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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

やっちまったな八代目

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ベイム方式の迷宮討伐

 ベイムでの迷宮討伐は、討伐可能と思われる人員を揃えてから出発するスタイルだった。

 迷宮の放置をすれば、魔物が一斉に噴き出して周辺に大きな被害が出るために討伐は必要だ。

 時に、管理して莫大な利益を得ようとする街や都市も存在はしている。だが、管理するにはそれだけの人員が必要になる。

 領主だけではなく、迷宮周辺の管理に始まり冒険者ギルドの協力など面倒が多かった。

 管理出来れば、迷宮は莫大な財を産む場所になる。

 魔物を吐き出し続け、魔石が大量に手に入る。時に、財宝も発見出来た。

 最奥の間にある財宝を取らなければ、迷宮は消える事なく富をもたらす。しかし、失敗すれば魔物が大量に発生し、管理を失敗した街や都市は滅んでしまう危険もあった。

 ベイムのギルドには討伐を他から依頼される事もあるが、自前の調査隊を持っており迷宮を発見する事もできるようだ。

 できるが、彼らは調査が目的で迷宮に挑む装備を持っていない。

 そのためにギルドは冒険者を派遣するのである。

「と、言うわけで……一週間後には迷宮討伐に行きたいと思います」

 ギルドから宿屋に戻った俺は、疲れている全員を集めて説明を行なった。

 シャノンは枕を抱きかかえながら、眠そうにしており話など聞いていなかった。

 モニカは興味がないというか、俺が行くと言えば行くし、行かないなら行かないと言うだけなので意見を求めていない。

 全員分のお茶を用意し、終われば俺の近くに戻って待機していた。

 アリアが、髪をかきながら。

「それより、今回の報酬はどうするのよ。まさか、迷宮討伐のために準備で使うとか言わないわよね」

 迷宮への討伐は問題なくとも、どうやら報酬に関してアリアは譲るつもりがないようだ。

 報酬は綺麗に九分割にしており、毎回報酬は支払っている。

「今回はセントラルで稼いだ金を使おうと思う。というか、俺の方からも支度金を少し出すから、装備を整えてくれ。明日はギルドに行って参加を希望するから、そのついでにどれくらいの期間が必要か確認してくるよ」

 仲間と言っても、うちのパーティーは小さい。

 俺が大金を持っているが、稼ぎは綺麗に九分割なのでパーティーの資金というものが存在していなかった。

 本来なら、そういう方法を取っているので支度は自分の報酬から行なうのが暗黙のルールでもある。

 エヴァは、少し安心している様子だった。

「参加して日も浅い私には助かるわ。というか、迷宮とかはじめてで何を揃えて良いのか分からないわね……。あ、一緒に買い物にいきましょうよ、ノウェム!」

 甘えるエヴァに、ノウェムは苦笑いをしていた。

「そうですね。メイさんはどうします?」

 見た目は幼いメイは、ソファーに座ってモニカが用意したココアを飲んでいた。紅茶などよりも甘い飲み物が好きなようだ。

「買い物は行きたいかな? でも、装備とかいらないのよね。それに、迷宮ははじめてでもないし。これでも、いくつも潰した経験もあるんだよ」

 全員が意外そうな視線を向けたが、少女の姿をしていても本来の姿は麒麟である。

 金色のショートヘアーに、青い瞳。

 小柄だが胸は大きく、ヘソ出し、肩出し、太ももを出し、などと寒そうな恰好をしているメイは人ではなかった。

 ノウェムは。

「なら、ローブかコートを買いましょうか。その恰好は寒そうですし、目立ちますから」

 ノウェムの意見に、メイは頷いた。

「う~ん、ならそれでいいや。お金の使い道とか、僕には分からないし」

 メイはそれでいいとして、問題はアリアであった。

 モニカが、アリアを見て口にお盆を持って行き口元を隠してニヤニヤしていた。

「良かったですね、これで装備に関して心配はいりませんよ」

 普段からどうにも金銭面で消費が多いアリア。

 別に遊び呆けている訳ではなく、アリアはいくつかの装備を使うのでお金がかかるのだ。それもあって、俺は支度金を出す事にした。

(しかも、この前は買い換えがどうとか言っていたし)

 もっとも、同じように道具を消費するミランダは、上手くやりくりをしている。それもあって、アリアは立場が弱かった。

 アリアは俺やモニカから視線を逸らしており、口を閉じてしまう。ミランダはそんなアリアを見て。

「アリア、アンタはもう少しお金の使い道を考えなさい。収入は増えたけど、ベイムは色々とお金がかかる、って分かっているでしょうに」

 アリアは言い訳をする。

「……タイミングが悪かったのよ。それに、買い換えもあったし、予定に迷宮討伐があれば私だって……」

(まぁ、そうだと思うからお金を準備したんだけどさ)

