「――リーダー、生存者は三名です」

 少なくとも五百名以上はいた場所に、生き残りが三名だけだった。逃げ出したのならいいが、状況を見るにどれだけ逃げられたか分からない。

 黒く焦げた死体が転がり、全員が口元を布で押さえて臭いのきついその場所を歩いた。

 周囲に敵の気配はないのを確認するのは、そういったスキルを持つ冒険者がいるからだ。頼りになる仲間で、リーダーとも長い付き合いだった。

 生き残りを見つけると、燃え残った木箱にもたれかかる若い男がいた。傭兵団で雑用をしていた男だった。

「おい、しっかりしろ」

 冒険者の一人が水を飲ませてやると、雑用係の男が目を覚ます。

「何があった?」

 リーダーが問い詰めると、雑用係の男は頭を抱えるようにして、泣きながら言うのだ。

「あいつら……あいつらが起き上がって。燃やして……装備を回収していたんだ。冗談で女物の鎧を着ていた奴は……ッ!」

 相当酷い光景を見たのか、雑用係の男は呼吸が乱れていた。そして、リーダーに大事な事を告げたのだ。

「あいつら、全員に聞いたんだ。東支部の人間か? ……それで、ギルドカードを見せたら、東支部の冒険者だけ見逃されて……」

 リーダーがそれを聞いて、あいつらとはヴァルキリーズだと予想を立てた。倒したと思っていたら、倒されていただけだった。なんとも嫌な手を使うと思い、そして東支部の冒険者だけ見逃されたのを不審に思った。

 仲間も同意見なのだろう。リーダーに言う。

「リーダー、こいつは厄介ですぜ。どうやらギルド内部の派閥争いだったのかも知れません。おかしいと思ったんだ。レダント砦の英雄様の仲間を見せしめにしろ、ってのは」

 今更言うなと思ったリーダーだが、生き残った数少ない仲間を見る。生き残っただけあって、実力のある面子だ。

 だが、失った仲間たちの事を思えば、やりきれなかった。

(ここから建て直して何年かかる。ようやく地下六十階層を突破して、一流と認められたのに……三年? 無理だ。最低でも五年かかる。下手をすれば十年……パーティーが復活しても、俺が先に引退だ)

 年齢的に全盛期は少し過ぎてしまった。今から数年は問題なく戦えても、これからはそうはいかない。一流パーティーとして立ち直るのは絶望的だった。

「……すぐにベイムに戻るぞ。人形共は?」

 リーダーが立ち上がると、目の前の雑用係の男はすがるような目をしていた。しかし、リーダーは無視する。助けている場合ではない。

 頼りになる冒険者は、周囲を見てから首を横に振った。

「近くにはいないみたいです。いけます」

 数名でそのまま駆け出すと、リーダーはベイムへと向かうのだった――。





 ――森の中。

 ダークエルフたちによって捕縛された傭兵団の団長は、足に矢を受けていた。

 ノウェムの下に引っ張り出された時には、すでに数えるほどしか生き残りはいなかった。

 ミランダのスキルで作り出した糸により、拘束された傭兵たち。

 ノウェムは少し離れた木の後ろに視線を向けると、ダークエルフたちは理解したのか動かないで傭兵たちを囲んだ。

 団長が蹴り飛ばされノウェムの前に倒れ込んだ。ノウェムを見上げる形で、ニヤニヤと笑いながら。

「ちっとは可愛げを見せろよ、お嬢さん。スカートの中くらい、最後に見せたらどうだい? まぁ、冒険者をやっている女にあんまり期待はしないけどよ。お前、娼婦になれば人気者だったかも知れないぜ」

