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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

二代目様は苦労人

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 休日の朝から、俺はギルドの資料室に足を運んでいた。

 ギルドカードを持つ冒険者なら、誰もが使用できる資料室。

 そこには、ダリオン周辺の魔物に関する情報や、これまでの閲覧可能な資料が置かれている。

 他には、冒険者として必要な知識が書かれた本も並んでいた。

「あった、これだ」

 手にとってのは、分厚い本だ。

 今日の担当を引き受けた二代目が、宝玉から俺に指示を出す。

『ライエル、俺たちの知識は基本的に古い。教えても良いが、その前に必ず現代の知識を確認しよう。というか、しないとまずい』

 二代目が言うのを、俺は酷く痛感した。

 何しろ、朝起きてノウェムに成長に関してたずねたら、持っていた皿をノウェムが落としたのだ。

 木製の皿で良かったと、つくづく思う。ただ、泣きそうになるのは、色んな意味で止めて欲しかった。

(何を思って涙目だったんだろう?)

 二代目が俺に成長に関して教えるのは、元々ウォルト家の風習を形作ったのが二代目であるからだ。

 同時に、フォクスズ家から教えられた知識を元に、本当の地方貴族ウォルト家の基礎を作ったのが二代目であるクラッセル・ウォルトである。

 成長を促進させるために、自分の息子や孫……そして子孫に、魔物退治をするようなウォルト家の風習を作っていた、らしい。

 らしいというのは、俺がその風習を行なう前に冷遇されたからだ。

 魔物を倒して成長を促進させる。これは、一種の迷信とされていた。

 何故なら、成長は普段の生活でも起きるからだ。

 個人によって差も大きく、これは才能の部類と判断されてきた。

 ウォルト家の四代目以降も、魔物退治は人を動かし、戦闘や集団戦を磨くためのものだと理解していたようだ。

 もっとも、五代目以降になると決まりなので基礎的な事に手を付け、以降は部下に任せる傾向にあったらしい。

『まさか三代目のスレイで、大事な部分が引き継がれていないとは思わなかった』

 こうした成長に関するウォルト家の知識は、三代目が戦死した事で大部分が――というか、大事な中身が引き継がれなかった。

 年若く当主となった四代目は、風習だから一応は守っていたらしい。

 近くにあった椅子に座り、分厚い本を机において広げる。

『成長と魔物討伐の関連性について……また随分と色んな事例を集めたもんだ』

 そこには、ギルドが集めてきたものは、公表されている事例を集め、著者の解釈で説明がなされている。

 感覚的な肉体の変化を『成長』と呼んでいるのだが、その研究は古くからされてきたようだ。

 ページをどんどんとめくると、二代目からストップの声がかかる。

『ストップ! ライエル、少し早い。というか、よくそのペースで読めるな』

 周囲を見て、誰も見ていないのを確認して答える。

 資料室を余り利用している冒険者はいないようだ。

「まぁ、本を読んでいるか、外で魔法や剣を、という生活でしたし」

 冷遇されていたときは、本当にそんな生活だった。

 今思えば、屋敷に閉じ込められていたようなものだ。

『……随分とためになる事が書いてあるが、俺の経験則からだと少し違うな』

 少し違うと言うと、二代目は俺に成長に関して説明する。

 現在の定説は、人は経験を蓄積し、それが開花するのが成長と呼ばれる現象だった。

 そのため、魔物と戦う事は、一種の大きな経験なのであって、それによって成長が引き起こされている訳ではない、というものだ。

 ややこしいが、魔物を倒して成長するのではなく、そういった経験を積んだ結果として成長している。という事になる。

「間違いなんですか?」

『いや、間違いじゃないんだが……魔物を倒す事で成長の促進は可能だな。何しろ、俺は記憶しているだけでも九回は成長を感じた』

 九回というのは、一般人が一回から二回が多い中で、かなりの異例である。

 冒険者の中堅のほとんどが、四回から五回の成長を経験している。

「祖父……七代目は戦場でも経験したような事を言っていましたよ?」

 二代目は、持論を述べる。

『そういった経験も蓄積されるとは思うんだが、魔物退治は中でも効率が違う。特に格上と戦うときは早く感じたな』

「格上ですか」

 より強者と戦う事で、成長が促進されると二代目は言う。

『もっとも、雑魚をそれこそ沢山倒しても成長したけどね。俺の時代だと、集団戦闘を兵士に覚えさせようと苦労したんだ。記録を取って、地道に頑張った頃だよ』

 なんのノウハウもなく、初代に当主の座を譲られた二代目は、領地の現状を知って驚いたという。

 しかも、ウォルト家の統治方法は、驚く事に初代のカリスマで維持されていたのだ。

 蛮族スタイルの初代だが、そういった同類にはかなり尊敬されていたらしい。

『同じ量の経験を積んでも、個人的に成長の速度も、成長率も違ったな。満遍なく成長した連中もいたけど、中には一部だけ成長する奴もいた。苦手部分以外はかなり成長を感じた奴もいる』

 飛躍的に変わるわけではない。

 ただ、少し……越えられない壁があったとして、それを超えたような感覚。

 それが成長であった。

「俺のタイプはどうでしょうか?」

『個人が感覚的に把握するから、なんとも言えないんだよなぁ……。だけど、自分の中では変化として認識できるはずだ。今までに経験がない、というのは驚きだったがな』

 二代目をはじめ、ご先祖様一同が俺の言葉を聞いて驚いていた。

 何しろ、誰もが経験する現象だ。

 子供が十代前半で、早ければ十歳になる前に経験する。大人は、ソレを確認して、驚く子供に成長を説明する。

 そんな一般的な知識――。

(俺は、そんな事も知らなかったのか)

