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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

続くのか? 十代目

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砦の攻防戦

 セルバに侵攻した俺は、ザインの総司令官として砦の前に布陣していた。

 砦の周囲を囲み、配置した部隊が魔法を撃ち込んでいく。

 その様子を、歴代当主が宝玉から見ていた。

 俺は口元を親指でぬぐうと、クラーラに命令を出した。

『クラーラ、魔法が来る。防御態勢に入れ』

『分かりました』

 一部隊を狙い、集中放火しようと敵が砦内の魔法使いたちを偏らせたのを確認すると、俺は反対側の部隊に命令する。

 そちら側にいたのはノウェムだ。

『ノウェム、クラーラの方に敵は集中している。攻撃をそのまま続けろ。弓兵まで減っているから、もしかすれば突撃させるかも知れない』

 攻城兵器による攻撃は、敵の魔法使いが撃ち落としていた。互いに、魔法を撃ち合って魔力の続く限り攻防を続ける。

 夜になれば、互いに力尽きて休むのが戦場の一般的な光景だ。

 闇夜に乗じて、砦に侵入することも考えた。だが、歴代当主たちが、それを俺にさせなかったのだ。

 五代目の声がする。

『……柔いな。確かに、このまま続けてもジリ貧だが、一方に偏らせるべきじゃなかった』

 敵の指揮官の判断に、厳しいコメントを出す五代目。だが、四代目は違う意見だった。

『このまま続けても負けるだけなら、最善策を探るのは悪くはない。実際、クラーラちゃんのところは魔法による攻撃が少ないからね。先に潰しておきたかったんじゃないかな?』

 俺は近くにいた兵士に、命令をした。

「増援を送る。伝令を頼めるか?」

「は、はい!」

 緊張した騎士が、命令を受けてそのまま伝えに向かった。面倒な手段を取っていると思うが、これも歴代当主たちの要望だった。

 七代目が。

『ふむ、最初ならこれでいいですかな』

 三代目は。

『ギリギリ合格かな? ライエルもだけど、動きが悪いのはザインもセルバも一緒だし。むしろ、セルバは必死だから、動きに関しては見習うべき所が多いけどね』

 四方を囲まれた砦で、セルバの騎士や兵士たちは良く戦っていた。だが、こちらは勢いが違う。

 頭の中では、五代目のディメンションと、六代目のスペックで敵の動きが手に取るように分かった。

 俺のスキル、コネクションで指示も素早く出せている。

 敵の砦は徐々にその表面を削られ、こちらには攻撃が届かないので焦っているようだ。

 クラーラのいる部隊に攻撃が集中すると、駆けつけたエヴァたちがマジックシールドを張って攻撃を防いでいた。

 反対に、ノウェムたちのいる部隊は攻勢を強める。

 敵がノウェムたちの魔法を防ぎきれずに、砦の壁を守る事なく削られていくとまたしても敵に動きが見えた。

 三代目が。

『おや、出てくるか。もう三日目だから、士気が落ちる前に賭に出たかな』

 砦には騎馬が集められ、突撃の準備が進められていた。

 元から数が違い、こちらが的確に攻撃も防御もするので、相手は我慢出来ずに打って出る事にしたようだ。

 七代目は、その判断を否定しなかった。

『援軍が来ない状況で、勝つ可能性を探るとすればそうなるか。備蓄の状況、それに士気の低さ……セルバの指揮官には同情したくなりますな』

 それでも手を抜けとは言わないのだから、歴代当主たちは動くと決めたら徹底的に動くのだろう。

 俺は立ち上がると、伝令に伝えた。

「敵が出てくる。全員に気を引き締めるように伝えてくれ」

 兵士が飛び出していくと、傍にいたアリアも立ち上がった。魔法の撃ち合いにアリアを出すよりも、温存しておこうと思ったのだ。

 モニカやシャノンは後方で、メイも現在は後方で待機だ。ミランダは俺とは反対側に配置した部隊におり、そこで俺の指示を待っていた。

 すると、馬に乗ったクレートさんが俺のところに来た。

「ライエル君! 敵が来るなら、私が相手をしよう!」

 騎士を引き連れ、クレートさんは槍を掲げてやる気を見せていた。兵士たちが長槍を持って敵がくるのを待っているので、できれば突撃しないで欲しい。

 俺は腕を組むと。

「突撃は俺の指示を待って貰います。アリア、クレートさんの手伝いに回ってくれ」

 そう言うと、アリアは少しだけ不満そうだった。

「あんたは出ないの?」

 四代目が。

『いや、もう実績もあるライエルが出る意味ないし。というか、大将が前に出たら駄目でしょ』

 大将が前に出てはいけない、というのは前提条件がつく。それは、勝てる大将が、という意味だ。実績を積み上げなければ、兵士は安心出来ない。

 その点、俺の方はザイン奪還時に有名になりすぎてしまった。

 わざわざ出るまでもなく、騎士や兵士たちが俺を畏怖していた。

「お前を信頼しているから、俺はここにいるよ。それと、敵も必死だから気を抜くなよ」

 アリアの背中を軽く叩くと、アリアは兜を左手に持って自分の馬がいる場所に走って行く。

 少しだけ、嬉しそうに見えたのは気のせいではないだろう。

 それを聞いた三代目は。

『信頼ね。ま、確かに成長してきたよね、アリアちゃんは。伸び代(ノビシロ)もあるし、このまま女将軍とか目指させてみようか』

 三代目の冗談かと思ったが、意外に想像してみると似合っている気がした。

(考えておくか)

