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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

逸話とかかなり曲解されて伝わっているかもね十二代目

202/345

ルソワース

 ルソワース王国。

 王国の名を冠してはいるが、こちらはロルフィスと同じで王が不在だった。違いがあるとすれば、代理でもなく空位でもなく、女王が統治しているという事だ。

 今までは国王がいたのに、今代に限っては女王が即位している。

 ガレリアからロルフィスへと戻り、そこからルソワースに入国するコースで手間がかかった。

 ただ、最初に通行税を払うと、そこからは領主たちがいないので税を取られない。

 入る時と出る時に大きく通行税を取るだけだ。

 ポーターの天井から降りて、到着した村で場所を借りて一泊することになった。

 街道はほとんど規格が統一され、ガレリアのように領主の独自色が感じられない。そもそも、ルソワースは王がいるだけで、貴族たちは宮廷階位を持つだけの存在らしい。

 各地には代官が派遣されており、統一感があるのはそのためのようだ。

 ただ、到着した村の雰囲気は微妙だった。

 最初に通りかかった村は酷かった。かなり貧しい暮らしをしていたのだ。

 だが、ルソワースの中心地へと向かうにつれ、村や街が活気を得ているように見えた。

 一泊することになった村は、微妙な雰囲気の村だ。

 俺たちの受け入れを許可した代官に、商人たちがいくらかのお礼をすると上機嫌で屋敷へと戻っていく。

 そんな代官に、村人が集まり。

「代官様、なんとかなりませんか。この村の若者は、前の戦争で多くが怪我をしております。とても十名も出せる状況ではありません」

 村長らしい男性がそういうと、代官は興味なさそうに。

「それがどうした? 決まりは決まりだ。嫌なら金を払って免除して貰うんだな」

 自分が管理している土地は、あくまでも一時的な管理である代官。

 領民の訴えを無視して屋敷へと戻っていた。

 大型ポーターを指定された場所に止めたクラーラが、俺のところに来る。

「ライエルさん、ポーターも移動させてください」

「え? あぁ、分かったよ」

「どうしました?」

 クラーラが首を傾げてくるので、俺は先程の代官と村長とのやり取りを話した。クラーラはそれを聞いて。

「ルソワースは、ルソワース王家が管理している国ですからね。よく言えば一枚岩ですが、管理が行き届いていないのかも知れません」

 各地に代官を派遣し、全てを王家が管理しているのがルソワースだ。そのおかげで、まとまりがあると言えばあるのだろう。

 ただ、そのまとまりも現地を見るに、問題がありそうだった。

 宝玉内からは、七代目が。

『……あの代官が仕事熱心ではないのか、あれが普通なのかで問題がありそうですな』

 四代目は、ルソワースの内情を見ながら。

『というか、中心地に近くなるほどに豊かになっている気がするのは勘違いかな? なんだか雰囲気が微妙だね』

 統治方法が違うので、出てくる問題も違うのだろう。ただ、バンセイムとも違う雰囲気だった。

「国が違うと事情が違うのか。いや、分かってはいたんだけど……」

 クラーラも俺の意見に同意する。杖を持ち、周囲が暗くなったので魔法で明かりを点していた。

「まぁ、本で読んで理解するのと、経験するのでは違いもありますからね。全体で統一された規格を持っているみたいですし、ガレリアよりもスムーズに移動出来ていいですけど」

