ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第  二話 告白
「河本先生、好きです!」

「ま、まて井上! お前、自分が何を言ってるのか分かっているのか?」

「分かってます! いけないことだってことくらい。でも……でも、私、先生のこと大好きなんです」

「ま、ま、まて! 気持ちは嬉しいが……それは駄目だ」

 私立鯨釜学園の教師、河本は焦っていた。
 放課後の人気のない教室で、ミニスカート姿の可愛い教え子と二人っきり。
 それだけで心臓がバクバクする状況だというのに、まさか告白されるなんて……
 もう、どうにかなりそうだった。

 正直、河本はモテる男ではない。
 いや、はっきり言ってモテない。
 女性とまともに付き合ったことなど皆無に等しい。

 童貞は商売女に捧げた。
 大学を卒業する直前のこと。五十を過ぎたくらいのおばさんが相手だった。
 イク時に「母ちゃん!」と叫んだ。
 終わったあとそのおばさんに大笑いされた事は、記憶から消しさりたい苦い思い出である。

 そんな河本だからこそ、このシチュエーションには焦ってしまうのだ。
 このまま教え子とズルズル行ってしまいそうで……

(いかんいかん、何を考えているんだ俺は!)

 そもそもどうして、こんな事になってしまったのだろう?
 河本は焦る頭で思案する。
 そしてすぐに(この学園の教育方針が悪いのだ)と、結論づけた。

 初代学園長の理念は自由な校風。
 そのため、生徒が少くらいハメをはずしても、教師は何も言えない。
 制服も自由。何人かの生徒は詰め襟の学ランをきちんと着用しているが、その他は思い思いの服装を楽しんでいた。
 そして中には、この井上のように際どいミニスカートに化粧を施した、高校生とは思えぬ姿で登校してくる者もいるのだ。
 河本はそんな学園の教育方針を苦々しく思う。

 だが今……
 赤いルージュを塗った教え子の唇が目前に迫る状況に立たされると、河本の顔はだらしなく歪んでしまうのだ。
 彼がもっと女性に免疫があればこうはならなかったかもしれない。
 時すでに遅し。
 ついに河本の理性を吹き飛ばす一言を井上が言った。

「私の初めては……先生に……あ・げ・る」

 小悪魔的な微笑を浮かべる教え子の言葉に、教師の我慢は限界に達した。

「い、いいのか?」

「……うん」

 その日、暗くなった教室で二人は結ばれた。河本に悔いはない。

 たとえこの学園が男子校であり、井上が美形ではあるがれっきとした男だとしても……


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。