 そんな時、枕を抱えたシャノンが頭がコクリ、コクリと船をこいでいるような感じで動いていた。

 呆れたミランダは、眠っているシャノンの頬を結構な力でつねっていた。涙目のシャノンが枕を離し、ミランダの手を自分から離そうともがいていた。

 そして、解放されたシャノンは。

「……ねぇ、私は留守番でよくない? 戦力外なんだから、ベイムでゆっくりしておくべきだと思うの」

 自分から戦力外扱いをしろという妹に、ミランダが笑顔で拳を振り下ろしていた。

 俺は。

「却下だ。たったの九人でベイムに人を残しておけるか。それに、お前はベースで留守番をして貰うから」

 ベースとは、利用しているギルドの方ではない。

 迷宮に挑む際に、ベイムの冒険者たちは簡易の寝泊まりするテントなどを用意する。それが集まると、小さくても百名超え。多ければ、千人超えの規模となる。

 迷宮から引き上げてくる冒険者たちが、そこで休むため地上に拠点が必要なのだ。それがベースである。

 俺はクラーラを見た。

 大人しいクラーラは、ソファーに座ってお茶を飲んでいる。

 視線を向けると、何も問題がないのか頷くだけだ。

 元から迷宮のある都市で冒険者をしており、サポートとしての経験も豊富なクラーラは問題がないようだ。

 俺は話し合いをまとめる。

「明日は必要な事を聞いてくる。支度金はその説明をする際に渡す事にしよう」

 全員が一週間後の迷宮討伐に向け、動き出そうとしていた。





 次の日の朝。

 俺は宿屋を出ると珍しい知り合いに会う事になった。

 外に出ると、ベイムに来て初日に話をした細目の男性が宿屋の前を歩いていたのだ。

「あ、どうも」

「おや、おはよう。期待のルーキー君」

 笑っている細目の男性は、俺を期待のルーキーと呼んでくる。首をかしげると、その様子で理解したのか、細目の男性が事情を説明してくれた。

「東支部では有名だよ。何しろ、一ヶ月で迷宮討伐を斡旋された、ってさ。きっと名のある冒険者なんじゃないか、って噂があってね。初日に道案内したから、僕にも情報を求めに人が集まる訳だよ。おかげで稼がせて貰ったけどね」

 俺の情報を売って金儲けをしたと言い張る細目の男性を見て、俺は頬を引きつらせる。だが、相手はこちらの心情を見透かしていた。

「大丈夫だよ。あんまり大した情報は渡してないから。優秀そうな冒険者だった、とは言ったけどね。おかげで今月は十分な収入があったけど。うん! やっぱり、自分が道案内した冒険者が有名になるのはいいね!」

 笑っている細目の男性を呆れながら見ていると。

「ところで、ライエル君」

「何か?」

 俺がジト目で相手を見ると、両手を挙げて細目の男性は降参のポーズを取った。

「怒らないでよ。本当に大した情報なんか持ってなかったし、聞かれた事を答えただけさ。それより、迷宮討伐に向かうよね」

「まぁ」

 頷くと、相手は。

「なら、僕から情報を買わないか」

 少し判断に迷ったのだが、俺は取りあえず話を聞く事にした。

「内容次第ですよ。で、いくらですか?」

「何、君には稼がせて貰ったから、朝食で良いよ。実は美味しい店を知っていてね。そこの朝食は人気があるんだ」

 つまり、朝食を奢れば情報を教えてくれるらしい。

 ギルドに出向くにしても、余裕があるので俺は細目の男性から情報を購入する事にした。

 六代目のスキル【サーチ】では、相手の反応は青いままだ。警戒は必要だろうが、話を聞く分には良いだろう。

「分かりました。奢りますよ。それでいいんですよね?」

「話が早くて助かるよ」

 ウキウキした細目の男性に連れられて、俺は紹介された店へと向かうのだった。





 そこは、朝から人が多い店だった。

 冒険者らしき客も多く、朝からステーキや酒を注文している連中もいた。

(冒険者らしい光景だな)

 ベイムにも管理している迷宮があり、そこに挑む冒険者たちは多い。そして、暗い迷宮ないで過ごしている彼らは、時に朝早くに帰還する事もあった。

 そうなると、冒険者向けに朝からこうして商売をする店も増えるという訳だ。

(アラムサースでもそうだったし、珍しくもないか)

