挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

そろそろ駄目な奴が出て来てもおかしくないぞ十三代目

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

227/345

待ち受けるもの

 俺たちが先に現地に入った冒険者たちと打ち合わせを行なった次の日。

 宿屋には使用している隣の部屋に、無関係を装う冒険者の二人組が見張りとして宿泊していた。

 俺は監視体制の厳重さに呆れた。

「ここまでするかな?」

 マクシムさんは、俺を見ながらアゴに手を当てて。

「向こうがそれだけ評価しているという事ですよ。地下六十階層を突破する一流の冒険者パーティーだと聞きますから、準備は怠らないのでしょうね」

 部屋の中の声は聞こえていない。

 そんな部屋を利用するつもりはなく、冒険者たちも俺たちが宿屋に入った後に乗り込んできて準備がろくに出来ていなかったようだ。

 甘いと言えば甘いが、目を離さないようにはしていた。

 ダミアンは椅子に座り、杖を抱くようにして前屈みで座っていた。眠いのか、欠伸をしている。

「しかし、よく女王が城の地下室ではなく、街から少し離れた洞窟内で囚われているとか言えたよね。最悪、生き埋めにされそうだよ」

 洞窟のある森があり、そこに俺たちを誘い込もうとしているようだった。先に現地入りした冒険者たちは、探すのに手間取ってしばらく休むことにしたと言って動こうとしない、ように俺たちに見せていた。

 やはり畑違いだ、東支部の冒険者に期待すると言って俺たちを囲み、陽気に宴会を始めたのだから食えない連中だ。

 俺はメモを手に取り。

「ラウノさんからの情報だと、女王は城の地下牢。そこで囚われているのは間違いないけど、ギルドや城の女性たち全員がラルクのスキルの影響下にあるみたいだ。街中でも見張られている気がしたけど、余所者を見張っているんだろうね」

 そう言うと、マクシムさんが笑いながら。

「女王を救出して、そのまま当初の目的を達成したら逃げたいですね。数だけを見るなら百名近い。主力メンバーやその控え……実力は相当ですよ」

 迷宮で鍛えたその実力。そして、戦い続けて成長を繰り返し、俺たちを襲撃する予定の冒険者パーティーは厄介な存在だ。

 すると、五代目が俺にアドバイスをしてきた。

『……ライエル、確かに厄介ではあるが、相手は迷宮専門の魔物相手のプロだ。対人のプロじゃないぞ』

 それを聞いて、俺は指先で宝玉を転がして否定を示した。

 迷宮内では、冒険者同士の争いも多い。そうした場数を経験した連中は侮れないと思ったのだ。

 ただ、三代目も五代目の意見に同意した。

『極端に言うと、経験が偏っているんだよ。マリアーヌちゃんの資料を見ただろう? 迷宮専門で数年前に一流になったが、極端に迷宮だけで経験を得ている。確かにそれでも強くはなるんだけどね』

 七代目も俺にアドバイスをしてきた。

『よく考えるんだ、ライエル。確かに魔物を倒して経験を積むのは大事だ。しかし、大陸が冒険者に支配されていない現状を考えろ。少数の集団が強いだけでは意味がない。やり方はいくらでもある』

