挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

骨肉の争いとかないといいね十一代目

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

179/345

歴代当主+αのプラン

『将来のために、ベイムの商人やギルドとはある程度は戦っておこうと思うんだ』

 真剣な表情で円卓の上に肘を置き、両手で口元を隠す三代目は座っている面々に視線を巡らせた。

 宝玉内。円卓の間では、俺や歴代当主たちが座っている。五代目だけは、円卓に腰掛けて椅子をミレイアさんに貸していた。

 周囲も真剣な表情で頷いているが、俺は疑った視線を周囲に向け。

「本音はどうなんですか?」

 すると、三代目が「あれ? 分かっちゃう?」などとヘラヘラとしだしたのだ。四代目は眼鏡をキラリと光らせ、口元を三日月のように歪めると。

『ベイムは危険すぎる。いくらベイムで指折りの商人の娘でも、金貨十万枚を出せる時点で異常だ。だから、将来のためにこちらに負い目を持って貰おうじゃないか。その方が、ライエルも将来は規制しやすくない?』

 ――つまり、この人たちは、ベイムに協力させるのは当然。だが、将来は何かしら規制、もしくは圧力をかけたいと思っている訳だ。

「……勝てるかどうかも分からないのに、そうやって敵を作るような事をしますか?」

 呆れている俺に、ミレイアさんが微笑みかけながら。

『あら、いいじゃないの、ライエル。商人を舐めてはいけないわ。彼らは、その気になれば貴族の前で膝をつきながら、懐に忍ばせた武器でいつでもこちらを殺せる立場なのよ』

 七代目も、ミレイアさんと同意見だ。

『全員がそんな商人ではないが、大きすぎて管理出来ない利権は奪っておくに限る。ライエル、お前のためだ。いや、将来の大陸のためでもある』

 五代目は天井を見上げながら。

『商人や金の力を舐めるなよ。奴らが裏から大陸を牛耳るようになるのはまずいからな。ま、勝つのは当然。そして、どこを目指して勝つのか決めるときが来た』

 微笑んでいるミレイアさんを見ながら、俺は内心で――。

(この人、ヴェラの父さんに義父さん呼びをするように言っていたけど、煽るためだったとか……どいつもこいつも腹黒い)

 ――だが、そうは言ってもヴェラから支援を受け、俺はまた動き出せる段階だ。次の行動のためには、やはり明確な将来の立ち位置を決めないといけない。

「将来、俺がどういった立ち位置になるのか、でしたね」

 七代目が真剣な表情で頷いた。

『そうだ。勝てばいいというものではない。お前の肩には、少なくとも九人もの嫁の人生がかかっている。もっと言えば、ついてきた者たちの事もある。死んで英雄になるのは絶対に許さん。わしらが協力するのは、戦って生きるとお前が決めたからだ。下手な英雄願望は捨てろ』

 三代目が俺を見ながら、椅子の背もたれに体を預けると肘掛けに手を置いた。

『ま、勝っても同じウォルト家の人間として殺されても面白くないからね。確かにセレスはウォルト家の罪だ。だけど、ライエルまで殺されるのを僕たちは認めない。ライエルが死ぬくらいなら……ハッキリ言って、大陸に長い混沌の時代が来てもいいと思っているからね』

 四代目が指で眼鏡を押し上げ、位置を正すと背筋を伸ばし。

『勝つにしてもライエルの立ち位置で色々と変わってくる。どのように勝つのが理想か? それは可能か? そして、将来はどこを目指すのか? 言い方を変えれば、ライエルが先頭に立ってバンセイムを滅ぼすのか。それとも、誰かを先頭に立たせバンセイムを滅ぼすのかの違いだね』

 ミレイアさんが、簡単にまとめる。

 クスクスと笑いながら、口元を手で隠し。

『ようは、ライエルが王になるのかならないのか、という事です。宰相的な地位を目指しますか? それとも、ウォルト家の領地を取り戻しますか? 王と言っても、統治方法が変われば、呼び名も変わりますけどね』

 継ぐべきだった領地を取り戻すのか。

 それとも、国の中核に深く食い込むのか。

 自分が先頭に立ち、王になるのか。

 五代目は、真剣な表情で俺を見てきた。

『今決めろとは言えないが、早い内に決めろ。ヴェラのおかげでこっちは想像以上に早く動ける。将来の立ち位置を決めないと、どこまでギルドや商人たちと争うのか決められないからな』

