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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

やっちまったな八代目

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情報屋

 ――ベイムの狭い路地。

 そこを歩いているのは、ミランダとシャノンだった。

 不安そうにしているシャノンは、表通りと違って狭い路地を歩くミランダのコートの裾を掴んで歩いていた。

「シャノン、もう少し早く歩きなさい」

「無理よ。汚いし、それにここは……危ない感じがするんですけど!」

 狭く暗い、そんな通りを抜けると、歓楽街が広がっていた。時間は昼前とあって、人通りは多くない。

 シャノンは、周囲を見渡すと様々な情報をその魔眼で集める。

 目が見えないシャノンは、視覚をスキルで補うために魔眼というスキルを発現した少女だった。

 姉とは違い、薄い紫色の髪をし、黄色の瞳を持っている。

「……私たち、場違いじゃない?」

 見れば派手な恰好をした女性が、眠そうな目で歩いていた。疲れているのがシャノンには分かり、歩いている人々は日も高いのにこれから眠ろうとしている。

「それにお酒臭いし……」

 シャノンは建物の壁を見ると、すぐに視線を逸らした。汚物などが平気で垂れ流されており、ベイムの違った一面を見た気分だったのだ。

(綺麗なところと、汚いところの差が酷いわね)

 歩き出したミランダは、前にも来た事があるのかメモや地図を見ないでそのまま目的地を目指した。

 すると、三階建ての建物へと入っていく。

(……ここにいったい何が)

 シャノンが困っていると、店と言うよりもこぢんまりとした事務所のようなカウンターがあった。

 ドアを開けた事で、取り付けられていた鐘がなり小さな少女が受付から顔を出した。幼い少女は、シャノンよりも年下に見えた。

 歓楽街に自分よりも年下の少女がいると驚くシャノンだが、相手とやり取りする姉を見て驚く。

「イニス、ラウノさんはいるかしら? 例の件で確認に来たんだけど」

 イニスと呼ばれた少女は、ミランダに頷くと奥を指差した。

「奥にいます。昨日はお酒を飲んで頭が痛いと言っていましたね。それにしても、今日はお連れさんもいるんですか? 可愛らしい人ですね」

 シャノンは自分よりも年下と思われる少女を見て。

「いや、どう見ても私の方が年上じゃない」

 すると、ミランダが呆れたように言う。

「馬鹿ね。イニスはノームで、あんたより年上よ。なら、奥に行くわ。成功報酬は、イニスに渡してあげる」

「え!?」

 驚いているシャノンは、自分よりも少し背の低い少女と自分の姉を交互に見ながら奥へと連れて行かれた。

 奥の部屋に入ると、すぐに酒の臭いがした。

 ソファーの上では毛布に包まった茶髪で垂れ目の男が、こちらに顔を向けて眠そうな目をこすっていた。

「……なんだ、お嬢ちゃんか」

 ボサボサ頭に無精髭。

 男性はミランダと面識があり、上半身を起こすとそのまま頭をかき、こちらに向き直る。

 ミランダは依頼した仕事の確認をするのだった。

「それで、依頼の方はどうかしら?」

 男性は立ち上がって奥にある机から、まとめた資料を手に取るとミランダに手渡してまたソファーに座る。

 ドアが開くと、先程の少女――イニスが、飲み物を持ってきた。テーブルに置かれたので、シャノンもミランダもソファーに座って【ラウノ】と呼ばれた男と向き合う。

 イニスが部屋から出て行ったところで、ミランダは書類の中身を確認した。

 出された飲み物に口を付けたラウノは、一瞬だけシャノンを見た。そして、少し警戒している。

 シャノンはそれを理解したが、ミランダも同様だった。

「妹よ。警戒しなくていいわ」

 すると、ラウノは苦笑いをした。

「悪いね。この商売をしていると、どうしても警戒してしまうんだよ。知らないというのは怖いからさ」

 冗談を言っているようだが、相手は気を抜いていなかった。

(こいつ、なんか見た目より強そう)

