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戦闘力5のまま異世界転移した俺は仕方ないのでチェーンストアを確立してサポートに全力を尽くすことにしました 作者:らいず

1章

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夢と、初めての村と

※お願い

そろそろ、主人公がこの世界で、本格的に行動を始めます。
その過程で、色々な知識を得意げに話すこともあるでしょう。
しかし、同業者様はわかって頂けると思うのですが、販売戦略やその他原則は、決して一辺倒ではありません。
なので読者の方が、学んだ事と異なる理論も、そのうち出てくるかもしれません。
あらかじめご容赦ください。
あくまで“翔が元居た”世界の知識を、この世界で語っているんだと思います。

これからも優しく、物語を応援して頂けると幸いです。
 今日も夢を見ている。
 相変わらず、勇者は雷鳴を響かせて激しいぶつかり合いを繰り広げていた。
 始めのうちはあまりのインパクトに、勇者の事ばかり見ていた。
 しかしこうも同じ夢が続くと、ある程度余裕も出てくる。
 試しに視線を下へ向けると、何やら建物が並んでいるのが確認できた。
 これは村だろうか。
 そこまで大きくないし、集落だろうか。
 その建物の多くは、こんな状況の真下にあるという事を差し引いても、ずいぶん寂れて見えた…。



 俺は日課となったマキ割り水汲みを早々に終わらせ、マリーの案内に従い山道を歩いていた。
「へえ…結構近くに村があったんだ」
「はい。大体15分くらいの道のりですね」
 どこかへ仕事に行っている以上、それなりの距離には何かあるだろうとは思っていた。予想していたよりは、かなり近い距離だ。とはいえ、歩いているのは山道だ。たかが15分、されど15分。ましてや、今マリーの代わりに担いでいる、金属でできた商品群を担いでとあっては、中々の重労働と言えた。
 これを担いで、ほとんど毎日この道を往復していたのか…。
 正直、仕事柄それなり程度とはいえ、身体が鍛えられている俺でも息が上がる。マリーはすごいな…。この世界へ来てからと言うもの、マリーには感心してばかりだ。
 それにしても、村か…どんなところか楽しみだな。
 俺はこの異世界に来て、これから俺の無双伝説の始まりかと、心底期待していた。でも未だに、これと言った力が使える気配は無い。特に力を授かる修行イベントが始まる訳でも無ければ、申し訳程度にここでは身体能力が高いなんて事も無い。まさに、戦闘力たったの5か、ゴミめと言わんばかりの、まごう事なきただの一般人のままだ。肩透かしを喰らったようで、正直意気消沈気味だった。
 しかしだ。俺は今、新たな期待を胸に抱いて、少し興奮気味だ。
 それは他でもない、今向かっている村で開催しているという、市場いちばが関係している事だ。皆様も良く考えてみて欲しい。
 店長経験もあり、それなりに業界のセミナーなんかにも顔を出していた俺が、異世界に来て最初に出会った女の子が、おあつらえ向きにお店を営んでいるという。加えて本人が、そんなにやる事がないという程度しか、設ける事が出来ていないって言うじゃないか。
 となれば、答えは見えてくる。
 これは、能力無双系じゃなく、現代知識で無双するタイプなのではないだろうか?
確信を持てる何かがある、という訳では無い。でも、わざわざ異世界にまで呼ばれたからには、何かしらの意味があると信じたい。
 俺が持っている商業や、小売業の知識は、元の世界では業界人なら知っているのが当たり前の事も多いし、そこまで専門的で難しいものは少ない。それでもそれは、実際に売り上げの数値統計を取り、売る為の仕掛けに対して、どういった結果が出るのかを、膨大な時間や資産を費やし、まとめ上げてきたものだ。人類史の叡智のひとつだ。この世界でも通用するのか不安はあるが、試してみる価値はある。
 いや、通用してほしい!知識を駆使して一財産を築いて、夢の異世界豪遊暮らしをしてみたい!美人な奥さんも、もちろんセットだ。お金が稼げればマリーにも、今よりずっといい暮らしをさせてあげられるかもしれないし…。
 マリーが世話をしてくれていなかったら、俺は間違いなく途方に暮れていた。もし今考えている通り上手く事が運んだら、必ず恩を返したい。
「お兄さん!平気ですかー!荷物、持ちましょうかー!」
 だって、こんなにいい子なんだもんな…。
「大丈夫だよ!何のこのくらい!」
 あれこれ考えながら歩いていたら、いつの間にかマリーと距離が開いてしまっていた。踏みならされた跡があるとは言え、舗装されてる訳でも無いのに、マリーはするすると歩いていく。健脚だなあ…。
「あと少しですから、頑張ってくださいねお兄さん」
 うん、笑顔が眩しいね。あと、お兄さんと呼んでくれる所もとても良い。癒しだ…。
 俺は少し足を速め、マリーに追いかけながら質問してみた。
「この道を毎日、荷物を担いで往復って大変じゃない?村があるのなら、そこに住む訳にはいかないの?」
「うーん、まあそ色々ありましてー」
「そうなんだ」
 また、色々あるらしい。もしかして信用されていないのだろうか。だから本当の事を隠している?考えてみれば、俺はいきなりどこかから現れた、得体も知れない人間だし当然かもしれない。
「それに村からだと、今度はメルクリウ様の所が遠くなってしまいますからね」
「それって、神樹様の名前だっけ?」
 どこか他でも聞いた覚えがある名前なんだよな…。どこだったか。
「はい。特に何をしている訳じゃ無いんですけど、定期的に様子を見に行っているんです。極々稀にですけど、異変があったりしますからねー?」
 マリーが少し首を傾げ、下から覗き込んでくる。ああ、異変って俺の事ね…。俺にはとりあえず笑う事しかできない。にしても、それでわざわざこんな山道を往復しているのか。他にも理由はあるみたいだけど、できればこれも何とかしてあげたいな。
 あれこれ話をしながら歩いていると、フッと視界が開けた。今まで木々に遮られていた太陽の光も、一気に目に入ってくる。
「お疲れ様です。あとは市場まで行けば到着ですよ」
 そこにはこの世界に来て、初めての村が広がっていた。