 俺はマリアーヌさんの資料を取り出し、また目を通した。これが切り札にもなるし、必要になってくる。情報として、だけではない。

 ギルドが管理している冒険者たちの資料だ。使いどころを間違ってはいけない。

「俺やダミアンにマクシムさん。それに、オートマトンが三体とダミアンのゴーレムが四体。護衛対象のエアハルトたちは五人。戦力的には厳しいね」

 俺は自分たちの戦力だけを見るなら、明らかに劣っていると判断した。正面から戦えば負けるのは確実だ。

 俺は資料を大事に鞄にしまい込むと。

「ラウノさんに期待しようか。どのみち、今は動いてもしょうがないからね」

 マクシムさんは肩を落としつつ。

「はぁ、お嬢様に再会出来るのは、いったいいつになるのやら」

 そう言って落ち込んでいたのだった。





 ――迷宮討伐のために用意された拠点。

 ベースでは、ノウェムたちが準備を終えていた。簡易の要塞というように壁を作り出し、森の中にはトラップを仕掛けた。

 ノウェムは、ライエルが入手した資料と、ラウノが集めた資料を見比べている。近くにはラウノの同居人であるイニスと、クラーラが杖に明かりを点していた。

 資料をめくり、ノウェムはいくつかの差異を発見した。

 周囲ではヴァルキリーズが見張りに入り、明かりをつけて森の中にあるような拠点の警備をしている。

 物々しい雰囲気だが、イニスは動じていない。

「……スキルについていくつか差異が見受けられますね。外から見るのと、中から見るのとでは違うのかも知れません。それとも、虚偽の報告がわざとされたのでしょうか?」

 イニスはそれについて。

「ラウノさんが調べた情報に間違いはありません。それに、スキルによる結果は同じですよ」

 イニスの考えを、ノウェムは否定した。

「それは違います。小さなミスが命取りになりますからね。ただ、やはりスキル保持者が多いですね。迷宮専門の冒険者は危険かも知れません。これでは……」

 ノウェムが続きを言う前に、イニスは口を開いた。

「……一つだけ聞いていいですか?」

 ノウェムは資料を確認しながら返事をした。資料の確認はこれまでも何度か行なっているが、手持ちぶさただったので確認している。資料はノウェムが大事に所持しており、手元にあるために確認もたやすかった。

「どうぞ」

「ギルドが恐ろしくないんですか? ベイムでは、冒険者にとってギルドは巨大な権力の固まりです。普段は親切なサポートをしますが、敵対すればどんな手段を使用しても潰すと聞いています。実際、名のある冒険者たちもギルドには逆らいません。余所では冒険者とギルドの関係が違うと聞きますが、ベイムを侮っていませんか?」

 イニスの質問に答えたのは、明かりの下で本を読んでいたクラーラだ。読み終えたのか、本を閉じると座っていた木箱の上に置いた。

「確かに他の都市や街では関係にも違いがありますね。私のいたところは冒険者に冷たいギルドでしたから。学園中心の都市でしたしね」

 それを聞いて、イニスはクラーラの故郷を言い当てた。

「アラムサースですね。図書館が有名だと聞いています。確かにアラムサースも大きな都市ですけど、ベイムはそれ以上です。いえ、桁違いですよ。前から気になっていたんですが、ライエルさんたちはギルドが恐ろしくないんですか?」

 ノウェムは資料を綺麗にまとめ、大事に鞄にしまい込むとイニスに体を向けた。ただ、表情は普段よりも冷たい感じだった。

「ギルドが商人と結託しているのは知っていますし、商人が恐ろしいのも知っていますよ。ここのギルドはお金もありますし、サポートも充実していますからスイーパーもいるのでしょうね。でも――」

「でも?」

 イニスはノウェムを見て首を傾げた。

「――私たちは別にベイムに勝つつもりはありません。勝てませんからね。それはライエル様も理解しています。重要なのはその後ですよ」

 クラーラは次の本に手を伸ばしており、ノウェムは勝てないとは言いながら落ち着いている様子だった――。





 ――カルタフス。

 ディンゴの家の中で、ラウノはイニスの予想を思い出していた。

 スキル―― インフォメーション ――は、集めた情報から未来を予想するスキルだ。これが賭け事に使用しても効果を上手く発揮してくれない。

 ラウノが負け越すのは確実、という夢もない結果だけを教えてくれた。

 ただ、集めた情報の精度が高ければ高いほどに、スキルは未来を的確に予想するのだった。

 椅子の背もたれにあごを乗せ、逆向きに座るラウノはイニスの言葉を思い出す。

『……今回、ギルドはライエルさんたちをどんな手段を使用しても潰します。襲撃が失敗しても、それによる被害を利用してライエルさんたちを追い詰めます。ライエルさんたちは、ベイムから追放処分を受けます。ベイムにとって、今後の取引相手であるバンセイムのセレスの関心を引くためです。――ですが』

