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思春期に殺された少年の酸っぱさ

作者:dtu





少年、タダフミは死んだ。
享年14歳の大往生である。
死因は、最近とある業界で頻発する突破性トラック症候群。
まあよくあるファンタジー事故というやつだ。
トラックに轢かれるだけの簡単なお仕事です。これで異世界転生の権利ゲット。
ちょろいもんだね。まったく。







白なのか無色なのかよく分からない広々した空間で、十分だか十五分だかの時間を過ごしたタダフミ。
その短いようで、やはり短い時間を過ごした彼の記憶によく残ったものは、見えそうで結局見えなかったパンツだった。
やけに丈の短いワンピースが印象深い、神を自称する女の子はめっさ可愛かったから仕方ない。

シャイな平成ボーイのタダフミは女の子と話すことが苦手なのだ。
当然そんなタダフミが可愛い女の子を直視できる筈も無く、これこそが神の罠だった。
タダフミがついつい視線を下げた先には件の見えそうで見えないブツがあり、つまりそういうことだ。
そして神の話す内容に曖昧に頷きながら時折揺れ動くスカートに隠された財宝に夢中になり、「あー」だとか「うー」だとか言葉になってない生返事を繰り返す内につつがなく質疑応答は終了。
神の術中に嵌った哀れなタダフミはただ流されるままに異世界へとぶん投げられた。アホである。

ちなみに、神を自称する女の子の本当の姿はハゲ散らかした冴えないおっさんである。まあ神だし姿くらい変えられて当然なのだ。
しかし、一見して冴えないおっさんに見えるが、やはり神であるおっさんの手腕は見事だった。伊達に長生きはしていないのである。
碌な社会経験もない青少年保護育成条例に守られている未成年なんて、おっさんからしたらうっかり出した精子みたいなもんだ。

事故っても動じることなく甘く囁いてアフターピル飲ませときゃ万事解決。
おっさんはこの方法で認知済み7件、不認知3件程こさえ、さらに未処理の訴状がダース単位で控えていて現在も係争中である。
ぶっちゃけタダフミ如きに時間を割いている余裕などないのだ。伊達に長生きはしていないのである。

冴えないって言ってもそりゃ神だしね。ハーレムぐらい余裕なのだ。
余談であはあるが、タダフミの名誉の為にもおっさんの女の子姿は本当に可愛かったと記しておく。





ともあれ、無事にちょいちょい特典をもらって異世界へ転生することができた少年タダフミ14歳。
そんな彼の視界に広がったものは、森だった。
それは見事な紛うこと無き森である。

左を見ても木。右を見ても木。上を見ると背の高い木に隠れるようにギリ見える青い空だった。まさに晴天である。
少年タダフミは戸惑った。
当然だ。女の子の股ぐらを見ていたのに気が付けば遭難プロ。未知との遭遇ってレベルじゃねーぞ、と。
視界に入ってくる景色から辛うじて先ほどと似通ったモノを探してみればそれっぽい木の股ぐらが限界。無機物でないのが唯一の救い。

そんなわけで、最寄の町への距離&方角だとかサバイバル的な知識の欠如だとかそんな些細な不安は置いといて、タダフミは喉が渇いていた。
初心なタダフミにとって女の子との二人だけのプライベート空間というのは些かレベルが高過ぎたのだ。
思春期だし喉くらい渇くよ。そりゃ仕方ないさ。
死ぬ直前にカロリーメートルなる携帯食品を貪っていたのも原因だったりするんだけどね。

で、喉に渇きを覚えた14歳のしたことと言えば、待機である。
遭難したら迂闊に動かずに助けを待つってテレビで仕入れた知識をどや顔で実践したわけだ。
ゆとりはこれだから……。
異世界転生したお前を誰が助けに行くっちゅーねんって話しだよね。思わず関西弁にもなるよ。
まあ待機するも30分でタダフミのしょぼい忍耐力が限界を迎えて大声で助けを呼ぶことになるんだけどね。
けれども当然助けなんか来ないわけで、自力でどうにかするしかないとようやく悟るわけ。大声出すと喉も渇くしね。
ここまでで2時間。

そんで危機的状況に気づいたというか現実を受け入れざる得ないタダフミは、貴重な水分を目と鼻から垂れ流して歩き出した。
まあ異世界転生するくらいのラッキー野郎だし、結論から言っちゃうととりあえず助かるんだけどね。
歩き出して30分もしない内に流れの緩い沢に辿り着いたわけだ。ホント運がいい奴である。

豚やら河童やら猿(※順不同)やらを連れた昔の偉いお坊さんが2クールかけても目的地に辿り着けなかったのにね。
で、寄生虫がうようよしているであろう水をたらふく飲んだタダフミは人心地ついて、緩い頭を使って思い出すわけ。
蜘蛛の生息地と化した記憶の棚から引っ張り出した内容は、自称神的な存在からもらった特典についてだ。
皆大好きお待ちかねのチートタイム乙である。






本来であればステータス的な画面を表示させたかったらしいが諸事情によりそれは厳しいらしく、神のおっさんはメモ紙をタダフミに渡していた。
これは巷で氾濫するファンタジー風紀を乱す有るまじきシステムチックなビジュアルへの対抗措置なのか、はたまた腐っても物書きなら文章で表現しろよという挑戦なのか、……などと深読みの必要は無く、神的なおっさんの単なるPC的な知識不足によるところが大きい人為的な構造欠陥であった。

