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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

逸話とかかなり曲解されて伝わっているかもね十二代目

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どこまでも続く道

四代目のスキル【オーバースピード】を【フルドライブ】に変更しました。
 俺にとって、歴代当主というのはご先祖であり優秀な人たちであった。

 過去、父に言われて俺も歴代当主に続き、ウォルト家を盛り上げようと思っていた時期もある。

 だが、こうして宝玉に記憶された歴代当主たちと接する内に、俺は彼らの良いところも見てきた。そして、悪いところも見て来た。

 宝玉内――大きく踏み込んだ俺と四代目は、雨の降るどこまでも続く一本道の上を互いに向き合ってまるで止まって見える雨粒が周囲を埋め尽くす中を駆けた。

 雨粒に自らぶつかり、雨粒が弾けていく光景は不思議な光景だ。

 一本道を互いに向かい合って進み、そして四代目の短剣と俺のサーベルがぶつかり合う。

 火花すらゆっくりと見える光景は、サーベルと短剣がぶつかり合い次々に増えていく。

 四代目のスキル【フルドライブ】が作り出した時間の中、俺と四代目は激しく火花を散らして互いに一歩も退かず、自分の得物を振り続ける。

 こちらが突けば、四代目は左手に持った短剣で受け止め、そして弾く。

 四代目が右手に持つ短剣でこちらを突けば、俺はサーベルの刃、そして柄を使って受け流し、弾いていく。

 若干、四代目の動きの方が早かった。

 眼鏡を外した四代目は真剣な表情で。

『俺を超えられない程度で、セレスに立ち向かうつもりか? もっと本気を出せ、ライエル!』

 俺も言い返した。

「言われなくても!」

 若干早い四代目の動きに追いつく……いや、追い越す勢いでスキルを使用する。四代目が生み出したスキルを、俺は使いこなさなくてはいけない。

 更にスキルによる加速が進んだ気がする。そして、このスキルの欠点も気が付いた。

 かなりの集中力を必要とし、更には魔力を理不尽なまでに消費していく。しかし、ここでスキルの使用を中断すれば四代目に勝つ見込みがない。

 両手持ちの短剣は、左手に持つ短剣をまるで盾代わりに使用している。しかし、右手に持つ短剣は実に器用に俺の急所を狙ってきている。

 記録の存在である四代目は、魔力切れという問題がない。

 俺も現実世界よりは回復力も早く、そして瀕死の重傷を負ってもすぐに復活出来る。だが、それでも俺の方には限界があった。

 このまま拮抗した状態が続けば、不利なのは俺の方だ。

(もう少し……あと少し!)

