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第七十一話 シャネル
 平成23年11月23日午前1時14分、交番近くの公園で爆発事故が発生した。全ての遊具が吹き飛ぶ大惨事だ。ただ、深夜だったおかげで利用客は少なく、死亡したのは中年男性一人だけ。公園を根城にする数羽のカラスも焼け焦げていたが……まあ、それを含めてもたったの一人と数羽。この程度の被害はむしろ不幸中の幸いと言うべきだろう。

 それにしても、いったいなぜこんな事が起きてしまったのだろうか? 何の変哲もないのどかな公園。ガス管などの危険物は何一つ無いというのに。後に警察の懸命な捜査で明らかとなるが、実はこれには複雑な事情があった。では以下にその一部始終を記すとしよう。

 まず最初に言っておくが、この爆発は単なる事故ではない。強力なプラスチック爆弾を使った破壊工作。そう、テロリズムだ。犯人の名前は長谷川三平。年齢は48歳、国際テロ組織アルカイル(仮名)の一員で、そもそもの狙いは日本の警察だった。

 三平は小型で精巧な時限爆弾をシャネルのバッグに仕込み、それを大胆にも公園近くの交番へ落とし物として届けたのだ。爆弾は小さな建物など跡形もなく吹き飛ぶ威力。交番にいる警察官は死を決して免れないだろう。爆発の二日前の話である。

 交番は小なりといえど立派な警察施設。それが爆破されれば社会の不安はいやが上にも高まるに違いない。安全かつ巧妙。三平の計画は完璧と思われた。しかし、この時すでに運命の歯車は狂い始めていたのだ。

 最初の誤算。それは三平から落とし物を受け取った若い巡査がそれを着服してしまったことだ。彼には最近熱を上げている女性がいてプレゼントにいつも悩んでいた。そんな時、高価なシャネルのバッグが目の前に転がり込む。ついつい魔が差しそれをかすめ取ってまったというわけ。

 だが、事態はこれだけで終わらない。次なる誤算。それは、この若い巡査から貢ぎ物を受け取った女性が、ひったくりにあってしまったことだ。被害はもちろんシャネルのバッグ。三平の作った爆弾はまたしても人手に渡ったわけである。

 いや、人手という言葉には語弊があるやもしれぬ。なぜなら、そのひったくり犯は人間ではないのだから。犯人は都内を徘徊するカラスたち。この真っ黒な空飛ぶ窃盗犯が、シャネルのバッグをどうするつもりだったのかは不明である。ただ、彼らがそれを自分たちの巣に持ち帰ったのは確かな事実であった。

 さて、事件の夜。三平は標的とした交番にほど近い公園に来ている。派手に爆発する交番を自分の目で確かめたかったのだろう。彼はベンチに腰掛けた。それはカラスの巣がある大きな楡の木の真下にあった。そして、タイムアップ。彼の作った爆弾は見事に爆発し、周囲の物を吹き飛ばし焼き尽くしていった。三平自身とカラスたちを含めて……


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