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ネトゲの旦那は私のアバターにしか興味がない! 作者:七風纏
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21 友人として…

「あはは……なるほど。俺が帰った後、そんなことがあったのか。災難だったな、ユリアちゃん」
「笑い事じゃないですよ! 本当に、大変だったんですから!」

 私とシオンはそんな会話をしつつ、海岸にやって来た。
 今日から始まった『釣り大会』のイベント効果で、海岸には大勢のプレイヤーが集まっていた。
 イベント期間中は、【釣りポイント】を貯めることで報酬としてアイテムが貰えたりするらしい。
 釣った魚の大きさで、貰えるポイントが異なるのだとか。

 少し離れた所に、ハサネとリュートが並んで釣りをしているのが見える。
 私たちは、二人の元へ向かった。

「あ、ユリア先輩とシオンさんだ!」

 私たちに気付いたハサネがこちらに向かって手を振っている。
 彼女は先日、私が部室に入った途端に「まさかあの一言で、先輩とルディアスさんとシオンさんの仲が拗れてしまったなんて! 一体、なんとお詫びすれば良いのやらー!」と泣き叫びながらその場で土下座してきた。
 流石に今回、口を滑らせたことは軽率だったと反省したらしい。
 確かに、あの一言も今回の騒動の一因ではあるのだが……。
 そのお陰で少しルディアスとの距離が縮まった気がするし、彼女を責める気にはなれなかった。

「お二人も、釣りをしに来たんですか?」

 リュートがこちらに振り返り、微笑みながらそう尋ねてきた。

「はい。たまには、こういうまったりできるイベントもいいですね。最近、クエストやら狩りやらダンジョンやらで忙しかったので……」
「そうですか。あまり無理せず、程々に頑張って下さいね」
「はい、そうします」

 先輩は私に忠告して以来、完全に陰から見守るスタンスに徹している。
 自分で決めたことなのだから、これ以上口出しする必要はないと判断したのだと思う。
 私とシオンは彼らの隣に並び、釣り竿を装備すると、海に釣り糸を垂らした。

「しかし、その時【二次元コンプレックス】と【処女厨】が一堂に会したわけか。軽く地獄絵図だな……」
「ええ……。でも、彼ら、見て呉れは良いので並んでいても絵面だけは美しいんですよ。ただ、喋り出すと本当にもう、それはそれは厄介で……」

 先程の話の続きをしてきたシオンに、私は昨日のことを思い出しながら、片手で頭を抱えてそう返す。

「でも、ルディに助けてもらえたんだろ?」
「はい……一応は」
「おまけに、聞きたかった台詞まで聞けたみたいだし、結果オーライじゃないか」
「それは、まあ……そうですけど」

 確かに、昨日彼が言った言葉を私はずっと待ち望んでいた。
 例えそれが演技だとしても、その言葉を聞けて嬉しいのは事実だ。「夏陽は、これから俺のものになる予定だからな」か……実現したらいいのにな。

「ところで……シオンさんって、どうしてそこまで私たちのことを応援してくれるんですか?」

 私は周りを見渡し、この前のようにルディアスがどこかに潜んでいないか確認してからシオンに尋ねた。

「やっぱり、そこが気になるのか……ま、強いて言うなら──ルディもユリアちゃんも、同じくらい好きだからかな」
「え!?」

 その言葉を聞いて、私は思わず驚愕の叫びを上げる。

「……シオンさんって、どっちもいけるタイプだったんですか?」
「は!? いやいや、誤解しないでくれ! 俺の恋愛対象は普通に女の子だ!!」
「じゃあ、どういう意味で……」
「ルディは、友人としてだよ。あいつとは、小学校からの付き合いでさ。何だかんだで長いからな」
「そんなに昔からの付き合いだったんですか」
「ああ。ついでに言うと、あいつが変わってるのは昔からだったよ」
「まあ、そうでしょうね……」

 何しろ彼は、幼稚園児の頃から二次元コンプレックスを発症していたくらいだからね。
 自分でそう言っていたし……。

「でさ……ルディとリノちゃんの過去は知ってるだろ? あいつ、リノちゃんと仲違いしてから、結婚とか特定の相方を作るのは避けてたんだが……何故かユリアちゃんとは結婚する気になったみたいでさ」
「それは、リノさんから聞きましたよ。でも、普通に私のアバターが理想だったからじゃないんですか? リノさんには、それだけじゃないって言われましたけど……」
「ああ、聞いていたか。実際、俺もそれだけじゃないとは思うんだよなぁ。まあ、こればかりは、本人の口から聞かないとわからないな。……それでさ、そんなルディの結婚相手であるユリアちゃんを見ているうちに、何となくあいつが興味を持った理由がわかった気がして。気が付いたら、俺もユリアちゃんのことが気になってたってわけさ」