 そう思いながらページをめくり続ける。

『ただ、この手の話は迷信や嘘も多い。俺の時代も成長が早めるパワーストーンというのが流行ったけど、効果なんかなかった……』

「試したんですね」

 二代目の言葉が暗くなったので、俺は実際に使用して確かめたのだと理解できた。

 しかも、二代目が言うには感覚的なものの上に騙されたという証明も難しかったという。

『結局、ウォルト家では販売禁止にする事で終わったけどな。まったく、手痛い出費だったよ』

 俺と二代目は、そのまま本を読み終わると、ノウェムやアリアとの待ち合わせ時間まで時間があるので他の本を読む事にした。

 二代目が興味を引かれた本がある。

 分厚い本を元の棚に戻し、俺はその本を手にとって席に戻った。

「この本はなんですか?」

『いや、古い本だから気になっただけだ。ライエルは、この本を読めるか?』

 そう言われて本を読もうとするが、時代が古いのか言い回しなどが現代と違っている。

「読みにくいですが、なんとか」

『そうかい? なら、そうなんだろうね……』

 理解できないでいると、二代目は知りたかった事が理解できたのかもう本は返して良いと言ってきた。

『さて、お嬢様方を待たせると酷い事になる。ライエル、早めに待ち合わせ場所に行こうじゃないか』

「分かりました(いったい、何を知りたかったんだろう)」

 俺は気になったが、二代目は答える雰囲気でもなかった。





 待ち合わせ場所は、ギルドから少し離れた治安の良い場所だ。

 ギルドは良くも悪くも荒くれ者が多い。

 そんな中で、二人と待ち合わせをすれば厄介ごとも舞い込んできてしまう。

 出来るだけそういう事を避けるために、治安の良い場所で待ち合わせをしていた。

 お昼になる前に、約束した場所に到着する。

 少し早かった。約束はお昼過ぎである。

 周囲には屋台が出て良い匂いが鼻をくすぐる。視線を向けると、屋台では鍋に入った油から何かを取り出している。

 揚げ物だろう。

 初代がそれに反応した。

『おい、ライエル。アレはどんな食べ物だ?』

 周囲は俺を時々見る人もいたが、口元に手をやって小声で答えた。

 近くに見える屋台の料理を見て、気になっていたようだ。

「芋を油で揚げたものだったと思います」

 そういうと、初代は感心したようだ。

『そうか、そういう食べ物もあるのか。俺の時にはなかったものばかりだな……』

 初代の生きた時代は、混乱が収まったと言っても立ち直るために相当苦労した時代だ。

 二百数十年前とは、比べものにならないくらい豊かになっているらしい。

『良い時代だね』

 三代目が言うと、五代目が口を出してくる。

『俺たちの時代で流れてきたな。荒れ地でも育つから、かなり収穫できたのを覚えている』

 六代目も同じようだ。

『あれは良かったですね。おかげで食うに困らなくなった領民も多い』

 そう言った会話から、初代はボソボソと呟いた。

『そうか……なら、俺の目的は……』

 そこで、俺に声がかかる。

「ライエル様」

 ノウェムだ。

 アリアの手を引いて来ると、その手には紙で出来た袋を持っている。

『よし、ライエル……荷物を持とうか。それから、言葉選びは慎重に行こう。二人の服が違うのは気が付いているよね?』

 四代目が俺にアドバイスをしてくる。

 俺はハッとなって気が付くと、確かに二人の服が変わっていた。