 そして、四代目が。

『……ライエル、彼女たちをここまで引き込んだんだ。責任は取るんだよ』

 馬に跨がり、敵がくるのを待ち構えるアリアの後ろ姿を見ながら、俺は宝玉を強く握りしめるのだった。





 ――砦の門が下ろされ、門が橋になるとそこから騎士が馬に乗って突撃をしてきた。

 兵士たちがそれに続き、ライエルのいる本陣を目指している。

 アリアは、左手で馬の手綱を握りしめると、右手の槍を脇に抱えるように持った。

 近くでは、聖騎士団や神聖騎士団から鞍替えをした騎士たちが敵の突撃を前に緊張した様子だった。

 兜をしており、荒い息づかいが聞こえてきた。

 そんな中で、先頭に位置するクレートは、馬上で戦場を見て一言。

「凄いものだな。まるで手に取るように相手の動きを……」

 突撃してきた騎馬隊には、兵士たちが長槍を突きだして待ち構えていた。両者がぶつかると、数名の騎士が馬上から振り落とされ、槍に突かれて血を吐く。

 だが、槍を切り払って突撃してくる少数の騎士たちがいた。

 兵士たちが激しく戦い始めると、ライエルから合図があった。

 クレートが大声で!

「突撃だぁぁぁ!!」

 その声に合わせて、騎士たちが馬を走らせ敵に向かっていく。

 アリアも馬の腹を蹴って走らせると、目の前に迫る騎士を見た。

(手負い? でも!)

 鎧の隙間には、折れた槍が突き刺さっていた。だが、アリアは馬上で槍を構えると、そのまま相手に向かって突きを繰り出した。

 相手の鎧ごと突き破るアリアの槍には、スキルで硬化が施されていた。しかし、相手は血を吐きながら武器を手放してアリアの槍を両手で掴んだ。

「こいつ!」

 槍を引き抜かせないためか、力を入れている相手がそのまま馬から崩れ落ちようとしていた。

 アリアは近くにセルバの歩兵が来ているのを確認すると、槍を手放して腰の剣を引き抜くのだった。

「こっちは慣れてないんだけどな」

 馬から下り、剣を片手にアリアは向かってくる歩兵を斬り伏せた。アリアの胸元で赤く輝く赤い玉が、アリアにスキルを使用させる。

 歩兵を率いる隊長格が。

「スキル持ちか! 囲んで叩け!」

 部下に命令をするが、アリアは兜の中で少し笑っていた。

「遅い!」

 自分のスキル――クイックにより、アリアの動きは敵の目には追えなかったようで、隊長格を斬るとそのまま周囲の部下である歩兵たちも斬り伏せた。

 安物の剣は、刃こぼれと血で滑って使いものにならなくなる。

 鈍器として使えるかも知れないが、アリアは鈍器の扱いをそこまで磨いていない。

 地面に落ちていた剣を手に取ると、持っていた剣を地面に突き刺して周囲を見た。怯えた目で、セルバの兵士たちが自分を見ていた。

 すると、馬に乗った一人の騎士がアリアの前に出て来た。

 ザインの騎士を一人槍で突き刺すと、そのまま槍を捨てて腰の剣を引き抜いてアリアに振り下ろそうとしていた。

 アリアが剣で弾くと、相手は馬から飛び降りて地面に着地してアリアに狙いを定めた。

 雑草が生えている地面は、膝辺りまで草が伸びている。

 そんな中で、相手は自由に動き回り、アリアと剣で打ち合えていた。

(こいつ、強い!)

 アリアが離れるために距離を取るが、相手の騎士は剣を腰だめに構えていた。

(くるっ!)