 二代目のスキル―― フィールド ――を使用しながら、初代のスキル―― リミットバースト ――も同時に使用していた。

 感覚が広がり、自身の能力が全体的に向上している中で俺は四代目にまだ届かなかった。

 能力面では超えている。だが、技量で……得物の扱い、戦い方、そしてスキルの効果的な使用という部分で俺の方が劣っていた。

 いくつもの火花と雨粒が周囲で弾ける中、俺は勝負に出る事にした。

 大きく踏み込み、そしてサーベルを突き出すと四代目は体を大きく後方へ反らしつつ両手に持つ短剣を交差させサーベルを挟み込みそのままサーベルを破壊する。

 金属の破片が周囲へゆっくりと飛び散る中。

『焦りすぎたね、ライエル』

 四代目の声を聞きながら、俺は口元が歪んだ。笑みを浮かべると、四代目が急いで体勢を立て直そうとする。

 しかし、こんな好機を俺が逃すはずもなく。

「計算通りですよ、四代目」

 破壊されたサーベルを放り投げ、手には武器が出現する。それは、サーベルの柄を持つが、刃の部分はサーベルではないカタナだった。

 出現したカタナを握りしめ、更に大きく踏み込んだ。

「――フルバースト!」

 初代が残してくれた三段階目のスキル―― フルバースト ――は、能力を何倍にもしてくれる凶悪なスキルだ。貯め込んだ魔力を火種にして爆発的な効果を生み出す。

 ただ、とても魔力を消耗するし、タイミングを間違えれば魔力切れで動けない状況も生み出してしまうスキルだった。

 四代目の動きが更に遅く感じる中、俺はカタナで四代目を斜めに斬る。

 防ごうとした四代目の短剣ごと破壊し、四代目は右腰から左肩へと線が入った。

 刃が四代目の体を斬ると、ゆっくりと血が噴き出していく。

 踏み込んだ勢いを殺しきれず、そのまま四代目を通り過ぎるとそこでスキルの効果が切れてしまう。

 地面を抉り、泥が舞った。俺も四代目も泥だらけになる。

 急激な体の怠さを感じて膝をつくが、無理やり振り返ると四代目は泥まみれ、血まみれの状況で両手に持つ短剣を見ていた。

 そして、短剣が手の中から消えると笑っていた。

 青い長い髪をかくと、胸ポケットから眼鏡を取り出してかける。

 四代目が空を見上げると、いつの間にか雨があがって青空と白い雲が空を覆い、風が吹いた。

 泥だらけ、血だらけであった俺たちの傷は塞がり泥が消えて武器も消えた。

 四代目が俺の方へ向き直ると、自分に入った傷を撫でて消していた。宝玉内だから見られる光景だ。

『最後は本当に俺を超えたね、ライエル。いや、武人としても超えたよ。うん、これでもう伝えることはない。満足だ。いや、大満足だ』

 青空の下、俺たちは一本道に立って向かい合っている。

 すると、俺の後ろに記憶の扉が出現した。四代目の部屋の扉だった。

「満足して貰えて、俺も良かったですよ。最後にお小言を貰わずに済みそうです」

 強がって軽口を叩くと、四代目は笑っていた。俺も笑顔を作るが、上手くいっているか分からない。

『……本当は見守っていたい気持ちもある。未だに頼りない部分もあるし、なによりも……少し関わりすぎたね。情もわくよ。けど、ここまでの方がいい。いつまでも口出しするのは良くないからね』

「別に……もうしばらく助言してくれても」

 俺の本音に四代目は首を横に振った。

『ライエルは十分に独り立ち出来る。俺はそう思うから安心しているよ。教える事は教えたし、ノウェムちゃんたちがいるから足りない部分も補って貰えると信じているからね』

 四代目は記憶の部屋の中。自分の心が刻んだ一本道の光景を見ながら。

『……人生も道に似ているね。最初は家族とともに、そして次は一人で、更に自分の家族とともに歩いて行く。最後は子供を見送っておしまいだ。そう、本来なら俺はずっと昔にフレドリクスを見送って終わっていたんだ。それが、こうしてライエルを見送れるのは、今では幸運に思えるよ』

 俺も四代目と共に道を見る。どこまでも続く道は、終わりも始まりも見えなかった。

「……最後にその、なにかあれば」

 俺のボソボソという声に、四代目は腕組みをして少し考えていた。そして、ニコリと笑うと最後のアドバイスをくれた。

『ライエル、皇帝を目指すなら覚えておくことだ。統治と支配は違う。そして、統治とは自分自身も国の一部だ。大陸をその手に収めたとしても、それはいつかライエルからライエルの子へ、そして孫へと受け継がれる借りものである事を忘れてはいけないよ。さっきの話と同じだけどね』

 四代目は俺を見て安心した様子で。

『……もしもライエルが皇帝になるなら、理不尽に踏みにじる命もあるだろう。恨まれ、憎まれる。そういった存在になる覚悟はあるかい? 皇帝になっても統治者となるなら得られる見返りは少ない。手にしてもその地位は空しいかも知れないよ。平凡な幸せは得られなくなったとしても――』

