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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

骨肉の争いとかないといいね十一代目

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魔物の軍勢

 ダミアンたちの作業を確認するために、屋敷の倉庫へと向かうとそこにはラタータ爺さんの孫が来ていた。

 木箱を運び込んでおり、泊まり込みで作業をしているラタータ爺さんのために着替えなども持ち込んでいた。

 ラタータ爺さんが、木箱から取り出したのはカタナという武器のようだ。

「ついに完成しましたか!」

 嬉しそうなモニカだが、爺さんの孫は疲れた表情をしていた。

「この忙しい時に指示されたとおりに武器を作れとか……あのね、これ一つにいくつもの行程があるとか聞いてなかったんだけど? なんだよ、磨き、って!」

 疲れた表情をしているのは、魔物の軍勢が出現しようとしている現状で職人たちも準備に追われていたようだ。

 なのに、新しい武器を作れと指示を受け、孫であるドワーフの青年が苦労して完成させたようだ。……一人で。

 俺は申し訳ない気持ちになりつつ、木箱を見ると少し形の違う五本の刀が入っていた。一本は、ラタータ爺さんが確認している。

「見てもいいですか?」

「構わん。お前の武器だ。少し調整も必要だろうから、孫を使ってくれ」

 青年が肩を落とした。

「知らない武器の調整とかどうしろと……」

 ラタータ爺さんは、刀を鞘に戻して木箱へと戻した。もう一本に手を伸ばし、次々にカタナを確認していく。

「サーベルの柄を使ったのはいいんだが……これ、違くね?」

 爺さんが首を傾げると、カタナを見て嬉しそうに見ているモニカが顔だけこちらに向け。

「こういうものです」

「いや、これはどう見ても……」

 ラタータ爺さんが困惑しているので、俺は一本を手にとって鞘から抜いてみた。反りがあり、刃には綺麗な波紋があった。

 見ている分には吸い込まれそうになるのだが、片手で持つようなサーベルの柄が使用されており、持った時に扱いにくさを感じたのだ。

 斬る、突く、構え、色々と使用した結果、俺は――倉庫に戻ってモニカの頭部に拳を叩き付けた。モニカの金髪であるツインテールが、揺れる。

「使い方が違うじゃないか! 何が似ている、だ! まったく違うだろうが! しかもこれ、絶対に両手持ちだろうが!」

 モニカは両手で頭部を押さえながら。

「大丈夫。恰好いいので」

 俺はツインテールを掴み、そして反対方向へ引っ張る。

「待って! 大事なツインテールがもげる! 私の大事な髪の毛が! 止めて! でも、そこまでして欲しいというなら、すぐに生えてくるのでチキン野郎にあげても……」

 嫌がっているのか、喜んでいるのか。

 俺はカタナを青年に手渡した。

「どうします? もう少しだけ短くしましょうか?」

「いや、このままで。どのみち、違う依頼をするつもりなので、そちらを優先して貰えますか?」

「……え? 依頼とか聞いてないんですけど」

 ラタータ爺さんを見る青年だったが、ラタータ爺さんの方は最後のカタナを確認し終わって。

「わしは忙しいからお前が依頼を受けろ。なに、仕事をして成長する事もある。義息子の方も忙しいだろうから、お前が頑張れ」

 青年がまたしても肩を落とした。

 ラタータ爺さんの作業机には、女性の二の腕から先の機械仕掛けの腕がいくつも置かれていた。太ももから先の足の部分は、倉庫の壁に置かれている。

 女性らしいラインで、本格的に作られていた。

「こちらも順調ですか?」

 机の上を見ながら確認すると、ラタータ爺さんは頷いた。

「ダミアンの坊主が本体を完成させれば、あとは組み上げるだけだな。鎧の方も作ったんだが、翼はリアルに鳥の翼が良いか、それとも機械の翼がいいか悩んどる」

 そんなところにこだわらないでも言い気がするが、真剣に悩んでいるようだった。

「二週間後に間に合うなら悩んで貰ってもいいんですけどね」

 すると、ラタータ爺さんが俺を見て。