 下卑た笑いと挑発を聞いて、相手が死を覚悟しているのを理解した。死というものに感覚が鈍っているとも言える。

 そんな団長に、ノウェムは鞄から書類の束を取り出し見えるように地面においてやった。

 最初は何かの書類かと思い、生き残る希望が出て来たと思った団長。しかし、中身を見ると眉間に皺が寄った。

「誰だ。誰が裏切りやがった!」

 団長はノウェムを睨み付け、そして叫んだ。そこに書かれていたのは、傭兵団の詳細な情報――ギルドで管理しているものだった。

 書式、その他のギルドが管理する情報が書き込まれており、とても情報屋が集めて作ったものには見えなかった。

 団長はすぐに裏切り者がいると思ったが、ノウェムは無表情で。

「最初から誰も裏切っていませんよ。こうなるのは必然だっただけです」

 ノウェムは嘘を言っていない。ギルドは襲撃者として選んだ冒険者たちを裏切っていないし、元から情報を得ていたライエルたちは勝てるように準備をしていただけだ。

 団長が悔しがる。

「……頼む! ベイムに戻してくれ。許せるか! この俺をはめやがった奴を絶対に許せるもんか! 金ならベイムに隠してある! だから、俺たちと手を組め! ギルドの連中に俺たちの恐ろしさを――」