「あ、重そうだね。荷物を持つよ」

 二人の荷物を受け取ると、結構な重さである。

「ありがとうございます、ライエル様」

「え、あの……私は自分で」

 アリアが拒否すると、ノウェムがアリアに耳打ちする。

 すると、アリアも荷物を差し出してきた。少し困った様子のアリアだったが、脅されているようにも見えない。

(何を言ったんだ? それよりも……)

 朝見たときとは違い、二人とも普段着よりも綺麗な服を着ている。

(ど、どうやって褒めたら良いんだ!)

 二人を見ていると、アリアが言う。

「な、何よ。に、似合わないならそう言って貰えれば――」

 そこまでアリアが言うと、初代が俺に声を出してくる。

『ライエル! 褒めろ! アリアちゃんを……いや、二人を褒めちぎれ!』

 ただ、二代目は冷たい反応だ。

『お前はお袋になんか言って褒めた事あるの?』

 困り果てる前に、四代目が俺に指示を出していくる。

『とりあえず、二人とも似合っていると言おうか。少し間があったのは、雰囲気が違って驚いたとかなんとか言おう』

 四代目のアドバイスに、五代目は少し笑っていた。

『流石に(ママ)のご機嫌取りに苦労しただけあるな』

「ふ、二人とも似合ってる。その、雰囲気が少し違ったから、ちょっと驚いただけだ。うん、綺麗だよ(四代目に言われてお金を渡したけど、ノウェムなら自分で管理できると思うんだけど)」

 褒めながら俺はそんな事を思っていると、アリアが顔を赤くする。

「そ、その……ありがとう。私、あんまりお金なくて。貸して貰って気が引けるというか」

 微妙な空気になると、ノウェムがフォローを入れてきた。

「アリアさん、これからは同じパーティーの仲間なんですから、その分は返せるときに返して貰えればいいんです。期待していますよ」

「う、うん」

 どうにも遠慮がちなアリアを見ながら、俺はスカートを履いている二人を見る。

 普段は動きやすさを理由にパンツスタイルなので、新鮮な感じがした。

 ノウェムも、以前会う時はドレス姿が多く、こうした普段着というのはあまり見なかっただけに新鮮さがある。

(遠慮がちだったけど、無理矢理買わせて良かった、という感じかな。アリアに買わせるために、ノウェムにも新しい服を買って貰えたのは良かった。なる程、こういう理由で遠慮がちなノウェムにも買わせるのか)

 家を出る前に四代目に言われて二人に買い物に出て貰ったが、少し安心した気持ちになる。

 何気に、こういった事に気を回すのが四代目だ。

 アリアの荷物は少なく、着替えにも困る状態だった。それを理由に、アリアに服を買わせると言った理由で、ノウェムにも服を買って貰ったのだ。

 遠慮がちのアリアだから、ノウェムも一緒に服を買わせたのである。そのため、ノウェムには少し無理をしてもいいから、好きな服を買えと言っておいた。

(四代目に感謝だな)

 ただ――他の面子は、基本的に女性関係に問題ありである。

 俺の事をとやかくいう程に、色々と出来ている訳ではない。大体、女性関係でアドバイスをくれるのは、真面目そうな四代目だった。

(というか、一族でフォクスズ家に世話になりっぱなしだし、俺だけが特別ノウェムの世話になっている訳じゃないよね)

 初代の頃からはご近所として手助けして貰い、五代目以降は家臣として仕えてくれている。

 ウォルト家はフォクスズ家に頼りっぱなしである。

(俺だけが責められるのはおかしいんじゃないかな?)