「――そうなったとしてもです。俺はやります」

 四代目は頷いていた。そして、最後のアドバイスをくれた。

『さて、俺が教えてやれることはこれで最後だ。復習の意味もこめて聞くように』

 四代目が両手を広げると、一本道を残して周囲に黄金色の畑が広がった。農夫が家族と作業をし、収穫を喜ぶ光景が広がった。

『戦いで必要なのは数。そして質も関わってくる。だが、それらを揃えるのに必要なのは日頃の内政だ。日頃の積み重ねが戦争で結果として表れるだけなんだよ。内政も外交も戦争と一緒。戦争は手段の一つでしかない。でも、それを選ぶしかないなら、勝利する条件を整える必要がある。ライエル、勝てる条件を揃えるんだ。そして、勝った後の事も忘れないように。死した英雄にはなるんじゃないよ。生き残った大悪党になりなさい』

 悪党になれと言って、四代目は俺に手を振る。

『こんなところかな? さてと、名残惜しいがお別れの時間だ。ライエル、期待しているよ』

「今までありがとうございました。四代目……様」

 頭を下げた。四代目は笑って俺を見送るつもりのようだ。

 俺は口を開きかけたが、そのまま口をつぐんで振り返って扉の方へと歩き出した。

 何度も振り返りそうになりながら、俺はゆっくりと扉へと向かう。そして、扉の取っ手に手を触れて扉を開けると振り返った。

 そこには、俺に手を振る人が沢山いた。

 四代目――マークスに加えて、その隣には小柄な女性が四代目と手を握ってこちらに向かって手を振っている。仲が良いのか、体も寄り添っていた。

 そして、その周囲には四代目の記憶で見たことのあるような家臣、そしてフォクスズ家の当主やその関係者らしき人たちが手を振っていた。

 目を見開こうとすると、その光景が眩しく光りだし気が付けば俺は気を失っていた。





 ――ミランダは、二人分のタオルケットをライエルの部屋に持ってくると最初にレオルドにかけてやった。

 次に、ライエルにタオルケットをかぶせてやったのだが、部屋を出る前に見た時よりも宝玉が光っているように見えた。

 青い光が増している。

 そして、ミランダはライエルの顔を見る。涙を流しており、その涙を指先で拭う。

「随分と悲しそうに泣くのね」

 ミランダはライエルの体を起こしてやり、自分もソファーに座ってライエルに膝枕をした。とても疲れているのか、ライエルは起きる気配がない。

 そうして髪を撫でるようにライエルを慰めると、ライエルがミランダの膝に抱きつくように体を動かす。

「今日は特別よ。頑張ったご褒美だからね」

 ミランダはライエルを優しく撫でてやる。年齢的に一つ年下のライエルだが、これでも国を手玉に取る傑物だ。そんなライエルに甘えて貰えるのに、ミランダも幸福感を覚えていた。

 傑物であるライエルが、自分を頼るのは嬉しい。ただ、どうしても周りにライバルも多く、その頻度は少ない。

「まったく、どんどん周りに女を増やして……はぁ、私も頑張らないと」

 そんなミランダは、優しい笑みと口調をライエルに向けるのだった――。





 ガレリア公王代理であるグレイシアさんの執務室で、俺はまとめた報告書を持って訪れていた。

 グレイシアさんもここ最近は裏切り者の領主の討伐、そして奪った領地の治安維持にと忙しく動いていた。

 戻れば通常業務も待っており、俺と同じように忙しい日々を過ごしている。

「これが頼まれた書類ですよ」

 俺が笑顔で書類を渡すと、グレイシアさんは疲れた表情で受け取るのだった。

「……すまない。レオルドの代役をさせて申し訳なく思っているよ。それで、レオルドは?」

 書類を処理したのは俺ではなくレオルド君という事になっていた。実際、手伝って貰っているし、書類の処理の仕方も俺のやり方を教えている。

 もう少しすればきっと普通に処理出来るようになるだろう。

「疲れているようなので寝かせています。明日には現地の視察をして貰いますからね。ミランダとクラーラをサポートにつけてください」

 グレイシアさんが困った表情で。

「二人も引き抜かれると辛いんだが」

 内政面で非常に問題のあるガレリアにとって、そういった方面でも活躍出来る二人は貴重な存在のようだ。

 ただ、いつまでも仕官させているわけにはいかないので、早く引き継ぎ出来る状態にしておきたい。

「書類仕事の出来る家臣を持てばいいのでは? そういう仕事も大事ですよ」

 グレイシアさんも考えてはいるようだが、それが上手くいかないと言うのだった。椅子に深く座り直し、足を組んで俺の報告書を読みながら。

「それが出来れば苦労はないよ。家臣を雇うのも金がかかる。領地は広がったが、今後は港の整備に治水と金もかかる上に、今いる家臣は武官を率先して雇うつもりでいるからな」