 団長はギルドの派閥争いに巻き込まれた、そう感じたようだ。

 直後、団長は三体のヴァルキリー……一号、二号、三号によって、槍で串刺しにされた。

 ノウェムはその光景を見ながら。

「必要ありません。ここで貴方たちは消えて貰います。一人も生かして帰しませんよ。それと、勘違いをしていますね」

 ノウェムは団長のために屈んで、そして微笑む。

「ベイムの決定は満場一致ですよ。それだけです」

 団長はその言葉を聞いて、絶望に顔を歪めそして息を引き取った。周囲では、その光景を見ていた傭兵たちが一斉に命乞いを始めるが――。

「散々暴れてきたんです。負ければどうなるか理解していましたよね? それに、私は命乞いよりも最後まで抗う人が好みです。残念でしたね」

 ヴァルキリーズが武器を手に持ち、生き残っていた冒険者たちを始末した。

 すると、少し離れた木の上から不自然な音が聞こえてきた。だが、誰もそちらを向こうとはしない。

 ノウェムは死体を片付けるように言うと、その場から撤退するのだった。

 最後に、木の上に隠れていた冒険者の方に視線を向けてから――。





 カルタフスで協力すると言ってきた冒険者パーティー。

 加えてガレリアの兵が五百。そして、カルタフスの兵が五百。それだけの人手を利用して、ベイム方面へと向かう道などで待機していた。

 いくつかの部隊に分けて待ち構えていたのである。

 すると、逃げ出してきた冒険者の一団が俺たちの方へときた。

「助けてくれ! 追われているんだ!」

 フードをかぶっている俺は、それを聞いてフードを脱いだ。

「追っているのは俺の仲間じゃないかな? だって、君たち……襲撃を仕掛けたんだよね?」

 笑顔で言うと、冒険者たちの表情が固まった。

 だが、その中の一人が、東支部の冒険者だった。何度かギルドで顔を見ており、俺は頷くと。

「あ、そっちの人は通っていいですよ。お疲れ様でした」

 そう言うと、冒険者たちの視線が一人に集まるのだった。

「え、あ? ……あれ?」

 困惑しているようだったので、俺は笑顔で指示を出す。

「水と食べ物を分けてあげてください。ベイムまで距離もあるから、短剣くらいなら持たせて上げた方がいいかな? あ、休んでいきます?」

 東支部の冒険者が気まずそうに頷くと、そのまま奥へと連れて行かれた。そして、俺は他の冒険者たちに。

「さぁ、君たちはここで終わりだ。お疲れ様でした」

 すると、一人が抗議する。

「ふざけるな! なんであいつが生き残れて、俺たちだけが……お前ら、まさか最初から!」

 俺はどこか違う支部の冒険者を見ながら言うのだ。

「だったら? 人の仲間を襲撃しておいて、負けたら生かして帰して貰えると思っていた訳じゃないよね? そういうの、おかしいと思うよ」

 すると、冒険者は武器を手にとって俺の方へと向かってきた。

 カタナの柄に手をやると、先に動いたのはルドミラさんだった。長剣を抜くと、赤い刃は鞭のようにしなって伸びた。

 意思があるように動き、そして冒険者たちを一瞬で斬り刻む。倒れる冒険者たち。そして、ルドミラさんは少し離れた位置から歩いてくるのだった。

 既に剣は元の形に戻っていた。

「まったく酷いことをする。いや、よく考えついたものだよ」

 少し呆れていると思ったが、ルドミラさんは楽しそうにしていた。というか、この人は実戦経験が豊富なのだろう。人を斬ってもまったく動揺しない。

「……勝つためです」

 そう言うと、ルドミラさんは笑っていた。

「気にしているのか? それでもこういった作戦を決行できるなら、評価してやる。お前はやる時にはやる男だな」

 自分が優しいとは思わない。ただ、やはり気にしている自分がいるのも事実だった。心が弱いのだろうか?

 そう思っていると、宝玉内からミレイアさんの声がした。

『ライエル、やるべき事をやってから後悔しなさい。後悔するのは後でも出来るわよ』

 そして、嬉しそうな七代目が言う。

『いいな。強く、そして綺麗事だけを言わない女王……血統も最高だ。ライエル、正妻はルドミラにしなさい』

 すると、三代目が抗議するのだった。

『待ってくれ! クラーラちゃんとは言わない。だけど、ノウェムちゃんはライエルがどうしようもない時に嫁入り道具を売り払ってお金を作ってくれたんだよ! そんなノウェムちゃんを正妻にしないなんて、僕は絶対に認めない!』

 ヒートアップしてきた宝玉内。三代目と七代目が激しく口論をする中で、五代目だけはマイペースだった。

『……海のさぁ。あの神獣の鯨とかもっと小さかったら良かったのにな。そしたらもっと楽しかったはずなんだよ。正妻とかどうでもいいけど、小さい鯨ならありだと思うんだ』

 俺は宝玉内の会話を無視しつつ、近付く集団をスキル―― サーチ ――で発見した。すぐにスキルをスペック、リアルスペックと段階的に上げていき、相手の情報を獲得する。

 相手は迷宮討伐を行なう、冒険者の主力メンバーだった。





 ――トレース家の屋敷。

 そこではジーナの考えに賛同した者たちが、フィデルたちを囲んでいた。

 ヴェラもフィデルと一緒に囲まれ、そしてフィデルを慕っている者たちも同様に囲まれていたのだった。

 トレース家の武力とも言うべき存在も、ジーナの方に荷担していた。

 ジーナの隣には、特別にあつらえたスーツを着用したロランドが汗を流し、シャツの襟元を少し緩めていた。

 緊張している様子だった。

 ヴェラは、ジーナを睨みながら言う。

「ジーナ、貴方はなにをやっているか分かっているのよね?」

 妹であるジーナは、姉であるヴェラを見ながら少しだけ悔しそうな表情をしていた。最近になって、なんとかヴェラとフィデルを説得するような言動を行なっていた。

 しかし、実力行使に出るにしても、大半の者たちが荷担すると思わなかったのだ。フィデルも部下たちの顔ぶれを見て平静を装っているが、内心では憤慨していることだろう。

 ロランドにしてもそうだった。

 フィデルは言う。

「お前には期待していたが、まさかトレース家の当主の座を狙うとは。お前では支えきれないよ。ジーナ、今からでも遅くはない。考え直しなさい」

 ジーナは、首を横に振るのだった。

「理解していないのはお父様たちです。最近のベイムでは、トレース家が新しく得た利権を面白くないと思っている商家も多い。それを理解していながら独占などするから、トレース家を潰そうとする者たちが出てくるのです!」

 ベイム内部で、急速に力を増していたトレース家を警戒する動きがあった。だが、ヴェラにしてもフィデルにしても、それを知らなかったわけではない。

「だから利権を譲れというの? 馬鹿言わないで! ライエルに投資したのはトレース家を始めとする一部の商人よ。それを後から出て来て分け前を寄越せという連中に屈すれば、次々に奪われていくのは目に見えているわよ!」