 そう思いながら、三人で少し遅めの昼食をとることになった。





 夜。

 呼び出されたので宝玉の会議室へ出向くと、そこにはいつもの面々がいた。

「こういう時って、なんて挨拶すればいいんでしょうね?」

 などと、少しズレた質問をすると、五代目は気にしなくていいと言った。四代目が会議を始める。

『さて、ライエルも来たし、今後の方針を話し合おうか。といっても、決まったのは単純すぎる事なんだけどね』

「単純ですか?」

『そう、単純』

 四代目が頷くと、そこからは二代目が立ち上がって説明する。

『ライエル、今はとにかく外に出て魔物と戦え。流石に成長を一度も実感した事がないというのはまずい。というか、何かしら問題があるのかも知れない』

 俺自身の問題。

 成長が起こらない体質、もしくは何かしらの欠点があるのか。

 そう思うと不安になる。

『まぁ、経験を極端に積まないと成長しない奴もいた。お前がそのタイプだと思えば、今から成長すれば体力面や魔力面で余裕ができる』

 そう言われて安心する。

 だが、気になった事がある。

「あの、成長の遅い人はどれくらいで成長するんです? 具体的な数字とか」

 本にも目を通したが、個人差があるという程度だった。

 載っていた事例にも、極端に成長が遅いタイプの記載はされていない。

 精々が、遅くとも十代中盤と書かれていた。二代目は思い出すようにアゴに手を当て、自分の記憶で一番遅かった例を述べる。

『……俺の時は、二十代で成長一回目の奴がいた』

『マジでか!』

 初代が驚いているが、周囲も同様である。

 俺もそうだ。

「……え? それはつまり、俺はこれからもこの面子に苦しめられる、と?」

 俺の言葉に、二代目は頷こうとしたが……。

『ちょっと待て、今お前俺たちに苦しめられている、とか言った? 何、そんな風に思ってたの!』

 二代目が言うと、四代目も同意見だったようだ。

『あれだよ。これはいわゆる訓練的な奴だって。ほら、筋力や魔力だって使ってないと伸びないだろ? それの一種だって』

 言い訳をする四代目に、俺は怪しんだ視線を向ける。

 それなら、最初から説明すれば良い。なのに説明しないのは、今お思いついたか、言い訳なのだろう。

「怪しいですね」

『疑わないで欲しいな。ほら、僕たちの顔を見てごらん。これが嘘をついている目に見えるかい?』

 三代目に言われて目を見ると、確かに澄んだ瞳をしていた。

「た、確かにそんな効果もあるのかも知れませんが――」

 納得しようとしたところで、初代が言う。

『あれ? そんな事を誰か言ったか?』

 真実を初代が暴露した。

 ここにいる全員が、あまり気にせず喋りまくっていたらしい。魔力云々は、どうやら今思いついた事のようだ。

「お、お前らぁぁぁ!!」

 俺が会議室で怒鳴り散らすと、全員が自室へと笑いながら戻っていく。

 三代目は笑いながら。

『ハハハ、ごめん、ごめん』

 二代目も言い訳をしながらドアに入る。

『いや、悪かったって。ほら、成長もしてないとか普通は思わないし。魔力が成長しないタイプだと思ったんだよ』

 六代目は少し悪いと思ったのか、申し訳なさそうだった。

『テクニックタイプかと思って、気長に訓練するために負荷を与えたのは本当だぞ。俺は、だがな』

 七代目がソレに。

『自分だけ逃げる気ですか! すまなかった、ライエル!』

 ほとんどがドアの向こうへと逃げ出した。

 最後に四代目がしめる。

『では、今日は解散という事で』

 そう言って一人を残して全員がドアに入って消えていた。

「な、なんなんだよ!」

 部屋を見渡すと、ニヤニヤとしていた初代だけが残っている。

「なんですか? まだ言いたい事でも?」