 三代目が手を叩く。二回叩いて、雰囲気が暗くなったのを一気に晴らすような笑顔で。

『ま、今は色々と準備段階だ。ここからいくらでも修正はできる。考えておくんだね。それと、フィデルの義父さんを煽っておこうか。どうやら娘が弱点みたいだ』

 嬉しそうにする三代目に、五代目が。

『娘なんていつか送り出すものだろうに。何を考えてあそこまで可愛がるんだか』

 いつものようなドライな感想だった。しかし、ミレイアさんは嬉しそうにしていた。

『お父様は不器用ですね』

 そんなふうに言うのだった。





 ベイムへと戻ってきた次の日。

 旅から帰ってきた事で、屋敷に戻るとそのまま疲れたように眠った俺だった。だが、目を覚ますとアデーレさんに呼び出され――。

「なんですか、これ?」

 山積みとなった書類の山が存在する部屋で、泣き出しそうなアデーレさんを前にして俺は欠伸をしていた。

 疲れが取れないのではなく、最近色々と濃い日々を過ごしていたせいで疲れが出て来た。

 考える事も多く、戻ってくればトレース商会の件でまた忙しくなる予定だった。

 しかし、アデーレさんが。

「ザインとロルフィスの書類です! いったいどうしてこんなに集まるんですか! 何をしたんですか、ライエルさん!」

 アデーレさんの後ろでは、マクシムさんがオロオロとしていた。彼女を慰めようとしているが、言葉が出てこないのだろう。

 俺が書類の山から一枚引き抜いて、その内容を確認した。

「……なんでこんな書類がここにあるんです? こんなの、俺は関係ないですよ」

 すると、四代目が俺にアドバイスをしてくる。

『ふむ。処理能力を買われて仕事を依頼しているつもりなのか、それとも繋がりがあると見せたいのか……ま、このアデーレ、って子が生真面目にしっかり仕事をするから、次々に送られてきたんじゃない。それにしても、微妙な書類が多いね』

 そういう事なのか? そう思った俺は、アデーレさんに。

「生真面目に仕事を片付けるから増えたんじゃないですか? そもそも、俺の仕事じゃないので送り返して貰って良かったのに」

 すると、フラフラとアデーレさんが床に座り込み。

「そ、そんなぁ~」

「お、お嬢様ぁぁぁ!! お待ち下さい。すぐにケーキの用意をいたします。甘いケーキですよ! ケーキ!」

 マクシムさんがアデーレさんの好物を叫びながら、なんとか泣き止ませる。目に涙を溜めたアデーレさんだが、泣くのを我慢すると俺に文句を言おうとしたのだが――。

「ライエル! 研究費が確保出来た、って本当かい!」

 ――ドアを勢いよく開け、積まれた書類の山を風で吹き飛ばしたダミアンが部屋に入ってきた。

 笑顔で、三人のオートマトンを連れている。

「あぁ、ご主人様が少年のような笑顔で……永久保存です」
「これで欲しかった機材が購入出来ますね、ご主人様」
「らいえるサン、グッジョブです」

 三体目のライエルさんという呼び方が、少しイラッとしたが我慢した。基本的に、モニカと一緒で彼女たちはダミアン以外に興味が薄い。

 頼めば仕事はしてくれるが、ダミアンとの力の入れ具合が違いすぎる。

 すると、部屋に片手にお盆を持ち、その上にケーキと飲み物を用意したモニカが登場した。

「この量産機共が。仕事もしないでキャピキャピしやがって……チキン野郎、仕事のできるメイドであるこのモニカをものにできて良かったですね。この果報者」

 アデーレさんの前にケーキと飲み物を用意すると、モニカは俺にも飲み物を用意した。

 涙目でケーキにフォークを荒々しく突き刺すアデーレさんは、そのままケーキを食べて悔しそうに。

「……美味しい」

 と、言うのだった。マクシムさんは、そんなアデーレさんを見て、微笑んでいた。頬を染めており、何か見てはいけないものを見た気分だ。

「ケーキを食べるお嬢様もお美しい」

 飲み物を飲みながら、俺はダミアンに対応する。

「さて、ライエル。それでいくら支援を引き出せたんだい? 五万は引き出せたんだろうね?」

 ワクワクするダミアンに、俺は正直に話すのだった。

「商会から支援を受けているわけじゃないけど、個人的に十万を出して貰う事になった。欲しい機材のリストを用意してくれ。それから、予算は五万に留めてくれ」

 モニカの姉妹をゴーレムとして復活させる計画。

 それもあって、ダミアンには頑張って貰う必要があった。

(ヴェラに相談して、機材を安く仕入れることができないか聞いてみるか。それに、職人も紹介して貰わないと)

 すると、オートマトンたちが。

「らいえるサンのケチ」
「ご主人様がどれだけ機材を買うのを心待ちにしていたと思っているんですか?」
「ケチ。らいえるサンのケチ!」

 からかうように俺に言ってくる三体のオートマトン。すると、モニカは両手に以前持っていたドリルよりも、立派なドリルを取り出して構えた。

「チキン野郎への侮辱は許しません! 侮辱して良いのは私だけだ!」

(……お前も侮辱したら駄目だろ)