 実際に船に乗って仕事を見て来たヴェラ。

 だが、ジーナの意見は違うのだった。

「トレース家が大きくなり、ベイムの実質的な支配者にでもなりますか? それだけの大きな家を支えるため、誰が犠牲になると? 姉さんはいいわよ! あの男に貢いで商売を成功させたもの! お父様だって、彼がそのまま大きくなれば、結婚だって認めるわよね? でも、そうなると私はどうなる! トレース家のために好きでもない相手に嫁ぐ事になるわ。周りが絶対に押し込んでくる!」

 フィデルもそれは否定しなかった。何故なら、ライエルはともかく、ロランドでは現状でも釣り合いが取れていないのに、トレース家が大きくなればジーナの結婚は他の商家が絶対に黙っていない。

 ライエルを押しのけて結婚という訳にはいかないが、ジーナならどうか? そう思う連中が多く、フィデルも商人だ。ロランドは絶対に選ばない。

「……ジーナ、私はロランドを認めていないのではない。優秀で真面目だ。だが、商家を率いるには真面目すぎる。トレース家を支えていけるだけの器ではない。綺麗事だけではないのは分かっているだろう?」

 フィデルもロランドには目をかけていた。真面目で仕事熱心だった。だから、近くで育て、ヴェラやジーナと接する機会があったのだ。

 だが、当主には向かない人材でもあった。

 ジーナもそれは理解していたようだ。だから、ジーナは。

「それなら支えていける規模にするだけよ。いくつかの事業は手を引くわ。前から武器関係は必要ないと思っていたの。それに、もう他の商家と話し合いも済んでいるわ」

 ヴェラはそれを聞いて。

「あんた、それがどういう意味か分かっているの! 家だけの問題じゃないのよ。付き合いのある職人や客だって!」

 フィデルはそんな中。

「なんと言った。今、話し合いが済んでいると――。ロランド、貴様!」

 ロランドはフィデルに頭を下げるのだった。

「申し訳ありません! ですが、ベイムはライエルさんを潰すつもりです。当家への見せしめに、です。これ以上は、本当にベイム内で激しい派閥争いが起きます。血が流れるのは見ていられません」

 それを聞いて、フィデルは部下たちを見た。

「故意に私に情報をあげなかったのか。道理で情報が少ないと思った。再度調べさせたお前たちまで……雇い主が没落するのを見ているつもりか!」

 トレース家の暗部とも言える人材たちは、ジーナに協力している。ヴェラもフィデルもそれが不思議だった。雇い主の規模が小さくなれば、扱いだって変ってくるのだ。

「ロランド、あんた分かっていないわ。ベイムだけで血が流れなければいいの? このまま行けば、ベイムはまた周辺で火種を作って戦争を起こさせるわよ。最悪、バンセイムを煽るわよ! あんた、ベイムだけが平和で良いと思ったの!」

 ヴェラがロランドの視野の狭さに失望すると、フィデルはジーナに言う。

「ジーナ、止めなさい。今ならまだ間に合う。お前が思っているよりも、ベイムは危険だ。戦争に頼りすぎたんだ。ここで少しベイムを整理する時が来たのだと何故分からない!」

 すると、黒い衣装を着た男が口を開く。

「それでは困るんですよ、フィデル様」

「お前……」

 元は冒険者であるその男は、フードをかぶっており顔は見えなかった。

「こっちにも付き合いがありましてね。戦争でしか生きていけない連中もいるんですよ。武器をあれだけ売っておいて、今更善人面もないじゃないですか。適度な戦争は必要でしょうに」

 適度な戦争。それを聞いて、フィデルは言う。

「お前ら、本当に状況が見えていないようだな。それとも怖じ気づいたか!」

 ジーナがフィデルを見て悲しそうに言うのだ。

「見えていないのはお父様と姉さんです。トレース家が派閥争いで血を流さないため、ベイムで血を流させないためなら、私はトレース家の規模を小さくしても良いと思っています」