 ライエルとセレスを天秤にかければ、いくら英雄でもベイムにとって旨味のあるセレスを選ぶのは当然だった。

 更に言えば、ライエルは四ヶ国連合の結成を裏で行なっている人物だ。いなくなれば、その計画が崩れる可能性は高い。

 話し合いは始まってまもなく、それに利益ばかりがある訳でもない。当然だが、メリットがあればデメリットも存在していた。

 そうした関係の中、良くも悪くもライエルという一人の人間によって、四ヶ国連合は実現しようとしていたからだ。

 そうすれば、以前のように小競り合いで傭兵団の仕事が増える。ベイムにとって、近場で戦争があるのは重要な事だった。適度に巻き込まれない距離、という前提がつくが。

(イニスの予想だ。大きく外れはしないだろうが……それでも、どうしてライエルたちの予想は曖昧な表現になる?)

 何か決定的な情報がかけている。ラウノにはそう感じられるのだった。

 イニスのスキルですら判断に困っていた。

『――ですが、ライエルさんは今回の一件を狙って引き起こしています。バンセイムがベイムに侵略を仕掛ける可能性を予想しており、結果としてベイムがバンセイムと手を組んでも問題ないと考えている可能性すらあります。ただ、最後に勝利するのは、ベイムで間違いありません』

 若いのに、どこまでもいやらしい手段を使用するライエルに、ラウノはまるで狡猾な老人を重ねてしまった。

(前世の記憶持ち、って可能性は……ないな)

 自分の馬鹿な考えに苦笑いをしていると、ディンゴがラウノの下を訪れた。

「ちょっと、聞いた? 港でやたらと物々しい一団が……ラウノ、笑っているの?」

 ディンゴに笑っているのを見られ、ラウノは咳払いをすると先程の話を聞くことにした。

「いや、なんでもない。それより、港で何があったんだ?」

「それが、大商家の船が割と短い期間で戻ってきたのよ。そしたら、逞しい男たちが武器やらを持って降りてきたんです、って。兵士が確認しても、それらは商品だ、って言い張った上に書類まで用意されて許可しちゃったのよ。まったく、どこまでも頑固よね」

 ラウノはその事情を知っており、責任者に賄賂を送って置いたのはラウノ自身だったので頷くだけにしておいた。

「ま、昔から融通の利かない国ではあるな。変なところは変らないままだよ」

 ディンゴは、ラウノを見ながら寂しそうに。

「ラウノも騎士に相応しくないスキルだから、って汚れ仕事を押しつけられたものね。偵察や諜報には役立つスキルだったのに。それで、追い出されて……もっと抗議しても良かったはずよ」

「昔のことだ。それに、俺はもう騎士に戻るつもりもない。汚れ仕事はしなくていいし、人の弱みを見つけてチマチマ稼ぐのが性に合っているんだよ」

 ラウノはかつてカルタフスの騎士だった。若い頃は情熱を持っていたが、発現したスキルが騎士としては不要と判断され、汚れ仕事を押しつけられてきたのだ。

 ディンゴが溜息を吐いた。

「ラウノがそれでいいなら、いいのよ。それにしても、最近は物騒ね。女王が自分を助け出した者を婿にする、っていう噂を流したせいかしら? というか、どうやってそんな噂が流れたのやら」