 低い音がうねりながら回転するドリルを構え、モニカは三体のオートマトンと睨み合う。三体の方も、それぞれ武器を取り出して構えていた。

 だが、ダミアンの方は。

「五万か……なら、あれとあれに……あぁ、でもあの装置もないと研究が」

 すでに何を買うかリストを書き始める。しかも、その辺にあった書類の裏に書き込んでいた。

 アデーレが何かを言おうとして、止めた。ダミアンには何を言っても無駄だと、理解したのかも知れない。

 そして、ケーキを食べ終わり、飲み物を口にしながら。

「ライエルさん、一つ宜しいですか」

「なに?」

「今回はお疲れ様でした。結構な金額を稼がれたようなので、しばらくは衣食住に困りません。ですが、セレス打倒を考えると、どうしても資金面で問題があります。個人で金貨十万枚はとんでもない金額です。でも、国とみると……」

 そう。国を相手にするには、金貨十万枚では足りない。それが、バンセイムという大国を相手にするならなおさらだ。

「分かっています。幸い、移動中に名を上げることができました。商人たちが今まで以上に専属契約を結ぼうとするはずです。資金面では早い内に解決出来ると……あ、駄目だ」

 アデーレさんの後ろに立っていたマクシムさんが。

「駄目とは? ベイムでも噂になっていましたが? トライデント・シーサーペントでしたか? 商人たちが専属契約を結びたがると思うのですが?」

 そう。

 それだけの大物を倒したのだ。今までよりも評価が上がり、契約する金額も跳ね上がるだろう。

 だが、それでも足りない。そして、歴代当主たちのプランは――。

「いやぁ、なんというか……商人やギルドとは、一度敵対しないといけないので」

 唖然とするアデーレさんが、持っていたカップを落とした。それが合図となり、睨み合っていたモニカたちが仕事に入る。

 テキパキと掃除道具を取り出し、書類の山も片付け始めた。しかも、四人で協力して部屋を綺麗にしていく。

「あ、それはこっちで」
「では私がこちらを」
「なら私はこっちで」
「なら特別機であるモニカが、こちらを」

(こいつら、実は仲が良いんじゃ?)

「……何を言っているんですか、ライエルさん」

「いや、もうライエルでいいから。呼び捨ての方がいいから」

 溜息を吐いた俺は、これからのことを思案するのだった。





 ――トレース商会。

「あの外道! 私のヴェラに貢がせるとはどういう事だぁぁぁ!!」

 興奮するフィデルは、家族揃っての朝食の場で大声を上げていた。

 ヴェラは淡々と食事をしており、ジーナは彼氏であるロランドを朝食に呼び出していた。普段ならロランドを追い出そうとするフィデルだが、ヴェラの話を聞いてロランドに構っている暇がなかった。

 ジーナは、これ幸いとロランドに朝食の感想を聞く。

「今日の朝食はどうですか、ロランド」

「え、あの……美味しいです。ジーナお嬢様」

 ヴェラは、それを聞いてパンをかじりながら。

「普通で良いわよ。どうせ呼び捨てなんでしょ?」

 冷や汗をかきながら苦笑いをするロランドは、フィデルを気にしていた。しかし、フィデルの意識はロランドには向いていない。

「ヴェラ! お父さんはそんな奴を認めるつもりはないからな! いくら命の恩人で、船員たちに認められて、凄腕の冒険者で元貴族とは言っても……くそぉぉぉ!!」

 フィデルも、父ではない部分が葛藤しているようだった。

 何しろ、ライエルは優良物件だ。女癖が悪いと言っても、酷い扱いをしているとは耳には入ってこない。娘を嫁がせて縁を持つのも、悪くないと商人の部分が囁いているのだろう。

 それを、父であるフィデルが強く反対している感じだった。

 ヴェラは食事をしながら、ジーナに言う。

「なに? 毎朝食事を一緒にしているの?」

 ジーナは、少し俯いて照れながら。

「その……はい。認めて貰おうと思って」

 ヴェラは内心で。

(逆効果のような気もするけどね。ま、嫌でもこうして家族の場に顔を出せば、お父様も妥協するかも知れないけど)

 ヴェラもジーナも、求婚される事は多い。それはベイムでも指折りの商人の娘だからだ。

 だが、フィデルは、そういった輩を二人に近づけさせなかった。

 過保護とも思えるが、同時にそれは自分たちの価値を上げるための周囲への焦らしでもあるとヴェラは気が付いていた。

(商人である父と、父親である父、ね。男親は大変よね)

 他人事のように考えているヴェラは、フィデルを見た。

「くそぉぉぉ! 誰だ! 船員たちがヴェラには指一本も触れさせないとか言った奴は! 船員たちまで納得させるとは、絶対にスキルではないか!」

 ヴェラは呆れつつ。

「違う、って言ったわよね? もう、いいから早く食事を済ませてよ。今日も忙しいんでしょ。私も今日は忙しいから」

「す、すまん。今日は予定があるのか?」

 フィデルが多少落ち着くと、ヴェラは言う。

「えぇ、ライエルが家に来るの」

 ヴェラの言葉に、フィデルは再び激怒するのだった――。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