 ある意味において、ジーナの意見は正しかった。ベイムに住む住人たちのことを考えれば、商家やギルドの派閥争いで巻き添えを食うのは彼らだ。

 しかし、ベイムの外は違う。

 ヴェラがジーナに呆れた視線を向けるのだった。

「あんた……世界がベイムだけだと思っているの? それに、理由をつけているだけで、ロランドのために規模を小さくしただけじゃない」

 ジーナはなにも言わなかった。ヴェラの意見が正解なのだろう。しかし、ベイムを思っているのも事実だった。

 フィデルがジーナを説得するために言うのだ。

「ジーナ、もう状況が違う! 周辺国はまとまり、大国が隣接した。今までのようなやり方は通じないんだ。金や物資を出し、後は傭兵任せとはいかないんだぞ! 周りがベイムをどう見ているか考えたことはあるのか!」

 しかし、ジーナの意志は堅いようだった。

「……お父様から当主の地位を剥奪します。商人会議での話し合いは進めていますので、すぐにロランドが当主です。私との結婚も形式的なものは明日にでも執り行います。お父様、お姉様……ベイムから退去して貰います。完成間近の船とお姉様の船は持って行って構いません。私たちでは管理しきれませんので」

 フィデルは膝から崩れ落ちた。

 周りには気を付けていたつもりだったが、まさか娘が裏切るとは思っていなかったのだろう。

 そして、ヴェラは呟いた。

「……ライエル、あんたの予想は当たるわね」

 ジーナが敵に回り、本気でベイムが自分たちを潰しにきた。それを前もって知らされていたヴェラだが、まさかジーナがここまでするとは思ってもいなかった。

「甘く見ていたわ」

 ヴェラは崩れ落ちたフィデルを解放しつつ、部下たちに言うのだ。

「……見ての通りよ。私たちについてくる者だけ残りなさい。ベイムから追い出される事になるだろうけど、それでもいいと言うならついてきなさい。ほら、お父さん!」

 フィデルの背中を叩き、ヴェラは活を入れた。

「ヴェラ、分かっているのか? もう、ベイム全体が敵に回った。トレース家を追い出されては対抗するなど……」

 ヴェラは狼狽える部下たち、そして落ち込む父を前にしてホルスターから銃を抜いて天井に向けて発砲した。

 全員がヴェラを見る。

「最新鋭の船二隻。それに船員は私についてくるわ。これだけあればどこででもやっていける。港さえあれば、またトレース家は立ち上がれる。泣き言なんか言っている暇はないのよ。ほら、さっさと立ち上がって! すぐに稼ぎに行くわよ。ベイムだけが世界じゃないわ!」

 フィデルが、ヴェラを見て頷いた。

「そう、だな。そうだ! 船二隻、そして船乗り……これだけ残して貰って、落ち込んでいる暇はなかった。いくらでも取り返せる。ジーナの口ぶりでは、ベイムは大掃除に取りかかった。我々だけを追い出して終わりでは済まんだろう。ここはそういった者たちを集め、移住する。職人にも声をかけよう。すぐに資金の確保に入れ! このフィデルを敵に回した事を、ベイムの商人共に後悔させてやる!」

 フィデルが立ち上がると、フィデルを慕う部下たちが頷いて指示通りに動き出すのだった。そして、ヴェラが言う。

「それと、移住先には心当たりがあるわ。ライエルを頼りましょうか」

 フィデルは、ライエルの名前を聞くと露骨に嫌な顔をするのだった。
だが。

「ふむ、散々こちらを利用したのだ。ギルドが何かしているようだが、あのヒモ野郎はそう簡単に死ぬまい。よし、今度はこちらが利用させて貰おうではないか。待っていろよ、小僧……骨の髄まで搾り取ってやる!」

 やる気になったフィデルを見ながら、ヴェラは苦笑いをするのだった。ここまで……ライエルが予想したとおりだったためだ――。
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