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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

そろそろ駄目な奴が出て来てもおかしくないぞ十三代目

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 なんという事だろう。

 俺は今、ドアを開けてすぐに驚きの光景を目にしてしまった。

「おや、客人か? ラルクではないところを見ると、使いの者……には見えないな。あいつは周りに男を置かない。そうなると、私を救出に来たか?」

 堂々としている目の前の女性。そして、その周囲には二人の女中が控えていた。

 赤紫色の髪は片目を隠し、そして数本が頬に張り付いていた。少し汗ばんではいるようだが、部屋の中が特別臭う訳でもない。

 女性三人の周りには拷問器具が並べられており、その一つを見た三代目が。

『あれは家にもあったな』

 などと言っていた。五代目は黙り込んでいる。

『……』

 七代目は、相手の女性【ルドミラ・カルタフス】を見て何と言えば良いのか分からない様子だった。

『実に堂々としている。しているが……なんだこの状況は? わし、流石にこれは想像してなかった』

 七代目が驚くのも無理はない。何しろ、ルドミラさんは、手足を縛られ黒い拘束するような体のラインが丸分かりの服を着ていた。ピッチリと張り付く服には、やたらとベルトが取り付けられている。

 問題はその服装だけではない。

「あ、あの……その恰好は?」

 俺が指摘をすると、ルドミラさんは軽く笑った。

「おっと、すまないな。私の趣味ではないんだよ。ラルクの奴が私に卑猥な恰好をさせるものでね。おい、もう必要ないから拘束を解いてくれ」

 二人の女中がルドミラさんを拘束していた器具を取り外していく。卑猥な恰好とポーズをしていたルドミラさんは、恥ずかしがることもなく俺と話をしていたのだ。

 体が痛むのか首を回し、軽く体を動かしていた。動く度に、ミチミチと服が音を立てている。

「あの、なんで外して貰えるのにそんな恰好を?」

 俺は疑問に思ったことを聞く。相手に敵意はなく、それどころかスキルが知らせる表示は友好を示す青を示していた。

「なに、あいつの趣味だからな。時々、思い出したように来るんで困る。定期的に来るならその時だけポーズをすればいいんだが、不定期だといつくるか分からないからな」

 恥ずかしくないのか、卑猥な器具にもたれかかると、俺の方を見て値踏みをし始めた。

 少し、というか前屈みになった俺は悪くないと思う。

 ニヤニヤするルドミラさんから、視線を逸らすと相手は軽く笑った。

「そう怒るな。見たところ、我が国の兵士ではなさそうだ。ルールにこだわる我が国の兵士が、単身で私を救いに来るのも悪くないとは思うがね。さて、君の名前を聞かせて貰えるか?」

 俺は姿勢を正せないまま、ルドミラさんに自己紹介をするのだった。

「ベイムの冒険者――ライエル・ウォルトです。ベイムからの依頼で救出に参りました」

 それを聞いて、ルドミラさんは目を見開いて笑っていた。俺の名前を聞いたことがあるのか? そう思ったときだ。そう言えば、カルタフスでトラシーを倒した時に、割とここでは有名になっていた。

「そうか。お前か。トライデント・シーサーペントを倒した冒険者がいると聞いて会ってみたかった。まさか、その冒険者が助けに来るとは思わなかったよ。なる程、腕だけではないようだ。兵士に紛れて私を救出する知恵も持っているわけだ。いいな。お前、本当にいいぞ」