神だけどおっさんだしね。時には時代に取り残されたりもするさ。
ともあれ酷く前時代的であるが、有効な情報伝達手段である。
そしてそのメモ紙にはこう書かれていた。

「しゅ、しゅんぞく?」

眷属(けんぞく)だ馬鹿野郎。
確かに春に似てるさ、似てるとも。言われて今初めて気づいたけどな。
だども(※誤字ではない)春属ってどーよ。
あれか、街角で春を売って練り歩くマイスターにカテゴライズされるJKか。死ね。

……や、悪い。死ねは言い過ぎた。
タダフミくんはまだ14歳だもんな。眷属が読めなくてもしゃーない。
たださ、タダフミくんはサキュバスとかでるエロ小説大好きじゃん? 夜にさ、タダフミくんの家に唯一あるリビングのPCでこっそり読んでたじゃん?
だからてっきり読めるのかなって……。

ちなみにだけど、タダフミくんのご両親は履歴とかチェックしてるから読んでるのバレバレだったよ。
そんで母親経由でタダフミくんの2歳下の妹もばっちり把握してて、君がいないとこで家族で爆笑してたから。
まあ笑って済ますぐらいで理解ある親御さんでよかったね。使用禁止とかだったらシャレにならんもん。
ゆとりには厳しい要求かもだけど、今度から履歴くらい消しとこーね。家族に性癖バレとかトラウマ級だしさ。
つっても今後その機会は二度と来ないんだけどね。 

さて特典の詳しい中身だが、中々に強力なモノのようだ。
以下が内容である。

『眷属』
1.タダフミ(以下甲と称す)は如何なる生物(※1)とも契約(以下「本契約」と称す)を結ぶことが可能となる。
2.甲と本契約を結ぶことのできる契約者(以下乙と称す)の個体や数は甲の力量に応じて変化するものとする。
3.乙の成長は乙自身の経験や甲の力量に応じて変化する。
4.本契約を結ぶ乙の中で甲が定めた1体(以下丙と称す)に限り、甲の守護者として特別な知識や能力を付与する。
5.4項で定められた丙は、本契約が解約されるまで変更することはできない。
6.丙に存続意思があり、またそれが可能である限り甲は最大限の努力を払い本契約の持続に努める。
7.本契約の解約は乙、丙の核消滅によって完了する。
※1.2項に順ずる

◆甲乙間で締結される乙の業務提供に関する本契約は次の条項に従うものとする。
第1条(業務内容)
1.乙は甲に対し次の業務のうち、甲乙間で合意した事項を提供する(以下「提供業務」と称す)
(1)ファンタジー世界に関する知識と情報の提供
(2)ファンタジー世界における生活補助
(3)身体的、精神的なリスクからの防衛
(4)身体的、精神的な成長の促進
(5)敵性生物、勢力への攻撃
(6)その他甲乙間で合意した事項
2.1項に極端に反しない場合、甲乙間で別段の合意がない限り、提携業務に含めない。

第2条(条件)
甲は提供業務を受けるにあたって、次の条件を満たさなければならない。
(1)乙の核への魔力譲渡
(2)乙に対し協調性を欠かないこと
(3)乙の警告や注意に従い行動すること
(4)乙から魔力譲渡の要求があれば、必要に応じて譲渡を行うこと
(5)提供業務を受ける上で不明な点があればその都度自己申告し、その他必要に応じてなされる乙の質問について虚偽無く回答するこry

第3条…………………………
………………
…………
……

第12条(協議)
本契約に定めのない事項および本契約の解釈に疑義が生じた場合については、乙および甲が双方誠意をもって協議し、その解決にあたるものとする

(以下略)

である。
ファンタジー上等すぎだろあのおっさん。一体何と戦ってるんだよ。もう休めよ。
つか手書きかよこれ、一晩でやってくれましたってか、うるせーよ。
見ろよおい、あんなに目を輝かせてたタダフミが今なんかもうレイプ目してるし。
眷属を春属と読む思春期の中坊にはレジェンド級の難易度って話だ。

しかしまあやる気ってのは偉大だね。動機は人それぞれだけどさ。
当時高価なVHSが普及したのもエロが原因っていうし、PCトラブルが起きてもエロ関連だと理解力が違ってくるよね。
あの眷属すら読めなかったアホのタダフミも苔の一念というか、特典の中身を大体理解したようだ。
うん、大体。
だってさー、タダフミくんってば即効契約結ぶんだもんよ。
ただの猫と。
その辺をよたよたと歩いてたきったねぇ四足歩行の小動物と発作的というか、衝動的に。
あれか、お前は猿か。
しかも4項の守護者認定ですよ。ただの猫に。おめでてーな。
あー、ほら、猫も何か言いたげですよ。
空ろだった眼が気のせいだろうけど理知的な光が見えてきたような気がする猫の瞳が、まっすぐにタダフミを捉える。
そして、こう言ったんだよ。

「キミは実に馬鹿だにゃ」







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