 ラウノはクネクネしているディンゴを見て、色々と裏を知っているだけに笑うのを堪えるのに必死だった――。





 数日後の夜。

 俺は到着したガレリアの兵士たちを前にしていた。

「船旅は満足して貰えたかな? それにしても、レオルド様が随分と気前が良いね。送ってくれたのはガレリアの精兵たちか」

 ガレリア公王家の抱える兵士たち。

 総勢で五百名を、ヴェラ・トレース号が輸送してくれた。

 マクシムさんは、その数を見て微妙な表情をしていた。

「自国にこれだけの他国の兵士を招いて平気なのですか? 俺なら、絶対に阻止しますよ。というか、端金程度でよくも見逃したものです」

 カルタフスの人間は決まったことに関しては律儀に守る、という評判を聞いていたマクシムさんが頬を引きつらせていた。

 俺は肩をすくめつつ。

「まぁ、船員に紛れ込ませていましたからね。実際は二十名前後の名を上げたい若者たちが入国してきた感覚ですよ」

 ダミアンは杖を担いで、近くに見える城を見ていた。

「でも、堅牢なこの城を五百人で落とすのは無理だと思うけど? 秘密兵器は用意してないんだよね?」

 ダミアンの言葉に俺は頷くが、手段がない訳ではない。

「まぁ、最初にこちらを片付けないと、向こうが焦ってくれないからね。というか、少数で待ち構える倍以上の敵に挑むとかしないよね。やる奴がいたら顔を見てみたいよ」

 マクシムさんが俺を見て呆れかえっていた。

「ライエル殿、今の状況は冒険者パーティーに挑むより酷いです。たったの五百人で城に挑むとか、難しさが跳ね上がっていますよ。鏡を用意しましょうか?」

 マクシムさんともだいぶ打ち解けてきた。

 だが、別に城がいつも戦争の準備をしている訳ではない。それに、堅牢な城だからこそ、通じる手段というものがあった。

「ま、その辺は色々と手段がありますからね。それと、ラウノさんには城の地図を用意して貰いましたから大丈夫です。地下牢まで一直線ですよ」

 すると、寝ているところを叩き起こしたエアハルトたちが、周囲を見て困惑していた。

「……おい」

「さて、それではマクシムさんに三百名を預けるので――」

「おい!」

「いや、説明しているときに質問は……まぁ、いいか。はい、エアハルト君」

 指名すると、エアハルトが周囲を指差しながら。

「なんだよ、この状況は! というか、女王の救出はどうなった! なんで城に攻め込む話になっているんだよ!」

 俺は首を横に振るのだった。

「いや、女王が城の地下牢にいるからなんだよ。それに、エアハルト……戦いで数は重要だよ」

 エアハルトは、髪を両手でかき乱しながら。

「納得出来るか! その数を用意するのが難しいんだろうが!」

 五代目が宝玉からボソリと。

『まぁ、数を用意するのは、冒険者よりも俺たち領主の方が得意だからな。今回も借りただけだが』

 騎士や兵士、それら精鋭の集まりである五百名を率いる事に納得して貰っていると、七代目がウキウキとしていた。

『フフフ、ファンバイユの落とした砦を奪い返してやった夜を思い出す。あの日も、こんな静かな夜だった。騒ぎ疲れた奴らの堅牢な砦に忍び込んでボコボコにしたものですよ。わし、砦や城を落とした数は結構なものですから!』

 五代目が防衛戦に強いように、攻城戦では七代目が強かった。

 ミレイアさんが言う。

『ブロード君、得意分野だから、って騒がない。まぁ、地下牢まで進めば後は大丈夫でしょうね。それにしても、女王を救出したと知ったら、あの冒険者たちはどう動くのかしら? 楽しみだわ。きっと、今頃は慌てて見張りの子たちが縄から逃げだそうとしていますよ』

 相変わらず性格が悪い。見張り役の二人の冒険者たちを、襲撃して縄で縛り付けたのだ。気絶させていたが、もしかすれば今頃はリーダーにでも報告しているかも知れなかった。

 まぁ、来たときには終わっているだろう。数が多いと準備をするのも大変だ。それに、結構な慎重派なので、情報集めに動いて動かないという事も考えられた。

 三代目が笑いながら。

『わざわざ罠の用意してある場所になんか行かないよね。というか、逃げ帰ってくれるよりも、ライエルを襲撃するくらいの根性は見せて欲しいよ。本当に楽しみだ!』

 五代目が呆れつつ、俺の気持ちを代弁してくれた。

『……お前ら、本当にいい性格をしているよ』

 ミレイアさんが笑いながら。

『褒めないでください、父上』

 三代目も、五代目の嫌味を理解しつつ。

『これでも僕は、自分の事を真面目で誠実な人間だと思っているからね!』

 俺は心の中で思った。「それはない」っと。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