 確かに、移動をするならルソワースの方が格段に条件は良かった。

 俺が周囲を見ていると、微妙な雰囲気の村人たちが珍しそうにポーターを見ていた。

 すると、三代目が俺に提案をしてくる。

『ライエル、ここで情報でも集めて見ようか。エヴァちゃんに少し歌でも披露して貰おうよ。まだ、代官は近くにいるみたいだし』

 俺もそれがいいかと考え、エヴァを呼ぶ事にした。





「……名宰相?」

 夜。テントの中で、俺はエヴァが持ち込んだ情報を確認していた。

 テントの中にはノウェムとアリアがおり、エヴァの話を聞いている。ただ、アリアの方は眠そうだった。

 エヴァは村人たちから聞き出した情報を自慢気に語り出す。

「そう! なんでも、十年以上前に宰相が誕生したらしいのよ。それまでは王様が色々と政治的な判断を下していたらしいんだけど」

 それを聞いて、五代目が宝玉から。

『いや、それが普通だろ? 宰相がいても、最終的にはその上が判断する訳で……ある程度の権力を与えているのか?』

 ノウェムはエヴァの話を聞きながら。

「前にベイムで得られた情報は、二大戦乙女の情報が多かったですからね。その周辺の人間関係までは調べられませんでしたし」

 俺は少し悔しく思った。

「もっと早くに輸送団の護衛があると知っていれば、ラウノさんに頼んだんだけどね。今はレダント要塞の向こうを調べて貰っているし」

 アリアは、話が逸れるのが嫌なのかエヴァに続きを求めた。椅子に座っており、どうにも目がトローンとしてきている。

「それより、その名宰相がどうしたの?」

 エヴァは眠そうなアリアを見て、溜息を吐きつつ。

「だから、今は名宰相が政治を支えて、ルソワースの女王が軍事面の柱という訳よ。ガレリアはあのグレイシアさんが支えているけど、ルソワースは二人が支えているんだって」

 名宰相。

 そう言われるからには、それなりの理由があるのだろう。ただ、四代目だけは微妙な反応を示していた。

『……名宰相ね』

 ミレイアさんが、四代目の疑問をたずねた。

『何か引っかかる事でも?』

 四代目はハッキリとは言わないが、どうにも二国の状況を宜しくないと考えているらしい。

『あのグレイシア、って子もそうなんだけど、あの子と戦えるエルザだったかな? ルソワースの女王も戦場では頼りになるかも知れない。けど、国の内情を見ると、どうもスッキリしないね』

 軍事力は未知数だが、どうにも四代目は何かが気になるらしい。

(軍事、政治共に充実していそうだけど)

 俺はルソワースも何かあるのかと勘繰ってしまうのだった。





 それから割とスムーズにルソワースの中心地に来ることが出来た。

 中心地は城塞都市であるのはガレリアと同じだが、規模から言えばルソワースが二倍とは言えないが、結構大きい。

 到着した俺たち一行が向かったのは、立派な城だった。

 ただ、俺はルソワースの抱える問題点に気が付いてしまっていた。いや、気付かされたと行った方が良いだろう。

 城へと向かう途中、その豊かさが目に入った。

 そして、中心地であるこの城塞都市へと近付けば近付くほどに、村や街が豊かになっていたのだ。

 つまり――。

「なんとか間に合いましたね。これで次の戦には間に合うでしょう」

 長い白髪を縦ドリルにした初老の男性が、到着した俺たちを見てそう言った。
男性は【レトル・ハルドア】――ルソワースの名宰相だ。この宰相、実は中心地であるこの城塞都市に近ければ近いほどに、名声があった。

 それはつまり、この宰相が中心地の統治は出来ている事を意味していた。

 男性の隣では、大型ポーターから降ろされる荷物を見ている女性がいた。

 戦乙女の二人目。

 【エルザ・ルソワース】である。彼女は、俺の近くで作業を見ている。いや、監視している感じがした。

 無口ではないが、物静かな印象だった。どこか冷たく感じるのは、その立ち居振る舞いから来る雰囲気のせいだろう。

「おい、そこのお前」

 エルザさんが声をかけたのは、ノウェムだった。ノウェムは、エルザさんに向かって挨拶をすると、エルザさんは不要だという。

 水色の長い髪を軽くかきあげ、紫色の瞳は鋭い目つきもあって冷徹に感じた。同じ紫の瞳だったグレイシアさんとも違う。ノウェムとも、もちろん違う瞳だ。

「なんでしょう?」

「……ガレリアに先に行っただろう? どうだった、あの魔女の様子は?」

 エルザさんは騎士が着るような服を身につけており、ここはグレイシアさんと同じだった。武人という雰囲気だったグレイシアさんとは、受ける印象が違うのは何故だろう?

 ノウェムが困ったように微笑むと。

「私たちは護衛ですので、会話もありませんでしたので」

 エルザさんは、それを聞くと鼻で笑った。

「そうか。戦の前にあいつの震えている姿が聞きたかったのだが。まぁ、いい」

 銀色の杖は、まるでメイスのように見えた。それを片手で持ち、肩にかつぐとエルザさんは荷を見て言うのだ。

「ベイムからの荷も間に合った。これで心置きなく戦えるな。次こそは奴の息の根を止めてやる」

 笑う彼女の笑みは、どこまでも冷たい何かを発していた。

 宰相が頭を下げ。

「政務はお任せください。エルザ様が戻られるまで、このレトルがしっかりと管理いたします」

 宰相の言葉に、一瞬だけエルザさんの反応が送れたのを、俺は見逃さない。

(なんだ?)