 まるで獲物を狙う猛禽類の瞳は、紫色で怪しく光っていた。舌なめずりをしており、助けに来たのに俺が囚われそうな錯覚を覚えた。

 女中の一人が、興奮気味のルドミラさんに言うのだった。

「女王陛下、既に目的は達成されました。もう、この場にとどまる理由はないかと」

 頷いたルドミラさんは、歩き出すと部屋を出る。だが、俺を横目で見て笑っていた。

「お前も――ライエルも来い。城の様子が気になるな。私の武器は?」

 俺の腕を掴んで引っ張ると、そのまま地下牢の拷問部屋から出るのだった。女中は、ルドミラさんに答える。

「近くに用意しております」

 そう言って使用していない部屋へと向かうと、服と剣を持ってきた女中。

 剣は細身だが長かった。扱いにくそうだと思って見ていると、ルドミラさんは剣を抜いて確認する。

 剣は赤く、それが魔具の一種であるのは見て理解出来た。

「……手入れもしているな。ご苦労。さて、流石にこの恰好はまずい。着替えるか」

 そう言って俺の腕を引っ張ったまま、ルドミラさんと女中は倉庫のような部屋に入るのだった。

 俺は腕を放され、女中二人がルドミラさんの着ていた服を脱がせる。そして、桶を用意すると、そこに水を入れてお湯に変えていた。

 魔法を使用しているところを見るに、貴族の家の娘なのだろう。そして、裸となったルドミラさんの体を拭いて用意していた衣装を着せるのだった。

 俺は視線を逸らしていたが、七代目がその光景を見ており。

『……先程と変らないじゃないか!』

 そう怒鳴っていた。

 見ると、黒い衣装で体のラインが出るようなピッチリしたものだった。流石に腰回りや上着は考えられているが、それでも先程とほとんど同じだった。

 そして、ルドミラさんは髪をかき上げつつ。

「つまらないな。見せつけるつもりだったのだが……お前、女は嫌いか?」

 首を横に振ると、ルドミラさんは笑っていた。俺と比べると年齢的には四つは離れていない気がした。そんな女性が堂々と肌を晒して良いのかと思っていると。

「ふむ、以外と初心なのか? これはこれでいいな。気に入った! お前、私の婿になれ!」

 女中二人も頷いていた。

「そうですね。行動力と知恵、そして実力は問題ないかと」

「後は鍛えてどうにかなるかの問題ですが、女王陛下がサポートすれば問題ないかと」

 ――何か言っていた。

 ミレイアさんは、ルドミラさんの様子を見つつ。

『くっ、なんという事でしょう。助けに来たと思ったら、この女の罠にはまっていたような感覚……まさか、ラルクを利用した罠だったとは! 複雑に絡み合う各勢力の思惑とか色々とありますが、罠にはまったのが悔しい!』

 どうやら、俺は罠にはめられたようだ。どんな罠なのか?

 三代目も悔しがっていた。

『ちくしょう、確かにこの展開はいいけど、騙された感じがして悔しいよ! ライエル、ここから逆転を狙うよ!』

 なんの逆転なのだろう? というか、いつもの三代目の冗談かも知れない。





 ――周囲を敵に囲まれ、城から騎士や兵士が出てこない状況。

 エアハルトと向かい合うラルクは、混乱しておりそして恐怖していた。周囲に女性がおらず、味方はすぐに拘束されてしまった。

 ここまでの手練れが送られてくると思わなくもなかったが、それでも城に入り込んでしまえば、相手も簡単に手が出せないと思っていたのだ。

「お、お前ら……ちょ、ちょっと待とうぜ。な?」

 左手広げ、前に突き出してラルクはエアハルトに笑いかけていた。だが、頬は引きつり、恐怖しているのか冷や汗をかいている。

「悪かった。いや、本当はちょっと倒して手柄にするつもりだったんだ。殺すつもりはなかった。だから、見逃さないか? な、なんなら女をくれてやる! そこにいる女共はどうだ! こいつら、冒険者としても使えるし、見た目も綺麗で――」

 ラルクの交渉に耳を貸す者はいなかった。襲撃してきた時、間違いなく殺気を放っていた。

 エアハルトは欠けが多い大剣を真っ直ぐ構え、その気持ちに変化がないのを示していた。

 本当にラルクと戦うつもりのようだ。

 ラルクは、木箱の上に座っている魔法使いのダミアンを見た。

「あ、あんたはどうだ! 女、それに金も用意する! 俺は金持ちの女とも親しいんだ! だから、望む額を用意して――」

 そんな言葉に、ダミアンはつられなかった。いや、鼻で笑っていた。

「そういうのは、大陸屈指の商人の娘を捕まえてから言うんだね。君、金貨で数百万枚とか出せるの? 出せないよね。なんかさぁ……もう、聞いているだけでガッカリするんだよ。最初はこいつ凄いな、って思ったのに、現実とかこういうものだよね」