 俺が態度悪く言うと、初代は嬉しそうにしている。

 意外な反応だった。

『随分と気合いが入ってきたじゃねーか! ここに顔を出したときなんか、死んだ魚の目をしてたから気に入らなかったが、マシになってきたな』

 死んだ魚の目と言われて、俺は頭をかく。

 そんなに酷かったのかと思ったが、確かに酷かったのだろう。家を追い出され、俺は何もかも失って空元気をゼルに見せていた。

 ノウェムがいるから、計画的にここまでこられたのだ。

 そうでなければ、行き当たりばったりで行動していたに違いない。

「そ、そんな事はないです。少し落ち込んでいただけなんで」

 初代はそれを聞くと頷いていた。

 今日は機嫌でも良いのかも知れない。

『そうかい。で、だ……お前はこれからの事を何か考えたか?』

 初代にセレスの事を言われた時、自分で少しは考えろと言われたのを思い出す。

 あの時の俺は、自分がどうなろうかどうでも良かった。

 ただ、ノウェムがいるから、少しだけ真面目にやろうと思っていた気がする。

 今だって、本気で一流の冒険者を目指しているわけではない。

「よく分かりません」

 初代はきっと憤慨すると思ったが、意外な事に反応は薄かった。

 だが、腕組みをして次の質問をしてくる。

『……アリアちゃんをどう思う?』

「ノウェムに言われて名前を呼んでいますけど、基本的には同居人というか」

 正直な気持ちを言えば、俺は側にノウェムがいれば良かった。

 ハーレムなど口先だけで、考えた事もない。

 ただ、誰かに見て貰える。誰かが側にいるのは嬉しかった。

「初代はアリアに思い入れがあると思うんですが、俺にはノウェムがいます。正直に言えば、このままノウェムと二人でも良かったと思っていました」

 ノウェムと二人でどこかに行って、冒険者を辞めて慎ましく生活する。

 それも良いかも知れない。

 そんな弱気の発言をしている俺を、初代は許さないだろうと思っていた。だが、反応はここでも違う。

『ま、好きにすれば良い。お前の人生だしな。俺はお前の腐った魚みたいな目と、女々しい性格が嫌だった。ついでに、アリアちゃんに意識されているお前も嫌いだ』

 アリアが俺を意識しているのは、何となく理解している。

 ただ、応える気はない。

 俺にはノウェムがいる。

「それはどうも。意外と顔は良い方らしいんで、モテるんですかね? 初代と違って」

 嫌みを初代に言う。

 初代が俺を睨み付け――。

『この野郎! ……言うようになったじゃねーか!』

 怒鳴り、そして笑い出した。

「今日はどうしたんです? いつもなら怒鳴って終りなのに(自分で顔が良いとかいうと、なんか恥ずかしいな。あんまり気にした事もなかったし。というか、今日は機嫌が良いのかな?)」

 俺が気になった事を聞くと、初代は頬を指先でかいていた。

 曖昧に答え、そしてはぐらかしてくる。

『ま、そういう気分だったんだ。それとな、アリアちゃんの事は好きになれとは言わないが、少しに気にかけてくれ。その辺は眼鏡が詳しいだろうから聞けば良いだろ』

 眼鏡――四代目の事だ。

 一瞬、笑いそうになった俺はなんとか堪えた。

「……まぁ、それくらいなら」

『お前さ、今笑おうとしなかった?』

 初代に図星を指されて俺は急に焦った。

(この人、勘が鋭いというかなんというか……悪い人ではないんだよな。性格とかが蛮族思考だけど)

『お、図星か?』

「……ま、確かに眼鏡という印象が強いですからね、四代目は」

『だろ!』

 俺は、その日初めて初代と話して笑いあったのだった。
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