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ネトゲの旦那は私のアバターにしか興味がない! 作者:七風纏
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34 体調不良で急接近?

「ユリア先輩、顔色が悪いみたいですけど……どうかしたんですか?」

 ハサネはそう言いながら、ダンジョンの通路で立ち止まっている私の顔を心配そうに覗き込んだ。

「ユリアちゃん、もしかして、このダンジョンのアンデッド系モンスターが怖いんじゃないか?」

 ハサネの隣で、同じように私の顔を覗き込んでいるシオンがからかうように言った。

「え!? いや、そんなことないですよ!」

 確かに、今来ているダンジョン──『ヘルランス城』はアンデッド系モンスターの巣窟だし、見た目が怖い敵ばかりだけど……。
 それで涙目になって進めなくなるほど、私は怖がりではない。子供じゃあるまいし。
 でも、VRだけあって結構迫力があるので、アトラクション感覚でこのダンジョンに訪れるプレイヤーも少なくないらしい。

「怖いなら、無理せず俺の腕に掴まっても──って、痛っ! 痛いって! ハサネちゃん!」
「『ユリア先輩にちょっかい出さないで下さい』って何回言えばわかるんですか? シオンさん」
「ちょ……やめ、いや、本当に……うわああああああ!!」

 ハサネはシオンの腕をぐいっと引っ張ると、背後から容赦なく関節技を繰り出していた。
 ……今、明らかに変な音が鳴ったけど、HP大丈夫?
 それにしても……ルディアスみたいなことするようになったなぁ、この子。
 シオンはシオンで、何故か色んな人から技をかけられているし……。みんなの彼に対する扱いが酷いので、ちょっと同情してしまう。

「ユリア、大丈夫ですか?」

 二人と同じく異変に気付いたリュートが私の方に歩いてきて、声をかける。
 そして、目の前で【治癒の歌】スキルを使った。すると、柔らかな風が吹き、緑色の特殊なエフェクトが私の体を包み込んだ。

「これでも治らないということは……状態異常というわけではないみたいですね。すると……リアルの体調不良が影響して、顔色が悪くなっているといったところでしょうか」
「ええ……たぶん、そうだと思います。何となく、朝から寒気がして体調が優れなかったので」

 ゲーム内では、毒に侵されたりするなどの所謂【状態異常】になると、キャラクターの顔色が悪くなる仕様になっている。
 現実世界の顔色も反映されるため、結構紛らわしかったりするのだ。
 実際、自分のステータスを確認しても異常が見られないので、やっぱりリアルの体調不良が原因なんだろうなぁ……。

「それなら……きっと、風邪を引いたんでしょう。どうします? 辛いなら、ここで抜けても構いませんが……」
「いえ、ボス部屋までもう少しなので、それまでは頑張りますよ!」

 私はリュートにそう答えると、再び歩き出した。


 ボス部屋に到着すると、派手なエフェクトとともに『ハイヴァンパイア』と『カーミラ』が出現した。
 赤い貴族風の服を身に纏った男吸血鬼が『ハイヴァンパイア』。その隣で不敵な笑みを浮かべている黒いドレス姿の女吸血鬼が『カーミラ』だ。
 ボスに攻撃される前に、このメンバーの中では一番レベルの高いシオンが魔法を放った。
 彼らが怯んだ隙に、ハサネとリュートが攻撃をかけるために走っていく。
 それに続いて、私も吸血鬼たちの元に走り寄ろうとしたのだが──頭がふらふらして、その場から動くことができない。

 うぅ……なんか、目眩がする……やばいかも……。
 やっぱり、さっきパーティから抜けておけば良かったかなぁ……ここで倒れたら迷惑かけちゃうなぁ。
 そう思った瞬間、私の意識は完全に飛んだ──。

「ユリア!」
「ユリア先輩!」
「ユリアちゃん!」

 意識がかすれていく中で、三人が各々、私の名前を叫んでいるのが聞こえた。


◇ ◇ ◇


「…………あれ?」

 目を覚ますと、見慣れた自分の部屋の天井が視界に入った。
 ……ああ、そうか。私、ゲーム内で倒れたんだっけ。たぶん、あのまま意識が飛んで、強制ログアウトしてしまったのだろう。
 プレイヤーが寝落ちしたり意識が無くなったりした場合は、自然にログアウトするようになっているらしい。
 今まで寝落ちなんかしたことがなかった私にとっては、初めての体験だった。