 いかにも駄目な生活をしているのに、体は鍛えられており隙だらけに見えて警戒を解いていなかった。

「……ノウェムがベイムで知り合いに会っていた? それで、何を受け取ったの?」

(ノウェム? どうしてお姉様がノウェムの事を……)

 ラウノは頭をかくと、真剣な表情になる。

「確定はしていないが、大事そうに持っていたから形状から推測すれば杖。しかも魔具とかじゃないか? 確かめていないからそこには書いていない。それと、随分と親しそうだったよ。何しろ、兄貴と呼んでいたからな」

 ミランダの視線が鋭くなると、ラウノはノウェムの怪しい行動を伝えるのだった。

「仲違いというよりも、一族でどちらにつくかと話をしていた。お目当てのノウェムちゃんは、ライエル君につくとさ。これで満足したかい?」

 ミランダは読み終えた資料をテーブルに置くと、詳しい話をラウノから聞く。

「一族で意見が分かれたのに、わざわざ荷物を届けに来たの?」

 ラウノは興味なさそうに。

「さぁ? 貴族なんてろくでもない連中だからな。何を考えているのか……次は戦場で会いましょう、だとさ。兄妹で殺し合いとか」

 シャノンは、ラウノが貴族という言葉に反応しているのを感じた。そして、ミランダはそのまま詳細を聞くとソファーから立ち上がった。

「ありがとう。しばらくベイムから離れるし、依頼はまた今度にでもするわ。それから、頼んでおいた――」

 ラウノはミランダが言い終わる前に。

「――頼まれていた周辺国の情報や、バンセイムの情報は集めている。今は報酬分に相応しくないが、確認するか?」

 首を横に振ったミランダは、そのまま部屋を出ようとした。ラウノが呼び止める。

「おい、報酬を貰わないと困るんだが? 金貨で十枚の約束だろう。あのノウェムちゃんを追うのは大変だったんだぞ」

 文句を言う相手に、ミランダは笑顔で告げた。

「ちゃんと払うわよ。今回は特別に上乗せしてあげる。でも、イニスに渡しておくわね」

「……俺に渡しても同じだろうが」

 シャノンは、内心ですごくガッカリしていたラウノを見た。情報屋と呼ばれる人間であるのは理解していたが、ノウェムを追ったと聞いてそこまで凄いのか驚いてもいた。

(というか、なんで私まで連れてこられたのかしら? 確かにノウェムは怪しいけど……先に解決するのは、ライエルの方じゃない?)