「なんだ? 二週間後には魔物が来るのか? ここにいていいのか、兄ちゃん?」

 俺は頭をかいた。

 ラウノさんの情報では、すでに迷宮から次々に魔物が出て来ているという。下手に深くなったので、どうしても数は数十万に届くと予想されていた。

 ベイムの冒険者たちも偵察に出ており、魔物の大半が隣国ではなくベイムを目指すと予想していた。

「輸送も進めていますよ。向こうでは作業も順調です。人手に関しては……ベイムではなく、ザインやロルフィスから借りられるだけ借りましたから」

 今回、クラーラが輸送や砦の増築にかなり貢献してくれた。

 知識から最適な砦を提案してくれた。それを元に、俺の方で資金を用意して必要な道具や材料を揃えたのだ。

 あとは、職人たちに任せるだけである。

 すると、倉庫内で区切られた場所から、白衣を着たダミアンが出て来た。傍にはオートマトンのメイド一号がおり、なぜか嬉しそうにしている。

「あれ? また戻ってきたの?」

「こっちで用事があるんだよ」

 ダミアンは眼鏡を外すと、レンズを拭いていた。

「こっちは順調だよ。起動は砦の方ですると思うけど、ギリギリ間に合うかな?」

「ちゃんと動くよね?」

 オートマトン。

 モニカたちとは違い、更に原始的になったとダミアンは言っていた。しかし、戦闘に特化したオートマトンでもある。

 ラタータ爺さんは。

「動くには動くが、問題はどれだけの性能があるか分からん事だな。ゴーレムなんて、操作する人間次第だからな。勝手に動くと言われても、どれだけの性能が出せるか」

 ダミアンは眼鏡をかけると。

「こっちは間に合わせるから安心してよ。実戦で性能テストとか憧れるよね! それで、今回はなんで戻ってきたの?」

 俺は溜息を吐いた。

「……銃関係の受け取り。ヴェラのところで弾薬とか受け取らないと」

 ヴェラもレダント砦に行くと言っていたが、それは流石にフィデルさんが許さなかった。

 貴重な船員もトレース家からすれば貸し出すことが出来ないので、銃関係は向こうで教え込まないといけない。

 弓矢に弩、それらも出来るだけ用意したいが、ベイムの方でもかき集めているので金があっても買えない状態だった。

「フィデルの小僧をかなり煽ったらしいな? 命知らずか? 小僧もベイムの商人だぞ。その気になれば、荒事に向いた連中を送り込んでくる」

 ラタータ爺さんは心配そうにしていたが、俺の方は肩をすくめ。

「ギリギリのラインで煽っているので大丈夫ですよ。それに、このタイミングで襲撃するような人でもありませんし」

 俺が砦に行くと知って、最初はかなり嬉しそうにしていた。支援も約束させたおかげで、トレース家が支援するならといくつかの商家からも支援をして貰えた。

 俺は机の上に置かれたカタナから、一本を手にとって。

「……一本だけ借りていきます」

 ラタータ爺さんが笑う。

「それはお前のだけどな」

 モニカは、自分のツインテールをセットし直しており、俺がカタナを手にとって腰に下げると、興奮したように。

「チキン野郎、格好いい!」

 などと両手を上げてきた。腹が立ったので頬をつねった。





 麒麟姿のメイに乗り、俺は空の上から地上を見ていた。

 迷宮のあった洞窟は入口を広げ、そこからは続々と魔物が出て来ている。途切れない魔物の流れ、そして近くにある村はすでに焼かれていた。

 遠くから見下ろしているのでハッキリとは分からないが、魔物がやったものではない。

 人の手によって粛正された感じだった。

 俺の背中には、ロープで体を結んだシャノンがしがみついている。ガタガタと震えており、高い場所とあって上着を羽織っていた。

「寒いのか?」

 そうたずねると、シャノンは俺に向かって。

「怖いのよ! こんな高い場所がなんで平気なのよ! あんた、今の私があんたとのラインで目が見えているのを忘れないでよね!」

 涙目のシャノンは、俺が得ている視覚情報を共有していた。

 連れて来た理由は、偵察にはシャノンの目が必要だったからだ。俺のスキル――五代目のディメンションで立体的なマップの上には、六代目のサーチで得られた情報で地面が赤く染まっていた。