 実際、スキル一つで成り上がり、国をその手にしようとしていると聞いてダミアンも警戒はしていた。だが、蓋を開けるとどうにも思っていた印象と違うのだ。

 ラルクがマクシムに視線を向けるが――。

「悪いな、興味がない。それと、お前の首には賞金がかかっている。スキルで遊びすぎだ」

 女性はアデーレにしか興味がないマクシムは、本当に交渉も出来なかった。

 ラルクが、両手に大剣を持って。

「ちくしょう……馬鹿にしやがって。俺は王になって、それで美女を侍らせて大陸を……ちくしょう……ちくしょうぉぉぉ!!」

 黒い大剣を大きく振りかぶり、目の前のエアハルトに斬りかかった。魔具である大剣の効果なのか、黒い炎が出現して刃にまとわりつく。

 ラルクの動きが素早くなり、筋肉が膨れあがっていた。大きく振りかぶった一撃を振り下ろされたエアハルトは、受け止めれば両断されてしまいそうな勢いだ。

 その一撃に、大剣を斜めにして受け流した。エアハルトの大剣は火花を散らして大きく削られ、溶け出していた。

 ほとんどの刃を失い、軽くなったエアハルトの大剣。柄を握りしめ、エアハルトはラルクの頬を殴り飛ばした。

 軽く吹き飛んだラルクは、その痛みに驚愕していた。今まで、スキルで強化した体で、そこまでの痛みを感じたことがなかったのだろう。

 見れば、エアハルトの筋肉が盛り上がって熱を持っていた。湯気が立ち上り、強化系のスキルであるのは間違いない。

「こ、この三下がぁぁぁ!!」

 それでも、エアハルトの大剣は使いものにならない状態だった。そのため、ラルクは勝てると思った。エアハルトを斬り殺し、そのまま騎士や兵士を斬り進み、この場を逃げ出すことを考えていた。

 そんな時、木箱に座っていたダミアンは動く気配を見せなかった。そして呟く。

「うん、意外とやるね。君は思ったよりやる男だったみたいだ」

 すると、大剣を横に振ったラルクは、エアハルトが目の前から消えたように見えた。視線を逸らしたせいもあるが、エアハルトが屈んだのを気付くのが遅れた。

「しまっ――」

「――悔しいけど、あいつの言った通りだったな」

 エアハルトは後ろ腰から短剣を引き抜き、ラルクの胸に突き立てた。

 ラルクの胸から血が噴き出すと、スキルが使用出来なくなる。急激に力が衰え、そして大剣を落としてしまった。

 胸に突き刺さった短剣をエアハルトが抜くと、蹲って胸から流れ出る血を必死に止めようと手で押さえていた。

「だ、誰か。助けて! 助けてくれぇ!」

 そうして周囲を見ると、立ち上がった自分の仲間たちが近づいて来ていた。ラルクは、その中で治療魔法の使える仲間を見て安心した。

 助かる、などと考えてしまった。

 どうして拘束を解かれているのかも考えずに。

 そして、ラルクが見上げた仲間であった女性は笑顔で。

「そのまま死ね」

 そう言うのだった。ラルクは、驚いてスキルを使用しようとする。だが、血が流れすぎて魔力が使用出来なかった。

「え、あ……た、たすけ……」

 周囲の女性たちの向ける冷たい瞳に囲まれ、ラルクは蹲ったまま――まるで謝罪するように頭を下げた形で息を引き取るのだった――。





 ――夜が明けようとしていた。

 そんな中で、ライエル一行を襲撃するためにカルタフスへ乗り込んでいた冒険者パーティーは、仲間の報告を聞いて驚きを隠せない。

「カルタフスの城にライエルたちが乗り込んだ? 少なくとも五百の兵を持っているだと? どういう事だ、あいつらはほとんどの戦力を迷宮討伐に残していたはずだろうが!」

 リーダー格の男が立ち上がり、報告してきた仲間の冒険者の胸倉を掴み上げた。

 情報を持ってきたのは、ライエルたちを見張っていた二人組だ。

 夜になり動き出したライエルたちに襲撃を受け、拘束されて放置された。その後、拘束されていた縄から抜け出して、仲間に知らせたのだ。

 失敗を取り返すために、ライエルたちの情報を集めに向かった。そして、城の様子がおかしいので向かうと、ラルクの首が掲げられていたのだった。

「ほ、本当に数を揃えていたんだ! あいつら、自分たちの旗を城壁に掲げていて……」

 苦しみながら答える冒険者を床に落とし、リーダーは顔を押さえて椅子に座った。

「……城に入った? カルタフスの城をおとしたのか? たった五百で? なんでだ。あいつらには情報を……情報屋が裏切ったのか?」

 ベイムの情報屋たちも、ベイムから切り捨てられるライエルたちにまともな情報を売る事はないはずだった。

 それは、ライエルたちが少数でカルタフスに乗り込んできたこともあって確信していた。なのに、結果は表向きの依頼を完璧に果たしていた。

「……すぐにカルタフスから逃げるぞ」

 リーダーが言うと、集まった冒険者たちが頷いて逃げる準備を始めた。

 ライエルたちに勝てるだけの実力はあると自負している。だが、相手が自分たちを上回る数を用意し、ラルクを討ち取ったとなると話が違ってくる。

 裏切り者がいるのではないか? 相手は元から知っていたのではないか? もしくは、情報を入手して、自分たちを不審に思わないか?

