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セブンス 作者:わい/三嶋 与夢

初代様は蛮族

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プロローグ

 ファンタジー物となります。
 感想は受け付けますが、返信は活動報告などで対応させて頂きます。
 基本、主人公の一人称視点で物語が進んでいきます。


※ファンタジー、ハーレム、ご都合主義の要素を含みます。それらに抵抗がある読者の方は『戻る』を選択してください。

※後書きなどで報告をする事もありますが、基本的に更新する際に削除していく方針です。
 屋敷の庭で向かい合う相手は、妹だった。

 完璧な存在。

 神に愛された存在がいるとすれば、きっと妹のような人物なのだと思う。

(どうしてこんな事に)

 肩で息をし、片手持ちのサーベルを両手で握る。剣先は振るえていた。

 疲れだけではない。恐怖という感情も、刃に表れている。

「はぁ、はぁ……」

 手に持っているサーベルは、真剣だ。妹の持っているレイピアも、真剣である。互いに武器を持って向かい合うなど、正気の沙汰とは思えなかった。

 だが、この勝負を挑んできたのは、紛れもなく妹である。

 ドレスを着て、興味なさげに俺を見る妹は言う。

「まだ続けるのかしら、お兄様」

 お兄様、などと呼んでいるが、普段は俺の事を名前すら呼ばない。「あいつ」、「あれ」、などといった呼び方をしている。

 だが、周囲は誰もそれを咎めなかった。

 オフホワイトのドレスを着た妹は、赤い靴を履いている。庭で斬り合っているというのに、俺とは違って汗一つかいていない。

 まるでこれから出かけるかのように、身支度を調えたばかりのようだ。そんな妹の手に握られているレイピアは、名工が作り出した一品である。

 装飾が施され、柄には黄色い(ギョク)が埋め込まれていた。今では作り出す事が出来ない玉は、スキルを発生させる特殊な道具だ。

 ソレを埋め込んだレイピアも、魔道具に分類される魔法剣という武器である。高額で、金貨百枚を出しても買えない代物だ。

 ドレスに不釣り合いなレイピアを持ちながら、妹の立ち姿は様になっていた。

 今年で十三歳になる妹は、長く波打った金髪をかきあげる。その姿は、年齢にそぐわず、妖艶であった。

 青い瞳は、俺を冷たく見ていた。

 背筋にゾクリと寒気が襲う。

 怖い。逃げ出したい。だけど、逃げられない。

「まだだ。まだ、終わってない!」

 恐怖を無理矢理押さえ込み、俺は踏み込んだ。

 鍛え上げてきた剣技は、大人にだって負けない自信があった。

 ウォルト家――伯爵家である実家を継ぐために、幼い頃から厳しく育てられてきたのだ。剣術にも自信があった。

 だが――。

「はぁ、遅いわね」

 かつては俺も、天才だ、麒麟児だ、などともてはやされてきた。両親や家族の期待に応えるために、必死で努力してきた。

 その頑張りも、二つ下の妹の前では無意味だった。

 妹は女の子だ。剣技など必要ないと、時間をかけて教わっていない。基礎だけは教えられ、剣の持ち方や振り方を知っているだけだ。

 なのに、そんな妹に俺は勝つ事が出来なかった。

「なっ!」

 何度目かの打ち込みで、俺の体は浅い傷が幾つも刻まれていた。斬りかかったはずなのに、妹は最小限の動きでそれを避ける。

 同時に、まるで鞭のようにしなるレイピアの刃が、俺の頬や腕、そして腹に傷をつけた。

「今ので、三回は致命傷を与えられたわね、ライエル」

 微笑みながら俺の名前を口にする妹の名は【セレス・ウォルト】である。

 神に愛された存在がいるとしたら、きっと目の前の妹の事だろうと誰もが思う。だが、そんなセレスが真に憎んでいるのが、俺である。

