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ネトゲの旦那は私のアバターにしか興味がない! 作者:七風纏
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15 デスマッチが始まるようです

 私は、二人のキャラクター情報を見て名前を確認することにした。
 オレンジ色の髪をした方が『イブキ』で青い髪の方が『カイト』らしい。
 装備から察するに、どっちも近接職。イブキは剣、カイトは二本の短剣を構えている。
 恐らく、ナイトとアサシンだろうか。

「随分、自信満々じゃねーか。わかった、そこまで言うなら相手してやるよ。それじゃ、回復禁止のデスマッチな」

 イブキはそう言うと、獲物を狙う猛獣のような目つきでルディアスを凝視し、強気な笑みを浮かべた。
 それにしても……こんな歳からゲームでPKに勤しんでいるようでは、将来が心配だ。

「ルディアス! そのキャラで戦っても、大丈夫なんですか!?」

 ルディアスが今、あまり育てていないサブキャラであることを心配した私は、少し離れた所にいる彼に向かって叫んだ。

「ああ、全く問題ないぞ! ……寧ろ、これくらいのハンデがあるくらいが丁度いいだろ?」
「は? そのレベルのアーチャーが一人で戦って、勝てると思ってんの?」
「だな。弓を引く前に、俺らが攻撃したら終わりじゃん。しかも、こっちは二人だし。二対一でどうする気なんだよ」

 ルディアスの発言に、イブキは鼻で笑い、カイトは「やれやれ」とでも言いたげに肩を竦めた。

「強がってないで、向こうにいる仲間でも連れて来れば? 俺たち優しいから、二対二で勝負してやるよ」

 そう言って、イブキは私を指差した。
 確かにこういう場合、私も参戦するべきだよね……。
 そう思って、私は立ち上がった。しかし、ルディアスがそれを手で制止する。

「ユリアの手を煩わせるまでもない。お前たち如き、俺一人で十分だからな」
「何だと!?」
「どうせ、出任せだろ!」

 ニヤリと口角を上げて余裕の笑みを浮かべたルディアスに、イブキとカイトは激昂したようだった。
 ルディアスはそんな二人を気にする素振りも見せず、腕に巻いているスカーフのような布を解いた。
 そして、その布を使って長い黒髪を後ろに纏めて、高い位置で結い上げる。
 元々、格好いい系の女キャラだけど、ポニーテールにしたら一段と凛々しくなった。

 なんだろう……こんな時に言うのも何だけど、見た目女で中身が男ってのも結構いいなと思う自分がいる。それで、男口調だと更にいいよね。
 ……って、まさかこれがTS萌えってやつ?
 ルディアスのせいで、新たな萌えに目覚めそうなんですけど。どうしてくれるの!?
 最近、色々と彼に感化されすぎだなぁ私……。

 ──とりあえず、気を取り直して……と。
 本来なら、あまり育っていないアーチャーが一人で、近接職二人を相手にするなんて不利だ。
 だけど、ルディアスが負けるなんて考え難い。一体、どう出るつもりなんだろう。

「お前たち、運が良かったな。俺が今メインキャラだったら、二人纏めて瞬殺していたところだ。まあ……このキャラで戦ったところで、俺が勝つことには変わりないが」
「なっ……馬鹿にすんなよ! 俺たちの方が強いってことを証明してやる!」
「そうだ! 覚悟しろよ!」
「いいだろう。かかって来い、糞ガキども」

 ルディアスはそう言い放つとクイッと指を引き、挑発ポーズをして見せた。

「こいつ……殺ってやる!!」

 ルディアスの挑発に更に激昂したイブキは、剣を構えるとそのまま走り出した。
 そして、大きく剣を振り被り、ルディアスに斬りかかる。
 ルディアスは、バックステップをとって距離を取りその攻撃をかわすと、一瞬の隙きを突いてイブキに矢を射った。
 それに気付いたイブキは、剣で矢を弾き返そうと慌てて防御態勢に入ろうとする。
 だが、間に合わずにその攻撃をまともに受けてしまった。

