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ネトゲの旦那は私のアバターにしか興味がない! 作者:七風纏
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37 誤解と隠し事

「あれ……私、また寝ちゃってたのか」

 私はまだふらふらする頭を抱え、ベッドから上体を起こした。
 ……そう言えば、遥斗が代わりに買い物に行ってくれたんだっけ。
 それを思い出した私は、自分の部屋を出て階段を下りた。
 すると、ちょうど遥斗が戻ってきたところらしく、ドアを閉める音が聞こえた。
 その音に反応した私は、彼を出迎えるために玄関に向かう。
 こうしていると、何だかリアル夫婦気分を味わえるので実は嬉しかったりする。
 体調が悪い時まで、そんなことを考えている自分もどうなんだろう、と思うけど……。

「おかえりなさ──って……怪我したんですか!?」

 さらさらとした彼の綺麗な天然茶髪に似つかわしくない絆創膏が、前髪の隙間からちらりと見えた。
 そして、何やら表情までズーンと重苦しく、暗い。……家を出てから戻ってくるまでの間に、一体何があったんだろう。

「ああ……何というか……ぼーっとしながら歩いていたら、不注意で街灯にぶつかって……」
「え!? ……なんか珍しいですね。そんなドジっ子キャラでしたっけ?」
「……そういう時もある」
「あの……もし痛むようなら、病院に行ったほうが……」

 そう言って遥斗の顔を覗き込むと、彼はすぐさま赤面し、顔を背けてしまった。
 ……あ、さっきのことを気にしてるのかな。
 でも、私としては、あれ以上先に進んでくれても全然良かったというか……寧ろ、それで関係をはっきりさせてほしかったというか……。

「……いや、大丈夫だ」

 遥斗はそれだけ言うと、買ってきた物を持って居間の方に歩いていった。
 うぅ……こんなに気にされると、関係をはっきりしようにもやり辛くなるなぁ。
 先程よりも幾分、体調が良くなった私は、彼の後を追って居間のソファに座ることにした。

「あの……なんか、さっきからずっとそこに立ってますけど。こっちに来て座りませんか?」

 何かを思い詰めたような表情で、テーブルに手をつきながら立っている遥斗。そんな彼を見兼ねた私は、自分の隣を指差しながら声をかけた。
 すると、彼は少し戸惑った様子で「ああ……」と返し、遠慮がちに私の隣に座った。

「何かあったんですか?」
「いや…………」

 私の問いかけに、遥斗は何かを隠しているような様子で口籠る。
 ……明らかに、何かありそうな感じだ。戻ってきたら、何故か怪我をしていたことも気になるし……。
 暫しの沈黙の後、遥斗は再び口を開いた。

「少し気になったんだが……もしかして、結構、お嬢様だったりするのか?」
「え!? ……そんな風に見えます?」
「ああ、その……確かに見た目も、そう見えなくもないんだが。結構、いい家に住んでるだろ? それに──」
「それに?」
「……な、なんでもない。とにかく、気になっただけだ」

 彼は何かを言いかけて、慌てて口を噤む。
 今、絶対、何か言おうとしたよね? そうやって隠されると、逆に気になるんですけど……。

「そんなわけないじゃないですか。そう見えるのは……たぶん、あれですよ。親が無理して高い家を買ったと言っていたので、その所為ですよ……。私、生まれも育ちも中流家庭ですし……。ていうか、そんなにお金持ちのお嬢様なら、もっとゲームに課金できてますから!」

 自分で言ってて虚しくなるけど、その通りである。
 もっと課金出来ていたら、今頃、あの季節限定衣装も手に入って──って、それを思い出すと悲しくなるからやめておこう。
 欲しかったんだよ……でも、遥斗に貢いでもらうのは嫌だったし、プレイヤー間の取引だと相場が高くてとても手が出ないし……。で、泣く泣く諦めたんだけども。
 そんな感じなので、『廃課金の申し子』である遥斗を見習って、私もバイトを始めようかと思っていたところだ。

「そうか……。そうなのか……じゃあ、なんで…………」

 私がそう答えたにも拘らず、彼は歯切れの悪い様子でぶつぶつ独り言を呟いていた。
 一体、何を隠しているんだろうか、この人は……。

「あの……何か隠してませんか?」

 私はそう言ってソファに乗り上げ、その上にぺたんと座ると、両手をつき、遥斗との距離を詰めた。すると、彼はわかりやすいくらいに目を泳がせる。

「べ、別に……そんなことは…………」

 ……この反応は、絶対に何か隠してる。
 少し意地悪してみたくなった私は、更に彼との距離を詰めた。

「さあ、白状してください! 隠し事はしたくないって言ってたじゃないですか!」

 私が顔を寄せると、遥斗は真っ赤になって自分の口に手の甲を当てた。
 ……よく赤面するようになったなぁ、この人。それにしても……なんか最近、彼と私の立場が逆転してしまった気がする。

「だ…………」
「だ……?」
「駄目だ! これ以上近寄られると、また──」

 そう言いかけて、彼は再び口を噤む。
 また、『さっきみたいなこと』をしちゃう?
 ──私は、それを望んでいるんだけどな。
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