 色々と考えつくが、今はこの場にとどまるのは危険と考えていた。全員がすぐに引き上げの準備に取りかかり、先に数名を港に送って船の確保を行なわせる。金に糸目はつけない。ただ、ベイムまで急いで戻らなければならない。

 そう思って冒険者パーティーが港へと向かうと、そこにはライエルが待ち構えていた。

 ご丁寧に、騎士や兵士が完全武装で取り囲み、船は港から離れて乗り込める状態ではなかった。

 ワラワラと完全武装の集団に囲まれ、その数が二千を超えるとリーダーは敵の数を数えるのを止めた。

 そして、ライエルは笑顔だった。笑顔で、手元の鞄から書類の束を手にしていた――。





 宝玉内のムードが最悪だった。

 三代目など。

『なんだよ。逃げ一択、ってなんだよ……かかってこいよ。ライエルの糧になれよ』

 五代目はつまらなそうに。

『潰してもいいんじゃないか? ベイムの戦力を削れるからな。これだけの数だ。被害は少ないだろうぜ。ま、主要メンバーはライエルたちに戦わせればいいし』

 七代目は笑いながら冒険者たちを褒めていた。いや、褒めているようで貶していた。

『素晴らしいではないですか。身の程をわきまえてコソコソと逃げ出すのですから。まぁ、彼らには役に立って貰いましょう。……ライエルのために』

 ミレイアさんもつまらなそうだ。今回、歴代当主はつまらない方に事が運んでしまい、本当にやる気が感じられなかった。

『はぁ……ライエル、切り札を一つ見せてあげなさい』

 俺は港で囲まれた冒険者パーティーを見ながら、鞄から書類の束を取り出す。紐で結んであり、かなりの数だ。

 それを確認させ、鞄に入れると相手のリーダー格の男へと投げて渡した。

 相手が拾わないでいると、笑顔で言うのだ。

「拾ってください。トラップなんか仕掛けていませんよ。俺は堂々と戦う男ですからね」

 嫌味を混ぜつつ相手に言うと、リーダーは仲間に視線を向けた。仲間に確認させるようだ。そして、中身を確認させると――。

「……リーダー」

 落ち込んだ冒険者が、書類の束をリーダーに手渡した。リーダーは、受け取ると驚愕していた。手が震えており、そして何度も俺の方を見る。

「どういう事だ。これはギルドの資料だろうが!」

 マリアーヌさんが入手したギルドの資料。それが役に立った。

 ギルドが作る資料の特徴を、彼らも知っていたのだ。冒険者なら知っていてもおかしくない。書式やその他がギルドのものと酷似しており、内容は詳細に書かれている。

 ギルドでなければ知り得ない情報も書かれていた。

「まだ分かりませんか。売られたのは俺じゃない。お前たちだ」

 その言葉を聞いて、リーダーは震えていた。

「ふざけるな! 俺たちはギルドに逆らっていない。俺たちは、お前を殺すように命令されて、それなりの準備も――」

 余裕の表情で、俺はリーダーに言う。

「それで? 結果はどうなった? まだ分かっていないようだから言うけど……お前ら、もう終わりなんだよ」

 騎士や兵士が道を開けて、そこから表向きの依頼者であるカルタフスの貴族たちが、苦々しい表情でやってきた。

 ベイムに依頼を出し、送られたのが彼ら――冒険者パーティーだ。表向きの依頼だという事で気軽に考えていたようだ。迷宮専門の冒険者パーティーは、あまりこういった依頼を受けて外に出ることがない。東支部の冒険者たちなら、少しは仕事をしているように装ったはずだ。

 明らかな人選ミスだ。俺たちを倒す事ばかりに意識を向けすぎていた。

 貴族たちは言う。

「失敗しただけでなく、働く気もないとは」
「逃げ出すとはとんだ臆病者たちだ。ベイムは我々を舐めきっているようだな」
「……忘れ物だ。受け取れ。規則に則り、権利を行使させて貰おうか」