「なっ……俺の攻撃が避けられた!?」

 イブキは一瞬、放心状態に陥っていたが我に返り、体に刺さった矢を引き抜いて体勢を立て直した。
 そして、悔しそうにルディアスをじっと睨む。
 それに合わせるように、ルディアスも彼を睨み返した。
 その時、後方からルディアスの背中を狙って素早く駆け寄ってくるカイトの姿が見えた。

「──お前さぁ、もう一人いるってことを忘れてるだろ」

 気配を消しながら走り寄ってきたカイトは呟くようにそう言うと、ルディアスの背後を取った。
 そして、短剣を上段で構えて飛びかかる。
 こういう時、近接職ならすぐに刃を受け止めて反撃できるのだろうが、今の彼はアーチャーだ。
 もう、すぐ後ろまで迫っているので、流石に弓を引いている時間はない。

「……よし、もらった!」

 カイトは、余裕の表情を浮かべて短剣を振り下ろす。

「ルディアス!!」

 私は思わず大声で叫んで、彼に危険を知らせようとした。
 ……本当は、ルール違反になるからいけないのだろうけど。
 ──だが、それよりも早く気付いたルディアスの中段回し蹴りが、カイトの腹部に直撃する。

「ぐぁっ……!!」

 その蹴りをまともに受けたカイトの体は、勢い良く草の上に叩きつけられた。
 今の一撃で、彼のHPはかなり減ってしまったようだ。

「な……なんでだよ!? なんでそのキャラのスペックで、そんな威力の蹴りが出せるんだよ……!?」

 その様子を見ていたイブキが、青い顔をしてルディアスに尋ねた。
 このゲームは職業によって扱える武器が決まっているのだが、デフォルトでキャラクターに【体術スキル】が備わっている。
 素手で戦うこともできるけど、普通に武器を持って戦った方が強いので、体術を率先して上げる人は少ない。
 上級者になれば、SPスキルポイントに余裕が出てくるのでメイン武器の補助として、体術を駆使して戦うプレイヤーもいるかなという程度だ。
 なので、ほとんど育てていないルディアスのサブキャラが、体術スキルを上げられるはずがないのだ。
 それなのに、彼は明らかにキャラのスペックに見合っていない高威力の蹴り技を繰り出した。
 イブキが顔面蒼白になるのも無理はなかった。

「教えてやろうか? リアルの身体能力によるボーナスだ」
「は……!? いや、確かにリアルの身体能力がキャラのステータスに関係するってのは知ってるけどさ! あんまり、意味ないって聞いたぞ!」

 私は慌ててメニューウィンドウを開き、ウェブサイトを見るためにブラウザを起動した。そして、wikiを見て調べる。
 今まで詳しくは知らなかったのだけど、どうやらリアルの身体能力はキャラクターのステータスに影響するのだとか。
 公平性を保つために、ちょっと身体能力が高いくらいの人だと多少ボーナスが付与される程度らしいのだが。
 それでもずば抜けた能力を持つ人は、その分ボーナスも多くなるのでやっぱり有利になるらしい。
 ということは……ルディアスは、リアルの身体能力がかなり高いということになる。
 メインキャラのときのルディアスは、確かに体術も強かったけど、それは単にスキルランクが高い所為だと思ってた。

 ……いやいやいや! チートすぎるでしょ!
 頭が良くて、顔も良くて、身体能力もずば抜けてるとか……一体、どんな超人ですか?

「なんなんだよ、こいつ……」
「くっそ……なんで俺が、こんな奴に……」

 イブキは青い顔したままその場に立ち竦み、カイトは悔しそうな表情をしながら体を起こそうとしていた。
 二人はリアルで小学生と言えども、そこらの大人のプレイヤーには引けを取らない程にはキャラを育てていたのだろう。
 それなのに今、無残にもあまり育てていないルディアスのサブキャラに敗北しそうになっているのだ。
 きっと、二人にとってこれ以上の屈辱はないと思う。

「もう終わりか?」

 ルディアスは、無表情で二人に尋ねる。
 完全に目が据わっている。ひしひしと怒りが伝わってきた。
 余程、PKが許せなかったらしい。PKに何か嫌な思い出でもあるのかな?