 攻撃をかわされ、足をかけられた俺は芝生の上に転ぶ。

 体は血だらけだ。そして、汗で服はベトベトになっている。

 青い髪も頬に張り付くが、今は気にしていられなかった。立ち上がると、赤い靴が目の前に迫ってくる。

「ぐっ!」

 腕で受け止めたが、勢いは殺しきれなかった。体が浮き上がると、また吹き飛ばされて地面を転がる。

「無様だな」

「えぇ、本当に……こんなのが息子だと思うと、情けなくなりますね」

 転がった先には、父と母がいた。

 周囲には主だった家臣たちが取り囲んでいるが、誰一人として俺に声援は向けない。

(父さん……母さん……どうして……)

 泣きたくなった。痛みに耐えて立ち上がり、振り返るとセレスは笑顔で俺に告げる。

「どうしたのかしら? こんなものなの、ライエル」

 わざと名前を呼び、俺を煽ってくる。

「まったく、セレスは剣術など少ししか教えていないというのに」

「ウォルト家に相応しいのはセレスで決まりね」

 両親の声が俺の背中に向けられた。

 こんな事を言う両親だが、かつては優しかった。今、握っているサーベルももとは両親が俺のために用意してくれた物だ。

『ライエル、お前もウォルト家の男だ。武器も一流の物を持たないとな』
『似合っているわよ、ライエル。流石は私たちの息子ね』

 優しい笑顔を向けてくれたのは、俺が十歳の頃までだ。

 それ以降、両親は妹であるセレスを溺愛するようになる。俺の事など興味がなくなったのも、その頃だろう。

 それは、何も家族だけの事ではない。

 屋敷にいる家臣たちも同じだった。

 今までは、俺を次期当主として扱ってきた家臣たちも、妹であるセレスを当主であるかのように扱いはじめたのだ。

 俺は、陰口を叩かれ、そして当主に相応しくないと言われ続けた。

 十歳になるまでは、家臣たちも領民も、俺が当主になるのを楽しみにしていると言っていたのだ。

 だが、今は違う。これが現実だ。

「これでセレス様が当主になるな」
「まったく、こんな事をしなくても、追い出せばいい話だろ」
「セレス様に勝てるわけなどないのに。馬鹿な奴だ」

 悔しくて涙が出てきた。

(俺が何をした。なんでこんなに俺を憎む!)

 セレスだって俺の妹だ。別に嫌いだったわけでもない。だから、俺は兄として接してきた。

 しかし、セレスにはそれが気に入らなかったのだろうか?

「あら、泣くの? 本当に無様ね」

 クスクスと笑い出すセレスは、とても楽しそうにしている。

「なんでこんな事をする! 俺がお前に何をした!」

 俺は声を荒げると、セレスの笑顔が無表情へと変わる。

「……五月蝿いわね。あんたには関係ないわ。別にいてもいなくても良いのよ。ただ、目障りになったから出て行って貰うの」

「お、お前は何を言って……」

 すると、セレスは左腕を上げて俺を指さした。

(魔法を使うつもりか!?)

 気がつけば、後ろにいた両親や家臣たちはセレスの動作を見て既に移動している。

 俺への攻撃を容認していた。

「くそっ! アイスウォール!」

 氷の壁が俺の目の前に出現する。

 水属性の魔法であり、即席の盾である。難易度が高い魔法の一つだが、俺を覆い隠すほどの大きさで出現した。

 魔法の鍛錬も欠かした事などない。褒められようと……両親に振り向いて欲しかったたまに、俺は無我夢中で鍛えてきたのだ。

 剣だけではない。魔法も、乗馬も、そして知識も……だが、それらは目の前の存在の前では、無価値なのだろう。

「ファイヤーバレット」

 余裕を見せたセレスが、俺の準備が整うと魔法を唱えた。
俺とは対照的な火属性の魔法で、難易度も初歩の初歩だ。だが、使い勝手の良い魔法でもある。もっと
も、火の弾を撃ち出すだけの魔法である。