 投げ渡されたのは書類の入った封筒だった。そこには、最低評価の【E】ランクの評価と、ベイムに違約金を払わせる内容の書類が入っていた。

 しかも、かなりの高額な違約金だった。

 冒険者たちの行動が克明に書かれており、俺の邪魔をしていた事だけは省いて書かれていた。

 酒場で俺を待ち、女王であるルドミラさんのいない場所で動き回っていたのだ。捜索もせず、動かないままだった。後から来た俺たちに出し抜かれ、事が終わると逃げるようにカルタフスを去ろうとしていた。

 俺に対しては最良の選択でも、表向きを見れば最低の冒険者集団だ。

 俺の近くにいた女性――女王陛下も笑って見下していた。

「私の救出に本気を出さない冒険者を送りつけた訳だ。なる程、これは十分に抗議するべき案件だな。だが、それでは私が無能だと世間に知らしめることになる。……ふむ、いや、それもいいな。女王の位も飽きた。ここは汚点を利用して、婿を取ろうか。なぁ、ライエル」

 俺はルドミラさんから視線を逸らしつつ、咳払いをして話を続けた。

 ダミアンが、ニヤニヤと笑っている。

「これだよ。これでこそ、ライエルだ」

 マクシムさんは呆れかえっていた。

「ライエル殿、皆が戦っているのに……最低ですよ。それと、アデーレ様には近付かないでください」

 エアハルトたちは、なにが起きているのか理解出来ずにオロオロとしていた。

 俺は冒険者たちを見ながら。

「あんたら、冒険者として終わりだよ。最低評価だけじゃない。ベイムとカルタフスを敵対させたんだ。まぁ、結果とかどうでもいいよね。元から売られたんだから」

 左手を振り上げると、周囲の騎士や兵士たちが武器を構えた。突撃の用意だと思ったのか、リーダーが武器を放り投げる。

 両手を上げて。

「待ってくれ! 俺たちはギルドの指示で送り込まれたんだ! 依頼も表向き請け負う形で、後で達成するつもりだった! 信じてくれ! 俺たちは依頼されただけなんだ!」

 その言葉に、俺も言い返した。

「ごめんね。俺も依頼されただけだから。仕方ないよね、依頼だもの。いや~、心が痛むよ。でも、依頼だから仕方がない。そういうものでしょ?」

 別に誰に、とは言っていない。歴代当主たちでもいいし、自分自身でもいい。とにかく、襲撃する予定の冒険者たちは、返り討ちにするつもりだった。

 そして、その不満はベイムに向ける予定でもあったのだ。

 七代目が宝玉内で嬉しそうにしている。

『いいぞ、ライエル! まだ甘いところもあるが、煽り方もなかなかだ! もっとだ! もっと冒険者たちを絶望させろ! そして、そこからが本番だ!』

 冒険者たちが、逃げられない状況に膝を屈し命乞いを始めた。ソレを見て、俺は手を下ろすのだった。

「……ギルドでは全て正直に話すことだ。誰が味方で、誰が敵かも分からないだろ? そうすれば、最低でも命だけは保障しよう。ま、その前に一働きして貰いますけどね」

 誰が敵で、誰が味方なのか――ベイムは俺の敵に回ったが、きっと一人くらい味方がいるはずだ。そう信じたい。

 リーダーは、俺の言葉を聞いて仲間の一人を見た。その人物が頷いている。スキルで相手の言葉に嘘がないか見抜こうとしていた。そして、頷く。

「分かった。全てを正直に報告する。だから……頼む。助けてくれ。そうすれば、俺たちは絶対にお前らに逆らわない。書面に書いてもいい! 持っている武具も差し出す!」

 ベイムに戻れば予備くらいあるだろうし、すぐに装備を揃えられるだけの力のあるパーティーだ。そんな事をしても意味がない。

「書面には書き起こして貰いましょう。それと、装備は同じ冒険者として大事さは理解しています。正直にベイムで話して貰えるだけでいいんです」

 まぁ、武器を使用して貰う訳だから、持っていて貰わないと困る。

 全員が安堵していた。

 そうやって冒険者パーティーを脅している俺を、ニヤニヤとルドミラさんが見ていた。

 なんだろう……今回、俺は罠にはまってしまった気がする。
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