「カイト! まだ戦えるか!?」

 イブキが、地面に片膝をついているカイトに向かって叫んだ。

「あぁ。今の一撃でかなりやられちまったけどさ……やるしかねぇだろ? 子供だからって舐められないように、せっかくここまで頑張ってきたのに。こんなところで、あっさり負けてたまるかっての!」

 カイトはそう言うと、落ちている短剣を拾い、立ち上がった。

「……反省の色が見えないな。聞き分けのない悪ガキどもには、まだまだお仕置きが必要なようだ」

 ルディアスはそう言うと、弓を構える。

「おい、カイト! 二人同時に行くぞ!」
「わかった……ミスるなよ!」
「お前こそな!」

 イブキとカイトはそんなやり取りを終えると、助走をつけるために一旦ルディアスから距離を取る。
 そして目で合図を送り合うと、左右に別れ、ルディアスを目掛けて走り始めた。
 途中で弓の射程に入った二人は、どちらかに矢が飛んでくることを予想したためか、各々の武器でガードをしながら駆け寄った。
 ルディアスは落ち着いた様子でそのまま弓を引くと、カイトに向かって矢を射る。
 弱っている方から倒してしまおうという寸法だろうか。
 だが、しっかり防御していたせいか、カイトの短剣はその矢を弾き返した。

「よし、やった! リロードされる前に一気に仕留めるぞ、イブキ!」
「おう!」

 彼らは、ルディアスの目の前まで来ると再び目で合図を送り合い、同時に飛びかかった。
 しかし、先程と同じようにルディアスの蹴り技が繰り出され、今度はイブキに命中した。
 自分たちが優勢になったことで気が緩み、防御を忘れていたせいだろうか。
 彼のハイキックが見事に顎に入り、イブキは宙を舞う。

「くそっ……また避けきれなかった……! だけど、カイトが一撃でも食らわせられれば……」

 イブキは地面に落下していく中、儚げにそう呟いた。
 攻撃力だけ見れば、二人だってそれなりにある。
 だから、一撃でも食らわせることができれば、HPが少ないルディアスを瀕死に追い込むことができるのだ。

「食らえ! エアリアルアタック!!」

 イブキが攻撃を受けて時間稼ぎをしている間に、カイトがスキルを発動させたようだ。『エアリアルアタック』は空中高くに飛び上がって、相手の頭上から攻撃するアサシン特有のスキルだ。

 一度スキルが発動してしまえば、遠距離射撃で妨害でもされない限り避けられることはない。
 どう考えても、ルディアスの弓のリロードよりカイトの攻撃の方が早そうだ。
 この技が決まれば、ルディアスは一撃で倒れてしまうだろう。私は、思わず息を呑む。

「これで……逆転だ!!」

 カイトは落下しながら、勝利を確信した表情で短剣を振り被る。
 だが、ルディアスはいつの間にか素早くリロードを済ませ、再び弓を構えていた。
 その弓を引こうとする彼の手元を見ると、二本の矢が確認できた。

「なっ……嘘だろ……!? しかも、矢が二本……!?」

 直前まで勝利の美酒に酔っていたはずのカイトは、絶望的な表情を浮かべていた。
 一度に複数の矢を射るなんて、低レベルのアーチャーにはできるはずがない。
 しかし、ルディアスは涼しげな顔で弦を引くと、それらを同時に勢い良く放った。
 二本の矢は、彼の頭上手前で攻撃する寸前だったカイトと少し離れた位置に倒れているイブキ、それぞれの体に命中する。
 眩い光を放つダメージエフェクトは、その威力を物語っていた。
 ──そして、二人のHPはゼロになった。

 一部始終を見ていた私は、ただ呆然としていた。
 せっかく勝ったのだから、何か言うべきなのだろうけど、圧倒されて言葉が出てこない。
 だけど、これだけは言える……私の旦那は強すぎる。
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