 ノウェムの情報に金貨十枚を支払う姉も理解出来ず、そしてどうして自分がこの場に連れてこられたのかもシャノンには理解出来なかった。

 情報屋の事務所から出ると、ミランダはシャノンに聞こえるように言うのだ。

「シャノン、ここまでの道順は覚えたわね? あのラウノさんを覚えておきなさい。優秀な人だから」

「え? それって……」

 ミランダは、そのまま何も言わずに歩き出すのだった――。





 ――洋服を扱う店では、ノウェムがエヴァやメイを連れて買い物をしていた。

「あ~、これもいいわね。あっちも欲しいなぁ」

 商品に目移りをしているエヴァを、メイは呆れるように見ていた。

「どれも同じでしょ。色が違うとか、皮がどの魔物か、動物か、の違いよね」

 寒そうに見えるメイのために、ローブかコートを買う事にしていた。エヴァはついでに、他の服も見ていたのだ。

 ノウェムはそんな二人の付き添いだった。

 エヴァはメイを見て。

「その違いが重要なの! すぐに決めて、吟味しないとかどういう事よ。そっちの方がおかしくない?」

 メイは興味なさそうに。

「だって、普段は裸だよ。この恰好も、フレドリクスがちゃんと隠しなさい、っていうから従っているだけだし」

 メイは麒麟であり、元の姿は鱗を持つ馬である。それを思い出したエヴァは、納得いかないのかノウェムに助けを求めて視線を送ってきた。

「メイさん、人に紛れて生きるなら、ある程度は外見も意識しないと」

 ノウェムに言われ、メイは渋々納得する。

「分かったよ。でも、選ぶのに時間かけすぎじゃない? そんな小さな下着とか買ってどうするの?」

 エヴァはメイに。

「……着るからに決まっているじゃない。というか、アンタまさか」

 メイは頷くと。

「着けてないね」

 ノウェムは、溜息を吐くとメイの下着も用意する事にした。すると、店員が寄ってくる。

 細身で背が高く、耳の先がとがっているのでエルフだとすぐに理解出来た。

「お探し物は見つかりましたか?」

 同胞が近くに来た事で、エヴァは周囲を見て。

「ごめん、私がいるから他の店員が来ないのね」

 エルフは亜人種であり、迫害する人間がいるのは事実であった。現に、近くにいた人間の店員は近づいてこない。

 しかし、エルフの店員は。

「いえ、流石にベイムではそのような人は少ないですよ。ただ、今日はどうしたんでしょうね。忙しいのかな?」

 周囲の店員は、ノウェムたちを避けているように感じられた。

 苦笑いをして、すぐに話題を逸らす店員に、ノウェムはメイの下着が欲しいと頼む。

「この子に合う下着はありますか?」

 そう言うと、店員は笑顔で。

「任せてください。すぐにお選びいたしますね。予算はどの程度をお考えですか?」

 嬉しそうにノウェムに答えたのだった――。





 宝玉内。

 俺は、七代目にスキル【ワープ】を学んでいた。

「こ、これは……ちょっと酷いですね」

 息を切らし、自分が移動した距離を見た。

 たったの数メートルの距離を瞬間移動するスキル。それが【ワープ】である。

 七代目の二段階目のスキルであり、【ボックス】と同じように空間を制御するスキルだった。

 しかし、問題が多い。

 第一に、移動出来る距離は現段階で数メートルが限界だった。

 第二に、俺の魔力量ではそう何度も使用出来ない。

 第三に、複雑な地形や場所での咄嗟の使用は難しいという事だ。

 俺を見る七代目は、嬉しそうにしている。

『何、コツを掴めば距離はもう少し伸びる。それに、地形の把握は二代目のスキルで行なえば楽だからな』

 ニコニコとして楽だと言い張るのだが、その二代目のスキルを使用しても難しいのだ。時間をかければ使用は難しくない。

 ただ、数メートル程度の移動であれば歩いた方が早かった。

「一日に一回から二回でも使えば、すぐに魔力が危険な状態になりそうなんですけど?」

 そう言うと、七代目も頷いていた。

『そうだな。ガリガリ削るからな。それに、ライエルは初代のスキルがあるから、魔力は常に貯め込む必要もある。ついでにモニカに魔力を供給して……厳しいな。これがあれば、砦なども簡単に突破出来るんだが』