「……期待しているぞ、宰相。お前がいてくれて良かった。さて、私は城に戻って準備に入るとしよう。商人たちの相手を頼む」

「はっ!」

 宰相が返事をすると、供の者たちを連れてエルザさんが城の中へと戻っていくのだった。

 そして、エルザさんの姿が見えなくなると、宰相は少し態度が大きくなる。

「グズグズするな。こちらは急いでいるのだ」

 商人の代表が、それを聞いて作業をしている者たちに急がせる。そして、宰相の下には貴族たちが集まっていた。

「宰相様、これでなんとか戦に間に合いますね」

「あぁ、まったくだ。それにしても、ベイムは我々とガレリアにいい顔をして信用ならんな」

 まったくの同意見だが、商人などそんなものだ。

(何しろ、ベイムの商人は死の商人だからな)

 多かれ少なかれ、ベイムとはそういった商人たちの集まりである。

 宝玉内では、三代目が何か気付いたのか。

『……う~ん、こいつかな?』

 そして、四代目は確信したように。

『ですね。迷宰相という奴ですよ』

 そう言うのだった。





 ――ルソワースの城の中。

 エルザはシャワーを浴びてから、一人部屋でベッドに横になっていた。

「はぁ、流石にグレイシアちゃんも商人たちに手紙を渡さないか。ちょっと期待していたんだが……」

 溜息を吐くと、部屋の中にあった箱に手を伸ばした。そこには、以前貰ったプレゼントと手紙が入っている。

 中身は肌荒れ対策の薬である。

「お礼もしたいんだが、私がこういうのを注文すると宰相が五月蝿いからな。税金は民の血税とかなんとか……お前は鏡を見ろ、っての」

 女王と呼ばれているエルザだが、自分が宰相の都合の良い駒であるのを誰よりも理解していた。

 最初はルソワースの王族の中で強いというだけだった。家族にも距離を取られ、小さい頃のほとんどを預けられた辺境で過ごしていた。

 首都でゴタゴタがあったのは、全てが終わってから知らされた。そして、王族の中で傀儡となる王が必要になった。

 それがエルザである。

「手紙で謝らないと。というか、何か渡せる物があればいいのに……というか、もっと可愛い服とか着たい」

 持っている服装は、ほとんどが公務で使用する騎士服だった。王の衣装はエルザが着ることは出来ず、ドレスもどうかと言われて騎士服になったのだ。

 宰相は自分の趣味なので満足だろうが、エルザはそうではなかった。

 いきなり首都に連れてこられ、女王にさせられたのだ。しかも、宰相のいう通りにしなければ、命も危なかった。

 従わない王族を殺害したのは、明らかに宰相である。

 会った事もない肉親に同情も出来ないエルザだが、宰相の汚い手段は知っている。自分など殺すのも簡単だという事も、エルザは気が付いていた。

「はぁ、今回も戦争とか……打ち合わせは済ませているけど、正直気が進まないなぁ」

 ベッドの上で綺麗な素足をバタバタさせ、枕を抱えるエルザは高身長だが可愛らしかった。

 しばらくバタバタして、溜息を吐くと立ち上がる。

「……準備でもするか」

 嫌そうに用意された服に手を伸ばし、エルザは着ていた服を脱いで裸になると着替え始めるのだった――。





 その日。

 俺は信じられない光景を見た。

 ルソワースからロルフィスへ向かう輸送団から外れた俺は、麒麟姿のメイに乗って空からその光景を見ていた。

「な、なんだよ、これ……」

 青白い炎が戦場を飲み込もうとすると、それを巨大な氷が壁を作って防いでいた。氷の破片が地上に降り注ぎ、地面に激突すると土煙が立ち上る。

 衝撃で人が吹き飛んでいるが、それは戦っている二人の後方で自分たちを守っている兵士たちだ。

 戦場では、二人の女性を前面に出して一騎討ちが続いていた。

 余波で互いの兵士が負傷していく光景が続き、しばらくすると両者が下がった。

 空の上からそんな光景を見ていた俺は。

「あいつら、絶対に普通じゃない」

 そう呟くのだった。

 そして、ミレイアさんが宝玉から声を出す。

『……あれは、後衛系のスキルね。両方とも広範囲を巻き込むタイプみたい』

 五代目は一言。

『防衛戦前にこちらがに引き込んでいれば、かなり楽だったんだけどな。ま、戦力としては十分だよな』

 三代目は思案しながら。

『あとはどうやって引き抜くか、だね』

 俺は思った。

(……え? 引き抜くつもりなの?)
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