 しかし、俺の作り出した分厚い氷の壁は、いともたやすく炎の弾丸に削られていく。

 一発ではない。

 セレスの指先からは、一つの魔法で何百発と放たれたのだ。一つ一つの威力も高く、俺の用意した魔法は相性も勝っているはずだった。

 だが、結果はセレスの初歩の魔法にすら勝てなかった。

「くっ、アースハンド!」

 俺の周囲の地面から、土で出来た腕が四つ生えてくる。それらは、俺の意志に従ってセレスへと襲いかかった。

「退屈」

 ニヤリとセレスが笑うと、手に持っていたレイピアで土の腕を全て斬り割いた。レイピアは基本的に突く事が得意な武器である。ソレを使用しながら、魔法を簡単に斬り割いてしまう。

「アースバレット」

 手数で勝負するために、俺は次の魔法を唱えた。石ころが弾丸のように地面から撃ち出され、芝生をズタズタにしていく。

 だが、今はそんな事を気にしている余裕などなかった。

「シールド」

 セレスが表情を変えずに、微笑んだまま呪文を唱える。単純な魔力でできた壁が、俺のアースバレットを完全に防いでいた。

 セレス並にいかないが、それでも数十発は撃ち込んだはずなのだ。それが、一つも通らない。

(もう魔力がない。ここで勝負に出るしか……)

 勝つ見込みがないことなど、俺にだって分かっていたのだ。だが、勝負をしなければいけなかった。

 でなければ、俺は何もせずに家を追い出されていたのだ。

 始まりは、やはりセレスの言葉だった。

『ねぇ、お父様。お兄様も今年で十五歳なり成人です。ここはウォルト家の次期当主を決めるために、勝負をしたいのですが?』

 普通は男子が家を継ぐ。

 だが、両親はセレスの言い分が正しいと、俺とセレスの勝負を認めたのだ。

『負けた方が家を出て行く。それでよろしいですよね、お兄様』

 俺を憎んでいる、もしくは疎ましく思っているセレスとの勝負は、こうして始まったのだ。

 本来ならば、あり得ない話だった。

 女の子が家を継ぐという話も、あるにはある。だが、それは事情があって、代理、もしくはそういう家庭である事が大前提だ。

 ウォルト家は、代々の当主は男である。開拓に乗り出した初代から、直系の男子で家を引き継いできた。

 二百年以上の歴史がある家だ。

 なのに、父も母も、セレスの言葉に従って、長男である俺との勝負を認めてしまった。

「セレス、お前なんかに!」

 踏み込んだ俺は、全力でセレスに斬りかかる。見た目はか弱い少女の妹に、全力で斬りかかっていた。

 第三者から見れば、悪いのは確実に俺だろう。しかし、俺は心のどこかで分かっていた。何千、何万、何十万と振り続けてきた素振りの成果が、斬撃に出ている。

 力の乗った一撃は、当たればセレスを両断するだろう。

 ――そう、当たれば、である。

 踏み込みも良かった。斬撃も今出せる最高の一撃だ。

 しかし、俺の攻撃がセレスに届くことはない。

 縦の斬撃に半身を逸らして避けたセレスは、レイピアをしならせて俺に攻撃を加える。いたぶるように、何度も浅い傷を刻まれていく。

 だが、このままでは終われない。

「まだだ!」

 避けられた斬撃が地面に突き刺さるのを堪え、俺は左手を離してそのまま斬り上げる。丁度、Vの形を斬撃が画いた。

 それを見たセレスの瞳が、大きく見開かれる。

 奥の手だった。

 密かに練習してきた剣技だが、セレスには届かなかった。だが、その刃はセレスのドレスの端を斬り割く。

(これにも反応するのか)

 必殺の一撃のつもりだったが、セレスの反応速度はそれ以上である。ただし、ドレスの切れ端とは言え、届いたのだ。

(届く。俺の剣はセレスに届く!)