 シオンからそう言われ、私は思わず俯く。
 彼が私に好意を抱いてくれていたというのは知っていたが、改めてそれを口にされると何だか恥ずかしい。

「えっと……」
「あ、いや……。別に本気になってるわけじゃないから、安心してくれ。あの時言った通り、ほんの少し『いいなぁ』って思っただけだからさ。それを差し置いても、人間的に好きってことだ」
「そ、そうですか……」
「ユリアちゃんは、今までのルディの結婚相手にはいなかったタイプなんだよ。ほら、あいつってアバターさえ可愛ければ中身の性別は一切気にしないし、貢ぐの大好きだろ? これ幸いと貢がせるだけ貢がせて、面倒になったら別れる姫プレイな輩の多いこと多いこと……ま、今思えばほとんどがネカマなんだろうがな。歴代嫁の中でも、リノちゃんは唯一まともだったと言えるが……結局ルディの二次コンが災いして、それに耐えられなくなって別れたからなぁ。……本当に、ユリアちゃんはよく頑張ってるよ」

 頑張ってる……か。私も、このまま振り向いて貰えない日が続けば、リノさんみたいにいつか耐えられなくなる日が来るのかな?
 うーん……あまり考えたくないな。

「相方として釣り合おうと、ここまで陰ながら努力してくれる子なんてそうそういないぞ。まあ、あいつもそういうところに興味を持ってるみたいだが。つくづく、あいつが二次コンであることが悔やまれるよ。こんなに一途に思ってくれているのにな」

 そう言いながら肩を竦めてみせたシオンに、私は苦笑を返す。

「俺はさ、ルディの過去を色々知ってるから……あいつには、ちゃんと三次元の女の子と相思相愛になって欲しいんだよ。その相手としてユリアちゃんなら申し分ないし、応援したいなって思ったわけさ。二人には、幸せになって貰いたいからな」

 シオンはそう言うと、にっこり微笑んだ。

「シオンさん……」
「だから──いつか、聞いてみたらどうかな。あいつがユリアちゃんと【結婚した理由】を」
「理由、ですか」
「そうだなぁ……早速、今日聞いてみたらどうだ?」
「え、今日聞くんですか!?」
「『思い立ったらすぐに行動しろ。ぼやぼやしてるとチャンスを逃すよ?』……これ、うちのサブマスの格言な。今は、休止中でいないが」
「へえ……。それにしても、このギルドってサブマスターがいたんですね」

 他のギルドにはサブマスがいることが多いのに、このギルドにはいないので実は結構前から気になっていた。
 ギルドメンバーリストを見て、一応【サブマスとして籍を置いている人】がいることは知っていたのだけど。
 その人は、もう長いことログインしていないようなのだ。
 だから、正確には【会ったことがない】という表現の方が正しいかな。

「サブマスさんって、どんな人なんですか?」
「ああ、二年前にこのギルドを一緒に立ち上げた仲でさ。ルディに引けを取らないくらいに強い人だよ。天才タイプのルディに対して、あの人は秀才タイプって感じだな。結構、頼りになる人だったんだが、半年ほど前に突然休止するって言い出して、それからずっと来てないんだよ。まあ、リアルが忙しくなったのかも知れないけどな」
「そうなんですか……」
「本来ならこんなに音沙汰なしで休止期間が長いと、メンバーから除名して誰かが代わりにサブマスになった方が良いんだろうが。ルディはあの人と仲良かったし、信頼を置いているみたいで……除名もせず、新しいサブマスを指名することもせず、籍を置いたままになってるよ」

 ルディアスにそこまでの信頼を置かれるサブマスターか……気になるなぁ。
 そして、ちょっと嫉妬してしまう。

「あ……シオンさん、なんか釣り竿が光ってますよ!」

 シオンの釣り竿を見ると、赤い光を帯びて獲物に反応しているようだった。
 これは……結構大物が釣れる予感。

「おぉ!?」
「釣り竿引かないと、逃げられますよ!」
「これは、でかい獲物だぞ! この分だと、すぐに報酬アイテムと交換できそうだ!」
「おぉぉぉ! やりましたね、シオンさん! 頑張れー!」

 声を聞きつけて様子を見に来たハサネも、シオンの後ろで応援し始めた。

「そぉぉぉい!!」

 そして、シオンが見事に釣り上げたのは──。

「……クラーケンじゃねーか!!」

 巨大なイカっぽい海モンスターの『クラーケン』だった。なんで、こんなものが釣れるんですかね……。
 慌てて魔法を発動させてモンスターを倒し、事なきを得たシオン。彼はゼーゼーと息を切らしながら額の汗を拭っている。
 そんなシオンを横目に、私はイベント詳細を確認する。

「えーと……『なお、イベント期間中は稀にプレイヤーのレベルに応じた経験値の多いモンスターが釣れることもあります。これを機に、がっつりレベルを上げちゃいましょう!』らしいですよ」

 プレイヤーのレベルに応じたモンスターが釣れるなら、シオンが釣り上げるのはかなり強いモンスターってことになるよね。

「全然、まったりできないイベントだな……」

 そう静かに呟いたシオンに、私はまた苦笑を返した。
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