 現状、俺には初代の最終段階スキルである【フルバースト】のために、魔力を貯め込む必要があった。

 そして、モニカの維持をするために、ラインに常に魔力を供給している。つまり、何もしなくても魔力をある程度は消費している状態だった。

 因みに、宝玉にも同じように魔力を提供している。

「枷が多いですが、今だと魔法も使用出来ます。普通の戦闘では大丈夫だと思うんですけど」

 そう言うと、七代目は真剣な表情で。

『切り札は持っておくものだ。例え一回しか使えなくとも、だ。これを使いこなせば、お前は数段上の実力を得られる』

 確かに切り札になり得るが、使った直後の疲労感に加えて魔力の大量消費とその移動距離。

 教えては貰ったが、未だに実戦では使うのは難しいだろう。

 宝玉に記憶されたスキルの中で、七代目の持つスキルは三代目と同じように使いこなすのは難しい。

 宝玉内。七代目の記憶の部屋で俺は汗をぬぐって周囲を見渡した。

 歴代当主の記憶の中では、もっとも近い時代とあって景色は見たことがある場所が多かった。

 そんな中で、何故か俺は屋敷ではなく、ゼル爺さんの家の前で特訓を受けていた。

 屋敷の広い庭を管理するため、住み込みで働かせていたのに屋敷に部屋がないゼル爺さんを今になって不思議に思う。

「七代目、なんでゼル爺さんに、屋敷の部屋を貸さなかったんですか?」

 すると、七代目は頬を指先でかきながら。

『……気が抜ける場所が欲しかった。厳格であろうとするが、どうしても息抜きしなければやっていられないからな。時折、ここでゼルと共に酒盛りをしたものだ』

 そんな事をしていたのかと、俺は小さな家を見た。

 景色が変り、周囲が夜になると小さな家に七代目がゼル爺さんと酒を飲んでいた。ゼル爺さんの奥さんが料理をして、酒を運んでくる。

『戦場を駆け、そしてわしのために働いてくれた。代替わりしたばかりの時に、わしの家臣として動いてくれた男だ』

 懐かしそうにする七代目は、セレスの言葉を思い出す。そして、俺が宝玉を受け取ったのも、ゼル爺さんのおかげだと知っていた。

『最後まで役目を果たしてくれたというのに、わしの孫がゼルを……今日はここまでにしよう、ライエル』

 七代目が気落ちすると、俺は記憶の部屋から円卓のある会議室に移動していた。





 朝。

 休みと言うことでいつもより少し遅めに起きた俺は、背伸びをしてからベッドを出ると部屋の窓を開けた。

 外は大都市だけあり、既に人々が活発に動き回っていた。

「さて、今日は必要な物を揃えに行くか」

 ギルドで必要な物を確認し、どれだけの期間になるのかも聞いている。

 ギルド側からも荷馬車の用意や物資をある程度は用意してくれるらしく、俺たちは装備や必要と思われる荷物を揃えるだけで良かった。

「支度金は渡したし、問題なのは俺の装備だよな」

 部屋の中に置いてある装備に視線を向けると、ベルトについた鞘にはサーベルが収められていた。

 二本のサーベルは、ベイムに来る前に用意していた予備である。武器を扱う店を回り、商品を見てきたがどれもパッとしなかった。

 業物もあるのだが、やはり値が張ってしまう。

 そうなると、数打ちの中から良い物を買うしかないが、そうなると予備でもいいので買う必要がなかった。

 今まで、それでどうにかなっていたのもあって、装備を買い揃えることを先送りにしていた。

 ノック音がする。

「モニカか。入って良いぞ」

 スキル【サーチ】で相手を確認すると、俺は部屋に入るのを認めた。鍵をかけていたのだが、モニカは普通に何事もなかったかのように開けて入ってくる。

「ふっ、離れていてもこのモニカを感じる変態チキン野郎には、いつも驚かされますね。もう身も心も捧げちゃうぞ。おっと、もう捧げていましたね!」

 後半の言葉を聞き流し、俺はモニカに言う。

「今日は買い物に行くぞ。最低でも一週間から二週間程度は覚悟する必要がある。一ヶ月単位で攻略する場合もあるから、それなりに用意しないと。食材なり消耗品のリストを作るから、全員に必要な物を聞いておこうか」

 こういう時、ベイムは便利である。

 大量の商品があるため、すぐに物資が揃うのだ。

「……もっと構ってくださいよ。最近、女性が増えたから、って私の相手をしない事が多いじゃないですか。酷い。釣った魚には餌をやらないご主人様! でも尽くしちゃう。だって、それが私……モニカだから!」

 ツインテールを振り乱し、一人芝居を始めたモニカを放置して俺は身支度を整える事にした。
四代目(-@∀@)「……巨乳より小さい胸が至高。チッパイは正義! 巨乳派とは相容れないね」
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