 そういった国柄なのだろうが、四代目から色々と聞いた俺にはバランスが悪いように思えた。

「……レオルド様の周りにそういった家臣を置きましょうか。しばらくはレオルド様が中心で内政を担当することになるでしょうし」

 すると、思い出したようにグレイシアさんが。

「それも反発が……そうだ。以前貰ったエルザの手紙だが、戦争回避は互いに難しいという結論に達した。どうにも裏切っていた他の領主たちが我が身の危険を感じて、次の戦争で手柄を立てたいみたいでね。ルソワースも同じような状況らしい。普段は後方で動かず、略奪の時だけ張り切るんだが、今回は最初から張り切ってくれるらしい」

 裏切りの証拠も、そして既に処理の準備も進めていた。各領主の動きが滑稽にも見える中で、俺はアゴに手を当てて。

「……なら、公王家はあまり動かない方針でいいのでは? 裏切り者の領主たちに頑張って貰うとして、高みの見物で良いでしょう。そうだ。レオルド様の初陣も済ませますか」

 国柄、初陣も済んでいないレオルド君は侮られる。

 どんな形でも初陣を経験しておけば、今後が楽になるだろう。

 グレイシアさんが申し訳なさそうに。

「そ、そうだな。レオルドも初陣を経験していい年齢だ。うん、すぐに手配しよう。エルザには注意して貰う事にして……すまない、すぐに手紙を書くから届けて貰えるか?」

 レオルド君の事になると真剣なグレイシアさんを見ながら、俺は笑顔で頷くのだった。

「いいですよ。向こうもそういう方針で動いて貰います。それと、レオルド君の武具ですが」

 グレイシアさんはまたも慌て出す。準備が間に合っていないのだ。すでに次の戦争までの期間は一ヶ月もなかった。

 そんな状態で戦争をするなと言いたいが、馴れ合いの部分もあるのでこんなものだろう。

「す、すぐに用意を……駄目だ。今から武具を発注しても間に合わない」

 次期公王の武具だ。質素すぎても侮られる。

 俺はグレイシアさんに提案する。

「知り合いの商人に頼んでおきます。ベイムで有名な商人なので期待通りの品を用意してくれますよ。腕の良い職人も抱えていますから大丈夫でしょうし」

 グレイシアさんが俺を見て。

「すまない。頼ってばかりだな。本来なら冒険者であるライエル殿に、ここまでして貰うのは問題も多いのだが……」

 まぁ、弱みにつけ込んで入り込んだので、申し訳なさそうにして貰ってもこちらが逆に申し訳ない。

 すると、グレイシアさんが――。

「そう言えば、数日前と少し雰囲気が違うな。いや、悪い意味で違うのではないんだが……」

 ――俺を見て以前の雰囲気とは違う様だと言ってきた。俺は首を傾げつつ。

「そうですかね? まぁ……色々とあったので、そのせいかも知れません。そうだ、話は変りますけど、今度のお土産はなにが良いです? ベイムにも戻るので、ついでに何か購入してきますよ」

 グレイシアさんは少し照れながら。

「い、いや、そんなに頻繁に貰うのも悪い。前に貰った香水もあるからな」

 両手を振って申し訳ないのでいらないと言われたので、何かお菓子でも差し入れすることにした。

 エルザさんの方にも何か手土産を持って行こう。ノウェムやアリアもいるので、別で何か差し入れも必要だろう。

「分かりました。お菓子でも差し入れしますね」

「いや、だから……」

 照れるグレイシアさんから振り返り、俺は執務室を出るのだった。
三代目(´・ω・)「……また寂しくなっちゃった」

三代目(´・ω・`)「誰か補充するか」



らいえる君|ω・`)ノ「僕もいるんだけど……」
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