 店自体は広く、そしてテーブルや椅子は頑丈そうなものが置かれていた。

 細目の男性は、朝食のメニューを注文してそれを食べていた。俺の方は、宿屋で食べたので、飲み物だけを注文している。

 しばらく細目の男性を眺めていると、食べ終わったのか口元を拭いてお目当ての情報を教えてくれた。

「さて、報酬分の仕事をしないとね。迷宮討伐に挑めるとなると、ギルドが認めた冒険者という事になる。まぁ、素行が悪くても実力が飛び抜けていれば斡旋される事もあるらしいけど、そこまでの実力を持つ冒険者は東支部から離れるからね」

 宝玉からは、細目の男性から聞いた情報を四代目がまとめていた。

『実力主義にしても、ある程度の人間性を見る訳か。短期間で認められたから、ライエルは目立ったのかな?』

 細目の男性は、俺に説明を続けた。

「ベイムに来てすぐに問題を起こしたよね? 決闘騒ぎだ」

「はい」

「その仲裁に入った【クレート・ベニーニ】も今回の迷宮討伐に選ばれたらしい。半年ほどの時間はかかったようだけど、真面目だと評判だね。対して【アルバーノ】といういかにも遊び人みたいな男が率いるパーティーも参加する。実はね、クレートとアルバーノはベイムに同時期に来たんだ」

「ソレが何か?」

 細目の男性が、飲み物を飲みながら俺に忠告してきた。

「どちらもタイプが極端でね。アルバーノは軽いし抜け目がない。元は盗賊の集団を率いていて、機動性があるんだよ。対してクレートのパーティーは本当に重武装で戦闘向き。ただ、アルバーノは要領が良いからね。迷宮討伐は数ヶ月前から斡旋されている。まぁ、なんというかクレートはアルバーノに対抗心を持っていて、それを知っているアルバーノはからかっている関係かな」

 宝玉内から、七代目の声がする。

『……なんで一緒に討伐を依頼したんだ? ギルドはやはり無能だな』

 俺も同意見だ。

 何か問題が出れば、こちらが困る。

 細目の男性は、俺に続けて説明する。

「主要パーティーは【アレット・バイエ】率いる騎士たちだよ。ベイムには武者修行かな? 面倒な目的があって来ているみたいだ。戦闘力が高いし、それなりにサポートも充実している。実力は高いね。それからソロの【マリーナ】も参加だ。他は有名どころはいないね」

 俺はソロの冒険者が参加と聞いて、不思議に思った。

「一人なのに迷宮討伐ですか? 何か特殊なスキル持ちとか?」

 基本、ソロというのは珍しい。中にはクラーラのようにサポートをして、いくつかのパーティーの手伝いをする冒険者もいなくはない。

 だが、迷宮討伐を斡旋された冒険者がソロというのは気になった。

「かなり強いよ。例外的な強さだね。一種の戦闘狂とでも言うべきだね」

 細目の男性は「失礼な事をしなければ手を出してこないらしいから、大丈夫」などと笑っているが、俺は笑えなかった。

(例外的? セレス並か?)

 気になったのは、それ程までに強いと言われるマリーナという冒険者だ。もしも強いなら、是非とも協力して貰いたい。

「アレットはどこかの国で次期副騎士団長が決まっているらしいから、指揮する側の人間だね。今回の討伐の責任者も彼女になっている。ま、金が目的じゃないし、真面目だから同業者からも人気はそれなりにあるよ」

 細目の男性が情報として提供してくれたのは、俺が参加する迷宮討伐の他パーティーの情報だった。

 飲み物を飲み終えた細身の男性は、俺に笑いかけながら。

「ためになったかな?」

 そう聞いてきた。

「朝食代以上の価値はありました。あ、それとこれは別で聞きたかったんですけど」

「何かな?」

 細目の男性に、俺は――。

「情報屋と言っていましたけど、どんな情報を買えます? 周辺国の情報とか、色々と買えたりしますかね? 詳しく知りたいんですけど」

 すると、細目の男性は首を横に振った。

「本職じゃないからね。噂程度なら仕入れられるけど、裏付けとか取れないよ。情報屋から買いたいなら紹介しても良いけど。ただ、ピンキリだ。僕のような奴もいれば、本格的に情報を扱う連中もいる。当然だが、本格的な連中から情報を買うなら金額は跳ね上がると思った方が良いね」

 俺はやはり金がかかるのか、そう思って飲み物を飲もうとカップを手に取った。だが、既に中身は空だった。

(今は無理、か。だけど逆を言えば、金さえどうにかすれば紹介して貰える訳だ)

 俺は細目の男性に言う。

「では、稼げるようになったその時は、凄腕を紹介してください」

 相手は冗談だと思ったのか、肩を上下させ。

「いいよ。稼げるようになったら、ね」

 俺は、テーブルの上にあった伝票を手にとって席を立つのだった。
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