 とりあえず、頭につけているVRヘッドセットを外し、ベッドから体を起こす。
 その途端、先程と同じように体のふらつきとだるさを感じたので、自分の額に軽く手を当ててみた。
 ……ああ。やっぱり、結構熱があるなぁ。朝、熱を測った時はあまりなかったから大丈夫だと思ったのだけど。
 枕元にある携帯に視線を移すと、音田先輩と胡桃から何度も着信が来ていた。
 意識が飛んでいたのはほんの数十分程度だけど、心配して電話をかけてきてくれたようだ。
 私は、無事を知らせるために二人にメールを送った。

 今日は、もうゲームも出来なさそうだし、大人しく寝ているしかない。今日を合わせて三日間、両親が旅行でいないから、一人で心細いけど……。
 せっかくの夫婦水入らずの旅行を邪魔するのも気が引けるので、熱があることは黙っておくことにした。
 うちの両親は心配性なので、私が熱があることを知ったら、旅行を中止して帰ってきてしまうに違いないから。

 まあ、二、三日寝ていれば治るだろう。そう思って、再びベッドに横になると、枕元の携帯が振動した。
 あれ? さっき大丈夫って連絡入れたはずなんだけどな。

 その着信は、胡桃たちではなく──私が倒れた時に居合わせていなかったはずの遥斗だった。
 私は動揺しつつも、慌てて画面をタップして電話に応答する。

「夏陽! 大丈夫か!? 倒れてそのまま強制ログアウトしたと聞いたんだが……」

 遥斗は電話の向こう側で、かなり焦った様子で私にそう尋ねた。
 あ……心配して電話をかけてきてくれたのかな。

「ええ、何とか。実は、朝から風邪っぽかったんですけど……今になって、熱が上がってきちゃったみたいで」
「…………そうか。無事で本当に良かった。いや、良くないか……熱、結構あるんだろ?」
「はい。でも、二、三日大人しく寝ていれば治ると思うので……。その間、ゲームにログインできないので、週末のギルドイベントには参加できなくなっちゃいますけど……」
「そんなことはどうでもいいんだ。俺は、夏陽が元気になってくれればそれで…………」

 なんか、すごく心配してくれてる。こんな彼を見たのは初めてだ。

「あの……何だか、心配かけちゃってごめんなさい。すぐに治ると思いますから。今、両親が旅行中で、家に誰もいないのでちょっと不安はありますけど……」
「……暫く、家に一人なのか?」
「ええ。今日、明日、明後日の三日間、旅行でいないんですよ。だから、留守番してるんです。私、一人っ子で兄弟もいないので……。風邪くらいで、帰ってきてもらうわけにもいかないですし……」
「──それなら、俺が行く」
「え!?」

 ……今、この人なんて言った?

「俺が行って、夏陽を看病する」

 続けて紡がれた言葉に、私は思わず自分の耳を疑った。
 熱のせいで若干、意識が朦朧としているから、幻聴でも聞こえたのかと思ったけど……どうやら違うようだ。

「家に来てくれる……ってことですか?」
「ああ。高熱が出ているのに、一人にしておくのは心配だ。幸い、住んでいる場所も近いことだし……。それに、明日は土曜日だから、学校もないしな」
「あの……でも、バイトがあるんじゃ……」
「今日、明日はシフトが入ってないから大丈夫だ。場合によっては、日曜日も休むぞ」
「そ、そこまでしてくれなくても……本当に、一人で平気なので」
「…………心配なんだ」
「え……?」
「……夏陽は、俺の相方であると同時に、大事な友人だからな。友人が困っていたら、助けてやりたいと思うのが普通だろ?」
「あ、えっと……その……気持ちはすごく嬉しいんですけど、やっぱり迷惑になるので……」

 いくらなんでも、そこまで迷惑をかけるわけにはいかないので、私は遥斗の申し出を断った。

「──こんな時くらい、頼ってほしい」

 遥斗はそう言うと、少し切なげに溜め息を漏らした。

「最近、ゲーム内でも全然頼ってくれなかっただろ? だから、リアルで……いや、リアルだからこそ、助けになりたいんだ」
「遥斗くん……」

 彼が私を気遣ってくれる度に、心臓が早鐘を打つ。煩いくらいに。
 ──困ったな。
 そりゃ、頼りたいよ……? 頼りたいけど……看病ってことは、家に来るってことだよ?
 一日中……ううん、状況次第では日曜日まで二人きりってことだよね?
 でも、これだけ言ってくれてるんだから、ちょっとくらい甘えても……いいのかな。
 ……なんかもう、熱で顔が熱いのか、ときめきすぎて赤面してるのかわからなくなってきた。

「あの……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
「……わかった。これからそっちに向かうから待っててくれ」

 …………あぁ、言ってしまった。
 すごく嬉しいはずなのに……なのに……どうしたらいいのかわからなくて、この場から逃げ出したくなる。

 でも、本当に来てくれるんだ……。
 ──どうしよう、胸の高鳴りが止まらないよ。
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