 アリアは咄嗟に横に飛ぶと、斬撃が周囲の草を巻き込んで飛んできた。アリアも同じようなスキルは使用出来るが、似ているようで違うそのスキルに興味が出た。

 兜の中で、アリアは楽しいのか笑っている。

「いいじゃない。スキル持ちとはあんまりやったことがないのよね」

 アリアは、相手の懐に飛び込もうとするが、相手も距離を詰めてきた。スキルで硬化した剣が、火花を散らして刃こぼれした。

 だが、相手の剣は刃こぼれもしていない。

「ずるいわね。業物かしら?」

 すると、セルバの騎士は。

「外道共が……この剣に斬り伏せられろ!」

 拾った剣で何度か打ち合うと、アリアは相手の力量を前に不利を悟った。

 相手の剣は業物だ。もしかすれば、魔具かも知れない。スキルで硬化した自分の剣が、ボロボロで使いものにならなくなっているのを見てそう判断した。

 アリアは剣を捨てると、腰の後ろに用意していた短剣を引き抜いた。そして、左手で棒を引き抜くと、そのまま短剣の柄に繋げた。

 相手が距離を詰めてくると、アリアは短槍にした短剣を振って相手を防ぎ、そのまま蹴り飛ばした。

 相手の騎士――経験もあるようだが、剣術は型通り。強さやスキルもあって、今までそれでも通じていたのだろう。

 兜越しに、アリアを睨み付ける騎士。

「足癖が悪い女め!」

 相手の言葉に、アリアは笑いながら。

「あんたは、お行儀が良すぎるのよ!」

 そう言って踏み込むと、スキルを使用した。クイックだ。

 相手の騎士は、動きが変化したアリアの攻撃を受け止め、そして反撃してくる。アリアの動きについて行けるだけの技量を持っており、アリアはスキルを使用した。

 肉体強化――。

 武器の硬化――。

 そして、大きく踏み込むと。

「スラッシュ」

 かつて、初めて見たのはライエルと賊討伐に向かった時だ。賊の頭にアリアの赤い玉が奪われ、そして相手が使って見せたそのスキル。

 しかし、今のアリアが使うスラッシュは、盗賊が使っていたものではない。鋭さ、そして破壊力は、アリアの身体能力や才能により、更に引き上げられていた。

 騎士が目を見開くと、アリアの短槍が騎士の鎧に深く斬り込んでいた。

 相手の剣は、アリアのフェイントによって空しく空を切っていた。

 相手の兜から血が噴き出す。アリアが短槍を引き抜くと、胸部からも血が噴き出た。返り血を浴びるアリア。

 倒れる騎士は、アリアに。

「な、名前を聞いておこう」

 そう言われ、アリアは。

「アリア・ロックウォードよ」

 そう言うと、騎士の顔は見えないが笑っているようだった。そして、周囲を見ているようだった。

「……我々の負けか。奪われるくらいなら……これは君が使え。そして、アリア……」

 周囲では突撃してきた者たちが討ち取られ、そして降伏している様子が広がっていた。

 アリアは周囲を警戒しながらも、騎士の最後の言葉を聞いた。

「今度会う時は……地獄だな」

 事切れた騎士に、アリアは軽く祈りを捧げた。そして、騎士の持っていた剣を受け取る。鞘も外して手に取ると、どうやら剣は本当に魔具のようだ。

「……業物として使うしかないか。玉のスキルだと干渉して使えないとか聞くし」

 戦利品を手にしたアリアは、勝鬨が上がるのを聞いた。

 砦を見れば、降伏を示す白い旗が上がっていた。ソレを見ながら、アリアは剣を握って思うのだ。

(地獄か……でも、この光景も地獄ね)

 周囲には、セルバの騎士や兵士。そして、セルバよりは少ないがザインの騎士や兵士の死体も転がっていた――。





 ――ロルフィスの陣営が聞いたのは、ザインが国境の砦を三日で抜いたという事実だった。

 アレットもその報告を受け、詳細な情報を手にすると驚愕した。

 夜。

 ランタンの光で照らされたテントの中、アレットは書類を両手で握りしめていた。数日というのは問題ではなかった。

 実際、ロルフィスも数日がかりでセルバの砦を突破した。

 だが、その報告書が信じられないのは数だ。

「一万もいないだと。それも、実質四千で落とした……敵の数は少なく見積もっても二千から三千はいたはず。それだけの兵数で落としたというのか」

 通常、攻城戦は守り手の方が有利とされる。

 条件はいくつか必要だが、それでも少し数が多い程度ではどうにもならない状況のはずだ。

 実際、ロルフィスは数で押しきったところがあった。

 報告書を読めば、そこには自分が勧誘しなかったクレートの名前があった。

 敵の将を討ち取り、一番の功績を挙げたと書かれている。

 だが、アレットは知っている。

「……わざとクレートに手柄を与えたな。確かに、こうやって利用すれば、輝く奴ではあるが」

 クレートの長所、そして短所もアレットは知っていた。知っていたから、自分では勧誘しなかったのだ。

 クレートは言われた事を忠実に行なう事は得意だが、自分で判断する状況になると普通だ。いや、普通以下かも知れないとアレットは思っていた。

 そして、クレートを上手く扱うだけの指揮官ではないと、自分を評価していたのだ。

「並ではないか。騎士としても、将としても一流……天才という奴かな」

 ライエルがこれ程の騎士とは思わなかったアレットは、そこでふと疑問に思った。

「何故、ウォルト家は彼を追い出したんだ? 特に問題があるようには見えないが……女性関係か? 手を出してはいけない女性に手を出した? 有り得るな。王女殿下にも注意するように言わないと」

 溜息を吐いたアレットは、握りしめていた報告書を綺麗に畳んで――そこで思いついた。

「いや、待て! 女癖が悪い、しかも手を出してはいけない人に手を出すなら……王女殿下……アンネリーネ様にも……そうすれば、ロルフィスは!」

 何か思いついたアレットは、すぐに調べるために副官と相談する事にした。テントを飛び出し、誰もいなくなったテントではアレットが放り投げた報告書がゆっくりと地面に落ちるのだった――。
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