 端から見れば、妹相手にムキになる兄というのは見苦しいだろう。しかし、相手がセレスならば俺にとっては意味がある。

 その綺麗な顔が、屈辱に歪んでいくのを見られただけでも価値があった。互いに飛び退くと、息を切らした俺は口の端を上げてニヤリと笑ってみせる。

 精一杯の抵抗だ。今は、これしか出来ない。

「どうした、セレス」

 下を向いて無表情になったセレスは、ワナワナと振るえていた。悔しいのだろう。妹であるセレスが、本当に悔しそうにしている姿を見たのは、これで何度目であろうか?

「……名前を呼ぶな、汚らわしい」

「……え?」

 気がつくと、目の前にいたセレスがいなくなっていた。そして、セレスの声が俺の後ろから聞こえてくる。

 振り返ると同時に、セレスの拳が目の前にあった。

(あ、あれ?)

 痛みなどなかった。ただ、俺は気がつけばサーベルを手から放して吹き飛んでいる。ゆっくりとスローに見える周囲の光景の中、セレスだけが普通に動いているように見えた。

 近づき、今度は赤い靴で俺を蹴り上げる。

 空中に浮かんだ俺を見上げるセレスが、魔法を放とうとしているのを見る。

(まずい、殺される!)

 すぐに魔法で防御をしようとするが、セレスが放った魔法は高難易度のものであった。使用する魔法使いにも、かなりの力量を要求する魔法。

 本気で殺しにかかってきている。

「ファイヤーストーム」

 その淡々とした言葉を聞きながら、俺も唱える。

「ウォーターボール!」

 残った力を振り絞り、俺は魔法を自身の周りに展開する。炎の嵐が巻き起こり、そして俺を包み込み焼き殺そうとしていた。

 こちらも魔法を行使するが、防ぎきれるか分からない。

 ただ、今の魔法で本気で殺しにかかっているのが分かった。

「お、お前はそんなに俺が邪魔なのか! セレス!」

 叫ぶと同時に、俺はそのまま地面に倒れ込む。衝撃が体に伝わると、そこで痛みが全身を走った。

 今まで感じていなかった痛みと合わさり、俺は地面の上でもがき苦しむ。そして、俺のサーベルが目の前に落ちてくる。

 刃が地面に刺さり、炎の熱で少し赤くなっていた俺のサーベル。

 握れば火傷は確実だが、俺は手を伸ばした。

 もう何も考えられないが、ただ手放したくなかったのだ。俺にとって、目の前のサーベルが両親との最後の絆に感じられていたからだ。

「あ、あぁ……」

 そんな俺の姿を見ている周囲は、助けることもなく俺を見ていた。惨めに這いつくばる俺を見て、笑っている者までいる。

 歩いてくるのは、下卑たる笑みを浮かべて近づいてくるセレスだけだった。

「いい気味ね。もっとも、生きているのが驚きだけど」

 そう言って、俺が手を伸ばしたサーベルを目の前でズタズタにする。熱したせいか、それともセレスの腕なのか、サーベルはまるで金属ではなく紙のように斬り割かれる。

 伸ばした手が、むなしく地面に落ちた。

 そのまま芝を掴むと、涙を流し見上げる。左手で髪の毛を弄りながら、セレスは満面の笑みを浮かべていた。

「それってお気に入りだったわよね。残念だったわね」

 嬉しそうなセレスが、俺を見下して楽しんでいる。だが、両親の声が聞こえると振り返った。

「セレス、もういいだろう。服が駄目になったんだ。今日はこのままお前の新しいドレスを買いに行こうじゃないか」
「それは良いわね、あなた」

 怪我、そして火傷でボロボロになった俺の事など、誰も見ていなかった。もう、いない者として扱われている。

「ま、待ってくれ! 父さん、母さん!」

 声を振り絞り、手を伸ばす。だが、両親は俺に一度だけ視線を向けただけだった。その視線も、まるで汚い物を見ているかのような視線だった。

 そのまま俺は、地面に額を打ち付ける。

 声を出し、周囲のことなど気にせずに泣きわめいた。