 数など数え切れないが、どう考えても数万規模ではない。数十万規模の魔物たちが、迷宮から出て数を増やしていた。

 メイは興奮しており、今にも突撃しそうな勢いだ。

「……この周辺に仲間はいないけど、声をかけたからしばらくすれば集まってくるよ。けど、このまま放置でいいの?」

 眼下には魔物がひしめき合っている。不気味な声は空まで届き、グリフォンの姿も確認出来た。

 オークやオーガだけではない。ランドドラゴンの姿も確認出来る。

 未だにこちらに気が付いていないが、空を飛んでいる魔物も多かった。

 迷宮が暴走して一番怖いのは、魔物の軍勢が引くことをしないからだ。大部分が人間の大都市を攻め込み、そして破壊し尽くすと周囲に散らばっていく。

 誰も立ち入らない迷宮なら、暴走しても規模は小さいままだ。しかし、人が手を出し、暴走させた迷宮は数十万規模の軍勢を作り出す。

 そして、それだけの規模の魔物が、止まらずに大都市を目指して蹂躙するのだ。

「悪夢だな。……メイ」

 宝玉を左手で握ると、銀色の弓になった。体を動かすと、シャノンが余計に強く俺の背中を抱きしめる。

 空高くから、俺は弓を引いて光の矢が作り出された。それぞれが曖昧な形から、ハッキリとした矢の形を作り出すと、俺はスキルを使用する。

「セレクト――」

 二代目のスキルで、眼下の魔物に対して狙いを定めた。

 厄介な魔物を先に潰しておきたかったのだ。潰すべきはランドドラゴンではない。グリフォンだ。

 そして、空を飛ぶ魔物たちである。

 遠くに見える点にしか見えない魔物たち。その中で空を飛ぶ魔物たちに狙いを定め、俺は光の矢を放った。

 更に、メイの腹を蹴ると移動させながら弓を引く。

 光の矢が五本放たれると、そのまま空を飛んでいたグリフォンに命中する。直後、魔物の動きが活性化して、地上にいた魔物たちも空へと舞い上がってきた。

 百、二百、五百――。

 次々と増える空を飛ぶ魔物たちは、動き回って俺たちを発見する。追われる俺たちは、そのまま逃げるように移動を開始した。

 矢を放ち、また五体ほどの魔物を仕留めると、グリフォンやヒッポグリフが地面へと落下していた。

 シャノンが魔物たちを見て叫んだ。

「何してんのよ! 追いかけて来たじゃない!」

 メイはまだ足りないのか。

「もっと派手に吹き飛ばせば良いのに」

 追いかけてくる魔物に光の矢を放ちながら、俺は次々と撃ち落としていく。メイの空を駆ける速度に、魔物たちは追いつけなかった。

 しかし、一体だけ――。

「うわ、厄介なのが出て来たね」

 メイが厄介という魔物を、俺は振り返って確認した。

 黒い体、そして黄色く長いくちばしを持つ鳥のような魔物が、こちらに急速に接近してきていた。

 広げた翼には、まるで目のような赤い模様があった。吸い込まれそうなその目を見ていると、シャノンが俺の頬をつねる。

「なんだよ!」

 頬を押さえると、シャノンは右手を離した。

 シャノンは俺を涙目で見ながら。

「あんたが吸い込まれようとしていたからでしょ!」

 吸い込まれるという表現が理解出来なかったが、メイが説明してくれた。

「あれはそういう魔物なんだよね。人間がなんと呼んでいたか忘れたけど、気を付けないと動けなくされるよ」

 すると、三代目が俺に助言をしてくれた。

『知らない魔物だね。レアなのかな? ま、それはそうと……ライエル、僕のスキルは何も相手に干渉するだけが取り得じゃないよ』

 三代目が言ってくるので、俺は思い出したようにスキル――マインドを使用した。

 精神干渉を起こすマインドだが、こういった精神攻撃を防ぐことも出来るのだ。

 呼吸を整え、力一杯に弓を引くと急速に距離を縮めてくる魔物に向かって矢を放った。

 相手が避けるために急降下するが、光の矢もスピードを緩めないままに追尾する。

「速い」

「だから厄介なんだよね。麒麟でも、小さい子は食われちゃうんだ」

 メイがそう言うと、俺はもう一度矢を放った。空中で追尾してくる矢を避けようとする魔物は、空の上で光の矢を回避する。

 光の矢が命中することなく消えた。

「当たる前に避けきった? こいつ、本当に厄介だな」

 第三、第四と矢を放ち、空の上で魔物はいくつもの矢から逃げ惑っていた。そして、振り切ると、こちらに向かって飛びかかってくる。

 メイよりも大きな体をしており、足の爪はとても鋭そうだ。黒く、先端が紫の爪には、どこか毒々しさを感じた。

「あれ、強い毒だから気を付けてね。人間だと液体に触れただけでも死んじゃうよ」

 メイの助言を聞いて、シャノンが俺にしがみついて叫ぶ。

「なんで私を連れて来たのよ!」

 偵察くらい頑張って貰おうと思ったのだが、シャノンは泣き出して使いものにならなくなった。

 ミレイアさんの溜息が聞こえ、少しだけ背筋が寒くなる。

『まったく。どうしてその瞳の力を持って、ここまで駄目なのか……可愛いんですけど、少しというか、かなり鍛えないと駄目ね』

 それを聞いて、五代目はボソリと。

『シャノンはこのままの方がいいと思うけどな』

 そう言っていた。

(お前ら、もっと俺の心配もしろよ!)

 腹立たしく思いながら、俺は深呼吸をしてから弓を引く。呼吸を整え、加速するメイの背に乗って魔物を睨み付けた。

「……アップダウン」

 四代目のスキルを使用すると、メイのスピードが更に速くなる。対して、魔物の方は急に動きが鈍くなった。

 しかし、スキルによる干渉を振り払おうとしていた。

「こいつ強いな」

 とんでもない魔物がいたと思いながら、俺は魔力を込めた光の矢を放った。

 魔物がすぐに回避しようとすると、矢は途中で爆ぜてそのまま数十本の矢になって魔物を追尾する。

 囲まれ、そして逃げ場をなくした魔物に、矢が何十本と突き刺さり空中で爆ぜた。

 バラバラになった魔物が、地面に落下していく。

 汗をぬぐうと、俺はまだ他にも同じ種類の魔物がいないか気配を探った。いないようだが、随分と嫌な魔物が出て来たと思うのだった。

 そして、俺は背中にしがみつくシャノンを見た。途中で、ラインが切れてしまったので、何事かと思って見てみると……。

「こいつ、服を掴んだまま気絶しやがった」

 白目をむいたシャノンを見て、俺は溜息を吐いた。
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