 そのまま一気に市場までやってきた俺たちは、持ってきた荷物の中身を取り出し、店を広げていた。俺はとりあえず、マリーに言われるがままに持ってきた剣やら、盾やらを並べながら、周りの様子を窺っていた。
 なんというか、思ったよりも閑散としているんだな…。
 市場と聞いていたから、それなりにこの世界の人がたくさんいるのかと思ったのに、実際には時折人が通っているという程度だ。タイミングによっては、店の近くに誰もいない事すらある。店も、ずらりと並ぶと言うほどある訳では無かった。何より、お客が少ないのは仕方がないとはいえ、とても空気が重かった。それから、初めてマリーとストスさん以外の人を見たけど、どの人も軒並みやつれた顔をしていた。
てっきりマリーが、特別生活に困っているのかと思っていたけど、ここにいる人達はみんな大変なんだな。
 そんな事を考えながら、こっそり視線を巡らせていた俺だったが、どうにも注目を浴びている気がする。まあこの規模なら、多分みんな顔見知りなんだろうし、そりゃあいきなり得体のしれない奴がいたら、目立つか…。よし、こういう時は先手必勝!円滑なコミュニケーションは、元気な挨拶からだ。
「よし…」
「え?お兄さんちょっと!?」
 俺は素早くお隣さんの店の前まで進み、経験で培ったとびっきりの営業スマイルを浮かべて言った。
「おはようございます!訳あってマリーさんの所でお世話になっています。今日はお手伝いとして、ついて来ました。このあたりの事には少々疎いので、ご迷惑をかける事もあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします!」
 お辞儀もビシッと決め、本日一人目の挨拶をやりきった俺は、おそるおそる、お相手の反応をうかがってみた。
「・・・」
 あれ、不味い…。何かすごい怪訝そうな顔をしている。
 おかしなことをしてしまったのだろうか。ここの常識は元の世界と違うとか?マリーと普通に話が通じるから、大丈夫かと思ったけど、考えてみれば元の世界でだって、その場所での常識や作法って言うのものがある。早まってしまっただろうか。
 そう思っても後の祭りで、俺は内心を隠しながら笑顔を顔に張り付け続ける。
「えっと…」
 何か話をしてみようかと思ったその時、目の前のおばさんがふっと表情を和らげた。
「…ああ、よろしくね」
「あ…よろしくお願いします」
 なんだ良かった。普通にいい人そうだ。
 がっちり握手まで交わしていると、事の成り行きを見て固まっていたマリーが、ハッと気が付いたように近づいてきた。
「ちょっとお兄さん!びっくりするから、余り勝手に動かないで!」
「おはようマリーちゃん。どこから連れてきたのか知らないけど、元気なニイちゃんだねえ」
「ソウさんごめんなさい。ちゃんと私が紹介しようと思っていたんだけど…」
「まあ、事情は聞いておかなきゃならないしねえ」
「うん、きちんと説明するから。お兄さん、私ソウさんと少し話があるから…」
「そっか、じゃあ残りのお店の人にも挨拶してくるよ」
「い、いやお兄さんそうじゃなくて…」
「あっはっは!まあいいさ行っておいで。どうせ他の連中も今のやり取りは見ていただろうし、問題はないさ」
「それは、そうかもですけど…」
「では、行ってきます。マリー、挨拶が終わったら店の手伝い、続きするね」
「あ、うん。いってらっしゃい」

 それから俺は、まわりのお店を順番に回った。一人ひとり丁寧に、これから仲良くしましょうという気持ちを込めて挨拶した。全体的にぶっきらぼうだったり、中には返事を返してもらえない事もあったけど、今の俺は怪しい人間、多少は仕方がない。
 なんにせよ、来たばかりの頃よりは多少、人通りも増えてきた気がする。いよいよここからが商売の本番だ。頑張るぞ!
 そういえばそれとは別に、ちょっと引っかかるんだよな。一体なんだろう?
「お兄さん、こっち手伝ってもらえますか?」
「うん。今行くよ」
 店に戻っていたマリーに呼ばれて、俺は手伝いを再開する。
「あんまり目立つ事は控えて下さいね。ここではお兄さんは…何もしなくても目立ちますから」
「うん。無闇に目立とうとは思わないけど…」
 俺が何もしなくても目立つ?初めて来たから…っていうのは、当たり前の事だからあえて言ったりしないだろうし、だとすればどういう…?
 しばらく考えながら辺りを眺め、やがて一つの答えに思い当たった。
 あ…そうか。ここの市場の人たちは、俺以外全員、女の人なんだ。
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