 どれくらいの時間が流れただろうか、俺が気を失うにはそう時間はかからなかったはずだ。芝生の上で泣きわめいていたのは覚えているが、気がつけばベッドの上にいた。

 体中に包帯が巻かれ、手当を受けた後のようだ。

「いったい誰が……父さん? いや、それはないか」

 自分で言っておいてなんだが、父が俺を助けることなどない。去り際の態度を見れば明らかだが、それ以上に場所が屋敷ではなかった。

 木板が張られた天井を見ながら、俺はここが自分の家である屋敷ではないことが理解できた。

 誰が助けたのだろう? そう考えながら、動かすと痛みを感じる首を動かして周囲を確認する。

 木造の家、というよりも小屋に近いその場所で、俺はまた視線を天上に戻した。目を覚ましたが、体はまだ睡眠を欲しがっているようだ。

 それに、今は何も考えたくはなかった。

(捨てられたのか、俺は……)

 両親に見捨てられた俺の脳裏に、セレスの顔が浮かび上がる。下卑たる笑みを浮かべたセレスの顔は、俺をあざ笑っている。

 そんな時だ。

「……? 誰だ」

 俺は周囲に人の話し声、というよりも語りかけてくるような変な感覚に襲われた。

「誰もいない、よな?」

 周囲には人の気配がない。勘違いだと思いながら目を閉じる。

 今は誰か分からないが、手当てして貰ったのだ。少しでも寝て体力を回復したかった。体が重く感じ、そして眠りたかった。

(今は、何も考えたくないな……)





 目を閉じて少ししてからだろうか、声が聞こえる。

『おいおい、これって来たんじゃないか? 絶対に来たって!』

 陽気と言うよりも、粗暴な声が聞こえてくる。声が大きく、ガハガハと笑っている誰かの声が聞こえた。

(だ、誰だ? もしかして助けてくれた人なのか?)

 しかし、俺の声は届いていないようだ。それに、何故だか疲れるような感覚がある。まるで、魔力を吸われているような――。

『お父さん、少し黙っていてくださいよ』

 今度は少し疲れたような男性の声がした。

(複数? それにしても違和感が……)

 俺は声を出せない。そして、思っていることも相手に伝わらない。

『爺さんの気持ちも分かってあげなよ、父さん。だって、初の会話だよ。それも感じ的には直系の子孫が近くにいるね。確実に僕たちの血を引いているよ』

 今度は陽気な声が聞こえてきた。

(三人? いや、もっといるのか)

 声と言うよりも気配だろうか、とても三人だけとは思えなかった。

『お爺さんの気持ち分かるわ~。まずは落ち着いて確認しましょうよ』

 新しい声が聞こえてきた。お爺さんと言っているという事は、家族なのだろうか? だが、全員の声は若いというか、老けて聞こえない。

『まぁ、初の会話、だからね。でもさ、このまま気がつかない事もあると思うけどね』

(まただ。これで五人目か?)

 すると、また新しい声が聞こえる。

『悲観的すぎるぞ、親父。それよりも、今はどうなっているのか知りたいな。気がついてくれるといいんだが……どうした、ブロード』

 ブロードという名を聞いて、俺は驚いた。

 何しろ、ブロードとは俺の祖父の名前だからだ。

(これは……もしかしたら死んだかも知れないな)

 内心でそれでもいいのではなか? などと思いつつ、超えに耳を傾ける。

『孫だ! ライエルだ! 私の孫で間違いありません!』

 それは、苦笑いしたくなるほどに祖父の声だった。少々、孫に対して甘すぎる人であったが、その時の感じが声にまで出ている。

 ただ、少しだけ若い声に感じた。老人のようなしわがれた声ではない。

 いったいどういう事だ? などと思っていると、間を少し空けて――。

『『『マジでか!』』』

 騒がしい連中が、声を揃えて驚いている様子だった。

(…………いったいどういう状況なんだ)



 この日、俺の運命が動き出した。
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